未来視で幼馴染のことが分かるんだが、絶望しかない()   作:うずつるぎ

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第39話

 

 オレはこれまで、人のことを驚かせてはケラケラと笑うナチュラル煽りモンスターのことが理解できないなどと散々言ってきたが、なるほど、他人を驚かせるのは案外楽しいことらしい。

 

 直剣を振り上げたライトが間抜けなイケメン面を披露してくれたその瞬間を前にして、オレはそのことを確信した。

 

「……な、に……?」

 

 聖女を殺そうとしたら、そこに居たのは別人だった。

 

 そんなびっくり箱の展開に、ライトは唖然と固まっている。

 やっぱこれ楽しいわ。オレも今度から「ばぁっ!!」しよ。

 思わずニヤリと笑ったところで、影に隠れていた聖女様が、ゆっくりと立ち上がる。

 

「……ライト」

 

 聖女様は月光に陰った憂いの表情で、ライトを見つめた。

 

 と、ここに来て自分にとって不都合な現実に気が付いたらしいライトは、爽やかな笑顔を保ったまま、微かに首を傾げる。

 

「これは……一体、どういうことかな?」

「おいおい。聖女様の暗殺を、このオレが見逃すと思うか?」

 

 幼馴染と天秤にかけた結果、聖女様を見捨てる気満々だった人間が、よくもまぁいけしゃあしゃあと宣ったものである()

 

 それはさておき、既にライトの計画は聖女様へ伝達済み。

 知っての通り、オレは権力者へ常媚びへつらう未来視持ち主人公だぜ。聖女様をライトから救った暁には、お金たくさん貰っちゃうもんね。

 

 なお、その金の大半はカスねぇに溶かされるものとする。

 

「……なるほど。君のせいというわけか」

 

 昏睡毒の塗られた短剣を拳でぬんっ! と叩き割ったオレを見て、ライトは合点がいったように頷く。

 そして──笑顔の中で眉間へ皺を寄せ、直剣を構える。

 

「でも、聖女は今夜に消える。それが、()()()()()()

 

 月明かりを反射する鎧。美しく鍛え上げられた直剣。これやっぱり勇者だろ。

 

「邪魔するなら、君にも容赦はしない──」

 

 ライトは剣を刺突に構え──オレへと一直線に跳び掛かった。

 

 まったく、鼻っからの全力とかヤになっちゃうぜ。相手はルルアに迫る実力者だぞ。当然、未来視は2.5秒で挑まざるを得ない。

 

 はぁ~~~~……強者と事を交えるだけで右目の視力が落ちていく現実には涙を禁じ得ない。そんな副作用があるなら、せめて脳にネジでも打ち込まれているようなこの痛みはなくして欲しいものだ。

 クソクソ言いながら花吹雪のごとき美しき太刀筋を見切り、腹部へねじ込む拳。そのはずが、ライトは直前で腕をクロスに構えることでオレの瞬打を完封する。

 

 軽く吹っ飛ぶに留まったライトは、防御に構えた腕の向こうで、鋭くオレを見据える。

 

「授業では相当手を抜いていたのかな? 流石は、僧侶ティナに鍛えられた候補生だ」

「……ハッ。そりゃどうも」

 

 ちなみに、今の攻防でオレの身体には飾り包丁を入れられているよ。魔力強化と魔力の棘鎧を併用しているというのに、一体どうなっているのか。

 

 ちなみに憲兵の助けは来ない。聖女様のお部屋は既に、風魔法の防音密室と化している。

 

「……クソが」

 

 世界の理不尽さここに極まれりと言ったところだ。

 ブツクサ言いながら再び構え、黄金の髪をたなびかせて迫るライトを迎え撃つ。

 

 さて、2.5秒の未来視を使えば、コイツの動きは捉えられないほどではない。

 そしてここは聖都。大陸でもっとも聖気の溢れる場所。今宵は、乱戦者も現れないはずだ。

 

 となれば、後はオレのクソ雑魚魔力量がどれだけ持つかの勝負であり。

 

「決着を急がせてもらうぞ──」

 

 オレはさっそく、床を蹴り上げてライトへ接近。

 

 するつもりが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「……?」

 

 ひやりと、いつの間にか一室を漂う冷気。

 なんだ?

 オレは思わず足元へ視線を落とし──()()()()()()()()()()()()()()光景を目の当たりにする。

 

「──ッ!?!?」

 

 ライトに仕掛けられたのか! このままではまずい!!

 思ってバッと顔を上げると、ライトはオレを攻撃することもないまま、爽やかに笑っている。

 その金色の瞳は、オレの後ろへ控えた聖女様を映して。

 

「いやぁ、助かるよ、聖女様」

 

……おい。うそだよな……。

 オレはぎこちなく、首を背後へ動かす。

 

「……すみません。シアン」

 

 聖女様はその右手に、黒本を抱えていた。

 

 

 ♦♦♦

 

 

 助けるはずの聖女様が、オレの足を氷漬けにしていた。

 

 オレの幼馴染を次代の勇者に選ぶメルリア様は人選に難があるのではないだろうかと思っていたが、今宵、それは確信に変わったのである。

 オレはギャン泣きを決行して親鳥或いは幼馴染に助けを求めたが、ここは風の密室。師匠は耳が遠くて聞こえないだろうし、幼馴染は今頃ぐっすりすやぁ……なのだった。

 

「素晴らしいタイミングだったよ、流石は聖女様だ」

 

 闘いの最中に突然泣き喚いたオレを見て、聖女様はドン引き。ライトも満足そうに頷いている。

 うーん。氷が硬い。まだ時間稼ぎが必要だな。間抜けに口を大開にしておく。

 

「ま、まさか──」

「そうさ。僕らはあの日、誓ったんだ。世界から身分の象徴を消し去ると、ね」

 

 はい。ライトと聖女様がグル確定。 

 お互いの視線を交錯し、固く頷く二人は絆が固くてよろしい。

 

「誓ったとは……随分と壮大な物語を描きたいんだな」

「そんなことはないよ。僕らはただの寒村出身さ。それだけで……良かったのに」

 

 剣を握った腕を震わせるライト。

 そろそろおかわりいただけていることだとは思うが──()()()()()()()()()()()

 

 それは、存在そのものが神的なものであるから。

 

 だから、聖女に、勇者に選ばれた者の過去は、徹底的に伏せられる。

 

 もちろん、宣託以前から有名な者であれば人の噂を止めることはできず、最終的には吟遊詩人にその経歴を語られたりもする。

 が、寒村出身となれば、『口封じ』も簡単なことだっただろう。

 

 そして、宣託された者は象徴としての振る舞いを強要される。

 勇者はどいつもコイツも頭おかしいのである程度個性が許容されがちではあるが、聖女様はそうもいかない。

 

「なにが聖女だ。世界の象徴だ……ふざけるなッ! なぜ彼女は彼女であることを奪われないといけないッ!! 好きだったものを、性格を、言葉を……ッ!!」

 

「だから……僕らは、許さない。聖女という象徴を。作り上げた女神教を。それを肯定する世界もッ!!」

 

 うーん。これは腐った世界に革命の怒号を鳴らす主人公。

 とは言え、殺人をみすみす許容はできない。

 

「今宵に聖女は永遠に居なくなる。聖女が不在なら──世界は滅びに一歩近づく。そうすれば、邪悪を前に人は初めて自由を取り戻せるさ」

「……思想犯どもが」

 

 ライトは身動きの取れないオレへと、止めの一撃を振り上げる。

 

 けれど、オレは躱さない。

 躱せないのではない。躱さないのだ。だって──。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ね。

 

 

「…………なにッ!?!?」

 

 下半身を氷の氷像にされたライトは、本日二度目の想定外に、爽やかな笑顔を硬直させた。

 

「これは……どういうつもりかな?」

「埋めるなら内堀からって言うだろ?」

 

 ニヤリと笑いながら、オレは氷魔法から解放される。

 残念だったな、()()()()()()()()()()()()()()

 

 オレは事前に、聖女様からライトと繋がっていることを聞いていた。そしてそのうえで、二重スパイを頼んだのだ。

 

 天才過ぎるオレの頭脳を褒めて欲しい。

 聖女様は俯いたまま、ギュッと、修道服を握り締める。

 

「わたくしは……確かに、聖女であるのが苦しかった。抜け出したかった」

「そうだろ? だから僕は、」

 

「でも」

 

 強く、真っすぐに割り入る言葉。

 聖女様は月光に照らされて、意志の籠った薄い水色の瞳に、オレを覗く。

 

「わたくし以上に、運命の鎖で縛りつけられた彼が……まだ、藻掻いているんです……!!」

 

 ここに来て、ライトはその顔から爽やかスマイルを消し去った。

 

「なにを……なにを言っている! 救いもないのに藻掻き続けるのが、生きていくのが苦しんだろう!!」

「だけど……わたくしは聖女だから、見えるんです……! 彼は必死に身を削って、運命の鎖の隙間を縫って、だから……ッ!!」

 

 聖女様は深く頭を下げて──ライトに、決別の言葉を告げた。

 

「だから……ごめんなさい、ライト。わたくしは……まだ、死ねない」

 

 一室を満ちる静寂。

 やがて、ゆっくりとオレを見据えたライトは──はじめて、激情にその表情を歪めていた。

 

「……酷いことを吹き込んでくれたみたいだね」

 

 そんなつもりはなかったんだが。

 しかし聖女様は人の運命が見える分、オレとかいうクソ苦労人人生に同情してしまったらしい。

 生きることに絶望していた聖女様にすら同情されるオレのクソ汗水人生ってホントなんなんだろうね。ゴミカス過ぎんか。

 

 ライトは感情を抑えるように、一度、深く息を吐き出す。

 

「まぁ……いいや、僕一人でも事足りることだ」

 

 けれどその怒りが収まることはなく──瞬間、氷魔法を熱で溶かしてオレへと差し迫った。

 

「──ッ!」

 

 怒りの一閃が、オレの首筋を狙う。

 オレは魔力の棘鎧を纏った腕部でなんとか受け止め、そのまま右拳を突き出し。リーチが足りない。聖女様がオレの身体を風魔法で押し出すことで、アシストしてくれる。

 

「シアン! 頼みますよ!!」

「任せてください!!」

「く……!」

 

 単純に、二対一。数の暴力は偉大だ。徐々にライトの身体に傷が付く。その頬に魔力の刃が走って血を散らす。

 お互いの一撃がぶつかり、競り合う度に、身体は火照って闘いの熱は増していく。

 

「君は……このままでいいのか! 世界が! 象徴に縛り付けるこの世の中が!!」

 

 氷の礫が、背後からライトを襲う。

 背中から諸に喰らったというのに怯むことなく、勢いを利用して膝蹴り。胸骨がイカれたような衝撃で泣きそうだ。

 オレも同じく反動を利用して、宙を返りながら蹴り技。しかしライトが躱すところは見えているので、追撃の魔力の弾丸を撃ち放つ。

 

「生まれた時からなぁ……誰だって手札が決められてんだよ! だからオレ達は山札を引いて藻掻き続けるんだろ!!」

「だったら、その呪縛に抗えず、徐々に精神を擦り減らす人はどうすれば良いって言うんだ! 見て見ぬ振りをしろと言うのか!!」

 

 くっ……! これが想いの力というやつなのか!? 圧倒的光属性過ぎるぞ……!!

 

 なんかもう、月明かりを浴びた直剣は聖剣なのかってぐらい輝いているし、魔王候補なオレの肉体は光に浄化されてしまいそうである。

 

「僕はこれ以上、夜な夜な一人で泣くマナの声なんて聞きたくはないッッ!!!! 自分を傷つけるマナを見たくはないッッ!!!!」

 

 よし……熱くなってきてようやく化けの皮が剥がれてきたな。

 

 それは、ライトの本質的な根幹とも言う。

 

「だから──これで、象徴の時代を終わらせるッ!! 神話にすらさせてやらないッ!!」

 

 直剣に炎を纏わせ、床を焼き切るような巨大な一刀両断。

 もう外にバレても構わないと言わんばかりの勢いである。オレはギリギリで横に床を蹴って溶解エンドを回避し、足払い。

 宙に浮いたライトへ右拳を振り絞る。

 

「だがなぁ……好きな人が死んで、ンな終わりで良いのかテメェはッッ!!」

 

 ルルアが死ぬとかオレはぜぇぇぇっっったいに受け入れないぞ!!

 

 気合を込めて打ち放った右拳。しかしライトは風魔法を使って宙で身体を動かし、回避。クソッ、これだから才能のある連中は……!

 空振りを見越してすぐさま肘打ちへ切り替え、鎧ごと凹ませる勢いで腹部に重い衝撃を打ち込む。ライトが床とぶつかって跳ね飛んだ。追撃の手は緩めない。

 

「聖女様は死んで幸せか? テメェはそれで満足なのか?」

「理想論を……偉そうに振りかざすなァ!!」

 

 威嚇するような空振りの横一閃。いや、違う! コイツ、剣に風魔法を込めて風圧を──。

 

「チッ!」

 

 気が付いた時には吹き飛ばされたオレ。額から血を流したライトはまだやる気だ。その眼にオレだけを映して、疾駆する。

 

 だが、熱くなったライトの心は、準備が出来たはずだ。

 

 オレは今宵限定、超必殺技を発動する。

 聖女様の首根っこを掴み──直剣を突進姿勢に構えて迫るライトへ、ニヤリと突き出す。

 

「だったら──理想か諦念か、テメェの心で選んでみろよ、ライトッ!」

「……し、しししシアン!?!?」

 

 人質大作戦である。

 

 う~ん。これは魔王。

 まさかの事態に、聖女様は素での様子で目を丸め。

 

 

 ライトはハッと、気が付いた。

 

 

「──マナッ!!」

 

 聖女様の心臓を抉る寸前になって、急激な軌道修正。聖女様のお身体に薄皮一枚の怪我をも与えなかったのはさすがと言うべきか。直剣が壁に突き刺さり、重い衝撃波を部屋中に震撼させる。

 

 だが、それは決定的な隙だ。

 

 オレは見逃すはずもなく──魔力の刃で、ライトの脹脛を斬り伏せた。

 

「く……ぉお……!!」

 

 鮮血を飛ばし、床に倒れ込むライト。回復魔法は使わせない。オレは蹲ったライトの首筋に魔力の刃を添え当て、冷徹に見下す。

 

「……勝負、あったな」

 

 風魔法の防音保護が、一室を剥がれ落ちる。

 だと言うのに、室内には音を奪ったような静寂を満ちた。

 

 蹲ったまま動かないライト。その首元に刃を突き付けたオレ。

 その死刑執行のような一幕に、聖女様が、オレの腕を激しく引っ張る。

 

「ら、ライト……! シアン、待ってください!! それだけは──」

 

 ええい、うるさいな聖女様! アンタの出番はまだなんだよ!!

 痛みを食いしばるように唇を噛んだライトは、青い顔に息を切らしながら、ポツポツと呟く。

 

「…………突き出せよ。僕の負けさ。今すぐ、衛兵にでも突き出すと良い」

 

 取り乱した聖女様の様子を前に、ほんの少しだけ、嬉しそうに口元を緩めたライト。

 彼はそれで満足したとばかりに、何もかもを投げ出す形で、瞼を閉ざして。

 

「なに言ってんだ」

 

 その身体が、山吹色の光にぺかーっと包まれる。

 

「……ッ!?」

 

 ライトはバッと、顔を持ち上げた。

 その金色の瞳には、回復魔石を砕いたオレが映る。

 

「君は……なに、を……」

「お前は今さっき、選んだろ。聖女様に生きて欲しいって」

 

 だって、そうでもなければ、殺す予定の聖女様への一撃を無理やり逸らしたりしないのだから。

 オレははぁとため息を吐きながら、困惑に目を見開くライトへ言ってやる。

 

「お前は世界とか象徴とか言ってるけどさ、結局のところ、聖女様が好きで好きでたまらないだけだろ?」

 

 要するにライトは、ルルアを救いたいオレと同じなのだ。

 

 聖女という象徴に押し込まれて苦しむ幼馴染を、なんとか救ってやりたい。それがコイツにとっての原風景で、世界とか身分とか、そんなものは後付け。

 

 だから、未来の見えるオレが、暗闇に道を照らしてやろうと思う。

 

「これからお前が誰にも負けないぐらいに強くなって、一人で聖女様を警護できるようになりゃいい。そしたら、聖女様とお前と二人きりで居られて、自分らしく在れる時間もできるだろ」

 

 それは、聖女様を絶対警護する最強の騎士様だ。

 

 そうだな……もしもそんな役職があるとするのなら、その名前は──。

 

「──聖騎士、なんてどうだ?」

 

 そう言ってオレは、倒れたライトに手を差し伸べる。

 ライトはオレを見上げたまま、声を震わせる。

 

「僕を……憲兵に突き出さないのか……?」

「当たり前だろ」

 

 今宵この場で起こったことは、オレ達、三人しか知らない。

 それに、オレはオレを受け入れてくれる奴のことが好きだ。その性根はもう変えられないのだ。

 

 だから、救いを求めるように伸ばされた手をしっかりと掴み返して、笑ってやる。

 

「お前は──良い奴だからな」

「ははっ……本当に、完敗だよ」

 

 月光の下、爽やかな笑みが、乾いた声を引き攣った。

 

 

 ♦♦♦

 

 

 クソほど汗水を垂らして聖女様暗殺事件を解決すると、オレに与えられた報酬は甘い甘ーい空間だった。

 

「……ライト!」

「……あぁ、悪かったね、マナ」

 

 目尻を涙ぐんで幼馴染に抱き着く聖女様と、それを優しく受け止めるイケメン。

 

「オレに見せつけないで欲しいんだが」

 

 そのイチャイチャした空間には居てもたっても居られずにオレは大聖堂から逃げ出してすぐさま青い悪魔にハグを求めたのだが、まだまともに手も繋げないルルアにとっては階段をすっ飛ばし過ぎたらしく、普通に風魔法で寮まで送還された。

 玄関扉に頭をぶつけてふらふらしていたら、ポケットからドラ猫にお小遣いを盗まれるオマケ付きである。

 

「未来じゃ自分からエッチエチ攻撃を仕掛けてくる野獣の癖に……」

 

 やれやれな幼馴染だぜ。

 そんなわけで、オレは玄関前で翌朝を迎えて留学生の日常へと舞い戻り、早数週間が経過していた。

 

「やぁ、シアンくん」

「お、ライト。調子良さそうだな」

「おかげさまでね」

 

 聖女様が生きる理由を見出し、なお且つ聖騎士という希望を見出したライトは、清涼なる爽やかさを取り戻していた。

 これぞ勇者。まさに勇者。ルルアに代わって当代勇者として頑張ってもらいたいところである。

 

 因みに、荒れ果てた聖女様のお部屋については、メルリア様のお告げ(大嘘)でなぞの侵入者を撃破したという形でご納得いただいたよ。

 もう全部お告げで解決してくんないかな……?

 

「君に見てもらいたいものがあるんだ。付いてきてくれるかな?」

 

 と、放課後にライトに連れられて向かったのは、いつもの地下酒場。

 かつては世界滅ぼそうなどという危険な思想を跋扈していた邪教は、現在、人心掌握が得意なライトの手によって安心安全な組織へと作り替えられていた。

 

「「シアン様! シアン様!! シアン様!!!」」

「駄目じゃん」

 

 魔王候補のファンクラブとか、もっとヤバい組織に進化しちまってるだろ……。

 

「どうだい、シアンくん」

「頼む。早急になんとかしてくれ」

「僕は気に入っているんだけどね」

 

 爽やかな笑顔で言うことじゃないだろ。

 組織の再編に取り掛かったライトと別れ、寮に戻る。

 聖都へやってきてもう2か月。留学もそろそろ折り返しで、残る絶望未来も、あと一つだ。

 

「ルルアが……魔王城でくたばる以外の未来、か」

 

 それを解決したなら、世界はハッピーエンドでお終いお終い。今回はこのクソ未来視も良い感じに働いてくれたし、あとはその一点にだけ集中すれば良い。

 

「よし、しばらくは聖都のバカンスを謳歌するぞ」

 

 と言うことでオレは、残りの留学期間を心から楽しみ。

 

 

──要塞都市ネオ・フロンティアが、魔物の軍勢に滅ぼされた。

 

 

 一か月後、その知らせを聞いた。

 

 

 




曇らせ「みんな遅れてごめん! クリスマスプレゼントの準備ができたぞ!!」

 ということで今章はここまで。
 次の更新は明日の28日、午前9時頃です。

 よろしくお願いします。
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