未来視で幼馴染のことが分かるんだが、絶望しかない() 作:うずつるぎ
第43話
拝啓世界様、幼馴染に絶望未来早見表を見られました。
「どうすんだこれ」
傾いた部屋の中、頭を抱えて机に突っ伏す。
今から直接確認しに行くか? 駄目だ。そんなことしたら、「あれなに?」って聞かれるだろ。
そうなったらいよいよ右眼のことを話さないといけないし……おい、どうすんだこれ。
という思考のループをフラフープしているうちに、すっかり月は沈んで、オレは朝日を拝んでしまった。
「ホントにどうすればいいんだ……」
カスねぇそっくりの目元ヤサグレなオレが爆誕し、げっそりと息を吐く。
ルルアが絶望未来表を見ていないという奇跡はない。無理やりこじ開けられて歪んだ箱の悲しき姿からお察しである。
そういう理不尽パワープレイを決行するのは、間違いなく、青い悪魔なのだ。
「あのアホが核心に迫ってきた理由がようやく分かったぞ」
事態は深刻だ。あの未来早見表に書かれていることを思い出せばよく分かることだと思う。
レッシュ:ルルアの背中を刺す。
カスねぇ:薬物中毒廃人化。
聖女様:355年に訃報。
極めつけは。
ルルア:魔王城で死ぬ。
「駄目だ。不信感しか与えない内容だ」
未来視を使ったわけでもないのに頭が痛くて大変である。
オレは感情ぐっちゃぐちゃで翌朝を迎え、出発。建物の残骸ばかりが眠る嫌に静かな街中を歩く。
もはや小路の概念をぶっ壊れた更地には、傾いた武器屋が一件、今日も煙突から煙を吐き出していた。
「やっと来た」
風通しの良い店内へ立ち入ると、ひょこひょこと、茶髪お下げなリアさんが現れる。
こーんな大災害があったと言うのに、まさかこのロリは、かくれんぼでもしていたのだろうか。
「お前、遅すぎ。危うく街と共に滅ぶところだった」
だったら他の街人と同じように逃げ出せば良いものを。
けれどリアさんがこの街に残ったのは。きっと、師匠が心配だったからなのだと思う。
ニヤニヤ笑うオレへ浴びせられる、氷点下のジト目。
リアさんは工房の奥へと引っ込み、うんしょ、うんしょと『例のモノ』を運んでくる。
「注文以上に仕上げた。受け取れ」
「ありがとうございます」
こんな状況だ。半ば諦めていたが、
オレは受け取ったモノを身に纏い、おまけとばかりに受け取ったローブをその上から羽織る。師匠が式典用に付ける黒衣のマントと同じ意匠だ。
ようやく師弟らしくなってきたじゃないか。
「無駄な仕組みにしか見えない。それに何の意味がある」
「それは使ってからのお楽しみというやつですよ」
これで、手札が一つ補充できた。
感謝の言葉を残して発とうとすると──ぐいと、腕を鍛冶屋ドチャクソパワーで引っ張られる。
「なんですか」
重心を後ろに倒して振り返るオレ。
リアさんは真摯にオレを見上げて、言った。
「……頼む。アイツを、助けて欲しい」
「任せてください」
当然だろ。
オレはばさりとマントを広げて翻り、ニヤリと、不敵に笑みを作った。
これで、
待ち合わせ場所は、崩れた西門前。
街はこの有様だ。戦傷者も多い。さてはて何人集まるやら。
思っていると──おや、先着が居るな。
近づくと、その人影はブンブンと手を振った。
「シアン~っ!」
まるでピクニックにでも向かうかのような、軽装の青い悪魔である。
「鎧を着ろ、鎧を」
いや、申し訳程度に胸当ては身に着けているし、聖剣の代わりに数打ちの剣を腰に差しているのだが……。
そんなのじゃ駄目だ。クッソ分厚い鎧で身を固めてくれ。お前は魔王に胸を貫かれて死ぬんだぞ。
「ヤダッ!!動き辛いもん!!」
「ガキが……」
鎧でぐるぐる巻きにして身動き取れなくしてやる……。
オレはルルアの華奢な肩を掴んで取っ組み合いをしていると──更に現れる二つの影。
「やぁ、少年」
「来たのは俺達だけか」
普段と変わらない格好のカスねぇにレッシュ。
さすがに、魔物の大軍を相手にしたうえで、魔王討伐に向かえるような余力のある戦士はいなかったか。
本当は数の暴力でシリウスを包囲し圧勝したいところだが、それは諦めることにしよう。
「でもちょうど四人だね! お誂え向きってやつじゃん!!」
勇者の聖力を分け与えられるのは三人まで。そして聖力は、魔王の放つ魔瘴を和らげることのできる唯一の存在。だから、勇者一行は四人に収まりがちである。
もっとも、ルルアはまだ完全な勇者でないので、どこまで聖力を使いこなせるかは分からないが。
「ルルア様」
「あ、オボロさん!」
どこからともなく聞こえた冷静な声。
振り返ると、秘書さんがそこに居る。
その佇まいからしてきっとお強いだろうから是非とも付いてきてほしいのだが、彼女は師匠の介護役だ。
代わりとばかりに、秘書さんはルルアへ直剣を一本差し出す。
「こちらはギルド長の愛剣にございます。どうか、お使いになられてください」
「いいの……?」
うんうん。
お下がりなんて貰っちゃって、ルルアも師弟らしくなってきたじゃないか。
「ギルド長同様、ルルア様にとっては、聖剣よりも扱いやすいかと」
なぜだかその言葉にはビクッと肩を震わせて、オレを覗き見る幼馴染の挙動は相変わらず理解できない。
時間になっても他に誰かが現れる気配もないので、そろそろ出発を。
と思ったところに──ザッと、踏み入る人影。
「お揃いってやつかァ?」
「ミナさん!!」
オレはそのボサボサ銀色短髪を見て、誰よりも喜んだね。
「来るのが遅いじゃないですか~!」
まぁ、既に分かっていたことだがな! なにせオレの知る勇者一行はルルア、レッシュ、カスねぇ、そしてミナさんの四人なのだから。
なので彼女が来てくれることは確定事項であり、はぁ、英雄は遅れてくると言うが、ヒヤヒヤさせないでほしいもんだぜ。
「……オレ?」
オレはその辺で応援している魔力量ゴミカスのスライムだからペット枠だよ?
とにもかくにも、これで勇者一行は勢揃い。今の四人なら、シリウスをボコした上で改心させることも現実的に──。
「言っておくが……オレはァ、魔山の麓までしか行かねェぜ」
「……ん?」
それだと勇者一行が一人欠けているんだが……。
「テメェが居るだろ」
「うそですよね……」
オレが汗水を垂らしまくる未来が、いま、大確定した。
♦♦♦
魔力量ゴミカスが勇者一行だなんてことがあってはならない。
オレは瓦礫の上でのた打ち回り散々駄々をこねたのだが、結局、青い悪魔に引き摺られてギャン泣きを魔山に響かせること、しばらく。
遥か雲を突き破って聳える真っ白な山の頂上を、オレ達は山の中腹から遠く眺めた。
「やっぱり……魔山って大きいね」
この山を隔てて気候が大きく変動するのだから、当然である。
青空を破るほどに雄大な魔山は、普通に山越えをすると三日は確実。
つまりは、魔山を越えた時には、師匠が死ぬまであと四日しか残されていないことになる。
そこから、西の果てへと走り抜けたとして。
「……」
果たして、期日に間に合うかどうか。
だから、歴代の勇者たちは様々な工夫を凝らした。
飛竜に乗って山をひとっ飛びしたり、荒れ狂う魔の海域を渡って魔王城へカチ込んだり、西の果てまで続くローリエ大森林の迷い道を、精霊に案内してもらったり。
けれど、今のオレ達に特別な移動手段はない。
なればこそ、愚直に上り詰めるしかない。
ということでオレが一歩山肌へ踏み出そうとした矢先、ふと、ミナさんが声を響かせた。
「テメェら……ちょっと待ってろ」
振り返ると、既に獣化して大きな狼さんがそこにいる。
「……よシ」
ミナさんは真っ白な四つ足で大地を支え、遥か青空へと大きな遠吠えを響かせた。
とすると、魔狼の群れが、山林のあちこちからそぞろ歩いてくる。
「な、なに……?」
オレ達を取り囲む狼たちを見て、慌てて剣を抜くルルア。
しかし、闘いになる心配はない。この狼たちは、ミナさんの言うことを従順に……そうか!
「コイツらに乗っテいケ。山ヲ超えル程度ナら、魔瘴二も影響されねェはずダ」
「ミナさん!!」
まこと素晴らしい提案である。
オレは巨大な銀狼なミナさんを見上げ……見上げ……。
もふもふだ。
「わっ! この子かわいいっ!!」
ルルアはキャッキャと楽しそうに、眷属な狼の耳をわしゃわしゃしている。狼さんも気持ちよさそうに「くぅ~ん」って鳴いて……オレも、もふもふしたい。ミナさんのふわふわ……もふもふ……。
「! て、テメェ! ドこ触ってイやがるッ!!」
オレはミナさんの胴体に両腕を回して柔らかいお腹をもふもふしたはずが、気が付くと尻尾で大地に叩きつけられた。
ぴくぴくと、大地に痙攣する両生類の爆誕である。
元の獣人姿に戻ったミナさんは自分の胸を抱きしめながら、耳の先まで逆立た赤い顔でキッとオレを睨んだ。
「このエロガキが……!」
純粋なもふり欲求だったんだが。
これから魔王討伐に出かけるというのにオレは既に瀕死の有様で、前途多難とはまさにこのことである。
「こ、ここまでお膳立てしてくれるなら……いっそのことミナさんも、同行を」
その未練がましい一言に、ミナさんはぐっと、その八重歯で唇を食い縛った。
「オレは……もう二度と、故郷を失いたくねェ……」
ミナさんにとっての第二の故郷は、要塞都市ネオ・フロンティアである。
そんな場所が、今や風が吹けば倒れるような状態。彼女にとっては決して、離れたくない場所だろう。
しかも、元はと言えば故郷を破壊したオレのせいだ。
「悪りィが……オレは、街を守らせてもらうぜ」
「いえ。ありがとうございます」
これ以上、彼女に縋ることはできないな。狼さんの灰色な背中に跨ることで、いざ出発だ。
魔狼の足取りは力強い。
彼らは水面を駆け抜けるように、山脈の深い雪に呑まれることなく足跡だけを残す。
歩けば三日は掛かるところを、狼に乗れば一日。しかも、狼さんのあったかもふもふを抱きしめられるオマケ付き。
「氷鳥の群れが来るよ!!」
「任せて!!」
雪山に住む魔物が襲い掛かってこようと、オレ以外の魔法使いたい放題な連中にとっては良い的にしかならない。
欠伸でも出そうな道中を過ごしているうちに陽は沈み、今晩は、雪山の洞穴で野営となった。
「シアン。そろそろ飯の時間だ。ルルアの奴を呼んで来い」
「オレは焚火と友達になったんだが……」
「少しは働け」
まるで無職みたいな言い草だが、お前らがオレから仕事を取り上げるのが悪いんだぞ。
オレはさすさすと身体を摩りつつ、洞穴の外に立つ青い悪魔を呼びに向かう。白銀の世界が広がる周辺。夕焼けの残滓が白の大地に滲んで、まるで黄昏の海のようでもある。
「おーい、ルルアー! お前の大好きな飯の時間だぞー!!」
粉雪が揺れる雪原に、オレの声だけが木霊した。
「……ふむ」
近くに青い悪魔の姿は見えない。そこにあるものと言えば、大きな雪だるまぐらい。
なるほど。おそらくはこの裏側に、アイツが隠れているものと思われる。
オレはそっと、背後を確認し、
いなかった。
「……舐めるなよ!」
オレが今日までどれだけコイツに騙されてきたと思っている! オレの積み上げてきたデータに死角はないんだ!!
次点は雪だるまの中身。90%で的中する。
どうせ、中から雪を弾け飛ばしてオレを驚かそうとか考えているのだろう。
「所詮はアホな幼馴染。オレの頭脳を越えることなどできない」
オレは手先が冷たさで真っ赤になることも厭わず、必死こいて雪だるまの中をかき分け。
いなかった。
「なんだと……」
オレが14年も積み上げてきたデータは一瞬で整合性を失った。
もうこうなってくると、アイツは入れ違いで洞穴に帰っている気がするんだが。
「うん。そうに違いないな」
そうと決まればオレも暖を取りに焚火へ。
ぼすりと、雪に深く埋もれた地面から飛び出す蒼穹の瞳。
「ばぁっ!!」
……???
「へへーん! ボクの勝ち~!!」
ルルアはもぞもぞと身体を動かし、雪の中から這い出した。
なんなんだ……コイツ、なんでここまでオレを驚かすことに力を注げるんだ……。
悪霊も逃げ出しそうなその執念にはさすがのオレもドン引きだ。
ルルアは間抜けなオレの顔をその瞳に映し、粉雪の中で白っぽい紫髪を揺らしながらケラケラと笑っている。
「あはは! シアンまたボクに負けちゃったね! よわいよわいよっわ~いっ!!」
「ふざけやがって……」
許せん。いつまでもオレがやられてばかりだと思うなよ。
オレは軽く丸めた雪玉を握る。標的は、真っ白な頬を赤く染めてはふはふと白い息を吐く、青い悪魔だ。
そしてぼすんと、顔に雪玉を喰らったルルア。ハッ、ざまぁないぜ。
幼馴染はきょとんと目を丸め、やがて、嬉しそうにキャッキャと笑い出す。
「あっ! やったな~!!」
大好きな幼馴染と、雪の中でのイチャイチャの始まりである。
なーんて可愛いものではない。コイツ、オレは手で雪玉を一個ずつ丸めては投げることしかできないというのに、遠慮もなく風魔法使って雪崩をオレにぶつけてきてるからな。
これだから青い悪魔は……!
「少年~、あんまりはしゃぎすぎて風邪引いちゃダメだよ~」
どうやらバカは風邪を引かないという言葉をカスねぇも知っているようで、オレを首だけ地上に出したまま生き埋めにして、オレの顔面へと雪玉を投げつけてくる青い悪魔はまるで心配されていない様子である。
久々に味わった幼馴染の悪魔っぷりにオレはもはやギャン泣きを禁じ得ず、氷の世界で鼻水を一種の芸術作品へと昇華させているこの頃である。
魔王シリウスに告げられた期日まで、あと6日。旅路は今のところ、順調な滑り出し。
「オレの体調は……絶不調急降下だがな」
「……し、シアン!?!? ごめんすぐに火魔法で温っめるから!!」
「おい、火力の調整を、」
だから、旅路の雰囲気が重くなり過ぎないよう、適度に気を抜くことも大切だと、オレは思う。
♦♦♦
万年雪降る魔山を乗り越えると、そこは。命の枯れた荒野だった。
大地はひび割れ、生物の死骸は朽ち、静寂が重苦しい。
見上げる空は曇天に薄暗く、塩が固まったような赤い岩肌と、血を吸ったような草花だけが地平線の彼方へポツポツと影を落としている。
「なんか……気味悪いね」
これが西の最果て。魔王が発する魔瘴の蔓延る、生命の死んだ大地。
どこまでも続くローリエ大森林の樹木ですら、ここからは枯れ木だらけになっているのだから恐ろしい。
枯れ木に紛れて元気な師匠の姿が見つけられると嬉しいのだが、そんなこともない。
魔山の見晴らしのいい位置から無毛の地平線を眺めるカスねぇは、げんなりとした顔で言う。
「お姉さん、ここにはもう二度と来たくなかったのになぁ」
借金が嵩んだあまり、何度か強制労働に魔王出現の監視役をさせられているカスっぷりである。
「ここは妙に息が詰まるな」
眉間へ皺を寄せるレッシュ。
オレはむしろ呼吸がしやすくなった気がするぜ。
このまま狼くん達が魔王城までオレ達を乗せてくれると嬉しいのだが、ここでお別れ。わしわしと顎の下を撫でてやり、己の足で砂塵の舞う大地を歩く。
「ちょ、ちょっと休憩しよっか」
「……賛成だ」
「お姉さん限界だよ……」
気が付くと、無限の荒野を歩き始めて二日が経過していた。
カスねぇとレッシュの調子はあまり良くない。
見ているだけで気味が悪い土地。そのうえ、景色が永遠に変わらないのだから、歩き続けることが精神的苦痛に繋がるのも分かる。
行軍のペースは想定内ではあるが、このままズルズルと落ち込んでは。
思った、その時である。
「……シアン! なんか、変な力出せるようになった!!」
妙に明るい幼馴染の声。
オレとお前の愛のパワーか何かか? 照れるだろ。そんなの見せびらかすなよ。
振り返ると──ルルアの握る師匠の剣には、うっすらと、白いオーラが纏わりついていた。
「聖力じゃん」
「そうなの?」
間違いない。未来視に見たルルアもよく使っていたからな。
というか、未来視で見る夢でも散々思っていたが、剣に纏えるなら、鎧代わりにもできたりしないのだろうか。
聞くと、ルルアは微妙そうな顔で首を傾げる。
「う~ん……ボク、身体に纏うのは苦手かも。なんか……ムズムズするもん」
勇者の癖に聖力が苦手とはどういうことなのだろう。
いや、四の五の言わずにお前には防御力を高めて欲しいんだが。
「ならば俺達に分け与えられるか? 元来、聖力はそう使ってきたはずだ」
ルルアは「むむむっ」とか言いながら、両手のひらをオレ達へかざし。
「んん~……ほいっ!」
ほわんと、オレ達の身体を覆う白くて柔らかいオーラ。
瞬間、落雷が走ったような激痛が、オレの身体を貫いた。
「ぐおぉおおお!?!?!?」
「し、シアン?」
痛いッ! 痛いよぉ!! 皮膚が焼け焦げている!! このままだと蒸発しちまう!!
反射的に大地をのた打ち回って呻きを上げる。
温かい光に包まれてプスプス煙を上げるオレの謎現象を見て、バッと、ルルアはオレから聖力を取り上げてくれる。
「はぁ……はぁ……!」
「だ、だいじょうぶ……?」
死ぬかと思った……。
どうやらオレは、聖力とクソほど相性が悪いご様子。
まぁ魔王候補だからね。そんな気はしていたが、クソッ、この右眼のせいじゃねぇか。
カスねぇとレッシュは聖力に覆われたことで活力を取り戻したらしく、その恩恵に預かれないのはオレだけである。
「やはり世界は理不尽だ」
いつものようにこれから半日はクソクソ呟いていたいところだが──ルルアが聖力を意識して使えるようになったということは。
それすなわち、師匠は更に衰弱を。
「……ルルア」
「……うんっ。急ごっか」
魔王城を目指す足取りは早まる。
聖力の保護により魔瘴の影響を和らげたカスねぇとレッシュの足取りも元通りで、オレ達は果てなき荒野をひたすらに往く。
そうして更に二日ほど、荒野を歩き続けた頃のことだ。
ふと、地平線の果てに、大きな影が浮かんだ。
そこには家屋があり、畑があり、井戸がある。
けれどそれらは今や見る影もない残骸と化し、荒野の静寂に眠っている。
「あれ……こんなところに廃村かな?」
「……」
……そうだ。この村は。
かつてオレが壊した──小さな、村なのだ。
次回の更新は1月7日(水)となります。
よろしくお願いします。