IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 12 『嵐の前の騒がしさ』

 

 

 

「ち、ちは…る…」

 

 

ゴクッ、生唾を飲む。

 

「う…わぁ…」

 

周囲からも熱い吐息が漏れる。今の千春の姿は同性であっても魅了する。

 

 

ゴクッ、またしても喉がなる。

 

 

「つ、つめたぁ~、っひぃうっ!?」

 

 

胸に冷えたコーラをぶちまけられた千春は制服を脱ごうとし、上がらぬ腕を上げようとしてまたしても筋肉痛に痛む。

 

 

 

「千春…お前…下着付け―――」

 

バシィンッ!!

 

濡れて肌に密着した制服からは、「下着」を付けているようには見えず、何しろその大きな胸の先っちょには…

 

とまで思考した所で箒が放った竹刀を後頭部に受け意識を掠め取られた。

ナイスだ箒。あのままだったら酷いことになってただろう。

 

 

 

 

 

 

 

千春を俺なんかの血で(けが)してたまるか。

 

 

 

……あれー?ここだけ抜き取るとカッコいい台詞になるんだけどな~。使う場面を間違えてる感がバリバリ感じるんですがー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、千春と仲の良い田島さんとリアーデさんと相川さん(とくにさわぎたいひとたち)らが千春を強制送還してからすぐのことだった。

 

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君にインタビューをしに来ました~!」

 

オー!と食堂にいた一同が盛り上がる。オーじゃねぇですよオーじゃ。

 

「あ、私は二年の黛薫子(まゆずみかおるこ)よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

 

受け取って一応頭を下げる。なんというか様式美だ。

 

「ではではさっそく~、織斑君!君の本命の相手はやはり千春・フレイヤ・ブリュッセル女史!?」

 

 

 

オイあんた、何イキナリ核心ついてんだ。

 

 

ガタタッ!

 

 

「そ、それは違うぞ!」

 

「あ、あり得ませんわ!」

 

 

俺の時が止まった隙に立ち上がり抗議するのは箒とセシリア。

 

え?なんで?

 

「えぇ~?だってほら。この写真を見てそう思わない子はいないよ?私がここに来たのもこれの調査だし」

 

 

ペラ、と渡して来たのは一枚の写真。

 

 

 

ISを纏った千春と俺が向かい合い、手と手を重ねて勝負を誓いあった時のものだ。

 

てかこの真横からのアングルだとアリーナのシールドに突っ込んでる気が……まあいいか。

 

 

「すんません。これ一枚貰えます?」

 

「お?構わないよ。インタビュー代と言うことで」

 

「クラス代表就任パーティーの入場料としていただいておきます」

 

「なかなか賢しいものだ。しかたない、スクープの時使わせて貰ったし、…いいよ!」

 

「まて、スクープってなんぞや」

 

「熱愛発覚!?かの織斑一夏の恋人はカレンデュラ!?、の見出し一大トップで使わせて貰いました。あの号の売れ行きはヤバかったな~」

 

 

それはあれか?俺と千春の愛の巣(あいべや)が最近盛り上がっていたのはこの新聞部の………

 

 

「一夏っ!」

 

「一夏さん!」

 

「一夏くん!?」

 

「おりむーっ」

 

 

 

食堂中の女子の視線が俺に向けられる。

 

 

あ、なんかやばい。捕食者の気持ちがわかった気がする。

 

 

 

「の、ノーコメントで」

 

 

 

ボコボコにされました。

 

 

 

 

 

「じゃあ本題に移りましょうか」

 

「あれ?さっき千春の件でって…」

 

「ああ、あれ嘘。インタビューついでにスクープGETなるか!?って気構えで聞いて見ました」

 

 

 

こうやって一般市民はマスコミに人生を変えられてしまうのか。ちくせう。

 

 

「ではズバリ織斑一夏君!代表になった感想をどうぞ!」

 

ボイスレコーダーをズズイっと俺に向け、無邪気な子供のように瞳を輝かせている。

 

 

「まぁ…面倒くさいことになったな……とか思ってたんですが、…こんなパーティーまで開いてくれたんだ、皆の為にも負けられない……いや、俺が負けるのが嫌だから勝ちに行く。全力で、俺の全身全霊を()して戦いに勝ちに行きます………こんな感じ…かな?」

 

 

思わず力んじゃったよ、はずかしい。

 

ボイスレコーダーを下げた先輩は、どこか熱を持った瞳で俺を見上げていた。

 

 

「う、うん…すごく…かっこよかった……が、頑張ってね織斑くんっ、応援してるから!」

 

 

モジモジとスカートを弄りながら見上げてそう言った先輩は……なんかさっきまでと別人だった。

 

「あ、ありがとうございます?」

 

「じゃあ次、セシリアちゃんもコメントちょうだい」

 

「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが…仕方ないですわね」

 

とかなんとか言いつつも満更でもなさそうに立ち上がるセシリア。

心なしかいつもより髪のセットに気合いが入っている気がする……写真対策だろうか?

 

 

「コホン、ではまず、一夏さんとわたくしの馴れ初めを……」

 

「却下。写真だけちょうだいな」

 

「なっ!最後までお聞きなさい!」

 

「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、君も織斑くんに惚れたからってことにしておこう」

 

ポッと赤くなるセシリア。きっと怒り心頭だろう。怒髪天なセシリアが懐かしい。

 

「なにをバカな」

 

ここは援護射撃し、セシリアの怒りを抑える。

 

「え、そうかなー?」

 

「そ、そうですわ!なにをもって馬鹿としているのかしら!?」

 

 

あれー?俺が悪いのー?

 

 

「大体あなたは―――」

 

 

「はいはい。とりあえず二人並んでね。写真撮るから」

 

 

「え?」

 

意外そうなセシリアの声。しかしその声色はわずかに喜色を含んでいた。

 

「注目の専用機持ちだからねー。ツーショットもらうよ。握手とかしてるといいかもね。あ、ただし個人的に腰に手を回したり、腕を組んだりしなだれたりとかはNGね」

 

「こ、腰や腕くらい!」

 

「やだ」

 

「…まあ、良いですわ……ん…」

 

何故かモジモジとし始めたセシリアはチラチラと俺を見てくる。

 

なんだろうか、この『チャンス到来、ただし安く見られないように気を付けなくては』的な雰囲気。あれか?この間の試合の雪辱を晴らすつもりか?

 

「あ、あの…撮った写真は当然いただけますわよね?」

「そりゃもちろん」

「でしたら今すぐ着替えて―――」

「やらせると思うてか、時間かかるからダメ。はい、さっと並ぶ」

 

(まゆずみ)先輩は俺とセシリアの手を引いて ――俺の手を壊れ物のように触れて―― そのまま握手まで持っていく。強引な先輩だ。

 

「…………」

「…………」

 

「な、なんだよ?」

 

「べ、べつに、何でもありませんわ」

「…なんでもない」

 

 

こっちをじろじろと見てくるセシリアと箒。

何か言いたいのか、と思ったが違うらしい。紛らわしいやつらだ。

 

 

「それじゃあ撮るよー。織斑くん、かっこよく撮るよーっ!」

 

は、はぁ、そりゃありがたい事で。

 

「織斑くんに、一を足すとー?」

 

 

 

 

「「「「「 に一! 」」」」」

 

シャッターが押される瞬間、一年一組が一人を除き全員フレームのなかにいた。

 

 

箒なんて俺に抱きついてカメラに写ろうとするくらいだ。

 

 

 

「箒……」

 

「つ、つい、転んだのだ。決して抱きついたわけでは…っ」

 

「ああ、わかってる箒、俺はわかってる…」

 

 

人見知りが激しい箒にしては頑張ったほうだ。

本当はクラスに馴染みたいんだ。

 

俺はセシリアと他のクラスメイトが騒いでる中、頑張って一歩を踏み出した箒の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

「一夏ぁ……」

 

 

 

 

その表情は、惚けていて、擬音でいうなら、ほにゃ、と音がつくような笑みだった。

 

 

 

 

 

「ふぅん、ここがそうなんだ……」

 

夜。IS学園の正面ゲート前に、小柄な体に不釣り合いなスポルディングのバックを肩にかけた少女が立っていた。

 

まだ穏やかな四月の夜風に―――

 

「きゃあっ!?…な、何よ、いきなり、びっくりしたじゃない…」

 

急に吹き荒れた夜風にスカートを捲られ、髪を左右それぞれを高い位置で結んだ……ツインテール少女は顔を赤らめながら自然現象に悪態を漏らす。

 

「たく、…えーと?、受付って何処にあるんだっけ?」

 

上着のポケットから一切れの紙を取り出す。くしゃくしゃになったそれは、少女の大雑把な性格とカッパツさを非常によく表していた。本人の前で言えば回し蹴りの一発や二発を食らいそうだ。

 

「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれ何処にあんのよ」

 

取り出した紙にとってはとても不幸だ。紙を穴があくほど睨む少女の眼光は鋭く、イライラとしているせいか殺気も漏れだしている。

 

「ご、ごめんなさい!?私道順までは知らないんですぅ!!」

 

とでも泣きながら謝りそうだ。

 

しかし文句を言っても紙が答えるはずもなく、少女はくしゃ、と握りしめてから上着のポケットに紙をねじ込む。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

ぶつくさと言いながらも、その足はとにかく動いている。

思考よりも行動。彼女はそう言う性格なのだ。

 

彼女は辺りを見回し、生徒か先生など、学校を案内出来そうな人物を探りながら敷地内を練り歩く。

その鋭角的でありながらどこか艶やかさを感じさせるその瞳は、中国人のそれだった。

 

 

(あーもー、面倒くさいなー。空とんで探そうかな……)

 

一瞬、名案!と思った少女だったが、あの『アナタの街の電話帳』三冊文に匹敵する学園重要規約書を思い出して、やめる。

 

まだ転入の手続きが終わっていないのに学園内でISを起動さけたら、事である。

最悪外交問題にも発展する。

それだけは本当にやめてく、と何回も懇願していた政府高官の情けない顔を思い出して、少女の気分はちょっと晴れた。

 

(ふっふーん、まぁねー、私は重要人物だもんねー。自重しないとねー)

 

正直、自分の倍以上も歳のある大人がへこへこ頭を下げるのは、ちょっと気分が良い。

昔から、『歳をとってるだけで偉そうにしてる大人』が嫌いな少女にとって、今の世の中は非常に居心地が良かった。

 

男の腕力は児戯、女のISこそ正義。

それもまた気分がいい。少女はかつて『男っていうだけで偉そうにしている子ども』が大嫌いな子供だった。

 

――でも、アイツは違ったなぁ。

 

とある男子の事を思い出す。その男子のことは、少女にとって日本に帰ってくる最大の理由になっている思い出だ。

そう、この少女にとっては日本は第二の故郷であり、思い出の地であり、因縁の場所でもあった。

 

――元気かな、アイツ。

 

まあ元気なんだろうけど。アイツの元気の無い姿を見たことがない。

そういうやつだったから。

 

 

「……ら、……ぐぞ?」

 

 

ふと、声が聞こえる。

 

視線をやると、女子がIS訓練施設から出てくるようだった。どこの国でもIS関係の施設は似たような形をしているから、すぐにそうだとわかる。

 

 

―――ちょうどいいや。場所聞こっと

 

 

声を掛けようとして、少女は小走りにアリーナ・ゲートへと向かう。

 

「急ぐったってよ、なんで俺が…」

 

不意を突かれて、少女の体はびくんと震えてその足が止まる。

 

男の声――それも知っている声にすごくよく似ている。

いや間違いない、同一人物だろう。

 

 

予期しなかった再会に、少女の鼓動がペースをあげる。

 

―――あたしってわかるかな?わかるよね。一年ちょっと合わなかっただけだし。

 

そう自分に言い聞かせつつ、もしも自分だとわかってくれなかったらどうしようと言う不安に駆られる。

 

 

――大丈夫。大丈夫!それにわからなかったら、あたしが美人になったからだし!

 

 

超ポジティブ思考のレバーを入れて、少女は再び歩みを再開する。

 

 

「いち――――」

 

 

ああっ、声裏返っちゃったよ。なんかあたしがすっごい意識してるみたいじゃん!恥ずかしいなぁもうっ。

 

 

「いつまで嫌がっているのだ、一夏。パーティーが始まってしまうぞ?」

 

「クラス代表なんかにされて喜ぶかよ、……はぁ、なんで、――― は俺なんかに譲ったんだろ…」

 

「……顔を会わせて一月たってないが、ヤツの思考を読み取ろうなんて一生出来んと核心した。わかったのはヤツが生粋の愉快犯だというだけだ」

 

「まあ確かに。中学の頃から不思議な雰囲気を持ってたな~」

 

仲良く談笑しながら歩いて行く男女。

 

 

――誰?あの女の子。なんで親しげなの?っていうかなんで一夏を名前で呼んでんのよ。

 

 

さっきまで高鳴っていた胸は冷えきり、酷く冷たい感情と苛立ちが雪崩込んでくる。

 

 

それからすぐ総合事務受付は見つかった。

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、凰鈴音(ファン・リンイン)さん」

 

愛想のいい事務員の言葉を半ば無視して聞いた。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

 

「ああ、噂の子?一組よ。凰さんは二組だなら、お隣ね。そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」

 

「二組のクラス代表ってもう決まってますか?」

 

「決まってるわよ?」

 

「名前は?」

 

「え、ええと……聞いてどうするの?」

 

鈴音の態度に少しおかしなところを感じたのか、事務員は少し戸惑ったのように聞き返す。

 

 

「お願いするんです。代表、あたしに変わってって――――」

 

 

後にこの事務員は語る。

彼女の表情を見たとき、私は生きるのを諦めた、と。

 

 

 

 

 

「大・復・活!!」

 

 

朝食も済ませ、クラスに着いた俺の目に入ったのは筋肉痛が治り元気そうにピースしてる千春。

昨日部屋に帰ったときにベットにうつ伏せになっていた千春にマッサージをしたからだろうか、もう元気いっぱいだ。

 

 

つかマッサージ中の千春マジえろかった。

 

「ふぁっ」とか「んんっ!?」とか「やぁっ、きもち、い…いっ」とか…………おかげで僕は眠れず徹夜です。

 

 

千春の周囲には、千春と特に中のいい女子達がいた。

 

 

 

 

「織斑くん、おはよー。ねぇ、転校生の噂聞いた?」

 

 

自分の席につくなり、クラスメイトに話し掛けられる。

 

「転校生?この時期に?」

 

今はまだ4月だ。なぜ入学じゃなくて転入なのだろうか。それにこのIS学園、転入はかなり条件が厳しかったはずだ。

試験はもちろん、国の推薦がないと転入できないようになっている。

となるとつまりは――――

 

「そう。なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

やっぱりか。あ、代表候補生と言えば。

 

「あら、わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら?」

 

一組最強にしてイギリス代表候補生、セシリア・オルコット。

今日も腰に手を当てたポーズが似合う。

 

一組最強なのは、あの試合のあと戦ったが、俺も千春も、最初から全力を出したセシリアに瞬殺。

 

俺はともかく、千春が負けたのは驚いた。

ほうふな実弾兵装を扱う遠距離モード『|深緑の大地(グリーン・ガイア)』、高機動白兵戦特化『金色の閃光(イエロー・ライトニング)』では相手にすらならず、同じ戦闘思想でありながら千春がセシリアに勝っているBT適正値を遺憾なく発揮出来る、中距離汎用型『蒼き水面(ブルー・アース)』で互角だった。

 

敗因は『蒼き水面(ブルー・アース)』のBT兵装、『フェザー』の火力不足。真っ正面から向かい合えば扱い易さと火力で押し負けてしまうのだ。

 

正直試合の時のセシリアが可愛く見えるほどの無双っぷりだった。

その事をセシリアに言ったら顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

 

可愛い、より綺麗と呼ばれたいお年頃なのだろう。決してそう言う意図で言ったわけではなかったが。

 

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう?騒ぐほどのことでもあるまい」

 

箒が腕組みしながら俺とセシリアを見る。

 

「どんなやつなんだろうな」

 

代表候補生ってんだからセシリアみたいに恐ろしく強いんだろうか? 勝てなくてもいいなら戦って見たいもんだ。

 

「む、……気になるのか?」

 

「ん?、そりゃもちろん」

 

「ふん」

 

聞かれた事に素直に答えたら、箒の機嫌が悪くなった。なんでさ

 

 

「今のお前に女子を気にしてる余裕があるのか?来月には対抗戦があるというのに」

 

「そう!そうですわ一夏さん。クラス対抗戦に向けてより実践的な訓練をしましょう。お相手はこのわたくし、セシリア・オルコットが務めさせていただきますわ!」

 

 

ちなみに、放課後の訓練教官は三人に増えていた。

 

白兵戦が箒。

その他戦闘訓練がセシリア。

 

そして部屋での座学が千春だ。

千春から貰った携帯型投影ディスプレイにインストールしてあるIS辞典、あれは千春がつくったものだった。

 

最後のページ、製作者の名前が千春だった。

 

「ま、やるからには本気だ。クラス対抗戦、獲らしてもらうさ」

 

不満げな箒とセシリアにニヤリと笑う。

 

「うっ」

「あっ」

 

二人が顔を反らす。?なんだ?

 

「織斑くん、頑張ってね!」

 

「デザートフリーパスのためにも!」

 

「今のところ専用機もってる代表って一組と四組だけだし余裕だよ」

 

 

周囲に集まっていた女子達のやいのやいのと楽しそうな気概を削ぐわけにもいかず、俺は「任せとけ」とかだけ言っておく。

 

「―――その情報、古いよ」

 

ふと、教室の入り口から声が聞こえた。なんかすげぇ聞いたことのある声だが……

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから……残念だったわね」

 

 

腕を組み、片膝を立ててドアに持たれている、ツインテールの少女。

 

「なっ、貴女は何者ですの!?」

 

セシリアが狼狽する。『同じ代表候補生』同士、相手の纏う雰囲気でわかるのだ、セシリア曰く。

 

 

「私の名前は凰鈴音(ファン・リンイン)。中国の代表候補生よ。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 

ふっ、と小さく笑う少女。そのトレードマークのツインテールが軽く左右に揺れた。

 

 

 

 

 

ガタンっ!!

 

 

 

 

 

 

教室の窓際でその音はなった。

 

 

席についていたらしい千春が勢いよく立ち上がったのだ

 

 

 

 

 

「り……ん?…」

 

 

 

千春の口はわなわなと震えながら、少女の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

まるで親の仇を見るような眼(まなこ)で。

 

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