IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage22 『否定する者』

 

 

 

俺を飛び越えた千春が、ラウラに向け鋭い蹴りを放つ。

 

「っ………」

 

「ふ、ざけんなッ!お前…今、一夏の事、どんな目で見やがったっ!?」

 

片腕でその蹴りを防ぎ、ラウラすぐさま距離を取る。

 

千春はゆらりと緩怠な動作で動きラウラを見据える。

 

突然の事について行けない。

クラスの皆もぽかーんと口を開いている。どうやら俺だけじゃないようだ。

 

 

「貴様は…ほぅ、件のカレンデュラか。ちょうどいい、ここで貴様を屠ってやろう」

 

「上等だッ!一夏を色眼鏡かけて見やがってっ…絶対後悔させてやるッ!!」

 

千春がいままで見せたことのないほど怒りを露にして顔を歪める。

 

対してラウラは冷静。激昂する千春に冷たい笑みを向ける。二人は互いに殺意を放ちながら対峙する。

 

先に動いたのは千春。

 

姿勢を低くしラウラの懐へ向け飛びかかる。

 

ラウラは千春の動きに合わせ、カウンター気味に掌底を放つ。

しかしそれを、

 

 

千春は空中で逆立ちして、蹴りあげた。

 

「!?」

 

カポエイラと言う格闘技を知っているだろうか?。

日本ではカポエラと誤った呼び方をされている。

 

カポエイラ脚技が映える格闘技。

 

また日本人が抱くカポエイラの技はそのほとんどが逆立ちして繰り出すと思われているがそれもまた誤りだ。

 

しかし千春のカポエイラは、日本人の偏見の『カポエラ』に近い動きだ。

 

サマーソルトキックからの、逆立ちして両手両腕、そして身体を捻る事により脚を広げて蹴りの連撃。

 

ラウラは防戦一方だ。隙ならあるだろう。しかし千春はその隙を速さと威力で覆い隠す。

 

地に両足をつけたと思ったら頭部への空中回転蹴り。

着地すると同時に脚払い。

 

千春の繰り出す美しい舞い。

一見して押してるのは千春だと思うが…………その実攻めあぐねていたのは千春の方だった。

 

必殺を何度も感じた。しかしその必殺はまるで読まれたように避けられる。何度も何度も蹴りを放つも、それは変わらない。

怒りで思考が回らない。攻めろと身体が告げている。

 

しかし、千春の動きは、背後から近づいた千冬姉に止められた。

 

 

スッパーンっ!

 

「あいたぁっ!?」

 

「何を暴れているか、ブリュッセル」

 

「なっ、なんで私が!こいつ!こいつが一夏を先に殴ったんですよ!?」

 

降り下ろされるは判決の小槌。千春が涙目で千冬姉に食い下がる

 

「では、私がラウラを止めていたら?」

 

「ボディーブローからの踵落としでさぁ

 

ゴツンッ!

 

 

「全く馬鹿者が……あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人は速やかにISスーツに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組との合同で模擬戦を行う。解散!」

 

ぱんぱんと手を叩いて千冬姉が行動を促す。

千春は腑に落ちないと言いたげに睨み、千冬姉に睨み返されすごすごと自分の席へと帰っていった。

 

…………あー、さて、なんか色々あったが俺もそろそろ行こうか。このままクラスにいると、女子と着替えるはめになる。

 

確か今日は第二アリーナ更衣室が空いてるはずだ。

 

「おい織斑。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

 

おっと、そうだった。やっぱりそうなるわな。

 

「君が織斑君?初めまして。僕は―――」

 

「ああ、いいから、たにかく移動が先だ。女子が着替え始めちまう」

 

説明すると同時に教室を出る。

シャルルに来るように促すと、シャルルは俺の後ろをテクテクと付いてくる。

 

「取り合えず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替えだ。これから実習の度にこの移動だから、早めになれてくれ」

 

「わかったよ、ありがとう織斑君」

 

にこりと笑ったシャルル。思わず見とれてしまうくらいその笑みは綺麗で、同姓ながら惹かれてしまう……。

 

 

だっ、ダメだダメだっ!俺には千春が……つかホモじゃないんだし。

 

俺は熱くなる顔をかぶりを振って冷ます。

 

 

 

 

 

 

 

俺とシャルルは教室を出てすぐ、危機的状況に襲われていた。

 

「いたっ!こっちよ!」

 

「者ども出会え出会えい!」

 

待て、いつからこの学園は武家屋敷になったんだ?いまにもホラ貝を取りだしそうな雰囲気じゃ―――…

 

 

 

 

 

ブオーッ、ブオーッ!

 

 

 

 

ホンとにやりやがったああぁっ!!?

誰だ!空気を読んで吹きやがった奴は!?

 

 

 

 

 

 

 

「…………(グッ」

 

 

 

 

千春ぅぅぅっ!?

な、なんで千春がホラ貝吹いて……いや、なんでホラ貝なんか……い、いや今はいい。

 

一組の前の廊下で、ホラ貝片手にサムズアップする千春。そしてホラ貝の音色に呼応して階段から、教室から、ありとあらゆる場所から女子が現れる。

 

「ちくしょうっ、こっちだシャルルっ!」

 

「えっ、ええ!?」

 

ここで女子に囲まれるとヤバイ。俺はシャルルの手首を掴み、ひっぱりながら走り出す。

 

「織斑君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」

 

「しかも瞳はエメラルド!」

 

「きゃああっ!見てみて!ふたり!手!手繋いでる!」

 

「逃さぬっ!今日こそは捕まえヌードデッサンを………って!?」

 

囲まれた。俺はその状況に舌打ちし、ふと横を見た。

 

「ふえぇ!?」

 

俺はニヤリと笑ったろう。我に秘策ありっ!!

 

「喋るなよシャルル?……舌噛むぜぇ!?」

 

次の授業に遅れるわけにはいかない。|鬼教官に怒られるしな。

 

何より千春のエロスーツを眺める時間がすくなくなる。

 

「とぉうっ!」

 

俺はシャルルを抱き上げ、換気のためか窓ガラスが空いていた窓から、『跳んだ』。

 

 

「いっ…いやぁぁっ!?」

 

腕の中のシャルルが女みたいな声を出して叫ぶ。

安心しろ、我に秘策ありっ!

 

 

「よっと、行くぞシャルル!」

 

「……へ?お、織斑君!?」

 

地面にぶつかる瞬間ISを部分展開する。

そして着地と同時に装甲を閉じ、

 

 

 

「「「 お姫様だっこーー!? 」」」

 

 

抱いていたシャルルを降ろし、第二アリーナへ向けて走り出す。

 

後ろで阿鼻叫喚が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。そう思うことにした。

 

「はぁっ……はぁっ……思い付きでやってみたが……上手くいったな」

 

 

第二アリーナの更衣室。そこのベンチに横たわるように俺はねっ転がった。

 

「い、いったいなんだったの?なんでみんな騒いでるのかな?」

 

シャルルはと言えば。見かけによらず中々スタミナがあるらしく、肩で息をするだけで、俺みたいにグッタリせずに立っていた。

 

「そりゃあ男子が俺達だけだからだろうな」

 

俺は休みたがる身体に鞭をうち身体を持ち上げる。

(休ませてくださいっ!)

「馬鹿やろう、休んでる暇なんてあるかっ」

(何時もは適度に休ませてくれてるのに!!)

「いま休んだら千冬姉にイジメ抜かれるぞ?んなの嫌だろ?」

((( サー、イエス、サー!! )))

 

ってな具合で動いてくれた。

 

「……?」

 

シャルルは俺の言葉を聞いて、

え?なんで?と「意味がわからない」って顔をした。

 

「いや、珍しいんだろ?ISを使える男って。俺達しかいないみたいだしよ」

 

「あっ!―――ああ、うん。そうだね」

 

「まあ俺は置いとき、シャルルが騒がれるのは理由がわかるぜ?」

 

「え?……なんでなの?」

 

「いや、シャルルって何だか可愛いし、そのくせカッコいいだろ?いいよなぁモテスリムは」

 

ベンチから立ち上がりロッカーを開く。制服を脱ぎ、備え付けのハンガーにかけていく。

 

「かっ、かかかかっ!?」

 

「ん?……にしても助かったよ」

 

「ななな何がっ!?」

 

「いや、やっぱ学園に男一人はつらいからな。何かと気を遣うし。一人でも自分いがいに男がいてくれるってのはやっぱ心強いもんだ」

 

「えっと…そうなの?」

 

「ああ、まぁな。……ま、何にしてもよろしくな。改めてだが、俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん。よろしく一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「わかったシャルル。うわ、時間ヤバイなすぐに着替えちまおうぜ」

 

時計を見るとかなりギリギリだった。

制服の下のTシャツを脱ぎ捨てズボンに手をかけた時、シャルルは叫んだ。

 

「わあっ!?」

 

「ん?どうしたシャルル、荷物でも忘れたか?」

 

両手で顔を隠し、指の合間から目を覗かせる。

その頬は赤くなっていた。

 

「ってなんで着替えないんだ?早く着替えないと遅れるぞ?シャルルは知らないかもしれんがうちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で―――」

 

「う、うんっ、着替えるよ?でもっ、その、あっち向いてて……ね?」

 

「? いやまぁ別に着替えをジロジロ見る気はないさ」

 

俺はトランクスごとズボンを脱ぎ――

 

 

 

 

野郎の着替えなんて描写したくないので割合します。

 

 

 

 

「さて、先にいってるぜ?シャルル」

 

「えっ!?一夏っ!」

 

制服をロッカーに叩き込み振り替えるとシャルルは調度、ISスーツの下の部分を着ていた。

 

「ははっ、シャルルの尻(ケツ)ってなんかツルツルしてんな~。おもしれー」

 

調度見えたシャルルのお尻はぷるぷるしていて綺麗だった。あれだ、肌の艶ってやつか?男でも俺とシャルルじゃ全然違うな。

 

軽く手をふりながら更衣室を後にするとグラウンドへ向け駆け出した。小走りだ。

 

 

 

 

「織斑。今回の責任を、お前はどうとる?」

 

第二グラウンドに無事到着―――とはいかなかった。シャルルが授業が始まってから、五分後に現れたのだ。顔を真っ赤にしてもじもじと、お尻を手で隠しながら。

 

「いや、責任ってあーた……」

 

「面倒を見てやれと言ったろう?」

 

いや、確かに言ってましたが……

 

「………………」

 

シャルルくん、顔を真っ赤にしてうつむいてないでさ……なんか千冬姉に言ってくれよ。

 

「け、けどさぁ!」

 

「問答無用だ。自分が先に着替え終わったからと言い、デュノアを置いてきた貴様に非がある。デュノア、こいつに何か言うことはあるか?」

 

出席簿を構え千冬姉がシャルルを見る。

 

シャルルは真っ赤になった顔を上げ、

 

 

「一夏の……えっち」

 

 

爆弾を投下しやがった。

 

 

「「「「 きゃあああぁ~!! 」」」」

 

 

 

ソニック・ブームとなった女子達の黄色い歓声と共に俺の降りおろされた出席簿、降り下ろした千冬姉の顔は真っ赤になっていた。

 

千春と言えば、歓声の中俺を指差しゲラゲラと笑っていた。

 

その姿が、エロいISスーツだとわかると、俺は意識を手放した。次に目を開ければ、あのエロいISスーツを着た千春を見れる。と、起きた後の恐怖を考えないようにしながら………

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