この作品はカクヨム様からの転載となっております。
第24話・殺された者と覚悟を決めた少女
南門にて盗賊や村人達がアリシアの魔法に唖然としているが無理もない事。
そもそもの数が極端に少ない魔法使いは、どんなに弱い者であろうと一人で千人のベテラン兵士を越える戦力を有する化物で有り、味方で有れば心強いのですが、敵となるとこれほど厄介な者はいません。
まさか、こんな辺境の辺境の名もない小さな村に魔法使いが居る事など考えもしなかった赤狼団の団員の士気は一気に急落し、盗賊達は顔を青醒めさせて逃げようとしました。
「村人の中に魔法使いがいるぞ!」(ヤバい)
「不味い、本物の魔法使いだ!」(ヤバいよ、ヤバいよ)
「逃げろー!」
恐慌をきたした盗賊達は我先にと先を争って逃げ出しますが、それをオルソンやパスカル、手に手に農具を持った村人達が逃がすわけもなく、素早く追撃します。
既に名もない小さな村の人々の心も怒りに震えていたので、その有り余る怒りは村人達を狂気に誘いました。
「今だ! 皆、倒れた盗賊の武器を持って俺に続け~!」 (皆殺しだ!)
「オルソン! 一人も逃がすなよ!」
「おうよ! パスカルは回り込んでくれ!」
ガシッ! 「捕まえたぞ!」
「ひぃ!? ま、待ってくれ! 降参! 降参する!」
「待つと思うか? ガル爺達の仇!」
ガシャ!グシ!ガシャ!ガシャ!グシャッ!
鍬や斧で先ず一人が血祭りにあげられます。
「ぎゃああああーーーーー!」
グシャ!グシャ!グシャ!
その隣でも盗賊は捕らえられた先から殺されました。
「グブブブブブ……」
「この野郎! 死ね! 死ねー!」
「盗賊の息の根を止めろ!」
「みんな、次はアイツを袋叩きだ!」
ゴス!バキッ!グシャ!
情け容赦も無い村人達の鍬や斧が盗賊達を跡形が無いくらいに蹂躙します。
「ひぃ!? 助け……ぎゃああああーーーーー!」
手近に居て腰を抜かした盗賊達には村人達が群がり嬲り殺しました。
北門でのジルの例に漏れず、いくらレベルが多少は高かろうと、多数対一人では戦いにすらならず、腰を抜かした盗賊は降参を叫びますが、村人達は盗賊達の叫びを無視して次々と囲んでは袋叩きにして殺していきました。
バシン!バシン!
「止めてくれ!降参する!降参するから!」
「問答無用だ! ガルフ爺さん達の仇! 死ね!」
「そうだ! 死ね! 死ね!」
ドガ!ドガ!
「ひぃ!? やめてくれ! 助けてくれ!」
オルソンやパスカルを中心とした村人達が、士気が崩れて逃げ出した盗賊達を執拗に追いかけて袋叩きにします。
ドス!ドス!
「ぎゃあああ!」
「死ね!ガル爺ちゃんの仇!」(このやろ!このやろ!)
実はこの時ガルフは闘いの神からのギフトスキルの【根性】で生きており、まだ死んではいませんでしたが、村人達には分かりませんでした。
ドス!ドス!
「死にやがれ!」
怒りに震える村人達は盗賊を農具で滅多打ちにしました。
農具とはいえ田畑を耕す力が有り、それを熟練の農夫達が全力で振り下ろすとどうなるのか?目の前で繰り広げられている血しぶきが舞う阿鼻叫喚の血の海と肉片の散らばる光景がそれを物語っていました。
ドガッ!バキッ!バキッ!ドス!
「ぎゃああああ!」
「た、助けてくれ!」
「問答無用! 死ね!」
グシャ!「ヒギィイイイイ……」
盗賊達は逃げ惑うか戦意を失って逃げますが、逃げる盗賊を村人達は容赦なく皆殺しにしました。
それを見てアリシアは青ざめた顔で項垂れています。
自らが引き金となって起きた惨劇、悪いのは名もない小さな村に襲い掛かった赤狼団達で有るのですが、数えで十歳になったばかりのアリシアの心は砕け散りそうな位に揺れていました。
(なんで…なんで…みんな死ぬの…なんで殺すの…)
自ら成人するまでは禁じていた攻撃魔法で、それが悪人で有るとは言えど、目の前で人間が死んだ事実は利発なアリシアの心を散り散りに掻き乱します。
そして、アリシアはぐっと涙をこらえるとガル爺の血塗れの遺体を見ました。
※【根性】でまだ死んでません。
「うぅ…」
ガルム老が呻き声を上げた瞬間、アリシアは我に返ってガルフに駆け寄りました。
(ガルフお爺ちゃん、まだ生きてる。助けなきゃ!)
アリシアは血塗れのガル爺に今使える最大の治癒魔法を全力で掛けます。
ちなみにでは有りますが、魔法使いの存在が希少ならば治癒、回復の魔法を使える魔法使いのアリシアは更に極めて希少な存在でした。
「エクストラヒーリング!」
ガルム老人の身体が光輝き身体中の深い傷が綺麗に塞がっていきます。
ステータス
名前 ガルフ・ガルム 年齢60歳
状態 老化 瀕死 根性
レベル58
プラナ118 スタミナ30 マナ0
攻撃力15 防御力12 腕力15
体力30 敏捷12 精密性21
知性38
エクストラヒーリングは治癒魔法の上級魔法に位置しており、重度骨折や瀕死の重傷、大火傷や状態異常などは完全に塞がるものの失った血液などを戻せる魔法ではありません。
エクストラヒーリングを使用したとしてもガルム爺は身体中から血が抜けて虫の息で、かろうじて瀕死から半死状態になっただけで意識すら戻りません。
アリシアは必死に考え、考え抜いた末に決断します。
「みんな! みんなはこの薬を持って直ぐにエレノの町に逃げて!」
「おい、アリシアはどうするんだ?」
「あとは任せて! 村の皆は私が守る!」
《アリシアよ……覚悟は出来たのだな?》
(はい、師匠)
アリシアは人を、盗賊を殺す覚悟を決めました。
もう村の人間は誰も死なさない。
悪い盗賊は一人残らず殺して殺して殺し尽くす。
もう自分の大切なモノを失いたくない。
この覚悟が、後に蒼の万魔将と呼ばれるアリシアが情け容赦の無い、敵を前にすると歯止めが利かないサイコパス的な戦いを選んだ原点となるのでしょう。
名もない村での盗賊討伐の詳細については後世ではあまり伝えられておらず、蒼の万魔将アリシアは謎多き英雄と呼ばれていました。
歴史家の中ではリアナ大陸戦記の蒼の万魔将アリシア伝に、ほんの数行書かれたこの事件が後々のアリシアの不自然な行動の原点となったと言われています。
(もう、誰も死んでほしくないの…)
「アリシアちゃんも一緒に行こうよ!」
「アリシア……無理をしないで……」
「アニス院長も怪我を治さないと!」
「大丈夫、アリシアの薬で止血したから安心して頂戴」
「私も傷薬を塗ったから大丈夫だよ!アーちゃん」
アニス院長や孤児仲間がアリシアを取り囲む。
みんなもアリシアと共に名もない小さな村を脱出して西のエレノの町に逃げようと口々に言いますが、アリシアの考えは変わらなかったようです。
平和な村での生活で以前のような無鉄砲さと利発さは薄れて天然の気が少し有るものの、アリシアは一度決めたら簡単には譲らない性格で有ったので、村人の説得にも頑として首を縦に振りませんでした。
ステータス
アリシア 年齢 10歳 天職 不明
状態 激怒 封印解除
レベル327(65)↑
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