「焼きそばパン~」
どこぞの青狸のようにビニール袋から昼食を取り出した千春。
「え、えっと…か、カツサンド~」
シャルルが顔を赤くしながら千春に続く。
「まあ及第点と言ったところか。ほんとはもっとダミ声なんだからね?」
「き、気を付けるよ千春」
あははは、とブロンド貴公子はカツサンドの袋を破きパンを取り出した。
なんか、千春とシャルルが仲良い。
「なにぶすっとしてんのよバカ一夏。ほらアンタの分の酢豚」
「…う、うるさいな。べつに…何も」
鈴がニヤニヤ笑ってる。なんかむかつくな。
まぁ酢豚は貰うんだが……たが…酢豚オンリーと言うのは中々大胆な発想だなおい。ちなみに鈴は自分の分のご飯は食堂で買ってきていた。相変わらず要領のいいやつめ。
「コホンコホン。―――、一夏さん。わたくしも今朝はたまたま偶然何の因果か今朝早くに目が覚めまして、こう言うものを用意してみましたの。よろしければお一つどうぞ」
バスケットを開くセシリア。そこはサンドイッチが綺麗に並んでいる。……のだが。
「お、おう。後で貰うよ」
俺の返事は些か引いている。
鈴はうわぁ……って顔してた。くっ、こいつ、自分が食べるものじゃないからって対岸の家事状態だぜ。
「?どうかしまして?」
「いや!どうもしてない!」
……はっきり言おう。このイギリス代表候補生セシリア・オルコット、料理がからっきしダメなのだ。見た目は物凄く綺麗なのだが、味が凄まじくまずい。
何故自分の知らない調味料を適当にぶちこむのか一度真剣に聞いてみたい所だが、今のところその予定はない。……なんか聞いたらひどいことになりそうな気がするんだ。何故か。
まぁ超金持ちのご令嬢ともなればこんなもんだろうな。お抱えのシェフだって何人もいるだろうし、包丁を握ったことがないどころか、自分で食材を選んだこともないんだろうな。
ちなみに、セシリアに聞いてみた所、セシリアが『超金持ち』ならば、千春の家は『超絶大金持ち』になるらしい。
超絶大金持ちとか聞いたことねぇよ。
俺達一般市民からしてみたらどんな呼び名になるんだろうか。
………普通に考えても高嶺の花、だよなぁ。俺なんかじゃ………はぁ。
それに引き換えシャルルならお似合いだよな、なんか王子様みたいだし。
絶世の美女のお姫様《ちはる》にイケメン王子様。お似合いだよお似合い。
はぁ、死にたくなってきた。
「……何落ち込んでんのよ、アンタ」
「あ?……落ち込んでなんかねぇよ。死にたくなっただけだよ、はぁ……」
鈴が肘で脇腹を小突いて耳元で囁いて来た。
「どうみても落ち込んでるようにしか見えないわよ。……アンタ、千春がお金とか、地位とか容姿で人付き合い決める女だと思う?」
「んな訳ねぇだろ!むしろそうやって近づいてくる相手を嫌うくらいだ。経験者は語るぜ?」
「そう言えばあんた最初避けられてたっけ。……そう、今の千春は外観で人の良し悪しを決めたりしないわ。今だって、シャルルの中身見ようとしてるだけなのよ?」
「あ………」
「アンタが千春に言ったんじゃない、違う?なのに勝手にお似合いだとか考えて…千春が怒るわよ?」
「……そう…だな。…………けどなぁ」
でもやっぱり似合って見える。こればっかりは仕方ないんだもんよ。
「安心しなさいって」
項垂れる俺の頭をポンポンと叩く鈴。なんつーか、人が傷心の時はほんと優しいよな、鈴は。
「千春は、たぶん………アンt(ry―――」
「おぉ~!セシリアのサンドイッチうまそうだな~!なぁなぁなぁセシリア、少し貰っていい?」
「えっと……はい、いいですわよ、召し上がってくださいな(最初は一夏さんが良かったのですか…しかし、器量の小さい女と見られる訳にはいきませんわ!)」
――――せ、セシリアの手作り?………しまった!!
「まっ、待て千春!」
慌てて止めようとするが間に合わない。ちくしょう!俺はいつも大切な人達を守れないのかっ!?(大袈裟)
「いっただっきま~す!」
マミっ《ぱくっ》!
数秒間の静寂。
「…………セシリア」
「なんですの?千春さん」
「これ、味見した?」
「い、いえ…」
サンドイッチを半分くらい一気に口に含んだ千春。その顔は凄まじい速度で青くなっていく。
咀嚼しながらセシリアを横目に見る千春はガタガタと震えだした。
「そう……じゃあ…いっぺん食べてみんさい!」
「むきゅ!?」
バスケットから取り出したサンドイッチの一つをセシリアの口の中にぶちこんだ千春。一応自分が食べてる分はちゃんと食うみたいだ。
「…………す、すみません、ですわ」
「まあ、あれよ。……今後、味見は絶対してね?」
「はい、以後、気を付け……―――」
バタッ!
「せっ、セシリア!?セシリア!!」
突然仰向けに倒れたセシリア。その口からは泡が……泡がががが。
「み、味覚が耐えられなかったんだね。いわゆるカルチャーショック、…みたいな感じ、かな!?」
シャルルが慌てながらも状況を把握しようとしてる。
まぁだいたい合ってるんだろう。
「味見しないのは料理初心者のダメな点だな。私もそうだったし」
千春が気絶したセシリアの額をペチペチと叩きながらバスケットもサンドイッチを貪る。 あれを処理しきるつもりだ。
「ち、千春……大丈夫なのか?セシリアは気絶してしまったが……」
「いや正直辛いッス。自分の黒歴史と同じ味がしやがるんだもん、精神的に来やがる。見かけが言い分あたしよりはマシだけど」
箒が心配そうに問うが千春の手は止まらない。いや、更に加速する。
「千は…――」
「そんなに勢いつけて食べたら喉につまっちゅうよ?。ほら、お茶飲んでいいよ?」
「さんきゅ、シャルル。……んくっ、んくっ……ぷはぁっ!…いやぁ、胃袋が混沌と化してるよアハハ」
俺がペットボトルのお茶を差し出そうとしたら、シャルルが先に水筒からお茶を出し、千春に手渡していた。
先越された…………ぐぬぬ
「む?一夏。何に憤ってるから知らんが、ぐぬぬは私の専売特許だぞ?」
「何が専売特許なのよ、てかぐぬぬって何よ」
「焼きそばパンが果てしなく美味く感じるよ。いや、ここの焼きそばパンは普通に上手いんだけどね」
口直しにもそもそと焼きそばパンを頬張りながら千春が唸る。
「っ!……っ!?」
しかし、俺の目はリスのように頬を膨らます可愛らしい千春の他に、
胡座《あぐら》をかいた千春のスカートからストレートに見えるパンティを捉えていた。
だれだっ、チラリズムのないおっぴろげなパンティはエロスがないとか言った奴は!!チラリズムじゃなくても十二分にエロいじゃねぇかっ!!。
いや、まてよ?これにチラリズムが加算されると更にエロくなるってことか?……チラ…盗さ…いやいや、チラリズムは狙うものじゃない。チラリズムとは奇跡との遭遇!!
千春は最初こそ、女の子座り(正座を崩したみたいなやつ)でいたが、段々と座りかたを変え今じゃ胡座だ。
シャルルを意識してたが、段々と面倒になり素の座りかたになったのだろう。
ちくせう、酢豚が鉄の味がするぜ。
「何鼻血垂れ流しながら食ってんのよ?……ッ!?あっ、ああアンタどこ見てっ!?」
「いでっ!?いでででっ、耳引っ張んなコラッ!」
俺の視線がどこを捉えてるのか知った鈴が顔を真っ赤にしながら俺の耳を引っ張る。
このちっちゃな身体のどこにこんな力がっ!
◇
「あ、そう言えばシャルルって専用機持ってんだっけ?」
「え?あ、うん。デュノア社のラファール・リヴァイブのカスタム機がね」
「カスタム機……なんかカスタム機って良いね~。私の『グラデーション』にもカスタムって付けようかな。『グラデーション・カスタムパレット』!なんて」
「でも、千春の『グラデーション』は千春専用なんでしょ?」
「ん、……まぁこの子は確かに私用に調整してるからね。ただ、それ以外は通常機と変わらないんだよね」
「仕方ないですわよ。千春さんの『グラデーション』は一次移行《ファースト・シフト》しないで高い性能を出す、と言うコンセプトがありますし」
「確かに、一次移行しちゃうと、その操者に合わせた『専用』機になるしね。……訓練機として考えれたらこれ以上とない傑作機よね、『グラデーション』って。初期設定で専用機と互角に戦えるんだもん」
「いやいや、傑作って言われても凄く価格が高いし、問題は山積みよ~。当分は新型を作るよりも『グラデーション』のテストだね」
「新型?」
「そっ、新型。一夏と鈴とセシリア、三人の専用機見てたらアイディアが浮かんでね。設計図は半分くらいできてるんだ」
「設計図って……そんなことまで出来るの?」
「いやいや、『グラデーション』は私が開発した奴だし。」
「昔から何でも出来るわよね~。千春ってば苦手な事とかないの?」
「虚空演算とか苦手だお」
「あ、あれは人間の領域で出来るものではなくてよ?……」
「あとは……うーん…雷とかも苦手だね」
「え、えらく人間らしい苦手が来たね」
ダメだ、なんか専門的な話になってきた。今だにIS初心者マークを貼っている俺こと織斑一夏にはなんの話だかわからん。いや、なんか難しい会話になって来た辺りから頭が理解するのをやめたのだ。
「い、一夏っ。あの、だなっ」
IS談義に洒落込む四人の会話をBGMに酢豚を食べていた俺に、箒が声をかけていた。
「ん?なんだ?箒。……あ、千春達の会話の意味がわかんないんだろ?安心しろ、俺もだ」
「ちっ、違う!」
え、違うのか?俺全くわからんのだが……。
「その、だな…。作り過ぎてしまってな、よかったら、どうだ?」
やけに声を押し殺して箒が布巾で包まれた弁当箱を渡して来た。
「ほんとか!?いやぁ、助かるぜ箒」
俺と言えば鈴の酢豚だけしか食べてないため腹が減っている。
結ばれた布巾を解き、中の弁当箱の蓋を明ける。
「おぉ!」
鮭の塩焼きに鶏肉の唐揚げ、こんにゃくとゴボウの唐辛子炒め、ホウレン草のごま和えと言うなんともバランスの取れた献立の数々がソコにあった。
「いやぁっ、これは凄いな!どれも手が込んでて旨そうだっ!」
「つ、ついでだついで。あくまで私が自分で食べるために時間をかけただけだ」
「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとな」
「ふ、ふん……」
何でもないようにしながらも、どこか箒は嬉しそうな表情で自分の弁当箱を開いた。
あれ?
「箒、なんでそっちには唐揚げがないんだ?」
「!…こ、これはだな…。ええと…」
何故か視線が泳いでいる。どうしたんだ?聞いたらまずい事だったか?
「……うまく出来たのがそれらだけなだから仕方ないだろう…」
「ん?……あれか?ダイエットか?」
「!?……そ、そうだ、私はダイエット中なのだ!だから、一品減らしたのだ!」
機を得たり、とおおきく頷いて箒が肯定する。
「そっか、……けど、別に太ってないだろ」
「たく、男ってなんでダイエット、=太っているの構図なのかしらね」
「全くですわ。デリカシーに欠けますわね」
「いや、でも実際ダイエットなんか必要ないように見え―――」
隣にいた箒を見た。全体的に凹凸が目立つ。いわゆるボンッキュッボンッ、と言う感じだ。
いや、まぁよくわからんが。
「ど、どこを見ている!」
「ぐえ」
顔を思いっきり手で押し返された。首がっ、首が!
「私もしてみよっかな…、ダイエット」
千春が焼きそばパンを頬張りながら溜め息をついた。
焼きそばパン、なんとまだあったのだ。
「千春が?千春にこそ必要ないじゃない!」
「いやいや、最近胸が、ね…重いんだよ」
大きく溜め息をついた千春を、箒、セシリア…そして鈴が血涙を流した。
いくらで千春相手だからといっても、耐えられんのだろう。鈴…不憫な子!
千春は俺より身長が少し高く、モデル体型だ。スラッ、とした中にムチッ、とした肉感が情欲を誘う。
そして巨乳、その乳房に下品さはなく、形良く保った乳房は健全なエロスを感じさせる。
それでいて美人なのだ。贔屓目を取り払っても、千春はこの学園でトップクラスの美少女だ。
もはやチートレベルである。
「千春は規格外だしな、いろいろと。……あきらメロン!」
バキッドスッベキィッ!!
どうじこうげき ! いちか は 999 の ダメージ を うけた !