IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 24 『二人っきりの食事時』

 

「さて、これで諸君にも学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を払って接するように」

 

 

ISを解除した千春、セシリア、鈴の三人が列へ戻ったのを見て、千冬姉は列に並んだ女子生徒達を見渡す。

 

「いやぁ、強かった。当たらないの何のって、マジで山田先生強いよ」

 

顔を少し後ろに向け、俺に話しかけてきた千春は嬉しそうに笑いながら先ほどの戦闘の事を話す。

 

「三人でかかって一発も当たらないとかもう化け物よ」

 

「連携訓練を行っていなかったのも敗因の一つですわね」

 

「全方位から放たれた千春のビットを避けきった時は流石に驚いたな」

 

鈴、セシリア、箒も、腕を組み、頭を抱え、手を顎に添えて先ほどの戦闘を思い出していた。

 

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、ブリュッセル、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳《ファン》だな。では10人グループになり実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」

 

千冬姉がパンパン、と手を叩き指示を飛ばした。

 

 

 

 

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使ったISの整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散だ」

 

時間ギリギリとはいえ、なんとか全員が起動テストを終えた俺達一組二組合同班は、格納庫にISを移してから再びグラウンドへ。

 

なにせ本当に時間一杯だったので全員が全力疾走。

ここで遅れれば鬼教師に何を言われるかわかったもんじゃねぇ。

そんなこんなで肩で息をしている俺達に、千冬姉は連絡事項を伝えると山田先生と一緒にさっさと引き上げてしまった。

 

 

「あー……。…つか疲れた…」

 

訓練機はIS専用のカートで運ぶのだが、動力という生易しいものはついていない。あえていうなら動力「人」である。

うちの班は、当然俺がメインになって訓練機を運んだのだった。

女子はみんな力仕事は男がして当然だと思ってるし、そうでなくても昨今の男の立場は弱いのだ。今はそういう風潮なのである。

 

(いや、まあ、男の俺が運ばないで女子に運ばせるってのも普通におかしいっていうかありえないからいいんだが………)

 

ちなみにシャルルの班は「シャルル君にそんなことさせられない!」と数人の体育会系女子が運んでいた。

 

――――俺と扱いが違う……。まあ別にいいんだが。むしろ礼を言いたい。

 

何て言っても、ISを運んだおかげで千春に、

 

 

 

 

カッコいいと言われたのだ。

さて、その時の再現VTRをどうぞ。

 

 

 

 

「こん…のぉ!」

 

ISが載ったカートを押しながら呻く俺。いや、マジで重いんだって。

 

 

「ちくしょう、マジで重たかったな………?千春?」

 

格納庫にISをぶちこんだ俺は、今まさにISを運んでいる千春を遠目に見掛けた。

その千春の目からはタパー、と涙が流れていた。

 

「うひぃ~、おーもーいーよ~」

 

超ゆっくりとカートを動かしたながら泣く千春。

 

「千春?なんで千春だけで片付けてんだ?他のみんなは?」

 

通常、カートは二・三人で運ぶ。俺の場合が普通じゃなかった。

 

「いや、それがさぁ。『グラデーション』使って片付けようとしたんだが………」

 

 

話を聞けば、ISを使って運ぼうと考えていたため、一人で大丈夫だと豪語した。

実際にISを展開してやろうとしたらどこからか千冬姉の出席簿が飛んできたらしい。

ISを展開するには様々な制約があり、授業外で無闇にISを展開をしてはいけないのだ。

 

 

仕方なくISを展開せず運ぼうとしてみたら予想以上に重く、時間がかかってしまっていたらしい。

 

 

「そっか、……ん、じゃあ俺が手伝うよ」

 

そういって千春の隣に立ちカートを押していく。

 

「ごめん、一夏…――うお!?カートが軽い!うひょー!我が世の春がキタワー!」

 

一緒にカートをおしながら千春が喜ぶように叫ぶ。

 

 

…………やっぱ可愛いなぁ~、千春。

 

 

 

「いよっしゃあっ!任務完了だぜぇ!」

 

俺が癒されながら二人で格納庫に訓練機のISを入れると千春が飛び上がる。

 

「ありがとな一夏!助かったよぉ」

 

満面の笑みを向けられた俺は、頭を掻きながら苦笑する。

 

「いや、気にすんなよ千春。ち、千春のためだったらこんなこと、朝飯前だからさ!」

 

千春から少し目を逸らしてしまう。俺マジヘタレ。

 

 

 

「にしても昔よりも腕力あがった?カートがすげぇ軽くなったし」

 

「バイトしながらだけどちゃんと動いてたからな。まぁ二年前よりかはあがってるな」

 

格納庫から二人でならんで出た時、千春が思い出したように聞いてきた。

 

そう、部活なんてしてなかったが、走り込みや腕立て、腹筋のような基本的な運動は毎日続けていた。

 

「そっか、いやぁびっくりしたぜ?めっちゃ軽くなるんだもんな……――――」

 

 

 

 

 

「カート押してた一夏さ、逞しくてカッコよかったぜ?」

 

 

 

 

その時、俺の世界が停止した。

 

 

 

 

「お、じゃあ先行くな?」

 

 

軽く手を振り走っていく千春を見て、俺は拳を高く振り上げ跳ぶ。

 

 

 

「いよっしゃあああああああああぁぁぁッッ!!」

 

 

格納庫に俺の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

「すまんな山田君」

 

「いえ、三人相手でもなんとかなりましたし」

 

連絡事項を伝え職員室へ向かう途中、千冬は千春を乱入させた事を詫びた。

いや、三対一の情況で戦わせた事を詫びた。そう、『最初から三対一で戦う』事を伝えておいても、やはり三対一と言うのは辛いものがあるからだ。

 

ISスーツを着たままの真耶は首を横に振った。

 

「しかし…使いませんでしたね」

 

「ああ、何かしら使用条件があるのだろうか?」

 

「公開されている『グラデーション』には『赤い』装甲色のモードの情報はありませんでしたし……やはりブリュッセルさんの『グラデーション』にしかないと考えるべきでしょうか?」

 

「だろうな。……何にせよ、あのモードは危険だろう。もしブリュッセルが知っているのなら何故あのモードがあるのか。知らないでいるのなら止めねばならん………後者はありえんだろうがな」

 

千冬は腕を組み、クラス対抗戦の際、『赤い装甲色』の『グラデーション』を思い出す。

 

「あの時、『絶対防御』……いえ、シールドエネルギーさえ展開された様子はありませんでしたしね。……ブリュッセルさん本人に聞いて見ますか?」

 

「はぐらかすだろうな。それに我々に強制力はない。仮に聞いたといえ、最悪『消される』ぞ?」

 

「え!?……消されるって…」

 

真耶は目を見開く。『消される』その意味を理解して、驚く。

 

「奴はあれでも、『世界最高』の大富豪、ブリュッセル家の一人娘だ。世界各国に貸しがあり、この日本も例外ではない。

そして奴は、『大切なモノ』を守るためなら……『世界さえ敵に回す』ような奴だ」

 

 

 

 

 

 

千春と別れ、着替えにアリーナの更衣室に向かっている途中に、箒がいた。

 

壁に持たれ掛かり何かを待っていたような顔をしていた箒が、俺を見受けて目を輝かせた……気がする。

 

「い、一夏っ、き、奇遇だな」

 

「おう……なんだ、待っててくれたのか?」

 

「ちっ、違う!奇遇だな、と言ったであろう!?」

 

「あ、そっか。で?どうしたんだそんな所に突っ立って」

 

「ああ…うん、そのだな………」

 

箒が頬を掻きながら口ごもる。話しにくい話だろうか?

 

「そうだ」

 

突然、ピコーんと頭の上に電球が輝いた気がした。良いこと考えた!

 

 

「箒、今日の昼、予定空いてるか?」

 

「!?……あっ、空いているぞ!そう、偶然、偶然私は予定が空いてる!」

 

 

「そりゃよかった。一緒に昼飯食おうぜ!」

 

 

 

 

「そりゃよかった。一緒に昼飯食おうぜ!」

 

 

篠ノ之箒は今まさに、歓喜の渦中にいた。

 

一夏が……一夏が!

 

私を昼食に誘ってくれたのだ!

 

ここだけ(箒の内心)の話、正直に話そう。

なんと、私は一夏を昼食を誘うために更衣室前の通路で一夏を待っていたのだ!(バーン!)

 

先のクラス対抗戦の時以来、ISの訓練こそ一夏とやって来たが、普通の会話はいくつかしただけだった。

 

故に昼食に誘い、少しでも近付きたかった。

 

しかし、実際に誘おうとしてみると胸の高鳴りが言葉を邪魔する。自分の不甲斐なさに泣きたくなった時、件の一夏が、一夏の方から誘ってくれた……これほど嬉しいことがあろうか?

 

「あぁ、あぁっ!そうだな、それがいい!」

 

私は嬉しさに何度も頷き返した。

 

「よし、なら天気がいいから屋上で集合な?」

 

「ああっ!」

 

私は駆け出した。朝、一夏のために作った物が無駄にならずに済む。

 

ああ、今日はなんと良い日だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「…………どういうことだ」

 

「ん?」

 

昼休み、俺たちは屋上にいた。

ここIS学園の屋上には、うつくしく配置された花壇に季節の花々が咲き誇り、欧州を思わせる石畳が落ち着いている。

それぞれ円卓(ラウンドテーブル)には椅子が用意されていて、晴れた日の昼休みともなると女子たちで賑わってたりする。

 

しかし今日はみんなシャルル目当てで学食に向かったのだろう。屋上には俺達以外誰もいなかった。

 

イエイ、貸し切り。貸し切り、イエイ。

 

「天気がいいから屋上で食べるって話したろ?」

 

「そうではなくてだな………!」

 

ちら、と箒が横に視線をやる。そこには………―――。

 

 

「へぇ、じゃあブリュッセルさんは自分のISのメンテナンスをしてるの?」

 

「まーね。改修とかじゃないしこれくらいわね」

 

「ホント、凄いわよね千春は。自分でISの調整まで出来ちゃうし」

 

「私自身が設計した機体だしね~。そだ、鈴の『甲龍《シェンロン》』の調整も私がしよっか?……あ、いや、無理か、お国的な意味で」

 

「でしたら私の『ブルー・ティアーズ』を見ていただけませんか?。少し気になる事がありまして………」

 

 

和気藹々とIS談義をしている千春と鈴とセシリアとシャルルがいた。

 

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