この作品はカクヨム様より転載となっております。
第17話・賞金首ゼノア
村の長老の一人で村長でも有るガルフ・ガルム老は昔はそこそこに体型に恵まれ、天職は重戦士として魔物の討伐や力仕事を生業としてレベルを鉄級上位ほどまで上げていた猛者だけあり、老いても背筋は伸びていて未だに若々しい。
まだまだ若い者には負けん!と北門で孤児達を連れて息巻いていたガル厶老で有ったがアリシアの登場であっさりと言う事を聞いて子供や怪我を負った自警団と共に村の南に下がっていきました。
既に赤狼団の迎撃の為に配置についていたジル、オルソン、パスカルの三人は、アリシアの登場であっさり手のひらを返したガルムを見て揃って盛大なツッコミを入れます。
三人のツッコミを無視してガルムは怪我を負った自警団員と孤児院の子供達を引き連れて村の中心に向かいましたが、ガルム達を下がらせたアリシアはその場に未だに留まっていました。
そして、アリシアは何の覚悟も無いまま戦いへと参加する事を申し出たのです。
「アリシアも村長の家に行け!もしもの時のために荷車を用意しろ」
「いいえ、私も弓が使えますから残ります。荷車は自警団の方々や孤児仲間達に頼みました!」
それがアリシアの苦難と後悔に満ちた人生の始まりとなる事を当人は知ることは無かったでしょう。
チラッ……(うーん、戦力は多い程良いか、しかしアリシアは子供だし…)
チラチラ……(ジルもどうするか考えてるな、オルソンは渋い顔してるし…)
ジー……(どうする?)
ジルとオルソン、パスカルがアイコンタクトを取っていますが盗賊が体勢を整えるまで、余り時間の余裕はありません。
未だに十人を超える数の赤狼団の武装した盗賊達が名もない村の北門に押し寄せて来ている状態でした。
退避した素人に毛の生えた程度の実力しかない自警団の代わりに現れた名もない村側の増援の、その中でも体格に優れたジルとオルソンの二人、鉄級クラスの威圧感を誇る者の様子を盗賊達は伺ってはいるものの、今直ぐに攻めて来られては数の暴力でジルやオルソンでも直ぐに倒されてしまうだろう事はありありと見て取れます。
早くアリシアの処遇を決めねばならないところですがアリシアの一言で決着は着きました。
「戦力は多い方が宜しいのでは有りませんか?私は弓矢が扱えますし危険な場合は直ぐに逃げます」
「うーん、無理はするなよ?人を射った経験は有るか?」
「人を射った経験は有りませんが……村が大変なんです!私にも手伝わせて下さい!」
チラッ……(仕方ないか……)
チラチラ……(だよな……)
ジー……(だろ……)
「アリシア、闘うならば甘えを完全に捨てろよ! お前の甘ったるい行動が仲間を殺す事になるかもしれんのだ!」
「ジルの兄貴、そこまで言うのか?」
「オルソン……これは遊びじゃないんだ!」
「だな。アリシアは腕の良い猟師で薬師、それに医師だろ……他にも闘い方は有ると、今の内に知っといた方が良いよな」
「ジルさん、バスカルさん……」
「まあ、やるからには覚悟を決めろアリシア!みんな、いくぞ!」
「「おう!!」」
3人はお互いに顔を見合わせて暫し思案したが割とあっさりアリシアの言葉に折れた。
何せアリシアは名もない小さな村の中でも一番優秀な狩人で有る事は間違いなく、目の前の盗賊が相手でも充分に戦える戦力と見なされる。
只一人……ベテラン傭兵で有るジルは今のアリシアに決定的に不足しているモノを理解している為、あまり良い気分ではないのだが。
「よし、アリシアは俺の向かいの見張り台から迎撃してくれ!」
「はい、バスカルさん!」
「さて、盗賊が来やがったぞ!みんな用意は良いか?」
「「「おう!」」」
4人がやりとりをしている間に、鉄級クラスの威圧感を誇るジルとオルソンの二人の男を見て、一度下がった木級から石級クラスの強さしかない弱い盗賊達が再び名もない小さな村の門前まで迫って来ていました。
魔物の森に近い名も無き小さな村の回りは、木製では在るものの、オルソンの先祖の代から脈々と造られた頑丈な木造の壁があり、小さいながらも北と南西に頑丈な門があります。
赤狼団の盗賊達は自警団と一当てしてから村の戦力を見極め、名もない小さな村の近くで後方から来た盗賊達と合流して北門の数十メートル前で止まり、こちらを窺っていました。
そして、武装した厳つい容貌をした盗賊達の中から、身長二メートルはありそうな筋骨隆々の厳つい体格の男が前に出ます。
間違いなく赤狼団の盗賊達を率いるボスで有ろう巨漢の剣士は地響きのような大声で名もない小さな村のジル達に向かって叫びました。
「名もない村の村人に告げる! 俺達は赤狼団だ。有り金全てと食糧を差し出せば命まではとらない。大人しく門を開けろ!!」
(グフフフフ…まあ、村人は一人も生きて逃がさんのだがな)
「開けろと言われて空ける馬鹿が居ると思うか? なあ、ジルの兄貴」
「あー、ありゃ……不味い。奴はゼノアだ」
「ゼノアって……あの賞金首のゼノアかい?」
「あのー、その賞金首のゼノアって?」
「アリシア、ゼノアってのはな……」
赤狼団の現団長であるゼノアは今年で三十二歳となる巨漢の賞金首で、懸賞金は白金貨十枚超えの凶賊として知られ、昔はエルト小国でもそこそこ有名な道場に通う優れた剣士で有ったものの、粗暴な性格が災いして道場主から破門を言い渡された後に、エルト小国内を放浪して次々と高名な剣士に絡んでは決闘して卑怯な手で殺害する極悪非道の凶賊となり果てました。
ステータス
名前ゼノア 年齢32歳 天職 銅級上位剣師
状態 賞金首
レベル83
プラナ13558 スタミナ3325
攻撃力685+2100 防御力442+1280
腕力685 体力3325 敏捷1250+950 精密性991+950
知性122
装備
ロングソード 攻撃力150
板金革鎧 防御力250
硬い革小手 防御力25
硬い革靴 防御力55
スキル
初級剣術レベル85 攻撃力+850
初級身体強化レベル95 攻撃・防御・敏捷・精密・+950
エクストラ
カイウス流剣術師範代 対人攻撃力+1000
※金貨一枚は日本円換算で都市部では一千万から三千万円の価値となります。
「まあ、つまり、奴は頭のネジが飛んでる奴って事だな……」
「うわ……迷惑な人ですねジルさん」
「迷惑だけならば問題は無いんだがな……奴の実力は本物だぞ?俺の傭兵仲間が数人、奴に切り刻まれるのを近くで見た」
「それ、真面目に洒落にならないだろ……」
ゼノアはあまりの評判の悪さも相まって録な仕官の宛も無くなり、進退極まっていたおり、大量のゴブリンとの闘いで疲弊していた旧赤狼団に身を寄せ、不意討ちで比較的に温和な前団長を惨殺して赤狼団のボスにおさまる事となった本物の凶賊ですが、その実力の割に賞金額は少ないです。
今回、名もない小さな村を襲って来た赤狼団は極悪非道な賞金首のゼノアが率いる武闘派の盗賊であり、自らが欲しい物を得る為には人殺しも厭わない凶賊の類いでありました。
現在の赤狼団の構成員数は旧赤狼団時代、五百人以上居た頃に比べるまでもなく少ないようです。
旧団員達はドワーフ領セレニムのドワーフ鍛治職人達に散々蹴散らされ、逃げた先でのゴブリンの大群との闘いにも敗れ、減りに減って散り散りとなり、今現在の全体数は百数十名程で有り、その中でも名もない小さな村の北門に集まったのは盗賊の五分の一程度でしたが、どうやら名もない村が散り散りとなった赤狼団の集合場所として選ばれてしまったようです。
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