「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
セシリア、千春の二人との激闘の翌日、朝のSHR(ショートホームルーム)での山田先生の言葉である。
山田先生は嬉々として喋っている。そしてクラスの皆(もちろん全員女子) も大いに盛り上がっている。俺に勝った千春含め。
「先生、質問です」
挙手。質問は手を挙げてしよう。常識だ。
「はい織斑くん」
「俺は昨日試合に負けたはずなんですが、なんでクラス代表になっとるんでしょうか?
「そ、それは――――」
山田先生が口よどむ。あ、なんか顔真っ赤だ。
山田先生の視線の先には……
「あ、そっかそっか、一夏に言ってなかったっけ?」
苦笑しながら立ち上がる。昨日部屋で伝え忘れてたか。
「生理きちゃってさ」
下腹部を擦りながら片目でウィンク。
いやまあ痛くないんだけど、一夏のためだ。
演技は苦手だが演じ切って見せる。
「んなっ!?」
一夏の顔が真っ赤になる。リンゴみたいだなほんと
スッパーンっ!
「あいだっ!」
「謹みを持てブリュッセル」
飛翔する出席簿。いや飛来か。
千冬先生の所持する対軍宝具『一年一組出席簿』はただの出席簿でありなが、織斑千冬が所持し、使用する事で一級の宝具へと変わるのだ。
いや、千冬先生が武器として使えばあらゆるものが宝具となるだろう。
シュパーンッ!
私にぶつかり、その衝撃から千冬先生の元に戻った出席簿が威力を増して再度放たれる。
「ブリュッセル、失礼な事を考えたろう」
「イエス、マム」
てかブーメランですか千冬先生。
そしてもう一度投擲の構え、歯を食いしばれ!私!
「ちっ、千冬姉!」
シュパーンッ!
威力を込めていた出席簿が私ではなく、立ち上がった一夏へ向け軌道変更。
「織斑先生とよべ、それで?なんだ織斑」
クルクルと回転しながら手元へ戻った出席簿。
出席簿のコントロールなら誰も勝てんだろう。
「いつつ……お、織斑先生、生理中に千春を叩くのはやめてくれよ!千春は女の子だぞ!あ、ああ…赤ちゃんを産めなくなっちゃったら……どうすんだよ!」
長い沈黙だった。
その間約15秒、しかし一夏と千春以外のクラスの中にいた人物はすべからく、その間を一時間以上ではないかと思った。
そして、
「「「「「 きゃああぁあああぁぁぁっ!!! 」」」」」
放たれるソニック・ブーム。
バシンバシンバシンバシンバシンバシンバシンバシン
「いだっいだだだだっ!いてぇよ千冬姉!」
スッパーンっ!
出席簿によるほぼ同時に放たれた八つの連撃。止めの脳天直下の角でのいちげき。
「お、お前は自分の言葉をちゃんと理解してから言葉を発しろ!」
珍しく千冬姉が顔を真っ赤にしながら出席簿を降り下ろす。山田先生なんて顔を真っ赤にしながら身体をくねくねと動かしながら妄想世界へ旅立っていった。
「だ、だから………ひぃっ!?」
反論しようとした途端、教室の二ヶ所から凍るような、それでいて触れれば燃えてしまいそうな殺気が放たれる。
見て見れば箒とセシリアが、黒を越えて黒い、どす黒い殺気を纏っていた!
なんだよあれ、人間越えて、阿修羅すら凌駕した存在かよ。怖すぎる。
「一夏」
ふと声が掛けられた。
「千春?」
先程まで騒いでいたのが嘘みたいに静かになった。てかクラスの皆、何を期待した目で俺と千春を見てるんだ?
「あん。でな…えーと、別に生理中だからって頭叩かれただけで赤ちゃんを産めなくなるなんて事はないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとな」
「「「「 きゃああぁあああぁぁぁっ!!! 」」」」
今日のSHRはこんな感じで終わった。
◇
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらおう。織斑、オルコット、ブリュッセル。試しに飛んで見せろ」
四月も中旬、遅咲きの桜の
「はい、織斑先生」
「なんだブリュッセル」
「いや、あのですね。私生理だって言ったはずで……あいだっ!」
「貴様のような生理があるか。クラス代表の件はもう織斑に決まったんだ、くだらなん真似はよせ」
「さ、さいですか」
挙手して質問した千春に千冬姉の指弾が炸裂する。
親指を弾く動作はツンデレールガンに似てる……
つか空気を指で弾いて当てるとかやっぱ普通じゃないよな。
千春が額擦りながら鳩が対物狙撃銃を食らったかのような顔してる。
いや、鳩が対物狙撃銃なんてくらったら爆散するか。
ここは無難に豆鉄砲にしとこう。
ちなみに、千冬姉曰く指弾は威力が低いそうだ。ちょっと痛めのデコピン程度しかだせん、とか言って。
そう言う点では実践授業万歳だ。何しろ出席簿が飛んでこない。
「質問がないなら早く展開しろ。織斑、お前から展開して見せろ熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
急かされて、意識を集中する。
ISは一度フィッティングしたら、ずっと操縦者の身体にアクセサリーの形状で待機している。
セシリアは左耳のイヤーカフス。千春は首のチョーカー。
俺は右腕のガントレット。……いや、普通は、アクセサリーらしいんだが……俺のは完全に防具だよな。なんでだろうか。
「集中しろ」
いかん、次ぎは叩かれる。
俺は右腕を突きだし、ガントレットを左手で掴む。
色々試して、このポーズが一番集中できる―――というよりもISが展開されるのをイメージできる。
(来い……白式)
心の中で呟く。すると、右手首から全身にかけて薄い膜がひろがっていくのがわかる。約0.7秒の展開時間。
俺の身体から光の粒子が解放されるようにあふれて、そして再集結するようにまとまり、IS本体として形成される。
各種センサーが意識に接続され、世界の解像度が上がる。
視界がクリアに感じるこの一瞬、まるで視力が悪い人が眼鏡を掛けたような感じだろうか。
「1.5秒、まずまずのタイムだ。ではオルコット、代表候補生の速度を見せてやれ」
「はい。…では、…!」
セシリアがイヤーカフスに触れ、それを優しく弾く。
刹那、目を瞬いた次の瞬間にはセシリアはIS、『ブルー・ティアーズ』を纏っていた。
速い。桁違いに速い。
「ふむ、0.6か。流石と言っておこう。」
「すげぇ…すげぇなセシリア!」
「い、いえ。これくらい代表候補生にとっては普通ですわ。一夏『さん』こそ、短い期間でそこまで速いなんて、才能ですわ」
……さん?
「ではブリュッセル、やってみろ」
「セリフは言っても?」
「不可だ。それとも逐一喚ばないと出せんのか?」
「いやぁ、テンション上がるじゃないですか」
「ぐだぐだ言わんでやれ。頭に連続で当てるぞ?」
グッ、と千冬姉が親指に力を入れる。
「イエス、マム…」
千春がすげぇ不服そうに敬礼した。
ちなみに千春のISスーツは学校支給のものだ。
この前の
残念でならん。ちなみにTバックだったので訴えておいた。
いやしかし、千春のドーン!キュッボンに掛かれば学校支給のISスーツもエロスーツと化す。
眼福眼福。
「はあ、……んっと!」
チョーカーに触れて目を瞑る。セシリアと比べると遅いが、それでも一秒以内にISを展開。
やっぱこの装甲が胸を鷲掴むような機構は見事、GJと言える。
千春の『グラデーション』は、千春がスタッフリーダー兼テストパイロットとして開発が進められたらしく。
『グラデーション』の最大の特徴、『モードシステム』は千春の発案、開発らしい。
装甲や武装に関しては他のスタッフの魂の結晶らしく、千春の爆乳を初め、魅力的なボディラインを損なわずに一騎のISに仕上げたのは匠の腕。
個人的には、千春の肉付きがよく、それでいてスラット伸びた脚の矛盾した魅力を損なっていないのがポイントが高い。胸部はポイント計算外。ありゃ狡すぎて評価する気も起きん(決して装甲に鷲掴まれ、持ち上げられた爆乳を見て惚けてポイントが付けられない訳ではない。断じてない)
そしてヒップ。お尻だ。
胸をメロン、いやスイカと評するならばお尻は白桃。それも最高級だ。
それを、背部の六枚の多方向推進翼で『微妙』に隠す。
推進翼を閉じた状態で後ろから見れば千春の白桃尻がチラチラと見え、生唾ごくり。
推進翼が開けばもう天国の門が開いたかのような心情にしてくれる。
エロスーツなら更にTバックだ。正直殴り倒したいほど開発スタッフが羨ましい。
後は肩だろうか。
肩が露出してるのは良い、それだけで魅力ポイント10加算だ。
「よし、飛べ」
言われて、セシリアと千春の行動は早かった。
二人とも急上昇し、遥か頭上で静止する。
俺も遅れて後に続くが、その上昇速度は二人よりかなり遅いものだった。
「何をやっている。スペック上の出力は白式の方が上だぞ」
通信回線から早速お叱りの言葉が……急上昇と急下降は以前から千春に習ってはいたがまだまだ苦手だ。
『疾風迅雷』を使えば速度に関しては絶対に負ける気はないが、あれを使うと全身筋肉痛になるからやだ。
今も痛いし。
『自分の進む方向に角錐を展開させるイメージ』と言われても、感覚が掴めない。
上に向け瞬時加速でも使うか?
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやり易い方法を模索する方が建設的でしてよ?」
以前の見下したような態度ではなく、慈愛の化身と見間違えるほどの優しい声色のセシリア。
「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体があやふやだからなぁ。何で浮いてるんだ、これ」
白式にも推進翼があるが、今急上昇した際スラスターは使っていない。
翼の向きと関係なしに好きな方向に飛べるのだから、ますますわからない。
「私は完全に自己イメージだしなあ。理論的な事なら―――」
「わたくしですわね。説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」
「なるほど、わからん。説明はしてからなくて良い」
即断即答。絶対に俺の頭が理解してくれん。
「それは残念ですわ。ふふっ」
楽しそうに微笑むセシリア。
その表情はやはり嫌味でも皮肉でもなく、本当に単純に楽しいという笑顔だった。
一体どういった心境の変化なのだろう。はじめてあった時のあの態度が今では嘘のように見える。
いや、嘘だったのだろう。
これがセシリアの本当の素顔なのだ。
「一夏さん、よろしければ今日の放課後に指導してさしあげますわ。そのときは二人きりで――――」
「一夏っ!いつまでそんな所にいる!早く降りてこい!」
いきなり通信回線から怒鳴り声が響く。
見ると遠く地上では山田先生がインカムを箒に奪われておたおたしていた。
まるで望遠鏡並みの視力はハイパーセンサーによる補正だ。
地上二百メートルから箒の唇まで見える。
どこ見てんだ俺は。
「ちなみに、これでも機能制限がかかっているんでしてよ?」
隣で変な声を出して驚いていた俺に、クス、と笑いセシリアが近づく。
そういやもともとISは宇宙での稼働を想定したものだ。それくらいは同然か。
「織斑、オルコット。こんどは急降下と完全停止をやって見せろ。。地表から10㎝が目標だ」
「私は?」
「ブリュッセル、お前は二人の後地表0㎝を目標として急降下だ。」
「あきらかにおかしいですよね?」
「む、よく聞こえんな。では始めろ」
「イエス、マム」
「了解です。では一夏さん、お先に」
千春はタパー、と涙を流し敬礼。
セシリアは俺をチラ、と見て急降下していった。
みるみるうちに小さくなっていくセシリアの姿を見て俺はちょっと感心しながら眺めた。
「うまいもんだなぁ」
そしてどうやら完全停止も難なくクリアーしたらしい。――――よし俺もいくか。
意識を集中。
イメージは背中にロケットをくくりつけて突撃する感じ。
「つおぉぉ!?」
地表10㎝は意外と難しく、俺は大体地表20㎝の所で静止した。
「馬鹿者、誰がそこで止まれと言った。まあ及第点としよう。では次、ブリュッセル」
ギュンッ――――――――ズカァァンッ!!
千春は地表に激突した。グラウンドに穴を開けて
「-7㎝。失敗だブリュッセル。グランド5週、生身で走ってこい」
「う、ううっ…」
ISをしまった千春はトボトボと走り始めた。
代われるならば代わってあげたい……が、俺は走って揺れる胸をハイパーセンサーで鑑賞することにした。