結局、私はマネージャーにウールメモリのコネクタ手術を寝たふりをしたまま受け入れた。
理由は二つ。一つは単純に抵抗できそうも無かったからだ。運悪く、ガイアドライバールプスとウルフメモリが入った鞄は、寝たふりをしていた私からは離れたところに置いてある上に、私のハイドープ能力は五感の強化。素の身体能力は一般的な女子高生のままなので、成人男性に伸し掛かられても抵抗できないのだ。
もう一つは、この一件は使えるんじゃないかと思い付いたからである。私は既に裏風都の陣営である為、どう足掻いても仮面ライダーW達と戦う運命にある。
ならば、一度此処で私を
……なんか順調に風都の女としての道を歩み始めている気がするな、私。
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「担当しているモデルが、行方不明になったので探して欲しい」
そう依頼を持ってきたのは、三葉耳朗。亜樹子曰く最近有名になってきているモデル事務所のマネージャーだ。そして、探して欲しいモデルというのが、
「二丸六月、現在高校一年生になったばかりのモデル……か」
例の事務所が有名になったきっかけでもある、今風都で大人気の現役女子高生モデルMUTSUKIこと、二丸六月。亜樹子に見せられた雑誌の写真を見たが、確かに目を引く容姿で、本来同居しないはずの可愛いと美しいを両立させたルックスに男女共に魅了されるらしい。
「しっかし、面倒な事になったな」
これまで聞き込みをしたが、手掛かりは……無し。依頼人からは「スキャンダルにしたくないので、警察には連絡しないで欲しい」と言われたし、どうすっかねぇ……。
良い案が思い浮かばず、ベンチに座ってため息をついていると、
「あの、大丈夫ですか……?」
「ん、ああ。大丈……ぶぅっ!?」
心配そうに声をかけてきた女性に、返事をしようと顔を上げると、そこには探していた張本人、二丸六月が居た。
「えーっと……。二丸六月さん、ですよね?」
「はい。まあ、そうですけど……」
こくりと頷き返す彼女。まさかの展開に少し脳が追いついていなかったが、兎に角逃してはいけない。
ベンチを立ち上がると懐から名刺を一枚取り出して渡す。
「えっと、探偵さんだったんですか」
「そう。そして今、あんたのマネージャーにあんたを探して欲しいって依頼を受けててな」
俺がそう言った途端、彼女の表情が一変して険しくなり、すぐさま距離を置かれる。
「まさかあの人の手先だったなんて……」
先程までとは変わりすぎた彼女について行かずに呆然としていると、彼女は上着のポケットからガイアメモリを取り出した。
「なっ!それは……」
「貴方も、私を怪物に貶めるんだ……!」
『ウール!』
首元に滲み出た生体コネクタにメモリを突き立て、羊のような見た目のドーパントへと変貌する彼女。
「くそっ!」
『ジョーカー!』
ドーパントになることを止められなかったことを悔みながら、懐からロストドライバーを取り出し、ジョーカーメモリを装填する。
「そのベルト……!?」
「変身!!」
『ジョーカー!』
仮面ライダージョーカーに変身すると、彼女は俺へと突撃してきた。その突撃を躱すと、ベルトのジョーカーメモリを抜き、腰のマキシマムスロットに装填する。
「さっさと決めさせてもらうぜ」
『ジョーカー!マキシマムドライブ』
「ライダーキック」
右足にエネルギーを溜め、蹴りを放つ。が、
「嫌だ……。まだ死にたくない!!」
「何!?」
ドーパントの体から増殖した体毛によって勢いを消され、逆に跳ね飛ばされてしまった。
「うぐぅっ!?」
メモリブレイクが不発に終わり、地面を転がってしまう。受け身を取り損ね、痛みに悶えていると、彼女が突然両手で頭を抱えて苦しみ始める。
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!私は道具じゃない!怪物じゃあない!!だから喋るなぁっ!!」
「なっ、おい!!」
なんとか立ち上がるも彼女を追いかけられず、ドーパントの姿のまま、二丸六月は俺の前から姿を消したのだった。