未来視で幼馴染のことが分かるんだが、絶望しかない()   作:うずつるぎ

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 前回のあらすじ 『株式会社関係調整』代表 シアンくん


第27話

 

「お、おいシアンくん。急に固まってどうしたんだい?」

 

 突然だが済まない。オレは、以前から常々思っていたことが一つある。

 周囲の人間は──オレを、便利道具と勘違いしている節があるんじゃあないだろうか。

 

「……認識は間違っていなかったらしい」

 

 あのなぁ……オレはちょいと未来が見えるだけであって、なんでも屋さんではないんだぞ!

 

 茶髪のお下げなロリの無表情を前にして、オロオロと金髪ポニーテールを揺らす師匠へ口を尖らせるすると。終いには掠れた口笛を鳴らしながら、オレとロリ店主へ交互に視線を送る始末だ。

 

「私は彼女が苦手なんだよ。ほら、いつもキミの尻拭いをしてやっているだろう?」

「……オレは既にロリ店主に失礼を働いた上なんだぞ!」

「お前たち……ほんとう失礼」

 

 オレと師匠がお互いの身体を押して責任を擦りつけ合いっ子をしていると、とうとうロリ店主がブチ切れた。

 ずんずんと背中を押されて扉へと連行される。オレと師匠はいよいよ、お互い顔を突き合わせて唾を飛ばす。

 

「クソッ、ぜんぶ人間関係青い悪魔並みの師匠のせいじゃないか!!」

「私のせいとはなんだバカ弟子! 元はと言えばキミがリアの機嫌を損ねていたのが──」

「…………師匠?」

 

 オレ達を締め出す寸前だったロリが、ピクリと、無表情の中で眉を動かした。

 

「おい」

 

 ジィッと、こげ茶色の瞳が胸下から睨み上げる。

 

「お前……アイツが、師匠……?」

「確かにそこの年齢不詳魔女はオレの師匠だが……」

「だったらなおさらお前に売る武器はない」

 

 バタンと扉を閉められた。一見さんお断りで済んでいたところが、完全なる出禁になった決定的瞬間である。

 よく晴れた寒空の下には、木の葉の舞う空虚な風が流れた。

 取り残されたオレと師匠はそのまま黙々と聖域に帰って机に向かい合い、暖かいお茶を飲んだ。

 

 ふぅ。

 

「師匠。なんですかあの合法ロリは」

 

 一部の特殊性癖者が一致団結して連れ去りそうな見た目をしていたぞ。世の中には、おかしな性癖を持つ人間が一定数いると聞くからな。

 オレ? オレの性癖も年増男の娘系師匠でひん曲がり散らかしているのだが、その悲しき事実には一旦目を瞑っておいて欲しい。

 

「……腐れ縁だよ。勘違いしやすいけど、小人族と妖精族の混ざり血だからあぁいう見た目なだけさ」

 

 師匠はティーカップに揺れる紅茶を覗き込んだまま、細々と吐き出す。

 オレはそういう客観的情報ではなく、具体的に、師匠とどういう関係かを知りたいんだが……。

 

「まさか、樹齢二百年のあまり人間関係を拗らせに拗らせているんじゃあないだろうな」

「ウッ」

「ウッ、じゃないです。自覚があったならサッサと修正しておいてください」

 

 苦い薬でも舐めさせられたみたいに引き攣った顔である。

 師匠も、オレが出禁になった原因が自分にあることを自覚しているらしく、いつもの年齢煽りをしても、苛烈な一撃が返ることはなった。

 

 おっ、チャンスじゃんwww。

 

「だって……またリアの力を借りる日が来るとは思わなかったもん」

「うわキツ(笑)。その年で『もん』とかやめてくだ、」

 

 どうやら魔女は一定のラインを超えると自責の念を失うらしく、気が付くとオレは自宅の壁で磔の刑に課されていた。

 ティーカップをぐっと飲み干した師匠は、手をひらひらとさせて痙攣するオレの家を発つ。

 

「それじゃあバカ弟子、私の代わりにリアに剣を鍛え直してもらうように頼んでおいてよ」

 

 ポイと投げ渡されるドチャクソ上等な剣。

 師匠はやはりオレをなんでも屋さんと認識しているようで、要するに。

 

「うそだろ……?」

 

 オレに残されたのは絶望だった。

 

 

 ♦♦♦

 

 

 そういうわけで、師匠から燕の子安貝を求められるような無理難題を押し付けられ、翌日。

 オレは候補生としての一日を終えて早速絶望に立ち向かおうとしたところ、ととんと、元気よく肩を叩かれた。

 

「シーアンっ! ランク戦しよっ!!」

 

 クッソ元気な笑顔。

 講義が終わるや否や可愛い幼馴染に声を掛けてもらえるとか青春そのものだが、オレにとっては残酷すぎる言葉を掛けられたので、マイナス百点である。

 

「ランク戦、か……ルルア。非常に残念だが、またとなく心苦しいのだが」

「ボク、その枕詞何回も聞いたな」

 

 オレの伝家の宝刀はアッサリと受け止められてしまった。

 今日まで断り過ぎたあまりオレの宝刀はへし折られ、とうとう強制的に闘技場まで引き摺られる有様である。

 

「待て。オレはこれから合法ロリの元に通わねばならない」

 

 森の魔女に鬼畜なお使いを頼まれているんだ。知り合いの仲を取り持つとか、これもう魔王城に向かうよりも厳しいだろ。

 オレがケツを摩擦で燃やしながら零した一言に、ピタリと、青い悪魔は行進を止めた。ルルアは眉尻を下げてオレを見る。

 

「……また女の子囲むの?」

「お前の中でのオレの評価はどうなっているのか」

 

 ルルアにとってのオレ像が歪み切っているんだが。

 

 やれやれ、オレのことをハーレム大魔神か何かと勘違いしている幼馴染は困るぜ。

 オレはあくまでお前の未来のために色々と頑張った結果、変人が寄ってくる(カスねぇとか森の魔女)がいるだけで、つまりはお前のためだけに汗水を垂らしているというのに。

 

「まぁ……別にいいけど……ボク、一番じゃないとヤだよ??」

 

 下腹部に両手を添えてもじもじとオレを上目に覗く青い悪魔である。

 たぶん、コイツはコミュ障経験のせいで割と自己評価が低めなので、束縛し過ぎたらオレが他の女に逃げるとか思っているのだろう。

 

 あり得んのだがwww。

 

 それはそれとして、蒔いた種の責任は取らないといけないので、オレは本人から許しを得てVS絶望青い悪魔戦から解放される。

 菓子を購入してからリアさんの店へ赴き、扉を丁寧にノックする。

 

「なんだ」

 

 ジト目無表情ロリが出てきた。

 オレはすかさず額を床に擦り付けた。

 

「昨日は大変申し訳ございませんでした。こちらが貢ぎ物となっております」

 

 魔女のご機嫌を取るためだけに鍛え上げられた悲しき技術である。

 差し出された菓子包みを、リアさんは受け取った。そして菓子包みの中を覗き込み、ピクリと、眉を動かす。

 

「お前……なんでぐるぐるキャンディーを選んだ」

「小っちゃい女の子が大好きなお菓子と言えばこれかと」

「帰れ」

 

 追い出された。

 仕方がないのでもう一つ用意しておいた渋めなお菓子を携え、ドア前で人目も憚らないギャン泣きを決行する。

 面倒くさそうながらも店内に入れてくれたリアさんの前でもう一度誠心誠意を込めた謝罪をすると、なんとか、お菓子を受け取ってもらえた。

 

 そして、リアさんはパワフル鍛冶屋な腕力でオレの背中を押した。

 

「誰に似たのか、異常に失礼」

「ちょっ、押さないで、」

 

 待ってくれ! オレは魔力量ゴミカスなだけで悪いスライムじゃないんだ! ほら、この間の終年祭なんかじゃ露店を出してりして。

 

「…………思い出した。お前、妙な出店してたやつ」

 

 ピタリと、オレを玄関先へ押し込むリアさんが食いついた。

 

「木製ハンドスピナーです。変じゃないです」

「世の中では、得体の知れないものを変と呼ぶ」

 

 悲しき現実を突き付けられたところで、打って変わって手招きされる。

 

「許していただけるのか」

「モノづくりをする人間なら、これぐらいは知っておけ……というやつ」

 

 なんだか好感度の増減が初期値に戻ったらしい。これもどれも、全てはオレのコミュニケーション能力の高さ故である。

 と思ったのだが、やれ鉄を運べ、やれ炉の温度を調整しろ。季節は冬だというのに、工房の裏のクソ暑い環境で汗水を垂らす日々である。

 

「オレはあくまで師匠の弟子であって、リアさんの弟子ではないんだが」

「お前はわたしの小間使い。これまでの罪の清算と思え」

 

 どうやらオレはリアさんの奴隷として鍛冶屋見習いとなっただけらしい。

 はぁ。こんなに汗水垂らしちゃって、オレの未来視を活用して楽して一獲千金する商人ルートは一体どこへいってしまったというのか。

 

 そんな調子で、お手伝いな日々は流れていく。

 初めはどこかぎこちなくとも、共同作業を過ごせばお互い角が取れるというものだ。

 

 その日、リアさんは赤い鉄を目掛け、幼児体型で懸命にハンマーを振るいながら、ふと呟いた。

 

「お前……アイツが、師匠」

「そうですね」

「お前から見て……アイツは、どんな」

 

 どんなと言われても、年齢性別共に不詳の魔女でしかないのだが。

 

「……」

 

 まぁ……真面目に言うと、良くしてもらっていると思う。青い悪魔以上に、師として色々教えてもらっているんじゃないだろうか。

 それはたぶん、ルルアが才能の塊で勝手に成長していく反面、オレが雑魚過ぎて面倒見ないとすぐ置いて行かれることを心配されているからなのだろうが。

 

 そんな諸々を振り返ったうえで、オレはやはり結論に至る。

 

「オレやルルアを何か野望のために有名にしようとしている年齢不詳魔女ですね」

「アイツは本当に純粋な妖精族。だから年老いても見た目だけは良い」

 

 そんな裏技でオレの性癖を破壊していたとは、なんて卑怯な魔女なんだ……。

 リアさんは自分の身体より大きなハンマーを両手で振り落とす。リズミカルに鉄を打つ音が響く。

 

 そして、燃え盛る鉄を見つめたまま、ポツリと呟く。

 

「そうじゃなかったら、たぶん、こんなことにもならなかった」

 

 今なら……もう一歩ぐらい踏み込めるだろうか。

 

「どうしてリアさんは師匠の剣を鍛えないんですか」

「……アイツが、アイツであることをやめたから」

 

……なるほど。

 

 分からんな()

 

 いや、師匠が男の娘であるのは未来視での衝撃映像で既に確定してしまっているのだが、当然、オレは過去を見れない。

 なにゆえ師匠が♂とは思えん超絶美少女に変身することになったのかは、正直に言うと、あまりよくわかってはいないのだ。あくまでも英雄譚とか、そういうのを参考に一つの仮説を持っているだけである。

 

 だが話から察するに、リアさんは師匠がメス堕ちする前から友人だったご様子。

 そして、変わってしまった師匠を認めていない。それは、男だった頃の師匠が消えてしまったから。

 

……おい。これもしかしてクソほどめんどい男女の縺れとかじゃねぇだろうな……。

 

「お前にも見せてやる」

 

 ひくひくと頬を引き攣らせているオレの手を引いて、リアさんは店の外に出る。これじゃあどっちが子供で保護者なのか分からない。

 そのまま広場に繰り出せば、どうやら今日は、街の支配者の演説日であるらしい。群衆の前に立つ師匠は、普段のオレに見せる姿とはまるで真逆で、爽やかに、おしとやかに、それでいて力強く民衆の心を掴んでいる。

 

 それは誰が見ても眩しい姿だと言うのに、リアさんは建物の陰りに隠れて、小さく俯く。

 

「アイツは、あんな清く正しくない。本当はもっと、臆病で、弱くて。ティナもこんなの、望んでないのに」

 

「なのに……もう、ティナの名前を轟かせることしか、考えてない。ずっと、ずっと盲目」

 

 居たたまれない友人の姿に、ロリは塞ぎ込んでしまった。仕方がないので、キャンディー屋さんに向かう。ほーら、リアさん。キャンディーですよ~。

 

「あまり調子に乗るな」

 

 キッと睨まれた。でもここで暴力を振るってこないのが、師匠と違ってれっきとした大人であることを伺わせる。

 

「師匠はよくオレを人前でぶちのめすんだが、それは名誉棄損にならないのだろうか」

「ティナを馬鹿にされるのが嫌なだけ。守るべき名誉にも、優先順位がある」

 

 ここにきて、ティナ>絶対に越えられない壁>オレという構図が出来上がってしまった。

 つまり師匠は一番にオレを愛してくれることはなく、悲しすぎる現状に今すぐ枕を濡らしたい気分である。

 リアさんの手を引きながら、オレは言う。

 

「まぁ、リアさんの言わんとすることも分かりますが」

「師匠は師匠なりに頑張ってるんだと思いますよ。なんだかんだと言って、オレの面倒も見てくれていますし」

 

 そこに打算があろうとなかろうと、師匠は色々とオレに手を貸してくれている。

 だから、今の師匠だってそう悪いもんじゃないだろうと、オレは思う。

 

「それでも、今のアイツは冒涜。ティナにとっても、アイツにとっても」

 

「だから、わたしの意見は変わらない」

 

 鍛冶屋の主はロリであろうと、やはりクソ頑固だった。

 

 

 ♦♦♦

 

 

 そんなこんなで鍛冶屋のお手伝いさんとなって、一か月。

 未だ師匠の剣はなまくらのまま家に飾られている。近頃はドラ猫が隙を見て質に入れようとしてくるので、スプレーをして追い払うのに忙しい日々である。

 

「もう師匠の剣は土に埋めて見なかったことにしようか」

 

 思ってシャベルを購入した、その当日のこと。

 

「お前の武具ぐらいは、作ってやる」

 

……シャァァァァアアッッ!!!!

 

「喜び過ぎ」

 

 こうなったら師匠のことなんてどうでもいいもんね~! 自分の交友関係ぐらい自分でなんとかしろッ! 師弟揃ってコミュ障どもめッ!!

 明日はお店もお休みとのことで、オレはウキウキしながら師匠の剣をギルド長室へ返却。煽りの添え手紙もしっかりと置いて、ご機嫌さんでベッドに包まった。

 

「うーん。デジャブ」

 

 なんか、こうやって気持ちよく寝入るときに限って、嫌なことが起きた気がするんだが……。

 

 まっ、気のせいか。それじゃあおやすみ、平和な世界。

 

 オレはベッドで寝静まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして朝鶏の鳴く頃に、目を覚ます。

 

 それはまだ薄暗い早朝のこと。

 まずは日課である鉱石の在庫確認を行い、ポイと、クズ石を投げ出す。

 

「……これはだめ」

 

 アイツの望んだ武具は特殊。こんな程度の鉱石を使っていたら、わたしの名折れ。

 だから、幼女は朝っぱらから鉱石を買い集めに外へ出る。

 

 明朝の小道は人通りもなく、木々に陰って薄暗い。

 その陰に紛れて──()()()()()

 

 背後から伸びる()()()()に気が付いた幼女は、振り返り。

 

「……!」

 

 それで終わり。

 ソレはがばりと幼女を呑み込み、音も残さずに陰りの中へと消え去る。

 

 小道に揺蕩うのは、いつも通りの明朝だけ。

 

 やがて陽が登り、鳥のさえずりが、静かな朝を響く。

 

 




 ということで次回は汗水タイムです。

 次の投稿日は30日の日曜日。
 どうぞよろしくお願いします。

次回作について相談です。もしも次があるなら、どんなタイトルのお話が見たいですか?以下にタイトル(暫定)を置いておくので、良かったら投票してみてください。それとは別に、冬休みスペシャルで短編を一つ投稿しようと思います。そちらについては、またおしらせできればいいなと思っております。以上、よろしくです。

  • 廃品回収業者をしていた、勇者を回収した
  • 他人のイヤホン音漏れさせるだけの能力
  • 勇者さん、悪の組織を立ち上げる(笑)
  • 男女比1:9の世界における男の娘の希少性
  • タイムマシン作ったったwww
  • 主人公「TSは許さん。男の娘しか勝たん」
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  • キミと勇者の物語
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