「え」
女がなにかを引き抜く。亮は膝をつき、その場に倒れ込む。
「え、あ、え?」
俺は目の前で起こった事をすぐには理解出来なかった。
「フフッ、いいね、その顔。それが見たかった」
黒コートの女は俺の顔を見て笑う。そのコートの袖口からは、赤く染まったナイフがこっちを向いていた。
「うわあああ!!!」
俺は思わず後ろにのけ反り、尻もちをつく。
その時、右方のある光景が目に飛び込んできた。
うつ伏せで倒れ、固まったように動かない
その地面に広がる、血と雨とコンクリートの混ざった赤黒い色
だんだん状況が嫌でも掴めてきた。
「あああああ! おいっ! おいっ! 亮っ!! なあおい返事しろ!! りょお!!」
必死に俺は亮を呼んだ。
血が脇腹から溢れている。
止めどなく暖かいものが溢れてくる。
手がどんどん赤く染まっていく。
「ああくそっ!! どうすれば!! どうすればぁ!!!」
周りは真っ暗で誰もいない。
救急車……そうだ、スマホ
……ツ コツ コツ
「はっ」
後ろにはもうあの女が立っていた。俺は息を殺し、ゆっくりと振り返る。そのとき、女と目が合った。人形のように冷たい眼。その眼に見つめられた俺は、ライオンに殺される前のウサギみたいに恐怖で体を動かせなかった。
そんな俺を見て、女は気持ち悪いほどに
じッッッッくりと口角を吊り上げ、無機質に呟く。
「じゃあねーーーーーーーー」
グチャっとナイフが肉を通る音がした。
「あ あ
ああああああああ!!!」
目の前には、俺を守るように亮が立っていた。その腹にはナイフが深々と刺さっている。
「おまえ!! なんで!!!」
「ぐぶっさく……ら………… 」
亮が血を吐きながら崩れ落ちる。その目にもう光は無い。
「次はキミの番だね」
からだが、動かない
こえも、出ない
なにも、かんがえられない
亮……りょう…………りよお………………
ザシュッ
ボトッ
「え…………?」
肉が切れ、地べたに当たる音。しかし、それは桜のものでも亮のものでも無い。我に帰った桜が恐る恐る前を見ると、女の両腕が地面へ落ちていた。
「は」
突然の出来事に女はバランスを崩し、後ろに2、3歩のけ反る。そして、何かを目の当たりにして驚いたような顔をした。
「……!! おまえは!」
桜が女の視線の先に目を
「ついにこんなとこにまで現れるなんてね、
連続殺人鬼」
「そっちこそ、こんな東京の隅っこに来るなんてどうしたの?
「オレは忙しい中、来てるんだ。無駄話をしに来たわけじゃない」
「そっか、それは大変。だったら今すぐ殺してあげないと……ねっ!!」
女の全身を覆うように被さっていた黒のコートが風で吹き飛び、地面に落ちる。その時、女の
桜がナイフだと思っていたものは巨大な手の
「だから」
「無駄だって言ったろ」
男が手の平を前に掲げた次の瞬間、女の片腕が突如、見えない壁に挟まれたかのように潰れ、消し飛んだ。
「くッ!」
片腕が潰れ、女は後ろに大きく
「ちっ」(攻撃がずれた……?)
「はあはあ……やっぱり今は無理かなぁ」
「今? 何言ってんの、お前に未来なんかねえよ」
そう言い放ち、再び手を女へ向けようとしたその時。
「ははっ!! いいの!? その子!!
血の出過ぎで死んじゃうよおっ!!」
女が"なにか"を指差す。
「何言ってやがる、、!?」
男が辺りを見渡すと、そこには
(!! もう1人居たのか!?)「ちっ!」
男はすぐさま振り返り、亮の元へと走る。
「ははは! それじゃあ、またね!」
その間にそう言い残し、黒い女は東京の