IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 21 『一難去って』

 

六月頭、日曜日。

俺は久々にIS学園の外――――と言うよりロリ巨乳好きのバカの家にいた。

 

 

 

「ひでぇ紹介だなオイ」

 

「他にどう紹介しようってんだよ。俺と中学三年間全て同じクラスで、いまや伝説となったデルタバカの一角とでも言えばいいか?」

 

「とりあえずバカはよせバカは。品性が感じられん。つかその残りの二人はお前と千春だったろうが」

 

「バカ野郎!千春はバカなんかじゃねぇ!」

 

「そういやお前、名付けた先公に喧嘩売りにいったっけ、千春はゲラゲラ笑ってたけどよ。バカはやめろバカ」

 

「仕方ねぇだろが。俺が千春を馬鹿にされて黙ってられると思うのかよこのバカ」

 

「少しは抑えろって。相変わらず千春バカだなこのバカ」

 

 

「いや…まあ、な」

 

「照れんなうぜぇ」

 

 

カチタチとゲームのコントローラーのボタンを押しながら織斑一夏とその男の親友、五反田弾(ごたんだだん)は互いに親友を馬鹿にする。

 

 

「あっ!てめっ、ここで奥義使うか普通!?」

 

「イタリアのテンペスタは削りがヤバイからな。このまま押しきらせてもらうぜ」

 

五反田弾はニヤリと笑うと必殺技コマンドを叩き込む。

 

「だあぁっ!アイスランドの打鉄使うなって!」

 

「やなこった。いやぁ、アイスランドの打鉄、『閃光のマリアンヌ』機はマジでつえぇ」

 

「ちくしょう、なら今度はフランスのラフォール・リヴァイブ使わせてもらうぜ」

 

「うわ、中距離最強来やがった」

 

 

ちなみに俺と弾がやってるこのゲームは、『IS/VS (インフィニット・ストラトス、ヴァーストスカイ)』

 

発売日だけで百万本セールスを叩き出した超名作。

ちなみにデータは第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』のものが使われている。

 

ちなみに千冬姉は諸事情によりプレイヤーキャラとしては登場しておらず、初心者用のトレーニングモードでのみ登場する。

 

(というのが表の情報で、実は、登場キャラクター全員をエクストラハードモードSSランクを叩き出した後。新たに追加されるタイムパラドックスモード(第一回『モンド・グロッソ』の世界にタイムスリップした、と言うモードだ)、その二週目のラスボスとして登場する。性能はと言えばまさに鬼畜。試合早々に仕掛けてくる不可避、更には食らってから数秒麻痺ると言う糞使用の必殺技を放って来て、麻痺している間に接近して来て、一気にヒットポイントが半分まで削られ、圧倒的不利な状況から戦闘が始まる。こちらが数値を弄らない限り絶対に勝てないと言う前代未聞の詰みゲーだ)

 

 

「で?」

 

「で?って何がだよ?」

 

「だから女の園だよ。いい思いしてんだろ?」

 

「してねぇっつの何回説明すれば気がすむんだよこのバカ!」

 

「嘘つけこのバカ。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねぇか。なにそのヘヴン。招待券ねぇの?」

 

「ねぇよバカ」

 

親友のバカさ加減に飽きれ、俺はため息をつく。

 

「お兄!さっきからお昼できたって言ってんじゃん!さっさと食べに―――」

 

どかんと部屋を蹴り開けて入ってきたのは弾の妹、五反田蘭(ごたんだらん)。歳は一個下で今は中三だ。

超有名&超お嬢様学校に通ってる超優等生。

なんだっけ?生徒会長でしかも学年模試一位だっけか?兄とは違うのだよ兄とは。

 

「お、ひさしぶりだな蘭。お邪魔してるよ」

 

「いっ、一夏さん!?」

 

やはり女子というのは自分の家だとこうもラフな格好なのか。

肩まである髪は後ろでクリップに挟んだたけの状態。

服装と言えば、千春の普段着と同じくショートパンツにタンクトップと機能性特化だ。

 

「い、いやっ、あのっ、き、来てたんですか……?全寮制の学園だって聞いてましたけど……」

 

「ああ、うん。今日はひさしぶりに外出。家の様子見に来たついでに寄ってみた」

 

「そ、そうですか……」

 

しかし、蘭って昔からそうだけど、なんで俺相手だと妙にたどたどしいというか、敬語なんだろうな。

 

「蘭、お前なあ、ノックくらいしろよ。恥知らずな女だと思われ――――」

 

ギンッ!蘭の視線一閃。

おお、弾がダメージを食らった配管工のように縮んでく。相変わらず分かりやすい戦力図で何よりだ。

 

「……なんで、言わないのよ……」

 

「い、いやっ、言ってなかったか?そうか、そりゃ悪かった。ハハハ…」

 

「…………」

 

ギロリ、死に体にナイフを突き立てるが如くの視線を再度弾に送り付け、蘭はそそくさと部屋を出てく。

 

「あ、あの、よかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」

 

「あー、うん。頂くよ、ありがとう」

 

「い、いえ……」

 

ぱたん、ドアが閉じて静寂が訪れた。

 

 

 

「しかし、アレだな。蘭ともかれこれ三年になるが、まだ俺に心を開いてくれないのかねぇ」

 

「は?」

 

何気なく言った言葉に、「お前何言ってんだ?」とでも言わん勢いで聞き返してきた。

 

 

「いや、ほら、だってよそよそしいだろ?今もさっさと部屋から出て行ったし。俺としてはもう少し仲良くしたいんだが」

 

「…………お前はアレだ、わざとやってんのか?」

 

「何をだよ」

 

「まあわからんならそれでいい。俺もこんな歳の近い弟はいらん」

 

「いやいや、蘭に失礼だろ?蘭にも選ぶ権利があるんだしよ」

 

なんで弟とか、そう言う話が出てくるんだよ。

 

「まあ、いいや。とりあえず飯くってから街にでも出るか」

 

「おう、そうだな。昼ゴチになる。サンキュな」

 

「なあに気にすんな。どうせ売れ残った定食だろう」

 

 

俺と弾は立ち上がり、昼飯のため一階の『五反田定食』へ降りる。

 

「うわぁ」

 

「ん?……千春!?」

 

そこには俺たちの昼食が用意してあるテーブルがあるんだが、そこに先客がいた。

千春だ。

 

「お、来たな?よっ、久しぶり、弾」

 

髪を蘭のようにクリップで後ろに束ね、黒のライダースーツに身を包んだ千春が、美味しそうに滅茶苦茶甘いカボチャ煮定食を食べていた。

 

「おう、久し振りだ千春。時に蘭、落ち着け」

 

「なに?どこが落ち着いてないように見えるの?」

 

「いや、お前…」

 

「お兄、黙ってて」

 

「…………ハイ」

 

どこか気分が悪いのか、表情の優れない蘭が弾にまた棘のある視線を向ける。

 

 

「なんで千春がここにいるんだ?今日は確か用事あるって朝言ってたろ?」

 

「だから、その用事でこっちに来たの。詳しく言えば別荘にお母様が来てたから会いにいってたんだよ。ああ~、やっぱこのカボチャ煮美味し~」

 

別荘と言うのは、当時中学生の時、日本にいた千春が住んでいた豪邸だ。

 

千春のお別れパーティで一度中まで入ったことはあったが、大きくてお城か何かに間違えたほどだ。

 

アイスランドの本邸はその規模の何倍も無駄に広いらしい。

 

 

「ん?蘭さあ」

 

「は、はひっ!?」

 

「着替えたの?どっか出掛ける予定なのか?」

 

「あっ、いえ、これは、その、ですねっ」

 

「すごく可愛いぞ?似合ってる」

 

「かっ、かわっ!!?」

 

 

先程までのラフラフな姿は微塵も残ってない。

髪もしゅるりと下ろしたロングストレートが、キラキラもキューティクルを放ってる。

 

服装は六月と言う事もあってか半袖のワンピース。

薄手のそれを身に纏い、裾からは十代特有の躍動感溢れる脚が伸びている。

 

わずかにフリルのついた黒いニーソックスは、もしかしたら、好きな人にはものすごい好きなのかもしれない。

いや、知らんけど。

 

そこまで考え、俺はふとあることを考えた。

 

 

この服装を『千春』がしたら、だ。

 

身体のラインがくっきりわかるライダースーツを着こんだ千春は、六月特有の湿気と暑さから胸元まど大きくジッパーをおろしていて、俺がチラと千春を見れば横から千春の胸の先端が見えた。

 

 

「ぐふぉ!!??」

 

「これ以上横を視るな一夏っ!死ぬだけだぞっ!!」

 

 

鼻を押さえた俺に弾が駆け寄る。弾の鼻からも赤い筋が………

 

さて、話に戻ろう。

 

髪を下ろし、蘭と同じ半袖のワンピースと黒のニーソックスをはいた千春。それは一言で言うならば………

 

 

『清楚なお嬢様』

 

 

あ、俺ものすごい好きかも。

 

 

 

 

 

 

「ブリュッセルさん、お引っ越しですよ」

 

「はい?」

 

 

夜、IS学園に戻った俺を待っていたのは死刑宣告だった。

 

「先生、もう一度いってください」

 

「はっ、はいっ。すみませんっ」

 

俺が鋭い視線を飛ばすもので、山田先生は小動物のようにびくっと身をすくめた。

 

 

「えっと、部屋の調整が付いたので今日から同居しなくてすみますよ」

 

同居しなくて住みます……――――ほう、山田先生もなかなかやる。じゃなくって!

 

 

「えっと、それじゃあ、私もお手伝いしますから、すぐにやっちゃいましょう」

 

「まっ、待ってください!それはっ、今すぐでないといけませんか?」

 

「それは、まあ、そうです。いつまでも年頃の男女が同室で生活をすると言うのは問題ありますし」

 

足しかに。世間一般の常識とすれば問題だ。

 

俺が最初に世界に対し怒りを覚えたのはこの時だった。

 

 

「安心しろって一夏。最近はあんまり一夏の布団に潜り込んでなんてなかったし、寝ぼけて抱きついたりなんて多分もうしないし……他の子に迷惑なんて掛けないからさっ、安心して見送ってくれよ!」

 

 

千春が笑顔でサムズアップする。

 

千春の言葉を聞いて山田先生が一瞬で顔を真っ赤にする。

 

 

そう、千春。こう見えて寝起きは意識が殆どなく、なおかつ人肌恋しくなって近くの人に抱きついてしまうのだ。

 

驚いたよ。朝起きたら千春が俺を抱き枕のように抱きついて来たり、朝布団が盛り上ってると思ったら、『脚』に千春がしがみつくように抱きつき股間に顔を埋めたり、朝起こしてあげたら引き寄せられたり………正直、自分の理性に誇りを持ちはじめていたところだった。

 

「よし、じゃあな一夏。部屋は別だけど飯は一緒に食おうなっ」

 

大きな旅行カバンを二つ、カバンについたローラーをカラカラと鳴らしながら、千春は陽気に去っていった。

 

 

 

 

ちくせう。日々の潤いが、俺の癒しが……

 

俺は膝をつき、床に拳を何度も叩きつけた。

 

 

「い、一夏っ…いるか?」

 

 

俺が部屋の隅でうずくまっていると、ドアが軽くノックされた。

 

声の主は――箒か。

 

 

「ああ、いるぞ~」

 

大きくため息をついて立ち上がる。玄関までいきドアを開ける。

 

「…………」

 

むすっとした顔の箒が腕を組み仁王立ちしていた。

 

「…………」

「…………」

「………?」

「っ………」

 

「どうかしたのか?まあいいか。とりあえず部屋入れよ」

 

「へっ、部屋ぁ!?」

 

ドアを大きく開き招き入れようとしたら顔を真っ赤にしながら素っ頓狂な声を上げる。

 

「なんだよ、ここでいい要件なのか?」

 

「あ、ああ、ここでいいっ」

 

「そうか」

 

「そっ、そうだっ」

 

「…………」

「…………」

 

 

「箒、用がないなら俺、今からふて寝するから――――」

 

「よ、用ならあるんだっ!待ってくれ!!」

 

 

突然大きな声を出され俺は驚いた。

いや、箒。通路でそんな大きな声出すなって。

 

 

子犬のような目で見上げられ、俺は小さくため息をついて箒の言葉を待つ。

 

 

「こっ、今月末の学年個別リーグマッチなのだがっ――」

 

六月末に行うらしいそれは、クラス対抗戦とは違い、全員参加の個人戦らしい。一週間内に各学年、全校生徒を戦わせると言った荒事。

 

学年別でくぎられている以外は特に制限もないそうだ。

しかし専用機持ちが圧倒的に有利なのは変わらない。

 

「わ、私が優勝したら―――」

 

よくみたら、箒はむすっとしながらも頬を紅潮させていた。何が恥ずかしいのか、目は俺を向いていない。

 

「付き合ってくださいっ!……じゃなかったっ、付き合ってもらう!」

 

「………は?」

 

何がなんだかわからない。突然指を指され宣言され、そして、きゃーきゃーいいながら走り去ってしまったのだ。

 

「付き合うって、買い物かなんかか?罰ゲームかなんかか?」

 

腕を組み俺は首を捻った。

 

 

 

 

「聞いた聞いた?」

「うんっ!聞いたよ聞いたっ!」

「これはおもしろいことになるよーっ」

 

 

 

 

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「確かに、ハヅキのっていいよな」

 

「おいや?チハるんはハヅキ社好きかい?」

 

「見た目だけだったらね」

 

「私は性能的に見てミューレイがいいなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれねー。モノはいいけど高いじゃんアレ」

 

「千春のはワーグナーだっけ?」

 

「うん。ワーグナー社製のネオカスタムモデル。うちの研究員が勝手に作らしてさぁ、性能はいいから使ってるけど」

 

 

月曜日の朝。クラスの中の女子がわいわいと賑やかに談笑していた。

その中に想い人の姿を見つけ、俺の心臓はとくんと高鳴った。

 

みんな片手にカタログを持ってあれやこれやと意見を交換している。

 

「そういえば織斑くんのISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

 

「ああ、なんでも千春とおんなじで特注品らしい。男のISスーツがないからどっかのラボが作ったらしいんだ。なんでも、もとはイングリッド社のストレートアームドモデルって聞いてる」

 

 

よく覚えてたな俺。最近は一生懸命勉強している成果だ。うんうん。

 

ちなみにISスーツとは文字通りIS展開時に身体に着ている特殊なフィットスーツのこと。このスーツなしでもISを動かすことは可能なのだが、反応速度がどうしても鈍ってしまうらしい。えーと、なんだったかな………。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久用にも優れ、一般的な小口径拳の銃弾程度なら完全に受け止めることが出来ます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

すらすらと説明しながら現れたのは山田先生。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから。……って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへんっ………って山ぴー?」

 

入学から約2ヶ月。山田先生のあだ名は72通りあった。

初めてついたあだ名は確か………そう、イーノっ――……

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「ま、まーやん………」

 

「あれ?マヤマヤの方がよかった?マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと…」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

珍しく語尾を強くして拒絶の意志をしめす。

 

何かトラウマでもあるんだろうか?

 

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。わかりましたね?」

 

 

ハーイとクラス中から返事が来るが、ぶっちゃけ言ってるだけの返事なのは間違いない。

 

今後も山田先生はあだ名が増えることだろう。

 

 

「諸君、おはよう」

 

「「「「 お、おはようございます! 」」」」

 

それまでざわついていた教室が、一瞬にして静まり返る。

 

千冬姉のお出ましだ。

 

(あ、ちゃんと俺の出したスーツ着てくれてるな)

 

昨日家に帰ったときに、そう言えばと思い、夏用のスーツを出しておいたのだ。

早速使ってくれてるようで嬉しい。

 

「さて、今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。ISスーツに関しては、各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それすらないもものは、まあ下着でも構わんだろう」

 

 

いや構うだろう!と俺以外も絶対多くの女子は心の中で突っ込んだと思う。

 

男の俺がいるだし、下着姿は不味いだろう下着姿は…………

 

千春の下着ならウェルカムだが。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

 

連絡事項を言い終えた千冬姉が山田先生にバトンタッチする。ちょうど眼鏡を拭いていたらしく、慌てて掛けなおす姿が、わたわたとしている子犬のようだった。

 

「ええとですね、今日はなんと、転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

 

「「「 ええぇぇぇっ!? 」」」

 

いきなりの転校生紹介にクラス中がいっきにざわめく。

 

そりゃそうだ。この三度の飯より噂好きの十代乙女、その情報網を掻い潜りいきなり転校生が現れたのだから驚きもする。しかも二人。

 

(つかなんでまたうちのクラス?普通分散させるだろうが)

 

そんな至極全うな事を考えていたら、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「…………」

 

クラスにはいってきた転校生を見て、ざわめきがピタリと止まる。

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国ではまだ不馴れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

転校生の一人、シャルルはにこやかな顔で告げて一礼する。その転校生が着ているのは、俺だけだった『男子』制服を着ていた。

 

「お、男……?」

 

誰かがそう呟いた。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を――――」

 

人なつっこそうな顔。礼儀の正しい立ち振る舞いと中性的に整った顔立ち。髪は濃い金髪。

黄金色のそれを首の後ろで丁寧に束ねているら。

男子にしては小さめで、華奢に思えるくらいスマートで、しゅっ、と伸びた脚がかっこいい。

 

印象は誇張じゃなく『貴公子』と言った感じで、特に、嫌みのない笑顔が眩しい。

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃああああああ――――――っ!!」

 

「ふぐぉ!?」

 

 

例えるならソニックブーム。クラスの中心を起点にその歓喜の叫びはあっという間に伝播する。ソニックブームに驚き千春が目を覚ます。

 

「男子!二人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

「地球に生まれてよかった~~~~!」

 

いやぁ、相変わらず元気だねうちのクラスの女子一同は。

 

ちなみに隣のクラス及び他の学年からまだ誰も覗きに来ないのはホームルーム中だからだろう。教員のみなさん、お仕事ご苦労様です。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

「み、みなさんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

面倒臭そうに千冬姉がぼやき、山田先生が慌てながら静めようとする。

 

「…………」

 

件の自己紹介が終わってない方の転校生。

 

シャルルくんとは正反対の銀髪は腰まで伸ばしてあり、そこまでボサボサではないにしろ整えた様子はない。

無頓着なのだろうか。

 

そして女子には珍しいズボンタイプで、両腕は後ろで組んで、足を軽く開いて立っている。軍隊とかの待機の姿勢だ。

 

そして彼女を一言で表すのに必須になるだろう左目の眼帯。

それは病院で使うようなものでなく、黒の眼帯。

これに反応したのは千春だった。

 

 

『一夏、一夏っ一夏っ!、眼帯だっ!眼帯だよっ!やべぇ邪気眼だ邪気眼っ!!いいなぁ、私も眼帯つけよっかなぁっ。赤色スカーフとかもいいな、なぁなぁ、一夏は何が言いと思う!?』

 

ISのコア・ネットワークを通して興奮した千春の声が聞こえる。

 

『えっと……ち、千春にはあれだ、ゴスロリが似合うと思うぞ、俺は』

 

後頭部に意識を向け、応える。

昨日弾と街に出掛けた際に、ふと目についた雑誌にフリフリが沢山ついた服を着た女の子が写っていて、気になり弾に聞いたところゴシックロリータとか言うジャンルらしい。

 

千春が着ればまるで精巧な人形なのでは?と言う不思議な感覚に落ちいることだろう。

 

いや、わりと出会った当初の千春はそんな不思議な美しさを纏ってはいたが………惹かれ過ぎておかしくなりそうな、そんな美しさ。

 

まぁ俺は今のくだけた感じの千春が大好きなので、昔みたいにならないでくれると嬉しい。

 

『おぉ~っ!いいなっ、いいなそれっ!それでそれでっ、眼帯付けて鎌待って……ISの武器で鎌なんていままでなかったし、イケるかもっ』

 

どうやらお気にめしたらしい。千春が喜んでくれるだけで俺は幸せです。

 

 

 

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

 

ずっと黙り続けていた銀髪の転校生は、千冬姉の言葉に直ぐ様反応し、千冬姉に向け敬礼をした。

異国の敬礼を向けられた千冬姉はさっきとはまた違った面倒くさそうな顔をした。

 

「ここではお前は一般生徒、そして私は教師だ。私のことは織斑先生、と呼べ」

 

「はっ、了解しました」

 

そう答えたラウラはぴっと伸ばした手を身体の真横につけ、足をかかとで合わせて背中を伸ばしている。―――――どっからどうみても軍人。そうでなくとも軍施設関係者である。

 

しかも千冬姉を『教官』と呼んでいるので、間違いなくドイツだ。

 

 

―――――とある事情で千冬姉は一年ほどドイツで軍隊の教官として聞いた事があり、その後は一年くらいの空白期間を置いて、現在のIS学園教員になったらしい。

 

らしいというのは山田先生や他の学園関係者に聞いたからだ。本人からはその事を聞いていない。

そこにはまた色々な事情があるんだろうが、やはり唯一の肉親なのだ。打ち明けて欲しいと思ってる。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「………………」

 

クラスメイトの沈黙。

続く言葉を待っているのだが、名前を口にしたらまた貝のように口を閉ざしてしまった。

 

ダメだぜ?ラウラ・ボーデヴィッヒさん。名前だけでもいいけど、明るく言わないと暗い奴だと思われるぜ?

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

空気にいたたまれなくなった山田先生が出来る限りの笑顔でラウラに聞くが、帰ってきたのはのは無慈悲な回答。

こらこら、先生をいじめるんじゃありません。見ろよほら、泣きそうな顔してるじゃないか。まったく。

 

山田先生、貴女は今っ、泣いていいっ!

 

そんな事を考えていたせいなのか、ラウラとばっちり目があった。

 

「!貴様が――――」

 

 

うん?目があった瞬間、つかつかとこっちにやって来たぞ?

 

 

 

バシッ!

 

 

「………………」

 

「え…う?」

 

 

いきなり、殴られた。しかも無駄のない平手打ち。

 

―――――なんで?

 

「私は認めないっ……――貴様があの人の弟であるなど、認めるものかっ!」

 

ダンッ!!

 

まるで机を蹴った音がした。

 

「!?」

 

俺に平手打ちをしたラウラ・ボーデヴィッヒが、『俺の上』に視線を向け目を見開く。

 

「?」

 

ずきずきと傷む頬を手で撫でながら、つられるように上を見た俺の視界を覆ったのは、

 

 

純白のパンティと健康的なかつ艶やかな魅力を持つふとももだった。

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