真面目でサイコな弟子が往く!   作:白熊堂

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 本日も宜しくお願いします。


第2話

第2話・規格外の幼弟子

 

「ふむ、して弟子よ……この大量に有るジャイアントラットの肉や毛皮はどうするのだ? 一人で持てる量には限りが有ろ? 」

 

「もちろん、しゅうのうにいれますよ~!」

 

「はあ? 収納じゃと? お主、それを本気で言っておるのか?その前にその血塗れの姿をなんとかせんのか?」

 

「もちろんです!血はクリーンです!」

 

ヒュン……「ぶふぉっ!?」

 

 アリシアは血塗れの身体を魔法で綺麗にすると同時にジャイアントラットの枝肉を収納します。

 

 この師弟が話している収納というのは、いわゆるゲームなんかでアイテムボックスやインベントリなどと云われる空間魔法系に属する特異技能の一つであり、空間魔法系とは云われているものの、実際には数多く有る特異技能の一つであるので、魔法の力を使えなくても使う事が可能な者もそこそこいました。

 

 それは文字通りに神に与えられた固有の空間であり、自分だけが使える専用の袋や箱、個室や倉庫だと思えば分かりやすいのでしょうか?

 

 神に与えられた空間の容量は人によってまちまちであり、財布程度の容量を持つ者から、それこそ一軒家のような物まで容れられる容量を持つ者もいます。

 

 弟子のアリシアは後者のようであり、ジャイアントラットの大量の毛皮と、その毛皮の上に乗った山のような量の枝肉を何事もなく収納に仕舞うのですから、これには師匠も驚きを隠せませんでした。

 

 凡そ1200kgほどの肉と60kgの毛皮が入る巨大な収納とはどれだけの広さでしょうか?

 

 それは成人男性21人がゆったりと入れる部屋を想像すると分かりやすいかもしれない凄まじい容量です。

 

「お主の収納の容量はどうなっとるのだ? ワシが空間魔法を教えたのは、ついぞ最近ではなかったかの?」

 

 先ほど収納は空間魔法系の数多く有る特異技能の一つとは云ったものの、アリシアの有する収納に限って云えば神に与えられた特別な空間とは異なり、完全に自前の空間魔法オンリーの能力であり、アリシア固有の巨大倉庫のような物だったりします。

 

「えっへん! ししょーのビリビリでまほうをつかえるようになってから、まいにちしゅぎょうしたのです!」

 

「はあ? 毎日修行して数日で空間魔法の収納の容量がそれだけ増えたのか? お主、どれだけ修行しとるのじゃ……」

 

 まさにアリシアの収納の能力は異常ですが、その修行理由も異常だと直ぐに分かります。

 

「おいしいおにくのためです! わたし、がんばりましたー!」

 

「に……肉の為じゃと? お主、有り得ぬ奴よの……」

 

 弟子のアリシアが老人に空間魔法を教わったのは今から数日前でした。

 

 そして、そこから修行したのは肉をなるべくインベントリに多く容れれる為、血の滲むような、まさに血を吐くような死ぬ一歩手前位の異常な修行を毎日行っていたのです。

 

 完全に努力をする理由と方向性が明後日の方向へ間違ってしまっていっている弟子に対し、老師は少し、否かなり頭が痛くなるものの、弟子の優秀さだけには舌を巻きます。

 

「お主は真の天才よの、天から与えられし才能を更なる努力で補うか……ワシが今まで教えた弟子の中には、終ぞ空間魔法のインベントリを習得出来ぬヤツもおったのだが……いやはや、天賦の才能とは恐るべきものよ。して、残りのジャイアントラットの残骸はどうするのかの?」

 

「もちろん、おもちかえりです! ふようどとまぜたら、よいつちになりませんか?」

 

「ふむ、アリシアはなかなか面白い事を考える。まあ、やってみなさい」

 

 老人は、相変わらず己の考えの斜め上をいく発想をする面白い弟子のアリシアを生暖かい眼差しで見ていると……アリシアは老人の度肝を抜く不思議な魔法を使いだしました。

 

「ストーンマウンテイング! それから……ストーングラインドダウン! いしうすでゴリゴリしちゃおう!」

 

 ゴリゴリ……ゴリゴリ……ゴリゴリ……アリシアが魔法の文言を唱えた瞬間、巨大な石臼が空中に顕れてジャイアントラットの残骸を擂り潰し始めます。

 

「ぶふぉっ!? 」

 

 アリシアが使いだした魔法はアリシアの固有オリジナル魔法で、既存のどの魔法の系譜にも載っていないモノだったのです。

 

 オリジナルの魔法……人はそれを固有魔法と呼びますが、それは老練な魔法使いが魔法を極めて漸く辿り着く境地であり、思いつきで好き勝手に創れるモノではありません。

 

「お主、なんちゅう魔法を創りおるのじゃ!」

 

 そうこうしているうちに……弟子のアリシアと師匠の前では巨大な石臼がゴリゴリとジャイアントラットの残骸を擂り潰していきました。

 

 これには師匠の老人も驚くやら呆れるやらです。

 

「お主、相変わらず変な魔法ばかり使いおるの……もう少しだな、こうファイヤーボールとか派手で魔法らしい魔法をだな……」

 

「ししょー、もりでファイヤーボールつかったら、まるやきですよー」

 

 弟子に魔法についての正論を言ったつもりが、逆に弟子には一般的な正論で返され、老師の面目丸つぶしで、老師も暫し閉口します。

 

「う、うむ、そ、そうじゃな……」

 

「あ、ファイヤーボールでよいことをおもいつきました! ヒートエクストラクト!」

 

 アリシアが魔法の文言で高熱を固有魔法の石臼に加えると……擂り潰したジャイアントラットの残骸から濁った脂が滴り落ちました。

 

ポタポタ……「また変な魔法を使いおる。お主、ほんと素材は無駄にせんのう」

 

 次々とオリジナル魔法が使われ、滴り落ちるジャイアントラットの脂を見て師匠は既に驚きや呆れを通りこして頭痛がしてきました。

 

 暫し、こめかみを揉みほぐします。

 

「もちろんです! とうゆってたかいんですよ? いでよタッパー!」

 

 アリシアは無属性魔法でタッパーを造り出して脂を収めていきました。

 

 このタッパーは現実世界のご家庭の台所に一つは有る便利で透明なプラスチックのタッパーそのままの形をしていますが……。

 

「お主、何故に最初に覚えた魔法がタッパーなのじゃ! 魔法使いならばだな……こう、攻撃魔法をじゃな……まあ良い、アリシアはアリシアじゃからのう…」

 

「ししょー、タッパーはむてきなのです!」

 

 間抜けな会話の間に宙に浮く石臼からアリシアは滴り落ちる脂をタッパーに全てしまいきり、空間魔法の収納に次々と収めていきます。

 

 そして……石臼からはカラカラに乾いたジャイアントラットの肉骨粉が溢れだしました。

 

「ところでアリシアよ。この細かく擂り潰したジャイアントラットの粉はどうするのじゃ?」

 

「もちろん、おもちかえりです!」

 

「うん? お持ち帰り? この量をか?」

 

 師匠は弟子の言葉に軽く引っ掛かりを感じて再度聞き直します。

 

 実際の肉骨粉はまとめれば米俵三つ分は有るでしょうか。

 

「アリシア、お主この量を収納出来るのか?」

 

「もちろんです!グラウンドシェイク!」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……ジャイアントラットの肉骨粉と腐葉土を高等な広域攻撃土属性魔法のグラウンドシェイクで器用に混ぜ、大量の良質な肥料を造る弟子を見て、師匠は呆れや頭痛を通り越して関心してしまいます。

 

「えーと……そこで超高等な土属性攻撃魔法を使うんじゃな。その魔法、何気にファイヤーボールよりも遥かに難易度が高い魔法なんじゃが……まあ、アリシアじゃからの……一般的な常識を言っても始まらん…」シュッ……「かって、ぶふぉっ!?」

 

 そして先ほどのジャイアントラットの肉や毛皮を超える大量の肥料はアリシアの収納空間のインベントリに一瞬で収納されてしまいました。

 

「まさか全てを収納したのか?」

 

「もちろんです!」

 

「はあ……お主には常識が全く通用せんな。今日の修行はもう仕舞いじゃ。また二、三日後に遊びに来なさい。くれぐれも森の外では魔法は使ってはならんぞ?」

 

「はーい! おにくはちゃんとカバンからだします!」

 

「うむ、ワシは何気にそこが不安なんじゃが……本当にその辺は気を付けるんじゃぞ?ではな…」

 

 師匠はアリシアと共に魔物の棲む森の端まで来ると、何も無い空間の何かを触ってコンコンと叩き確かめるように周りを見渡してはタメ息を吐き、アリシアに手を振って森の奥へ帰って行きました。

 

 それから弟子のアリシアは一人、大量の肉を得た喜びに満面の笑みを浮かべて名もない村への生活に戻ったのです。

 

 この二人の出会いについては少し時間を遡る事になるのですが……。

 

 




 読了ありがとうございます。

 この作品はカクヨム様で先行掲載しておりますので、先が気になる方はカクヨムにどうぞ。
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