ダーティハリー キヴォトス・ハード   作:さんめん軍曹

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こんばんにちは、さんめん軍曹です!
そういえば2話前の話ですが、誤字報告誠にありがとうございます(土下座)
注意してても意外と気づかないもんなんですよね…

また、せっかくのクロスオーバーですので、オリジナル展開等もバンバン取り入れてみたいと思います。
今回の話も、あえてそのような形といたしました。

それで本編どうぞ!!


The reason we exist

 

 

「私、様子を見てきます!」

「待てノノミ。直接声はかけるな。そぉーっと見守ってやれ」

「……わかりました、ジョン先生!」

 

ノノミが教室を出ると、マクレーンはそばにあった椅子に座り直す。

 

「さぁてホシノ、みんな。聞かして貰おうか」

「あぁ、借金だったな。一体いくらあるんだ?」

「あー……簡単に言えば、9億かな?」

「ぶっ?!」

「正確には、9億6,235万円、です」

 

2人は顔を見合わせる。聞き間違いだと信じたかったが、アヤネの訂正により冗談ではなさそうな事が分かってしまった。

 

「おいおいおい、なんだよその額ぁ……」

「流石に冗談だろう?今まで挙げてきた詐欺でもそこまで極端な数字はなかったぞ」

「桁ァ間違えてないか?一体どうしたら、そんな連邦準備銀行も真っ青な額を抱えちまうんだ!?」

「はい、実は……」

 

アヤネが淡々と事情を話して行く。

 

「これを返済出来ないと、学校は銀行の手に渡り……廃校手続きを取らざるを得なくなります」

「しかし、君達対策委員会が背負うにしちゃ、ちょっと暴利なんじゃないか?」

「ええ……。実際に完済できる可能性は0%に近く、殆どの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました……」

「そして私達だけが残った」

 

ハリーとマクレーンはとうとう黙ってしまう。

普段なら息をするように皮肉を吐く2人でも、あまりの規模の大きさに圧倒されて、下手なことは言えなかったからだ。

 

「今アビドスが直面しているこの状況は全て、この借金のせいです」

「……なぜ君達はそれを背負うことになったんだ?」

 

ハリーの質問に、生徒達は淡々と答えて行く。

 

曰く、過去に大規模な砂嵐が起き、街のインフラは壊滅してしまったとの事だった。

復旧させる為には、巨額の大金を投入せざるを得ない。

 

「そりゃそうだ。街ひとつ砂に埋もれちまったんじゃ、人海戦術で掻き出すわけにも行かないだろう」

「はい。キャラハン先生の言う通りです。でも、そんな巨額の融資をしてくれる銀行が、果たしてあるのでしょうか?」

「答えはノーだな」

「……ああ分かったぜ畜生、そう言うことかクソッタレが!!」

 

突然マクレーンが怒り出す。彼はスッと立ち上がると、窓の縁に両手をついて外を眺めた。

 

「どうしたんだジョン」

 

彼は振り向く。

 

「つまりこう言う事だろ?金を借りる手立てを無くしちまった当時のアビドス高校は、ヤミ金に縋るしかなかった訳だ」

「……おっしゃる通りです。砂嵐はその後も繰り返し発生して、とうとう手が付けられない状況にまで……」

「ああクソッ!最悪じゃねえか。そりゃあ弾薬も底をついちまうわけだ」

 

マクレーンは両手を軽く上げて、力を抜いて腕を落とす。

生徒達も表情が曇ってしまっていた。

 

「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは……先生、2人が初めて」

「ああ、可能なら見て見ぬふりカマしたアホンダラ共に、今すぐ鉄拳を喰らわせてやりてえぜ」

「落ち着けよジョン。腹立たしいのは分かるがな」

「……まあそう言うつまらない話だよ。で、先生達がヘルメット団を退治してくれたから、借金問題に全力投球出来るようになったわけ。……私達の事は気にしなくていいからね」

 

ホシノは笑う。だが、その笑顔も明るいものではなかった。

 

「なあジョン。俺たちの出番はここで終わりだと思うか?」

「いいや思わないね。君達にゃまだ言ってなかったが、俺らはキヴォトスに来る前は警官だった」

 

生徒達はマクレーンの話に聞き入る。若干1名の顔がほんの少し引き攣っていたが。

 

「ほ〜。そりゃ初耳だねえ。でも、お巡りさんにしては随分とルールをフルシカトしてるじゃ〜ん?」

「言ってくれるじゃねえか。書類とかそういう手続きが面倒なだけだ。……んで、厄介ごとってのは向こうからやってくるらしい。そんな事に首突っ込むのは、そらァおまわりの性分って訳だ」

「ここで退いちまう訳にはいかんのさ。子供の悩みを解決するのは俺たちの役割だ」

「うへ……おじさん、もっと早くに2人と出会いたかったなあ」

「……ありがとう。先生」

「ありがとう、ございます……」

 

3人が感謝の意を述べる。

しかし。

マクレーンの言う通り、トラブルというものは待ってはくれず次から次へと発生してしまうのだ。

ノノミが血相を変えて教室へ舞い戻ってきた。

 

「先生!!……セリカちゃんが、セリカちゃんが……!!」

「今度はなんだってんだ?!」

「次から次へと忙しいぜ」

 

 

 

セリカの意識が回復する。

確か自分は、あのまま教室を飛び出して……。

 

「うっ!?………ぐっ……」

 

首が痛い。

この痛みは何か鈍器で殴られたような感覚だ。

周りを見回すと、どうやらトラックの荷室のように思えた。

身体の自由が効かない。縛られているようだ。

ここで彼女は、自分が何者かによって拉致されている事に気がついた。

その事実を知った途端、底知れぬ恐怖感が身体を襲う。

少しでも気を紛らわせようと外を見る。その景色の中には鉄道の線路が見えた。

 

「っ……!アビドスの郊外……」

 

このまま自分は何処かへ連れ去られてしまうのだろうか?

そう考えると、彼女の目から自然と涙が溢れた。

 

「みんな……ごめん。ごめんね……」

 

涙でぼやけた視界が捉えたものは、駅の跡地と放置された貨車や車両群。

 

そして、跨線橋の屋根に立った1人の大人だった。

 

 

ハリーは近づいてくる車両を見据える。

 

「アロナ。あれか?」

『はい!ナンバー、車種ともに一致しています』

「上出来だ。あとでパフェをご馳走してやる」

 

そのままトラックは彼の間合いに入り───ハリーは屋根に目掛けて飛び降りた。

 

 

ドスンと大きな音がして、運転席の連中が騒ぎ出す。

そのまま車は蛇行運転を繰り返して、とうとう何かにぶつかって停止した。

そのあまりの衝撃にセリカは床へ投げ出される。

 

「きゃっ?!」

 

そしてガラスが割れる音と、何発かの銃声──それは、それなりに聞き慣れた.44マグナムのもの──が轟く。

しばらくして、セリカが閉じ込められている扉が開けられた。

逆光で表情まで見えないが、そこにいたのは砂だらけの、アビドスへ来て間もない先生だった。

 

 

「こちら刑事71号。人質は解放した」

『リンカーン8-30。10-4(了解だぜ)

「お嬢さんは無事だ」

『セリカ、泣き顔』

「え、撮ってるの?!今すぐ止めて先生!!」

 

だが、ハリーはニヤニヤしながらも撮影をやめない。

 

「ようやくタッチ画面にも慣れてきた所なんだ。活用させてくれよ」

「先生!!!」

 

 

「さてセリカは確保した。お前ら、準備はいいか?」

「いつでも」

「おじさん、頑張っちゃうよ〜!」

「悪い子にはお仕置き、です♣︎」

 

シロコはドローンを飛ばし、ホシノはライオットシールドを構え、ノノミはミニガンのバレルを回転させる。

 

「へっへっへ……そんじゃあいっちょ焼け野原にしようぜ!!」

 

それからマクレーン達戦闘部隊は、ハリーとセリカが合流するまでの間に激しく暴れ回った。

その中でヘルメット団以外の勢力が巻き添えを喰らったのは、もはや言うまでもない。

 

 

その後、対策委員会の教室にて。

無事に帰還を果たしたセリカを3人が揉みくちゃにし、ハリーとマクレーンはその光景を、コーヒーを飲みつつただ黙って見守っていた。

一連の騒動の処理を終えたアヤネが、唐突に大人達へ質問を投げかける。

 

「キャラハン先生やマクレーン先生は、何かが起きる度にいつもこうやって解決してきたんですか?」

「まあ、事件が起きりゃあな」

 

生徒達の視線がハリーに集まる。マクレーンも彼の話に興味が湧いたのか、肘でハリーの脇をツンツンと突いた。

 

「そういやあハリーの話、ほとんど聞いてないぜ」

「いいや?話すほどのことでもないよ。あんたと同じで、犯人(ホシ)を挙げりゃ付け狙われるのが日常さ」

「ね、狙われるのが日常……?」

 

セリカの顔が引き攣る。

 

「ああそうさ。街のチンピラに売春の元締め、犯罪組織のボスに精神異常者……数えたらキリがない」

「うへ。ヘイローがないのによくここまで来れたねえ」

「簡単なこった。俺に牙を剥いてきた奴は片っ端から……ズドンだ」

 

銃の形を作った手をホシノへ向けて、撃つ真似をした。

 

「おぉ。かっこいいね〜」

「かっこいい?俺がが?冗談よしてくれ。そんな事ばっかしやってたら……組んだ相棒は死ぬか病院送り。いつしか上層部に疎まれ、挙句の果てには街のゴミ掃除ばかりやらされてな。付いたあだ名が"ダーティハリー"さ」

 

ハリーは溜息をつきながら背もたれへ体重を預ける。

 

「ジョン。おたくは?」

「んあ?あぁ、似たようなもんさ」

「ジョン先生のお話も気になりますね〜!」

「んあぁ言ったろう?似たような話だって。……なあお前ら」

 

マクレーンは前へ軽く乗り出す。

 

「ヒーローに憧れたこたァあるか?」

「ヒーロー、ですか?」

「ああ、そうだ」

 

彼はノノミの返事を待つ。すると、予想通りの答えが返ってきた。

 

「悪人を退治するヒーローは素敵で、憧れますね〜」

「へへ……そうかい。それじゃあ、悪党を退治したヒーローは何を貰えると思う?」

「それは……」

「思い浮かばないだろ?そうだ。ヒーローと呼ばれた男が得たものは、何もない。何もないんだ」

「えっ」

「クソ野郎どもが事件を起こし、巻き込まれた家族や市民を救う為に泥だらけになって駆けずり回ったが……。なんとか解決しても、少しの間有名になるだけで何も貰えやしない。待っていたのは離婚さ」

 

ニューヨークやロサンゼルス、そして全世界を救った刑事は、ただ寂しそうに笑った。

 

「ヒーローなんて憧れるだけにしとけ。あんなのはやるもんじゃあない。代わりがいればすぐに交代したいね。……だが、誰もやらないから俺がやるしかない。それだけだ」

 

対策委員会のメンバー達は絶句した。

そして、マクレーンは5人の目を見ながら語る。

 

「君達も俺らと同じように、他がいないから今までここを、アビドスを護ってきたんだろ。だから俺とハリーはここへ来た……」

「俺らはほんの少しだけ、君たちに手を貸す。だが最後にアビドスを導くのは……君達5人の役目だ」

「ん!ありがとう先生」

「このご恩は一生忘れません⭐︎」

 

生徒達から熱い眼差しを受けた2人は、どこか照れ臭そうにしていた。

 

「おいおい、まだ終わってねえだろ。……寧ろここからが始まりじゃないのか」

「とりあえずはだ。今日はもう帰って休みな。俺とジョンは今までの出来事を整理しとく」

「先生、それなら私も……」

 

アヤネが手伝おうと名乗りを上げるが、2人はやんわりと断る。

 

「ここからは経験がものを言うんだ。なあに、心配せずともひと段落つけば休むさ」

「それに……よい子はお家へ帰らなきゃだ。遅くまで頑張りすぎると、その綺麗な肌がガサガサになっちまうぜ」

「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます。───先生達も、どうか無理はなさらずに」

「あいよ」

 

マクレーンが片手を上げて合図を送ると、生徒達は立ち上がる。───だが、セリカだけは足元がもたついてバランスを崩してしまう。

危うく倒れかけた所をハリーが抱きとめる。

 

「お疲れかいお嬢さん。保健室まで運んでやる」

 

 

数時間後。

セリカは保健室のベッドで目覚める。

辺りを見るために首を振ると、椅子に腰掛けたハリーがタブレットを弄っていた。

 

「……先生」

 

呼ばれたハリーは手を止めて、セリカを見る。

 

「お目覚めかい。お姫様」

「えっと、その……ありがとう」

「なに、構わないさ」

 

セリカが言い終わると、彼はまた画面に向いて何かを読んでいく。

ほんの数分間、2人の間には静粛が訪れた。

 

「ねえ先生」

「どうした?」

「……その、私が攫われる前の事なんだけど、あの」

「歯切れが悪いじゃないか。遠慮せず言ってみな」

 

セリカはベッドから起き上がると、意を決したようにハリーの目を見る。

 

「先生を部外者なんて……酷いこと言って、ごめんなさい」

「ああ、その事か……。別に気にしてなんかいない。地方検事や新聞記者の心無いひと言に比べりゃ、可愛いもんさ」

「そう、なの?」

 

ハリーは手にしていたタブレットを置いて、セリカの隣に座る。

 

「ああ。ジョンの言ったように、例え事件を解決したとしても……吊し上げを喰らうんだ」

「そ、そんな……」

「奴らは殺された被害者を差し置いて、犯人にも人権は無いのか……などと抜かしやがる」

「こっ、ころっ…!?」

「幸いキヴォトスでは、そんな血生臭い事がなくて良かったとすら思っているよ」

「まあ、ここじゃ殺人は禁句に等しいから……」

「そうか……」

 

セリカはハリーのカブスボタンの辺りを軽く掴む。

 

「……先生はずっと耐え続けてきたのね。マクレーン先生のように」

「そうなるかね……」

「ふふっ。なんだか私たちみたい」

「まあ、シンパシーは感じるな」

 

セリカは立ち上がる。

 

「ありがとう先生。なんだか勇気を貰った気がするわ!」

「お役に立てて何よりだ」

「だから、その……頑張ってアビドスを復興させるから!」

「ああ。さっきも言ったが、協力は惜しまないよ」

「先生も私達に手伝って欲しい事があったら、遠慮なく言って!……別に、先生と仕事がしたい為じゃないけどね!」

「ああ。そうさせて貰うさ」

 

彼女はそのまま荷物をまとめ引き戸を開けると、ハリーに礼を言って帰宅していった。

 

「娘を育てるってのは……こんな感じかね、ジョン」

 

彼は1人笑うと、相棒の元へ戻る為に立ち上がる。

その時、窓の外に映っていた黒い影もまた、闇夜へと消えていった。

 

 





いかがでしたか?
私としての見どころはやはり後半でしょうか。
2人の刑事はかく語りき…邦題をつけるならこんな感じだと思います!

さて次回は待望の…?
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