IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 1 『北欧の魔女』

色々疲れた一時間目だった。

 

職業不詳だった実姉である千冬姉だけならまだしも、二年前に日本から北欧はアイスランドへ帰った初恋の女の子(千春は親友だと思っている)とまで再会したのだ、

色々と疲れた。

 

千冬姉は事ある事に叩くしそれみて千春には笑われちゃうし……はぁ、不幸だ。

 

 

「い~ちかっ!」

 

そんなことを考えていれば、名前を呼ばれると共に背中を叩かれた。

 

 

 

「うお!?ち、千春か、ビックリさせんなよ…」

 

 

驚いた、思考の海に肩まで浸かっていたためか声を掛けて来た相手が千春なのかはわからない。

多分後者だけどね。

 

 

「悪い悪い、いや~にしてもマジで藍越とアイエス学園を間違えるとはな、

流石一夏クオリティ。テレビで見たときゃ驚いたぜ」

 

二年前と変わらずニッコニコと嬉しそうに笑いながら千春は俺の肩をバシバシと叩く。

 

 

 

「む、悪かったな俺だって別に狙って来たわけじゃないんだ。

ただ試験開場が迷路みたいになってて、迷い着いた場所にIS があって、触って

みたら動いたんだ」

 

 

 

確かに間違ったのは俺だけさ、そんなに笑わくても良いんじゃマいか?

 

ゲラゲラと笑わってるわけじゃないが、やっぱ笑われるのはやだ。

それが片思いの相手なら尚更。

 

 

「そうむくれんなって! まぁ何はともあれあたしは嬉しいぜ?また一夏とおんなじ学校

に来れるんだからな!」

 

 

参った。またこれだ、千春は俺が元気が無いときや機嫌の悪い時には毎回、俺の肩に手を回し、

頬をツンツンと突くのだ。

 

肩に手を回すために身体は密着し、千春の顔がすぐそこにある。

更には頬を突いてくるなんて言ったご褒美までッ!

 

「お、おう!俺もその……嬉しい…ぜ」

 

顔が熱いのがわかる。多発耳まで真っ赤になってんだろう。

やや上擦った声が手でしまう。

ちくせう、相変わらず可愛いじゃねぇかっ!!

千春を直視出来ず顔をそらす俺マジへたれ。

 

 

でも…二年前から可愛かったけど…なんて言うのかな、綺麗になった。

 

太ももまで伸びる淡い栗色の髪はさらさらと、碧色の瞳は大きく開かれて、その身体は女性

らしい身体付きで……本当に何もかもがグレードアップした感じだ。

 

そのくせ昔のままで接してくるんだ、正直戸惑う。

 

 

「ん?なんかついてるか?」

 

「い、いや!なんも!なんでも!」

 

 

チラチラと見てたのがバレてあからさまに慌ててしまう。

 

そりゃ千春と俺の距離はゼロ距離だ、嫌でも相手が見える。いやいや、

嫌なんかじゃないぞ?

 

 

「……少し、良いか?」

 

「ん?」

 

◇

 

 

声を掛けて来たのはポニーテールの女の子だった。

あれ?なんか私すげぇ睨まれてるぞ?

 

 

「お前…箒?篠ノ之箒(しのののほうき)か!?」

 

 

突然一夏が声をあげる。箒?ホウキ…掃除用具?

おい一夏、お前いつから人に変なあだ名付けていじめる

ようになったんだ?親友として情けないぜ!

 

 

「あ、あぁ、久しぶり…だな」

 

 

と思ったがどうやらあだ名じゃないらしい。

ポニーテールの少女は顔を赤らめながらどこか気恥ずかしそうに頷く。

 

 

「やっぱりか!いやぁ六年ぶりか?変わらいなぁ、箒は、一目でわかったぜ」

 

「ふ、ふん…」

 

嬉しそうに笑う一夏とは対照に、一夏を軽く睨んでからそっぽ向く。

 

 

「なぁなぁ一夏、この人知り合い?」

 

 

二人の会話をぶった斬っての問い。

ポニーテールがギンッと迫力満点の睨みを向けてくる。こえぇ

 

 

 

「あ、あぁそっか、俺がまだ小学生だった頃のお隣さんで幼馴染みの篠ノ之箒だ」

 

「おぉ!一夏が前言ってた剣道少女か~、いやぁ~良い実りだこと」

 

なるほどと手を合わし、相手の身体の一点を見つめる。

たわわに実った二つの丘、胸であるおっぱいである巨乳であるッ!

 

わきわきと手を動かす私を一瞥し箒さんとやらは一夏に詰め寄る。

 

 

「私の方からも聞きたい、この女は誰だ?説明しろ一夏」

 

 

やや高圧的な態度で一夏と私を交互に見る。

 

 

「中学に上がってから仲良くなった友達の千春だ」

 

「千春・フレイヤ・ブリュッセルです、よろしくお願いしますね?篠ノ之さん」

 

 

一夏や親しい仲でないひととは私はできるだけ話し方を変える。

いわゆる猫被りだ。

 

にこりと微笑み、一礼。

 

箒さんは私の猫被りに眉をひそめるも、一夏に向き直る。

 

 

「一夏…その、話があるのだが…」

 

 

「ん?あぁ良いぜ?えっと、廊下で良いか?」

 

話難い事なのだろうか、一夏は頷いて立ち上がる。

勿論私は一夏から離れた。

 

「ほいじゃあいってらっしゃ~い」

 

「お、おう」

 

片手を振りながら見送り、私は自分の席へ向かった。

 

 

「ねぇねぇ、ブリュッセルさんって織斑君と知り合いなの?」

 

先ほどから見ていたのか、五、六人くらいの女子が私の席を囲む。威圧感がぱねぇ。さてさて被りますか。

 

「えぇ、織斑君とは中学生の頃に一年間同じクラスになって…」

 

その後、私はチャイムがなり、一夏が戻ってくるまで中学生時代の一夏の話をせがまれ話し続けた。

 

いやぁ懐かしいな~私が四人くらいの男共(高校生くらい)にナンパされた時なんて、その四人相手に大立ち回り。

 

「お前は俺が守る!」なんて大真面目に言い放った時は親友ながらカッケェと思ったもんだ。

 

その後学校に呼ばれた千冬さんに頭を殴られてた事も皆に言っておく。

 

 

◇

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

 

二時間目の休み時間、机に突っ伏していた俺に金髪ロールの少女が

声をかけて来た。

二時間目にて自分の知識の足りなさを思い知った俺は頭を抱えて机に突っ伏していた。

 

そんな俺はいきなり声をかけられ素っ頓狂な声を出した。

我ながらカッコ悪い。

 

「訊いています?お返事は?」

 

「あ、あぁ。 訊いてるけど……何かな?」

 

俺はそう答えると目の金髪ロールの女子は口に手を当てわざとらしく

声をを上げた。

 

「まぁ! なんですの、そのお返事は?わたくしに話かけられるだけで

も光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではなくって?」

 

「…………」

 

あー、こう言うタイプの人か。

 

正直この手合いは苦手だ。

女性しかISを動かせない=軍事力になる=IS操者は偉い=女は偉い

なんて図式を馬鹿正直に謳う手合いは苦手だ。

 

 

偉いのは百歩譲って許せるだろう。

しかし、だからと言ってその力を振りかざすのは違うだろう?

粗暴な力は暴力でしかない。

力は誰かを助けるためにあるんだから。

 

 

「えっと、悪いな。俺君のこと誰だか知らないし」

 

実際知らない。

 

職業不詳だった千冬姉の仕事先がIS 学園だった事のほうが十倍驚きだし、

千春が同じクラスだった事なんて百倍驚いた。

 

しかし彼女は俺の答えが気に食わないのか、吊り目を細め、いかにも

男を見下した目で俺を見る。

 

 

「わたくしをしらない?このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

 

へぇ、セシリアっていうのか。ふーん。

 

「あ、質問しても良いかな?セシリアさん」

 

「ふふん。下々の者の要求に答えるのも貴族の務めですわ。よらしくてよ?質問を受けましょう」

 

 

「代表候補生って、何?」

 

ガタタッ、ゲラゲラ。聞き耳を立ててたクラスの女子数名がズッコケた。

笑ってるのは絶対千春だ。ちくせう。

 

「あ、あ、ああっ…」

 

「『あ』?」

 

「あなたっ!ほんきでおっしゃってますの!?」

 

 

凄い剣幕だ。思わずオールひらがなになってしまうくらいに。

 

「あぁ、本気だぞ?知らん」

 

知らない事は素直に言おう。見栄は身を滅ぼす。

 

 

「…………」

 

セシリアはあんぐりと開けていた口を閉じ、頭痛でも起こしたのか、頭が痛そうにこめかみ人差し指で押さえながら呟き始めた。

 

 

「し、信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ?テレビがないのかしら……?」

 

「失礼な、テレビくらいあらぁね。見てないけど」

 

 

あ、セシリアがため息付いた。

 

「で?代表候補生って?」

 

「はぁ……まぁいいでしょう。このセシリア・オルコットがお教えしましょう。代表候補生とは……」

 

「国家代表IS 操者の、その候補生として選出される優秀な人達のことだ。つまりエリート、つか一夏、単語から考えりゃまるわかりだぞ?」

 

セシリアさんの説明を千春が引き継ぎ会話に入って来た。

なるほど、簡単な事ほど見落し安いってのは本当なんだな~。

 

 

「そう言われればそうだな。サンキュ、千春」

 

「気にすんなダチ公。IS についてわからない事があったら私が教えてやんよ」

 

「マジか!?助かるぜ!」

 

千春と一緒に勉強フラグが立った!

いやっほ~!!……なんて心の中で受かれてたらセシリアさんが肩をプルプルと震わせてるのに気付いた。

 

 

「あっ、あなた…一体なんですの!?突然会話に入って来て!わたくしが話していたのに!」

 

セシリアは吼えた。

吼えたと言っても子犬が鳴くくらいの声だったが。

 

「あぁ、すみませんMsオルコット。彼とは友人で、つい…」

 

「ついって!………?…あなた、わたくしと会った事はございます?」

 

苦笑気味に謝る千春に、セシリアは小首を傾げる。

いや、本当に傾げた。

 

 

「え?…あ、そっか。あの時はサングラスかけてたから…そりゃ気づかないか」

 

セシリアの言葉に何を思ったのか、突然胸元を広げ、現れた胸の谷間からサングラスを抜き取り、それを慣れた手つきで装着した。

 

にしても見事な谷間だ。山田先生と互角以上の巨乳だ。

やべぇ、オラわくわくしてきたぞ!

 

「っ!?……」

 

絶句。

 

サングラスを掛けた千春を見て、セシリアさんは一歩後ずさった。いや、正確にはサングラスと襟のリボン止めに使ったブローチ。あれって……

 

 

気づけば、周囲で聞き耳を立てていた女子達まで驚いていた。

 

「なぁなぁ千春?」

 

「なんだい一夏?」

 

凍り付き、静かになった教室の中で声を出す。

 

「そのブローチってさ、俺があげた…」

 

「ん?あぁ。帰国するとき一夏がくれた奴だよ」

 

あぁ、やっぱりそうか。

小さな頃にお店で見つけ、千冬姉にせがんで買って貰った奴。

千春、付けててくれたのか……なんか、嬉しいな。

 

 

「な、なんで…い、いえ!何故あなたがっ…Ms.カレンデュラがここに!?」

 

 

 

ヒステリックにも聞こえる声で叫んだ。ん?みす、かれんでゅら?

 

カレンデュラってなんぞや。

 

「カレンデュラってのはキンセンカの事だ。ほら、一夏から貰ったコレ、キンセンカの花があしらってあるだろ?」

 

「キンセンカだったのか、それ。で?ミス・カレンデュラってのは?」

 

なんかさっきから聞いたばっかだな。

 

「Ms.カレンデュラ……名前、年齢、出生不明のIS操者。付いたあだ名は数知れず。その一つが、『北欧の魔女』。ずば抜けたBT適性値を叩き出した北欧がアイスランドの元代表候補生だ」

 

……千冬姉、突然後ろに現れないでくれ。

 

「ちなみにあらゆる国でモデルをしている超人気の操者だそうだ。ほぅ、グラビアまでしているのか」

 

千冬姉、何Wikipedia見てんのさ。

 

「二度目は許さん、織斑先生と呼べ」

 

 

スッパーン!

 

千冬姉、あーた読心術まで会得してたんですか?

 

 

スッパーン!

 

 

 

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