プロットを練っていたら1週間が経過しました()
大変お待たせしました、それでは本編どうぞ!!
「こ、こりゃなんだおい……」
ここは柴関ラーメン。
チンピラ共を退治し、今か今かと待ち受けているメンバーへセリカの手によってラーメンが次々と置かれていく。
注文した品がそれぞれの前に揃い、感嘆の声を上げる──特にハリーにとっては初めての食べ物であり、その独特な見た目と匂いが食欲中枢にダイレクトに届いて、ジャンクフードを好むアメリカ人の血をくすぐった──中、ただ1人唖然とするマクレーン。
そんな様子を見かねて、シロコが声をかける。
「先生、だから言ったのに……」
「自爆したね〜、ジョンせんせ」
「どうするジョン。リタイアするか?」
トッピング全部載せとあって、ハリー達のものよりもひとまわり大きなどんぶりでやってきた。
そこにはもやしのタワーを始め、周りにははみ出んばかりにチャーシューと煮卵、メンマや海苔が載せられていた。
「……う」
「マクレーン先生?」
「美味そうじゃねえか!!こんなジャンクな食いもん、
勤続30年以上の叩き上げの刑事は、久方振りに目を輝かせていた。
背後ではアル達が食い入るように見つめている。
しかし。
食べるにあたり、マクレーンにとっては大きな障害が待っていた。
そう、彼は箸の使い方を知らないのだ。
そんなマクレーンをよそに、ハリーはひょいひょいと自分のどんぶりの中身を摘んでは口に運んでいた。いびつな持ち方で。
「ハリー先生ったら、すごい箸の持ち方してるね〜」
「ん?あぁ、ここにくる前に、
「うへ。その相棒さんも大変だったろうねぇ」
「箸はこうやって持つんですよ〜♪」
ノノミがハリーに見せる。そして麺を掬ってレンゲの上に乗せ、口の中に運んでいく。
ハリーとマクレーンもまねをしようとするが、なかなかうまくいかないようだ。
「先生。フォークもあるわよ?」
「あー……それじゃ頼むぜ」
「ハリー先生は?」
「俺はもう少し挑戦してみる。そうしなきゃあクワンの奴に馬鹿にされちまうからな」
そのやりとりの傍らで、他のメンバーはズルズルと麺を啜っていた。その様子を見ていたマクレーンはシロコに質問する。
「なぁシロコ。ラーメンってのは、そうやって音を立てて食うモンなのか?」
「ん、そうだけど……気になる?」
「まあ、な。俺たちのいたとこじゃあ、音を立てて飯を食う文化がなかったもんでな」
「むしろ下品な食い方とすら言われていた」
「随分な言われよう」
「はい先生、フォーク持ってきたわ」
マクレーンはセリカからフォークを受け取ると、改めて目の前にそびえ立つラーメンを見た。
「先生、早く食べないと麺が伸びちゃいますよ?」
アヤネのひと言で我に返り、伸び切ったラーメンを食べているラブをちらりと見る。
彼女はアビドスの生徒よりも派手に音を立ててラーメンを貪っているが、その腹は見てわかるほどにはち切れそうになっていた。
そして目の前にいる自分の相棒は、慣れない箸に悪戦苦闘しながらも黙って食べている。
その様子を見るに、味は申し分なさそうだが……早いとこ諦めてフォークに切り替えれば苦労しないんじゃないかね。
そう思っていたマクレーンも自分のラーメンに手を伸ばした。
「えっと、こうして……あちっ」
湯気を立てるチャーシューを1枚とり、息を吹きかけて温度を冷ます。
そして口に運ぶと、豚の濃厚な旨味とタレの複雑な味わいが汁と共に口いっぱいに広がった。
「……!」
そして気がつけば彼もまた、無我夢中になってもやしの山を崩しにかかっていた。
「うぅ……へくしっ!」
「うわっ?!ちょ、アル!唾がこっちに飛んできたんだけど!!」
ドロドロに溶解していたアルに対し、ムツキはコショウを振りかける事で元の姿に戻した。
その影響で止まらないくしゃみと共に、無意識に口からはみ出していた唾をカヨコに飛ばしてしまった。
「あ、あらごめんなさい。……あの2人の食べっぷり、実にアウトローだわ!特にツルツルの人が……」
「誰の頭がハゲでアウトだと!?こいつァスキンヘッドだ!」
アルの声はマクレーンに届いてしまったらしく、彼から叱咤を受けてしまう。
「しかしこのスープ、気に入ったぜ!俺の知ってる限りアジア人はなにからでも出汁を取りたがるが、こいつは天下一品だ!」
「先生!だから言い方!!」
マクレーンへ2度目のツッコミを入れたセリカが、4人の前にどんぶりを置く。
「柴関ラーメン、お待ちどうさま!」
「やっと来たわ……ね……?」
「おぉ……」
4人の座るテーブルに置かれた、ひとつのどんぶり。
彼女らはそのオーラに圧倒されていた。
でかいのだ。ラブやマクレーンのラーメンよりも。
「あ、あの……これは?」
ハルカが恐る恐る聞く。
それは、ラブの伸び切った4玉分よりもギチギチに詰め込まれた麺。
「わぁ……」
いつもの減らず口はどこへやら、ムツキですらも言葉を失う。
それは、マクレーンの器に盛り付けられたものよりも高いもやしのタワー。
「いやあ、運ぶの大変だったわ!重いったらもう」
気がつけばハリーは箸を止め眼を見開いており、マクレーンもフォークをポロリと落として自分の注文した物と彼女らの物へ視線を往復させていた。
「悪いねお嬢ちゃん方!手元が狂っちまってよ!!」
大将の声で全員が我に返る。
「……ハリー。あのおやっさん、本当にやりやがった」
「食の神デメテルもひっくり返っちまうぜ。実にイカしてる」
やっとのことで完食したラブもまた、顔を引き攣らせている。
「ねえ大将、アレ……」
「シッ。それ以上は野暮ってもんだ」
柴大将は片手を口に当てウィンクする。
それを見た彼女は、次に来る時は性格が大人しい仲間も連れてこようと思うのだった。
「あ"ー、食った食った」
「ジョン先生、ペロッと行っちゃったねえ」
「久しぶりにマトモな飯にありつけたぜ。何よりズルズルと音を立てて食うのが気持ちいいのなんの。お前らもそうだろ?」
ジョンは後ろを向く。
彼と視線が合ったアルはドキッとしながらも、笑顔で答える。
「ええ。とっても美味しかったわ」
「これもバイトちゃんの粋な計らいのお陰だねっ!」
ムツキの言葉が少し照れ臭かったのか、セリカはお盆で口元を隠す。
「そ、その……大したことじゃないわよ」
「そういえば、おじさん達2人は誰?キヴォトスの外の人っぽいけど」
カヨコの名指しを受けた2人は顔を見合わせると、懐から警察バッジを取り出し、開いてみせる。
「連邦捜査部のハリー・キャラハンと」
「ジョン・マクレーンだ。2人で顧問をしてる」
「ふうん。てことは先生ね。私達は……」
「私達はこう見えて、会社を経営しているのよ!」
カヨコを押しのけ、アルが前に身を乗り出す。
「会社……?」
マクレーンは考える素振りを見せ、ハリーは背もたれに身を預ける。
「そう。その名も便利屋68よ!受けた依頼はどんな物でもこなすの!」
「アルちゃんったら、真のアウトロー目指して便利屋をやってるんだよね!」
アウトローの単語を聞いた2人の眉間に皺が寄る。
そんな様子に気づいたのはカヨコだけだった。
アルは続ける。
「ムツキの言う通りよ。さっきの3人のやり取り、まさにアウトローそのものだったわ!!」
「う、うちも!?」
「ええもちろん!ジョン先生の迷いのない射撃に、ハリー先生の煽り言葉。そして、ラブさんの責任を背負う姿……これぞまさしく私の憧れそのものだわ!!」
その後も喋り続ける彼女をよそに、2人はアイコンタクトを取る。
──どう思う?ハリー
──根っからの悪人ではないが、その分厄介だな
「……アル、と言ったか。先生としてひとつ教えてやる」
「何かしら?」
「アウトローを目指すのは結構だが、その先には何があるか考えたか?」
マクレーンの問いに、彼女はしばし考え込む。
アビドス組は先日聞いた2人の話を思い出す。
そんな様子を見たハリーはやれやれといった風に首を振った。
「例え何かを成し遂げても、後ろ指を差される覚悟はあるか?」
「そ、それは……」
「幸いキヴォトスには、毎度のように小言を垂れる上司や地方検事、人権を振りかざす新聞記者はいない──が、それでもだ。行動を起こして褒められることはほとんどない」
「ハリーの言う通りだ。俺達はここで言うヴァルキューレとやらに似た警察組織にはいたが……仲間なんてなァ1人もいなかった」
正確には、巻き込んだ民間人が手助けしてくれることはあったがな、とマクレーンは心の中で思った。
気がつけば全員が──柴大将まで──2人の話に聞き入っていた。
「あんまり自分の事を喋る気は無いんだが……少なくとも俺達が先生で、おたくらが生徒である以上は教えてやらなくちゃなんねえ」
「ああ。……なあアル。俺達なんかに比べりゃ、お前さんにはまだついてきてくれている3人の仲間がいる。この先何があっても仲間を信じてやれ。他のお嬢さん方もな。……アウトローを目指すなとは言わんが、それが何を意味するのかをいま一度考えるんだ」
再び訪れた静粛。
少し重すぎたかと頭を掻いていたマクレーン。
と、そこへ柴大将がやって来て、2人の前にチャーシューが乗せられた2枚の皿を置いた。
「先生方。あんたら、ここへ来る前はよっぽど苦労しなすったみたいだな。まぁこれは俺からの
「あぁ、こいつはどうも……」
「マスター。アンタもなかなかどうして、いい男じゃねえか。今度一杯やろうぜ」
「機会があればな。これからもキヴォトスの生徒さんを引っ張ってやってくれ」
そんなやりとりを見ていたアルは、2人の言葉を噛み締めるべく椅子に座り込んでしまった。
「まあ言っといてなんだが、そんなに気張るこたァない。1人の少女として、仲間と青春を謳歌してくれ」
マクレーンがフォローを入れるが、アルは考え込んでいる。
「アル様……」
「うーん……ここで考えても仕方ないわ!」
アルは立ち上がる。
「私は私なりの答えを見つける!そしたら先生、真っ先にあなた達のもとへ行くわ。それでいいかしら?」
「ああ。もちろんだ」
「すまねえな。こんな話をしちまって」
「アルちゃんがいつもの調子に戻った!」
「かっこいいですね〜⭐︎」
「そ、そう?」
ノノミのひと言にアルは照れ、アビドス組と話が盛り上がっていく。
その様子を眺めていたハリーはふと席を立つと、ラブの隣へ座った。
「なあラブ」
「ん……?」
「さっきお前さん、別の勢力と言ってたな」
「ああそれ?うん。ヘルメット団の中にもいくつか勢力は分かれてるんだよね」
「なるほどな。君がリーダーと見込んで、ひとつ頼まれちゃくれないか」
「迷惑料の代わりになるか分からないけど、いいよ」
ラブは内容を聞く前に承諾する。
ハリーの内心では、彼女の事を高く評価していた。
「KATA-KATA団と言ったか。奴らの雇い主を調べて欲しい」
「どうして?……そういえばさっき、アビドスを襲ってるとかなんとか」
「話が早くて助かるぜ。彼女らの依頼でここへやって来たんだが、初日から大勢とやり合ってな。おおかた相手が誰なのか見当はついているんだが、確たる証拠が欲しいんだ。記録なんかがあればそいつを掻っ攫って来て貰いたい」
「う〜ん……頑張ればできない事はない、かな。ちょっとリスクがあるけどね」
「すまんな」
「大丈夫。カタカタの雇い主はどこなの?」
「カイザーじゃあないかと睨んでる」
カヨコの動きが止まる。
もちろん2人の刑事は見逃さない。
「シャーレを襲った武装集団の戦車やKATA-KATAの車庫にいた最新鋭の戦車まで、カイザーの名前があった」
「アイツらにしては凄いものを揃えたね。まあカイザーはここじゃ手広くやってるから」
ハリーとラブのやり取りを、マクレーンとホシノ、そしてカヨコも耳を傾けて聞いている。
「……わかったわ。うちは拠点に戻って探りを入れてみる。モモトーク、交換しよっか」
こうしてハリー達には、重要な情報源となるスパイが手に入った。
「さっすがハリー先生。まさかスパイまで作っちゃうなんてね〜」
食事を終えた店の前で一同は別れ、それぞれの拠点に戻るべく足を進めていた。
「たいした事じゃない。……敵の敵は、って訳じゃないが、彼女は立ち回り方を知っている。そういう人間は後に強い味方にさえなるんだ」
「ああ。それに敵の内情を知るには、それに精通している奴に聞く方が手間が省けるって寸法だな」
「先生達は本当に警察だったの?」
シロコが疑問をぶつけるのも無理はない。
ハリー達のやっている事は、明らかに警察組織の枠を超えているからだ。
「言ったろ。はみ出しもんだってな」
「仕事は早い方が成功率は上がる。書類の相手で重要な局面を後手に回すのなんか、もってのほかさ」
「そういやあハリー、ちと気になった事があってな」
「どうした?」
「あの便利屋連中……ただの仲良し倶楽部だと思うか?」
マクレーンの言葉にハリーは立ち止まると、つい先程の様子をもう一度振り返った。
「……表面上はそうだ。だが、アイツらが今まで仕事をしてこれたって事は、優秀なブレインがいる」
「1人心当たりがいるぜ」
「おじさんも思い当たる節があるな〜」
「奇遇だな。……あのカヨコって生徒、彼女は臭う」
「カイザーの単語に反応してたしな。奴らも関係ありそうだ」
「ああ。あとでアロナに調べてもらうとするか」
「ねえ先生」
突然、ホシノがハリーにいつもと違う口調で話しかけてくる。
「今までの襲撃にカイザーが関係してるのは本当なの?」
「ん?あぁ。まだ確定したわけじゃないがな。証拠が揃い次第、また会議を開く予定さ」
「そう。すぐに知らせてね」
「そうさせてもらうよ」
同じ頃、アビドス組と反対方向の道にて。
「ねえムツキ」
「な〜に?カヨコちゃん」
「気づいた?あいつら、アビドスの制服だった」
「あっ!そう言えばそうだね!!」
彼女はアルにも話しかける。
「アル。あの連中……特に2人の先生には気をつけるべき」
「なぜかしら?」
気づいてないのか?まぁ、いつものことか。
カヨコは溜息をつく。
「あのね、あいつらはアビドスの生徒。これから私達が襲う学校」
「えっ」
「そして2人の教師。あの大人達、背後にカイザーがいる事に気づいてる」
「な……な…………」
アルの顔が青ざめていく。
「なっ、ななな……なんですってーーーーーーッッッッ!!!??」
日も傾き始めたアビドスの路上に、白目を剥いた彼女の叫びが木霊した。
いかがでしたか?
アル社長のお家芸が披露できました!
そして、先生達が背負っている物を便利屋にも教えて……
アビドスと便利屋が衝突する時、何が起きるのでしょうか??
次回、題名は決まっておりませんが……チャンネルは決まったぜ(?)