IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 2 『イギリス淑女と日本男児の視殺戦』

ヒソヒソ

 

「千春さんってあのミス・カレンデュラなんだって~」

 

ヒソヒソ

 

「ミス・カレンデュラってあの!?3.5世代型のIS、『グラデーション』を開発したって言う!?」

 

ヒソヒソ

 

「そんな事より、あのミス・カレンデュラのブローチって中学生の時に織斑君がプレゼントしたみたいなのよ!」

 

ヒソヒソ

 

 

「えぇ!?それ本当?」

 

ヒソヒソ

 

「もしや許嫁とか、将来を誓い合った仲とか?」

 

ヒソヒソ

 

「きゃああぁっ!それ良い!それ良いよ!」

 

ヒソヒソ

 

「でも千春さん、ブリュッセルって……」

 

ヒソヒソ

 

「ブリュッセルと言えば世界最高の大富豪のあのブリュッセルしか…」

 

ヒソヒソ

 

「片や世界一の大富豪の1人娘!」

 

ヒソヒソ

 

「片や千冬お姉様の弟で、男で唯一のIS操者!」

 

ヒソヒソ

 

「身分を越えた愛!いいなぁ~憧れるなぁ~」

 

ヒソヒソ

 

「かっ、カレンデュラさまと同じクラスなんてっ…」

 

ヒソヒソ

 

「そっかぁ、みうっちはミス・カレンデュラのファンだっけ?」

 

ヒソヒソ

 

ヒソヒソヒソヒソ……

 

 

 

 

もはやそれはガヤガヤだった。

 

 

三時間目が始まり二分を過ぎてなお、クラス中の女子の話題の中心は千春の事だ。

 

どうやら千春は世界的に有名な著名人らしい。

 

写真集とあるらしい。

つかすげぇ欲しい。

 

渦中の千春は爆睡中。

 

 

 

つか皆そろそろ静かにしようぜ?

千冬姉のこまかみがピクピクと痙攣してるし、山田先生なんておろおろとして泣きそうだし、箒なんて何故か俺に向けピンポイントで殺気向けて来るし。

 

 

「あー、んっんっ!!」

 

一瞬で騒がしかった教室が静まりかえる。

 

流石千冬姉だ。

 

「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特製について説明する」

 

先程までの授業と違い、山田先生でなく千冬姉が教壇に立っている。

 

よっぽど大切な授業なのだろうか、山田先生までノートを手に持っている。

 

「ブリュッセルっ!起きんか馬鹿者!」

 

よっぽど大切な授業なのだろう。

すやすやと寝ている千春へ向け出席簿を投擲する。

 

パシーンッ!

 

良い音が響き千春の頭に激突する。

 

「ふぎゃ!?」

 

激突した衝撃で姿勢を崩し、椅子と共に転んだ。

例えるなら犬神家、逆さまになり下半身が机から見えている。

 

つかスカートでそれやると下着が見え……

 

 

スッパーン

 

 

俺の視界を出席簿が塞ぐ。

千春の下着を見る前に一瞬で俺の意識が掠め取られた。

む、無念。

 

 

 

 

「ああ、授業の前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけなかいな」

 

ふと千冬姉が思い出したように言う。

 

うん? クラス対抗戦? 代表者?

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はできないからそのつもりでいろ」

 

ざわざわと教室が色めきたつ。

俺は例によって事前知識がゼロだ。まったく意味がわからん。

 

まああれだ、クラス長とか言ってたから面倒な仕事が多いのだろう。もちろんパスだ。

 

「はいっ。私は織斑君を推薦します!」

 

出席番号一番、相川さんが元気良く挙手。

 

へぇ~、俺以外に織斑って名字の人がいるんだな~

 

「私もそれが良いと思います!」

 

おう、俺も俺も。つか俺以外になるなら誰でもいいぜ。

まだ見ぬ織斑さん、御愁傷様だ。

 

「わ、私はブリュッセルさんがいいと思います!」

 

千春がクラス長かぁ、委員長……良いも。

 

どこまでもついて行くぜ千春(いいんちょう)

 

 

「では候補者は織斑一夏、千春・フレイヤ・ブリュッセル……他にはいないのか? 自薦他薦は問わんぞ?」

 

ほうほう、まだ見ぬ織斑さんって俺と同姓同名なのか――― ってんなわけあるか!

 

「お、俺!?」

 

ガタッと音を立てての起立。

そしてクラス中からの視線の一斉掃射。

振り向かなくてもわかる、これは『織斑なら、織斑ならきっとなんとかしてくれる』という無責任かつ勝手な期待を込めた眼差しだろう。

俺は仙道じゃありません。

 

「織斑。席につけ、黙れ、邪魔だ。さて、他にはいないのか?いないなら二人への投票で決まるが」

 

「ちょっ、意義あり!俺はそんなのやらな――――」

 

「自薦他薦は問わんと言った。他薦された者に拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

「い、いやでも―――」

 

しつこく反論し続けようとした俺を、突然甲高い声が遮る。

 

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

バンッと机を立ち上がったのは代表候補生のセシリアさん。

 

おお、人望がここで役にたったぞ。

人とは仲良くしとくもんだな。

 

「そのような選出は認められまけん! Ms. カレンデュラ、ならまだしも、男が代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

そうだそうだ!言ってやれセシリアさん! ……ん?なんか馬鹿にされた気が

 

「それに!実力から行けばわたくしはMs.カレンデュラのIS適性値の『B』を上回る適性値『A+』です!故に、わたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で、極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって男や『幻惑の魔女』とサーカスをする気は毛頭ありまんわ!」

 

あれ?俺人間じゃなくなってる。

なんで?

 

つか魔女って……確かさっき千冬姉言ってたな、『北欧の魔女』って……まさかだけど…幻惑の魔女って…

 

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ! 」

 

 

興奮冷めやまぬ―――というよりようやく暖まってきたセシリアは怒濤の剣幕で自己陶酔する。

 

代表にはなりたくないが今のはちょっと癪だ。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でしてよ!? アイスランドも然り、わたくしの祖国、イギリスの助力なくして完成しなかったIS を、初の3.5世代型と謳って…それがわたくしを差し置いてクラス代表などと!――――」

 

 

あーあ、やっちまった。

 

知らないぞ?もう止まらんぞ?

 

 

 

「イギリスだって大したお国自慢なんかねぇだろうが。世界一不味い飯で何年世界王者だよ」

 

俺がね。

 

「なっ……!?」

 

当然だろ?セシリアは明らかに千春を侮辱していた。

 

現に窓際の最後列にいる千春はどこか悲しげに苦笑していた。

 

んなもん見せられたら理性が止めてと俺は止まらん。

 

気だるげに後ろを向けば、怒髪天をつくと言わんばかりのセシリアが顔を真っ赤っかにして怒りを示していた。

 

知らん、千春を侮辱され俺の怒りが有頂天になった この怒りはしばらくおさまる事を知らない。

 

「あっ、あっ、あなたねぇ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「俺の祖国を侮辱しやがったのはどこの英国淑女だよ馬鹿野郎!」

 

「っ!!…よろしいですわ…決闘ですわ!!」

 

バンッと机を叩くセシリア。

 

「おう。いいぜ?手袋がないからそのストッキングでも投げつけるか?」

 

手袋投げつけるのってイギリスだったっけ?

 

「はっ、破廉恥な! い、言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い…いえ、奴隷にしますわよ?」

 

「侮るなよ紅茶党。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいないぜ。ちなみに俺は緑茶党」

 

俺とセシリアの間にバチバチと閃光がバジル。もとい、走る。

 

「そう?何せちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!よくあんな苦いお茶が飲めますこと」

 

「はっ、言ってろ。で?ハンデはどれくらい付ける?」

 

とは言え俺は女子相手に本気で行くわけにもいかない。

 

「あら?早速お願いかしら?」

 

「逆だ逆。俺がどれだけハンデ付ければ良いかだ」

 

 

と、そこまで言ってクラスからどっと爆笑が巻き起こる。

ちなみに千春と箒は入ってない。

 

「お、織斑君、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったなんて大昔の話だよ?」

 

「織斑くんは、それは確かにISを動かせるだろつけど、それは言いすぎよ」

 

 

みんな本気で笑ってる。

そうだ、そうなんだ。

今、男は圧倒的に弱い。

腕力はなんの役にも立たない。確かにISは限られた一部は限られた一部の人間しか扱えないが潜在的に全ての女性がそれを扱える。

 

対して男は原則としてISを動かせない。

もし男女差別で戦争が起きようものなら男陣営は3日と持たない。

超時空なアニメなら互角だったのに。

 

「じゃあ、ハンデはいい」

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男はジョークセンスがあるのね」

 

 

さっきまでの月光蝶、もとい激昂はどこへやら、セシリアは明らかな侮蔑の笑みを浮かべていた。

 

 

「ねーねー織斑くん。今からでも遅くないよ?セシリアに言って、ハンデ付けてもらったら?」

 

俺の席から斜め後ろの女子が気さくに話しかけてきた。

しかしその表情は苦笑と失笑の混じったものでつい俺はカチンと来てしまった。

 

「男が一度言い出したことを覆せるか。ハンデはいらねぇ」

 

「えー?それ本気で代表候補生を舐めすぎだよ。それとも、知らないの?」

 

「……確かに俺はIS同士の戦闘を生で見たことはない。せいぜい千冬姉の現役時代の動画を見た事がある程度だ。だからと言って、男には退けない時があるんだ。セシリア・オルコット、てめえは俺の大切な(友達の)千春を侮辱しやがった!それが俺の退けないたった1つ、たった1つのシンプルな答だ!」

 

 

俺は握り拳をセシリアに向けいい放つ。

 

 

 

 

 

 

「きゃああぁああっ!!」

 

それを一言で言うならソニック・ブーム。

 

クラスから弾けた黄い声はソニック・ブームとなり俺の耳をツンザク。

 

 

「静まらんか小娘共っ!!」

 

ピシャリ。

 

一言で人口(誤字にあらず)ソニック・ブームを止めた。

流石千冬姉だ。

 

 

「さて、話は纏まったか?ならば……」

 

「織斑先生、織斑君とMs. オルコットの試合の際に与えるMs. オルコットに与えるハンデを決めましょう。」

 

 

 

千冬姉の言葉を遮り意見したのは、千春だった。

 

 

「ちっ、千春!?なんでハンデなんか!」

 

「一夏、お前は代表候補生を甘く見すぎている。それ依然にマトモな勝算なく勝負を仕掛けるのは愚の骨頂。勝利を手繰り寄せる糸口くらいは確保しろ」

 

千春はネコ被りでとなんでもない、真面目な言葉で俺に言う。

 

 

「ではブリュッセル、オルコットにあたえるハンデを言って見ろ」

 

千春は頷き、セシリアを見て、

 

「Ms. オルコット、彼女の近接武装の禁止。そして―――」

 

最後に俺に視線を向けニコリと笑う。

 

 

ぐっ、ちくしょう。この表情には逆らえねぇ。

 

 

「織斑一夏、彼の訓練に私が付きます」

 

 

それはつまり……

 

「一夏を……一週間でセシリア・オルコットを打倒できるまでに仕立て上げます」

 

 

 

よかろう、と千冬姉はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

「あ、あと私も参加するのでしたね?…では、私は相川清香(あいかわきよか)さんを推薦します(きらきらオーラ全開)」

 

「え!?」

 

「これで四人、最初にセシリア・オルコットvs織斑一夏。次に私と相川さんとで闘い、両組み合わせの勝者同士で戦うのはいかがでしょうか?」

 

「ちょっ、おまっ、」

 

「よかろう。では勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑、オルコット、ブリュッセル、相川はそれぞれ用意をしておくように。そうだな、織斑と相川は訓練機を優先して回してもらうよう手配してやろう。それでは授業を始まる」

 

「織斑先生!わ、私辞退―――」

 

「他薦された者に拒否権などない」

 

「しどいっ!」

 

 

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