真面目でサイコな弟子が往く!   作:白熊堂

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 読みにくいらしいので仕切り直しです。


第1話

 

「し~しょ~、おししょうさま~!」

 

「なんじゃ弟子よ、静かにせんか。お主ここを何処だと思っておるのか」

 

 ここは深い深い森の中、小さな少女と年配ながらも背筋が伸びた男の二人がのんびりと木々の間を歩いています。

 

 普通の森ならば年寄りと孫の気軽な散歩にしか見えない光景ですが、ここは魔物が多く住む世間とは隔絶された魔物の棲む森でした。

 

「おししょうさま~、ジャイアントラットがきますよ~」

 

「ふむ、それを先に言いなさいアリシア。さて、ふむふむ……数は三十匹ほどかの……」

 

「あーい!」

 

 ジャイアントラットは猪サイズのネズミのモンスターで有り、外見は少し巨大なだけのカピバラのように見えなくもないですが……しかし、そこはモンスターと呼ばれるだけはあり、気性は荒くて二十匹から三十匹前後の徒党を組んで襲ってくるので一般的には三十匹が相手ならば二十人前後の兵士が居なければ歯が立たない相手となります。

 

 只の老人と子供の二人では少々……いや、かな〜り荷が重いと思われるのですが……当の二人にはまるで緊張した様子はないようです。

 

 むしろ、二人は暢気に立ち話をしている位でした。

 

「ふむ、して弟子よ、この程度の数のジャイアントラットならば一人でいけるかの?」

 

「もちろんです! ししょう、まほうはつかってよいのですか?」

 

「そうだな、使って良し。じゃが、毛皮も肉も痛めてはならんぞ?アリシアには出来るかの?」

 

「やった~! でも……けがわと、にくもですか? うーん、どうしようかな?」

 

 「ほれほれ、もう来おるぞ。早よう考えよアリシア」

 

 ズドドドドドド……暢気な二人を余所に、猛烈な勢いで大量のジャイアントラットが弟子の少女、アリシア目掛けて押し寄せました。

 

「ではでは……フローズンフィールド……からのアイスニードル! てぇい!」

 

ピキピキピキピキ……トストストストス! 「ピギャ!? 」「キュピッ!? 」ドサッ、ドサドサ……

 

 ジャイアントラットが雪崩のように森の奥から押し寄せるなか……弟子と呼ばれた少女が魔法の文言を呟いた瞬間、少女の周りの空気が白く輝き木々には霜がおりました。

 

 そしてジャイアントラットの先頭の数匹が少女アリシアの魔法の範囲に入ると強烈な寒気がジャイアントラットの足を凍りつかせ、その足には細かな針のような氷が突き刺さります。

 

 次々と押し寄せては凍てついた魔物の住む森の草むらで動けなくなるジャイアントラットの群れを暫し眺める二人でしたが、ジャイアントラットの群れの最後の一匹が倒れた瞬間、少女が満面の笑みで師匠の顔を見ると師匠も満足げに頷きます。

 

「できました~! 」

 

「うむ、なかなかやりおるな」

 

 そして師匠は次の指示を弟子に出すのでした。

 

「よし、では仕上げをの」

 

「あーい! アイスニードル! 」

 

ドス!ドス!ドス!「ピギャ!? 」

 

 弟子はジャイアントラットに再度躊躇なく魔法を掛けると、顎から額を氷の針が突き抜ける形で瀕死のジャイアントラット達は次々と血溜まりに沈む事となります。

 

 次の瞬間、少女アリシアをジャイアントラットの死体達から漏れでた淡い光の粒が包み込みました。

 

「うーん、きもちよいです! 」

 

「ふむ、なかなかに丁度良い経験にはなったかの?ではアリシア、解体じゃ。もう、一人で出来るかの?」

 

「あーい、だいじょうぶです!ししょー」

 

 少女を包み込んだ光はプラナと呼ばれる生命力の塊であり、いわゆるモンスターの類を倒した者に与えられる報酬の一つです。

 

 モンスターのプラナを得た者は自らの内に宿るプラナを高め、その身体や精神的な能力を高める事が出来るようになり、それはいわゆるレベルアップとなります。

 

 この世界では人々は個人個人に産まれた際に1冊の【本】と【筆】を神から渡されると神学者は云いますが、この【本】に書き記されるのが人の善悪や賞罰、モンスターなどを倒した記録でした。

 

 今回アリシアの【本】には神から渡された【筆】で三十匹ものジャイアントラットの討伐が記録された事となります。

 

 果たして一般的な兵士の強さニ十人前後分のプラナを得る事は、この少女の精神と肉体にどの位の効果を及ぼすのでしょうか?

 

 それはアリシアの次の行動で明らかとなります。

 

ヒュン! ギリギリ……サクッ、プシュ……ポタポタ…

 

 血溜まりに沈む猪ほどの大きさのジャイアントラット達の足に次々と太い縄を括り付け、魔の森の高い木々にジャンプしては太い枝に吊し上げて首を切り、血抜きしていきます。

 

 これはかなり異様な光景であるのですが、お分かり頂けるでしょうか?

 

 そう、躊躇なく動物を魔法で串刺しにし、木に吊るして首を切るなんて事を小学二年生位の女の子が出来るってどんな状況だよ!って普通に思いますよね。

 

 しかし、少女は無邪気とも言える様子でナイフを取り出して大きなネズミを素早く解体していきました。

 

「ジャイアントラット30ひきのかいたい♪ かいたい♪ たいへんだ~♪ えい!」

 

「ホッホッホ。なかなか作業が早くなったではないか」

 

シュッシュッ……ギギギギギギ……ビリビリ……ビリビリ……ボトボト……ドサッ…「どうですか、ししょー!」

 

 首を切り、皮をはぎ、その上に内蔵を落として枝肉が木々にぶら下がってユラユラ揺れている中を、目にも止まらぬ速さでアリシアはジャイアントラットを捌いていくのでした。

 

 プラナ獲得によるレベルアップには単純に筋力などが上がるだけではなく様々な恩恵と弊害が有るのです。

 

 少女アリシアは見た目は小さな少女ですが中身は既に一般的な兵士数十人以上の強さを軽く凌駕する実力と強靭な精神を持っているという事となります。

 

 そして、彼女が解体を行うのはこれで未だ3回目という事実も忘れてはいけません。

 

 一度目の解体は師匠の見習いで肉と毛皮は台無し、二度目は師匠無しで遅いながらも正確に肉と毛皮を剥ぎ、三度目の今日は三十匹ものジャイアントラットの毛皮と肉を約ー時間で解体し終えて血塗れの姿で師匠に自慢したのでした。

 

 既に少女アリシアはかなりサイコパスっぽい資質を備えていたのです。

 

 

 




 本作品はカクヨム様で先行掲載しております。

 現在、改稿中ですので誤字脱字報告などが有りましたら宜しくお願いします。
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