IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 15 『相対する竜と騎士』

 

 

 

 

「ほらほら一夏、思考がだんだん単純になって来たよ?」

 

「っ、うおおぉっ!」

 

特訓を開始してから数週間、俺が箒とセシリア相手に慣れたという理由で相手は千春となった。

部屋での座学がある程度終わったのも大きいだろう。

 

そう、相手は千春なのだ。あとは言わずとも………わかるな?

 

 

「ほら、突撃だけじゃダメだって!」

 

「くそっ、届かねぇ!」

 

雪片で斬りかかっても、それを千春は身体を逸らしたり身体を曲げるだけで回避していく。

 

そして、千春が身体を動かす度に『揺れる』胸………もうね、集中出来ん。

しかも千春のISスーツは以前のISスーツの強化版。

 

下乳こそ少なくなったが、背中は腰元……微妙にお尻の谷間が見えるところまでパックリと開き、前は胸元から下乳まで、上下の谷間が見える作りだ。

簡単に言うなら、身体のラインがクッキリ出るタイプの黒のライダースーツ、二つジッパーがあり一つは鎖骨辺りで、もう一つはへそ辺りでまで下がっていて、そのジッパーの間はパックリ開き………

ううむ、わかり辛いか……なら、黒のレオタードに鎖骨辺りからへそ辺りまで、上下に細長いひし形の穴を開ければいい。

 

ともかくこれで今の千春のエロさがわかるはずだ。つか肌色面積がISスーツの面積にくらべ圧倒的に広い。沖縄と北海道くらい広い。

 

 

さらにさらに、胸が『ぶるんぶるん』と揺れる度、

こぼれてしまいそうで怖い。何がこぼれてしまいそうかは諸君らの想像力にお任せしよう。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ!!」

 

「っあ!?」

 

BT兵器『フェザー』から放たれる無数のビーム。

千春の身体にばかり意識を集中していた俺はそれをモロに食らう。

白式の装甲が弾け飛び、衝撃が伝わる。

 

 

「たく、集中しないとダメだって一夏!鈴相手にこんな隙を見せちゃったらアウトだぜ?」

 

「くっ、すまん!」

 

そうだ。今は千春との特訓中。千春に呆れられてたまるか!

千春の周囲に漂う『フェザー』からビームが放たれる。散開させ、周囲から放たないのは特訓だから。

 

それを身をよじり回避し、『跳躍』して千春の背後に回り込む。

回避と状況の立て直しに特化した『三次元躍動旋回(クロス・グリッドターン)』。その機動で逆に相手の死角に回り込む。

 

「千秋ぃっ!!」

 

 

決め所だ。さっきまで仕舞っておいた雪片を展開。音声認識による高速武装展開(ラピット・チェンジ)、0.1秒で武装が展開される。

 

俺はそれを横なぎに振るう。

 

 

 

「ホンと、魅せてくれるよね、一夏は!」

 

 

俺の背後から、ライフルを構えた千春の声が聞こえた。

 

相変わらず見切るのが速い。三次元躍動旋回(クロス・グリッドターン)を使われ今度は俺が背後を取られた。

 

 

 

 

 

「隙だらけだぞ一夏!千春がお前に甘いからよかったものの、凰鈴音(ファン・リンイン)相手にそんなので勝つつもりか!?」

 

「その通りですわ!あの隙だらけな戦い方の貴方を、わたくしでしたら戦闘開始から57秒で17回撃墜できましてよ!?」

 

 

こめかみに青筋を浮かべた箒とセシリアが俺に詰め寄る。こえぇ。

いや、確かに集中出来てなかった。折角三人が俺に付き合ってくれてるのに。

 

 

「まあまあ二人とも、落ち着いて。けど確かに一夏は集中出来てなかったな。最後の三次元躍動旋回の応用はすごいと思ったけど……どうかしたのか?」

 

 

千春が心配そうに俺の顔を覗き込む。

 

「……悪かった、ちょっといろいろあって集中出来なかった。あと一回、あと一回だけ、……頼めるか?」

 

「…………うし、今日が試合前にアリーナ使える最終日だしね。……そだ、箒、『グラデーション』使ってみる?」

 

頷いてからライフルを展開した千春が箒を見て問う。

今の箒はISスーツを纏ってるだけで『打鉄』は装備していなった。

なんと言っても今日は、クラス対抗戦前にアリーナが使用出来る最終日。訓練機『打鉄』を使用したい生徒は山ほどいる。

 

アリーナは試合用の設定に調整される。つまり実質特訓は今日で最後だ。

 

 

「え?……わ、私がか?それにお前のISは……」

 

「大丈夫大丈夫、『グラデーション』は一次移行(ファーストシフト)》してないしね」

 

 

『グラデーション』を装備していた千春が膝を付き『グラデーション』から降りる。

降りる瞬間、胸が一際大きく揺れる。

 

 

「一次移行していないんですの!?」

 

 

紺色のISスーツで身体を包んだだけで、専用IS『ブルー・ティアーズ』を装備してないセシリアが千春に駆け寄る。

 

「え?知らなかった?『グラデーション』は一次移行をせず、最低限システムが同乗者に合わせるだけで高い能力を発揮出来るようにした機体なんだ。だからモード選択機能を付け、同乗者の得意タイプのISにするのよ」

 

 

それじゃあれか?今までの千春は最適化とモード選択のみで戦ってたのか?

 

「まあね。機体の特性上、形態移行なんてもっての他だからね。あれ、同乗者に合わせて武装変わったりもするし」

 

 

唖然、だ。最近ようやくISの専門用語が理解できた俺を始め、箒やセシリアまで唖然としていた。

 

 

「ほら、箒乗って見てよ。箒なら『 黄色い閃光(イエロー・ライトニング)』かな?」

 

頷いた箒が『グラデーション』に乗り込む。灰色の装甲の『グラデーション』が起動する。

 

 

「では行くぞ一夏。モード選択(セレクト)、『黄色い閃光(イエロー・ライトニング)』!」

 

装甲を黄色に染めた『グラデーション』が多方向推進翼を広げ飛翔する。

 

「ああ!行くぜ箒!」

 

俺も推進翼に火をつけ飛翔した。

 

 

 

 

「ぜぇっ、ぜぇっ!も……ムリ」

 

 

箒との戦闘後、同乗者を千春へ変えた『グラデーション』と戦い、心身ともに疲れきった俺が倒れ込む。ISを展開してないため、地面へ倒れた痛みが直に伝わる。

 

 

「お疲れさま一夏。さて、アリーナの使用時間も終わりに近いし、今日はこれでお終いにしよっか」

 

同じくISを粒子変換しチョーカーにした千春が俺含め三人に聞く。

 

 

「ああ、そうしよう。ありがとう千春、貴重な経験をさせて貰った」

 

「スペック上では『打鉄』を上回っていますからね。さらにその特性から専用機クラスの機体に触れたということです。IS適性ランクCの箒さんにはそうそうできない経験ですわよ?」

 

「む、…わかっている。だから貴重な経験をさせて貰ったと言っただろう。それに元より私はセシリアに言ってはいない!」

 

 

いつもならもっと噛みつく箒も、BT兵器を用いてみてセシリアの凄さを理解したのか、フン、と顔を逸らす程度だ。

 

 

「ふふ。でも箒はモード選択の切り替えがとても速かったね。普通の人は始めての時は大抵急激な性能変化についていけないのに。才能だよ才能!」

 

「そ、そうなの?……ふふ、そうか…才能、か」

 

首のチョーカーに触れながら少し驚いたように言う千春に、箒は気分を良くしたのか、フフンと腕を組んだ。

不適に笑いながら喜ぶな、怖いです。

 

「ほら、大丈夫?」

 

千春が倒れている俺に手を伸ばしてくれる。

俺はそれをドギマギしながら掴んで引っ張られた。

 

「悪いな千春。じゃあまた後で、食堂でな?」

 

箒とセシリアに軽く手を振りながら俺と千春は二人とは違うピットへ向かい歩き出した。

 

 

「にしても、三次元躍動旋回の応用は本当にお見事だったよ一夏。初見で見たら鈴だって驚くだろうね」

 

「あ、ああ…」

 

「一週間はアリーナは使えないし…千冬先生に頼んでグラウンドを使わせてもらえないかな?」

 

「あ、ああ……………ゴクッ」

 

 

 

今千春の着てるISスーツは前回のISスーツの『強化』版。後ろから見た千春のISスーツはもうやばかった。

 

歩く度にぷりっぷりっ、と突き出されるお尻。

此度の背中がガバッと開いたISスーツは前からも後ろからも至高の一品だった。俺が訴えたおかげかTバックでもなくなったし。いや、ある意味Tバックよりエロい。

思わず生唾を飲む。

 

 

「っと、お風呂先にする?後にする?」

 

 

 

 

 

 

幻視するのは、玄関先に現れたフリフリの白いエプロンの千春。そのフリフリエプロンから延びる四肢は肌色。手にはご飯を作っていたのか、お玉を一つ持っていた。ご飯を作ってる最中だというのに、帰ってきた俺を玄関先まで迎えに来てくれたのだ。その甲斐甲斐しさにときめく俺。

 

そ・れ・と・も、一緒に、入る?(はぁと)

 

「一緒に入るでっ!」

 

エプロンを取った千春は生まれたままの姿で、俺はそんな千春をお姫さま抱っこして一緒に入るのだった。

台所では沸騰した鍋から泡が吹き出し、火が自動で止まる…………俺と千春がご飯にありつけたのは深夜だった……………………なんてな!妄想、妄想だぜ!

 

いやぁ、ベタだ、ベタベタだ。共同作業して身体も汗でベタベタだ。うわ、下ネタでだじゃれとか初めて使ったよ。

 

 

 

 

「ふぇっ?……一緒に…え?……いち……か?」

 

 

 

そう、妄想だったのだ。千春が、一緒に入る?なんて聞いたのは妄想内の話なのだ。

 

 

 

なのに、俺は現実(リアル)で答えてしまったのだろう。

顔をそりゃもう真っ赤にして聞いて……最終確認してきた千春を見て俺はそう確信した。

 

 

 

 

 

 

 

「いち……か?」

 

千春はおずおずと、俺を見ながらもう一度俺の名を呼ぶ。

耳元まで顔を真っ赤にした千春もう……たまらん!

 

じゃねぇよ俺!!なにこんな時に萌えてんだよ俺!

 

どうすんのよ、どうすんのよ俺!

 

 

 

 

神は言っている。ここで押し倒すべきだと……………

 

 

 

黙れっ!神と言う名の俺の煩悩っ!!!

 

そんなことしたら嫌われるに決まってんだろ!!

 

「きゃっ!?……いっ、一夏?……どうしたの?」

 

あれ?なんで俺千春の両肩掴んで壁に押さえ込んでるんだ?

 

「い、一夏?……一夏の今の顔……こ、怖いよ?どうか…したのか?」

 

千春の怯えた顔。だけど俺は止まらない。段々と千春の顔が近づいてくる。

 

「いっ、一夏!だっ、ダメ!ダメだよっ!」

 

千春の顔に涙が浮かぶ。しかし、その言葉に反して千春は反抗一つしない。言葉だけだ、身体は受け入れようとしてる。

 

 

「い…ちか……だ…め…」

 

二人の唇がふれ合う時、千春は瞳を閉じた。

その閉じた瞳から一筋の涙が零れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い!一夏?だいじょーぶか?」

 

 

ぶんぶんと、目の前で千春の手が振るわれる。

 

「へ?」

 

あれ?今俺、千春とキスし……

 

 

「お、気がついた。ほら、だから先に入るか後に入るかって…………そだ、なんなら一緒に入るか?私はべつにいいぜ?」

 

千春はニヤリと笑うとISスーツに手をかけチラリ、と素肌を見せる。

 

「…………」

 

あれか?まさかあれなのか?あそこまでいってあれか!?

 

夢落ち(妄想)とかのあれか!!??

 

 

「ぐぅおおおぉぉおッッ!!!」

 

膝をつき頭を床に叩きつける。

 

俺は、俺は!今!この時!!煩悩しかないのか!!?

 

俺はっ!好きな子を押し倒す妄想をっ!!

 

「ちっきしょおおぉぉぉっっ!!!!!」

 

「いっ、一夏ぁっ!?」

 

何度も何度も頭をぶつける。千春が俺を止めようとするも止まらない。恥ずかしさとムカつきと勿体なさで止まらない。

 

 

 

 

「ほんとに大丈夫?」

 

「ああ、もう平気。心配かけてごめんな千春」

 

「たくホントだよ、いきなり頭打ち付け始めてさ。びっくりしたんだぜ?」

 

ホットミルクが注がれたカップを千春から受けとる。並々と注がれたそれは千春の好物でもあった。

 

「ま、なんでも一夏が平気ならそれでいいや。箒とセシリアがご飯持ってきてくれるから、一夏はジッとしててね?」

 

千春は自分用のマグカップ(可愛らしいキャラクターが描かれている)にもホットミルクを注ぎ、ふーふー、と息を吹きかけてからずずず、と啜った。

 

そんな一つ一つの動作に一夏は見惚れ、先程のが妄想でよかったと心から思った。千春のあんな顔、俺は望んじゃいない。いつもの千春の表情のほうが魅力的だ。

 

 

「あちっ!」

 

ゴクッ、と飲んだホットミルクは熱く、俺は舌を火傷した。

 

 

 

 

 

試合当日、第二アリーナ第一試合。組み合わせは初っぱなから俺と鈴。

 

噂の新入生と唯一ISを動かせる男である俺との試合ともあり、会場は満員御礼。立ち見席や会場入り出来なかった生徒のためのモニタールームまで満席らしい。

 

前回のクラス代表決め試合と同じかそれ以上の熱気を会場から感じる。

 

 

「へぇ、それがアンタのIS?なんか西洋の騎士みたいね?」

 

ピットから出た俺をまちうけていたのは鈴とそのIS『甲龍(シェンロン)』が試合開始の時を静かに待っていた。

 

「っ……ああ、白式って言うんだ。よろしく頼むな」

 

 

なんでもないような会話。しかし、俺はすでに圧倒されていた。

 

鈴の放った言葉に、全身を威圧する覇気が込められていた。

本気のセシリアと戦った時と同じく、鈴の所作、言葉、視線、存在に俺が圧倒される。

 

肌にビリビリとした感覚が走る。

『絶対強者』の存在感。これが代表候補生。

 

 

「ふふ、そんなに震えてて大丈夫?手加減してあげよっか?」

 

鈴がクスリ、と笑う。

 

バレている。俺が鈴に圧倒されている事に。

 

 

「バカ、武者震いだ。お前こそ、手加減なんかするなよ?負けた後に文句言われても敵わん」

 

嘘だ。互いに、な。

俺の震えは武者震いなんかじゃない。恐怖、戦慄とかのもんだ。強者との戦いに心震えたわけじゃない。

 

対して鈴。奴は手加減ができない。いや、油断といった事が本能的な、あるいは体質と言ってもいいレベルで絶対に出来ない。

強弱は付けられる。しかし、慢心や驕りがないのだ。

 

昔からそうだった。全ての事へ全力で………

 

そして更には俺は手加減とかそう言うのをされるのが大嫌いだった。故に鈴の言葉はただの挑発。手加減できねぇくせに言うなっての。

 

「じょーとーっ!……と言うか、手加減してくれなんて言ってたら試合前にボコボコにしてたわ」

 

握った拳をもう片方の掌にぶつけ、鈴はニヤリと笑う。

 

「そうかよ、そりゃ命拾いしたな」

 

対して俺は空中で直立不動。右手にいつでも『雪片・千秋』を呼び出せるよう、集中するためだ。

 

 

アリーナの試合開始のカウントが始まる。

 

 

鈴は片手に、二メートルはしそうな大剣を展開する。

青龍刀と呼ばれる剣に形状が似ている。

 

間違えなく、鈴のIS『甲龍』の近接武器だ。

 

 

カウントが2を切る。しかし俺はまだ雪片を抜かない。

 

 

カウントがゼロを示し、ブザーがアリーナへ鳴り響く。

 

 

ギュンッ―――

 

 

ブザーがなり終わるよりはやく、高速で接近してくる鈴。

 

 

俺は、まだ抜かなかった。

 

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