未来視で幼馴染のことが分かるんだが、絶望しかない() 作:うずつるぎ
「勇者! この馬鹿はオレが抑えてやるッ! だからテメェは魔王をやれッッ!!」
裏切りに次ぐ裏切り。もはや勇者御一行は総崩れ。
そんな中でも銀髪の獣人な彼女は、寝返った魔術師を相手に戦線を維持した。
それが、オレが見たミナさんの未来の一つ。
ナチュラル煽りモンスターなまま勇者となったルルアの仲間でいながら、最後まで裏切らなかった本当に良い人である。
そーんな聖者はたった今、濃厚な殺意を凄んでオレへと大剣を振り下ろしていているのだから、現実は誠にクソである。
「死に晒せやァァァァッッ!!」
首、脳天、心臓。的確にオレの急所を狙った一撃が空気を穿つ。
巨大な大剣は細身のレイピアであるかのように軽々と振るわれて、その癖に大地を揺るがすような振動を森中へ響かせる。
こんなん未来視持ちじゃなかったらミンチになって終わりだぞ……。
オレは身体を捻って一撃を躱し続け──ドンと、背中に触れる固い感触。
「あ」
大木の幹にぶつかっちまった。もう逃げ場がない。
チラリと後ろを覗いた瞬間、鈍色の瞳が勝機に見開く。
「終わりだァァァァッッ!!」
振り下ろされる大剣を──オレは、魔力強化した拳で受け止めた。
ブワリと、木々を吹き荒らす重い衝撃。
拮抗する拳と剣。やがてバキリと、魔力強化した皮膚に、刃の食い込む感触が貫く。
「ぅ……!!」
痛いっ、痛いよぉ……!
このままだと腕が薪割り確定である。オレは左脚を銀狼の腹部へ蹴り上げ、なんとか逃げ仰せた。
右拳には赤い血が流れる。地下の実験棟に囚われた日々が蘇って、はぁ……これだから汗水垂らすのは嫌いなんだ。
「チッ……すばしっこい野郎だぜ……!!」
後退したミナさんは、その肩に巨大な大剣を担ぎ直す。
魔力量も精神力もゴミカススライムなオレは、殺しても経験値にならないんだがな。
憎悪に燃ゆる鈍色の瞳にはオレを見逃すという選択肢はないらしく、仕方がないので臨戦態勢を取る。
「そんなにオレを殺したいか」
ミナさんはその勝気な顔を、猛禽類のごとく激しく歪める。
「ダチも、家族も、帰る場所も……ぜんぶぜんぶテメェのせいで無くなった……」
「懺悔はいくらでもする。だが、今はまだ死ぬわけにはいかないんだ」
「罪人に自由があると思うか……? テメェの血で墓場を潤せやァァァ!!」
問答をするつもりもないらしい。
ミナさんは大地を上空に蹴り飛ばし──一回転して、オレを脳天から真っ二つに。
とかいうクソみたいな未来を知っているオレは、両手で覆うようにして大剣を迎え入れる。
そしてパシンと、
「なッ!?!? コイツ──」
黄金島に伝わる、真剣白刃取りとかいう技術である。
オレはそのまま腕にバカクソ力を込め、大剣の刃を半ばから破壊。ミナさんの頬へと右拳を叩き込む。
「ぐ、ぉ……!!」
諸に喰らった『銀狼』は、森中を二転、三転と跳ね転がった。
「……やったか!」
ミナさんは血の流れた口の端を手の甲に拭いながら、ニヤリと、汗ばんだ顔に八重歯を覗かせる。
「ハハッ……クソッ、舐めてたぜ……」
おい、オレが周りから舐められなくなったらいよいよ誰にも勝てんぞ。
「いや、オレは驕っていた……こんだけ強くなりゃあ、テメェだって倒せるなんてよ……」
ミナさんはキッと、オレを見据える。
それはただぶちのめす対象ではなく、明確な敵として、認識する。
「だから──もう、油断はしねェ」
瞬間、ミナさんは己の唇を噛み切って。
「──『獣化』」
どくりと、彼女の重い鼓動が森と共鳴した。
銀色の獣耳が伸びる。その尾が逆立つ。
ミナさんはメリリと纏う衣服を喰い破るように肉体を膨張し……頼む。青い悪魔か森の枯れ木を呼んでくれ。明らかに応援が必要だ。
「さて……ココからが、オレの本気ダ」
暗い森中で相対するは、巨大な白銀の魔狼。
ミナさんはニヤリと、獣の歯肉を剥き出しにした。
♦♦♦
──速いッ!!
巨大な狼の姿が未来視の中でブレた瞬間、オレは迷わず大地を後ろへ蹴り、魔力の弾丸を撃ち放った。
当たったのは残像だ。冗談じゃねぇぞ……。
視界から消えた狼の行動に息を吞んだところ──首裏を撫でる柔らかい体毛。
「──ドコを見ていル?」
「ッ!!」
振り向くと、すぐ傍で細長い瞳を光らせる狼の顔。
オレは直感的に前へと転がり込んだ。お陰で振るわれた鉤爪はオレの背中を浅く抉るばかりで済んだ。
「ぐ、ぁあ……!!」
いや、済んでいないが。クソほど痛いが。
しかし痛みにのた打ち回ってギャン泣きする暇すら与えられず、前脚の鉤爪は、鎌鼬のごとくオレの身体を赤く削る。
「遅イ……! 遅いゼェェェェッッ!! 『虹眼』のシアンッッッッ!!!!!」
このままでは一方的に嬲り殺されるので、未来視を二秒へと移行。
途端に濃さを増した右眼の痛みに歯を食い縛る。白狼の前脚を身を捩って躱し──右腕に纏った魔力の刃を、斬り返す。
「ぐァ……!?」
う~ん。刃こぼれ。
あまりの強靭な筋肉のために、まるで刃は通らない。実力差があり過ぎやしないだろうか。
だが、クソッたれな未来視を強化することでミナさんの動きは見えるようになった。これならばオレのペースに。
じわりと、
「ぐ……ぉぉおおお!?!?」
気が付くと、
なんだ。どっから現れた。
魔力強化した拳で狼の脳天を砕こうとするも、巨狼となったミナさんの遠吠えに合わせて狼どもはオレから飛び退く。
白狼とお供の狼はオレに襲い掛かり……いや、まさかな……ちょっと待ってくれよ……。
「古キ同胞ヨ……墓標に血ノ涙ヲ降ラセたまエ……我ガ祈リに、応エテくれ……ッ!!」
「なんでも、ありだな……呪術ってのはッ!」
まずい。これはまずい。何を隠そうオレの未来視、当然、
つまりは両の目玉が前二つにしかついていないオレでは、四方八方から迫る狼たちを、すべて見切れない。
「……クソがッ!」
やれることと言えば、肉を切らせて骨を切る苦行。実際に痛い思いをしなきゃ仕留められんとか、未来視持ち主人公の名折れである。
おかげ様で、狼の魔物を仕留め終えた頃には。
「は、ぁ……はぁ……!!」
オレは血池に両膝を折って、激しく息を切らしていた。
クソ、本当に最悪だ。もう汗水がどうとかそういう領域には収まらないクソだ。
血を流し過ぎたのか、視界はクラクラするし手先は震えるし……もう無理だよぉ、師匠助けて~~エンエンエン!!
なーんて薄暗いの森の奥でギャン泣きしたところで、耳の遠い魔女に届くはずもない。
どこか神々しささえ思わせる白銀の巨狼は、もう一歩も動けないオレへと、確かに迫る。
「マさカ、ここマデやるとハ思わなかったゼ……だが、限界ガ来たようダナ……」
「…………」
返る言葉はない。森の静寂がさざめく。
バクリと、巨大な
「……サラバだ。眠レ! オレの過去の亡霊ヨ!!」
その別れの言葉を最後に、ミナさんはオレの胴体を、ぐしゃりと噛み切った。
というのは嘘だ。
確かにオレの胴体を喰らった狼の牙は、
「……ガ……ア……!?!?!?」
ふぅ~~~~……やれやれ。なんとか上手く行ったようだぜ。
オレは血の毛の失せた青い顔を微かに持ち上げ、ニヤリと、目を剥く狼の顔を覗く。
「魔力の……棘鎧」
これでオレの手札はフルオープン。こっから先には魔王との決戦も控えているというのに、既に世界には切り札も奥の手も大公開している有り様である。
「て、テメ。まだそんなチカラが──」
声を震わせて固まる『銀狼』。
その隙を見逃す理由はない。オレは思い切り拳を振り絞り。
「お……ぉぉぉらぁぁぁぁあッッ!!」
決着の一撃を、狼の脳天に叩き込んだ。
♦♦♦
綺麗に放物線を描いた巨狼が、ドシンと、大地に堕ちる。
今度こそ確実に脳を揺らしてやったがために、うつ伏せに斃れたミナさんは起き上がれない。
その隆起した筋肉を徐々に萎め、やがては、元の獣人な姿に戻った。
「…………ク、ソ……身体が、動かねェ……!!」
これで、一つ目の闘いは終わり。
オレは身体を引き摺るようにして立ち上がり、ミナさんの倒れた森の、『
はぁ~~~~……本当にクソだが、
絶望が
未だオレを殺さんと藻掻くミナさんの頭上に、ぬっと、巨大な影が覆い被さる。
「ンだ……雑魚魔物は引っ込んで──」
彼女は苛立たしそうに背後を振り返り。
「縺ォ繧:縺ョ?」
それは悪意だ。
顔は牛。左腕は魚。右足は馬。
ありとある生物を継接ぐことで、この世に繋ぎ止められたおぞましいナニカだ。
「…………な、ンだ。コイツは、」
絶句したまま固まるミナさん。
答えるなら、その異形はこれから高い確率であなたを殺す、あの実験棟での成れ果てだ。
なぜ、こんな人造物が都合よくこの場に現れたのか。それを考えている暇はない。
オレはなんとか温存した残り少ない魔力を体内に練り、逆境に、笑って見せる。
「気分は最悪だが……状況は、最悪じゃあない」
想定以上に傷は深いし、もういつぶっ倒れてもおかしくないぐらいに血は流した。
だが、オレとミナさんの二人がかりなら、このキメラ一体ぐらいは倒せるはずだ。
やれる。いつも通りだ。きちんと見た通りの未来だろう。
ルルアが生き残る道を繋ぐべく、オレは斧を携えて鼻息荒く森を闊歩する異形へと構える。
「……ぐッ!?」
前触れはなかった。唐突に鋭い痛みが右眼を貫いた。
右眼の景色が、ノイズを揺らぐ。オレは思わず手のひらで右眼を覆い、なんだ。
眉を顰めながら、もう一度正面を見据えて。
キメラがもう一体、森の奥から現れた。
……おい。おいおいおいおい。
なんだ。どうなっている。なんで『
ぞわりと背筋を伝う冷たい感触に呑まれる。
駄目だ。動揺している場合ではない。キメラの一体が、倒れた『銀狼』へとサビた斧を──。
「──ミナさんッ!!」
気が付くと、身体は飛び出していた。
オレは彼女を拾い、森を駆け抜けた。背後で鉄が圧し掛かる音がした。
オレのなけなしの魔力は底を尽きかけて、思わず大地に足を縺れる。息をぜぇはぁしながら必死にミナさんを抱き締めていると、ドンと、突き飛ばされた。
酷い。助けたのに。
転げながら見上げる。ミナさんは鈍色の瞳を凄んで、オレを見下ろす。
「なんで……オレを、助ける…………」
「アンタが、良い奴だからに……決まってんだろ……!」
怖い顔をしたミナさんは──舌打ちを零し、足元の半壊した大剣を拾い上げた。
「…………チッ。勘違いすんじゃァ……ねェぞ」
「……えぇ」
「テメェは、オレの獲物だ。横取りは……させねェ……!」
お互い身体は傷だらけ。
霞む目を誤魔化すように声を零しながら、背中合わせに臨戦態勢を取る。その先には、悪意に満ちた異形が二体、待ち構えている。
片や、未来の勇者御一行様。片や、邪悪の生み出した実験体。
そうだ。つまりはこれは。
せいぎとあくの、ものがたりなのだ。
あとがきにはなりますが、アンケートにご回答いただき、また、ご意見を寄せてくださり本当にありがとうございます_(._.)_
今後の作品作りに活かして参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
ちなみに次の投稿日は明日の九時だよ。
折り入ってご相談があります。 筆者は気を抜くとツマラナイ話を書くゴミカスです。なので読者様のお声を聴きたいと思い、大アンケート祭を開催しました。 「なんで筆者の物語読んでくれてんの?」みたいなところを率直にお聞きできればと思います。 もっとこうした方が良いよとかの助言や、項目にないご意見がございましたら、感想等でご教示いただけると幸いです。 よろしくお願いします。(*- -)(*_ _)ペコリ
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タイトルがポップでクリックしやすかった
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あらすじが短くてよき
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文体が軽くて読みやすい
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主人公不憫でよろしい
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一話ごとの文字数が少なくてよき
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タイトルなんとかしろ
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あらすじもっとまじめに書け
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文体ふざけ過ぎ
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もっと一話当たりの文字数多くてよい
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設定出し渋り過ぎ