IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 46 『オブコニカ』

「うおおおおおぉぉぉっっ!!!」

 

『―――!!!―――』

 

スラスター光を後に、白式と福音が大空で交錯する。

 

ギィンッ!――

 

交錯する瞬間、光の刃と鉄の機械刀がぶつかり合う。

 

「まだまだああぁぁッ!!」

 

ドルフィンキックのように回転し、鋭角なV字反転をした一夏が四基のスラスターを吹かし急加速する。

 

『―――!―――』

 

ブォンッ――

 

福音が腕を振るい、それを追うように光が尾を引く。

 

 

ビシュゥッ!!

 

「ぜらああああぁぁッッ!!!」

 

零落白夜を展開した刃がそれを裂き、福音に刃が――――

 

ガシィッ!

 

「!白刃ど――ぐぅあッ!?……」

 

雪片の鍔に当たる部分を福音の両手で止められ、収束したビームを食らう。

 

 

「ちくしょうっ!……つえぇっ!」

 

雪片を量子化し距離を置いた一夏は左腕の『雪羅』を構える。

 

ゴオオオオォォォォッッ!!

 

数秒で収束率が臨界を突破した荷電粒子砲が暗闇を引き裂くように放たれる。

 

しかし、福音はまるで空を游ぐように鮮やかに、見惚れるような機動で荷電粒子砲の射線を逃れる。

 

「今のは…―――テメェ!!」

 

 

今のは、まるで千春の機動のようだと言い掛け、その真意に至った。

 

千春の動きを、真似やがった!!

 

山田先生は確か言っていた。

 

 

―――心なしか先程より動きが良くなり初めています!速く決めないと…―――

 

 

もし学習しているのなら当然動きもよくなるはずだ。

 

奴は、学習(・・)している。だから零落白夜を展開していない時は打ち合い、零落白夜が展開されたは先程みたいに白刃取りをしたり、距離を取る。

 

これ以上の長期戦は不味い。早期の決着が望まれる。

 

故に、一夏は雪片を構え発動する。

 

「灯れ……っ」

 

 

エネルギー残量は200強。心伴いが……行くしかない!!

 

 

零落白夜(レイラクビャクヤ)っ!!」

 

ガシュッ!―――

 

雪片が光刃を纏う!

 

「うおおおおおぉぉぉっっ!!!」

 

金色の光を纏い、一夏は明けて来た夜空を飛翔する。

 

閃光が夜を切り裂く。

 

 

 

 

 

 

 

「……一夏…」

 

箒は、空を見上げたまま、小さく呟いた。

 

一夏が駆けつけてくれた。

 

それはもう、嬉しいを用意に飛び越えていた。

心が躍動し、心の臓がドクン、ドクンと大きく跳ねる。

 

 

 

見よ、あの勇姿を。

 

悪ければ死ぬかもしれなかった攻撃を受け、昏睡し、そして、箒たちの危機に駆けつけたあの後ろ姿を。

 

あの背中には、恐怖が感じられない。あれほどの攻撃に晒されたと言うのに、彼は彼女達を守るため現れた。

 

嗚呼、なんと尊いのだろう。

 

その背中を、守りたい。

 

箒は強く、強く願った。

 

「紅椿、……すまない、私に力を貸してくれ」

 

小さく笑い、箒は一夏から渡されたリボンで髪を一纏めにする。

 

「一夏と共に、戦うために――!」

 

福音の攻撃に晒され、紅椿の装甲のあちこちには破損箇所が見える。

 

損傷率で言えばB程度。箒は自身の相棒にすまないと思いながら身体を立ち上がらせ、そこで―――

 

 

 

 

金色の光に包まれた。

 

 

 

「なっ…これは……!」

 

紅椿の展開装甲から……いや、装甲のあちこちから金色の光が溢れていた。

 

―――単一仕様能力『百花繚乱(ヒャッカリョウラン)』発動―――

 

ハイパーセンサーからの情報で機体のエネルギーが急激に回復していくのがわかる。

 

否。エネルギーだけではない。ボロボロになっていた装甲までもが、時計を巻き戻したかのように再生していく。

 

「これが…『紅椿』のワンオフアビリティー…なのか?」

 

そして、全身の装甲とエネルギー値が万全になると、次いで新たな項目が現れた。

 

 

「!?……これは……っ!」

 

 

 

 

「くそっ…エネルギーがっ!」

 

 

シールドエネルギーがみるみるうちに減って行く。

200はあったエネルギーが、今では20を切った。

 

零落白夜は自身のエネルギーを消費し、相手のエネルギーを消滅させるワンオフアビリティーだ。

 

両刃の刃が、一夏を苦しめていた。

 

 

 

「一夏、下がって!」

 

「シャル!」

 

一夏の残量エネルギーを知ってか、シャルロットがアサルトライフルを放ちながら福音と白式の間に現れる。

 

『―――!―――』

 

福音から雨のように放たれるビームを、エネルギーシールドと実体シールドの多重防壁で防ぎ切るシャルロット。

 

「助かるぜ、シャル!」

 

「長くは、持たないけどね!」

 

シャルロットの言葉通り熱波はエネルギーシールドを越え、実体シールドの表層を溶かして行く。

 

「ようやく、多少は動けるようになりましたわねっ」

 

「セシリア、合わせろ!」

 

「わたくしを甘く見て貰っては困りますわ!」

 

『スターブレイカー』を構えたセシリアにラウラが叫び、高出力のレーザーと亜音速のリニアカノンが福音に迫る!

 

 

『―――!!―――』

 

しかし、福音には当たらない。またしても、千春の動きで避けて行く。

 

 

「こんっ、のおおおおぉぉッ!!」

 

鈴が、ボロボロの装甲の甲龍が、脚部のスラスターを全開にし、加速しながら双天月牙を展開する!

 

ブォンッ!、ガキィィンッ!!

 

大きく振り下ろされた剣を、福音は片足で蹴るかのように防ぎ、次いで鈴を蹴りしその反動で距離を取り、

 

 

「あの動き…っ!?」

 

三次元躍動旋回(クロス・グリッドターン)で鈴の背後を取った。

 

 

「きゃああぁっ!」

 

背後からビームの嵐を受け、甲龍の装甲が弾け飛ぶ。

熱波と衝撃に身体を痛め付けられ、意識を失った鈴が海へ向け落下する。

 

 

「鈴っ!野郎…っ」

 

「一夏!!」

 

「箒っ…?その光…まさか!」

 

シャルロットの背後から飛び出そうとした一夏を箒が止める。

 

「ああ。……受けとれ、一夏!」

 

金色の光を纏った箒が白式の装甲に触れると、白式のエネルギーが急激に回復し始めた。

 

「エネルギーが……っ!?」

 

紅椿の接触が白式のエネルギーの回復を目的としていることに気づいたのか、または三機ものISが固まったからなのか、エネルギー翼から、三人に向け、今までの比ではないような量のビームが放たれる。

最早激流とも呼べるビームの奔流。

 

「ひっ!?」

 

「ヤベェッ!」

 

そんなもの、色彩(グラデーション)のエネルギーシールド一極展開でも防ぎ切れない。

 

雪羅(セツラ)のあるモードを使えば防ぎ切れるが……まだ展開可能なエネルギーを確保していない。

このままでなラファールの多重防壁を突破し、ビームの濁流が身を焼くだろう。

シャルロットと一夏、セシリアやラウラらは最悪の未来を幻視した。

 

 

 

そう、その、四人(・・)は。

 

 

「案ずるな、一夏。彼女(・・)が守ってくれる!」

 

箒は、その瞳に涙を溜めながら、晴れやかな笑みを浮かべ、海上へ目を向けた。

 

 

 

 

ビームが、曲がる。

 

一夏達へ迫るビームの、その悉く(ことごとく)が湾曲し、一夏達を逸れるように通りすぎている。

 

 

「こ、これは?……」

 

目の前の光景に目を大きく広げたシャルロット。

箒を見たシャルロットは箒の見ている場所に目を向け、その表情に笑みを溢す。

 

 

 

凰鈴音は暖かな(かいな)に抱かれ、心地よさに目を開いた。

 

「…………ぁっ…」

 

瞼の向こうに、愛しき友人の姿を見て、鈴は声を漏らす。

 

「ごめんね、鈴。心配、かけちゃったよね」

 

その友人は、短くなった髪を風に靡かせながら鈴音に慈愛の笑みを向ける。

 

「でも、もう大丈夫」

 

ニコリと笑った彼女に、釣られて鈴も笑った。

 

 

 

 

 

 

 

ビームの暴風雨が止んだ。

 

自身の放ったビームの悉くが逸らされた異常性に危機感を抱いた福音が警戒の動きを見せる。

 

しかしそんなもの、今の一夏には見えていなかった。

 

 

大きく形状が変化したIS装甲は淡い桃色。背中や肩から肘にかけて装甲は無く、肌色が見える。

腰から脚に掛けて打鉄に似た広がった装甲はまるでスカートだ。

また、腰からは二基のスラスターらしき翼が生えており、その姿は鉄のドレスを纏った妖精。

 

 

「―――おかえり、千春」

 

「……ん。ただ~いまっ!」

 

何時ものように、元気一杯の、太陽みたいな笑みに一夏の心は大きく震えた。

 

 

花は、ここに咲いた。

 

 

 

 

 

 

『―――敵機の形態移行を確認。敵性レベルをAに引き上げる―――』

 

 

福音から抑制のない機械音声がオープンチャネルを通して聞こえてくる。

 

『―――敵機の殲滅を開始する―――』

 

 

エネルギー翼が大きく広がり、翼から大量の光の羽が、全方位に向け放たれた。

 

全方位、無差別。 今ここに居る七人を殲滅するために空を覆うほどのビームの雨が降り注ぐ

 

「くっ、先程までは余興とでも…ッ」

 

「動くなラウラ!!」

 

福音のビームを回避しようとしたラウラを、千春が言葉で制する。

 

何故?と表情で問うラウラ。その問いを受けた千春は鈴を抱き抱えたまま福音を見上げた。

 

「守れなくなる!」

 

鋭い眼光は降り注ぐビームの弾道。

ビームが降り落ちる箇所を性格に読み取っていた。

 

「守れなく…?……っ!」

 

片腕を上げた千春に呼応するように、福音が放ったビームの内、各人に当たるビームが逸れるように湾曲した。

 

「まさか…単一仕様能力!?……形態移行はしてるけど……まさか、第二形態移行!?」

 

シャルロットがその光景を見て唖然としたように口を開く。

 

「シャルル、鈴をお願い!」

 

降り注ぎ続ける雨を凌ぎながら千春がシャルロットを呼ぶ。

 

シャルロットは頷き、千春の元へ駆けつけて鈴を抱き抱える。

 

「千春!奴は、どうすれば良い?」

 

箒が二刀を構え、叫ぶ。

 

白式もエネルギー回復を終えた。雪片を展開し、千春の言葉を待っていると、千春は少し思案した後小さく頷いた。

 

 

「あの子を助けたいの。お願い、力を貸して!」

 

「あの……子?」

 

俺の言葉に千春は頷いた。

 

「あの子は、主人である操縦者を守っているだけ。誰かに、全てのISを敵に見せるようにされてしまっただけなの!」

 

「なっ…」

 

千春の言葉に全員が言葉を無くす。

 

「あの子は、怖がってるだけなの……だから、一夏っ…!」

 

福音を見上げる千春の目に、哀しみが写る。

千春をそんな表情にさせた『何者か』に怒りを覚えながら、福音を助けたいと俺は強く願った。

 

 

「そっか……だったら、助けてやらないとな」

 

雪片を構え、一夏は笑った。

 

「灯れ!!」

 

雪片が可変し、零落白夜の刃が現れる。

 

零落白夜はエネルギーを消滅させる最強にして諸刃の刃。

しかし、今の白式はエネルギーが満タンだ。一撃で当てたなら釣りが帰ってくる。

 

「行くぜ、白式」

 

全身の装甲が各部スライドし、フィン状の装甲が露になると、白式は真紅の光に包まれる。

 

「疾風迅雷!!」

 

紅い光が尾を引きながら、福音を貫いた。

 

 

 

「―――――抜けば珠散る氷の刃……ってな」

 

『――――!!!???――――』

 

福音のエネルギー翼が霧散して行く。零落白夜の一撃を受け、エネルギー翼を展開するほどのエネルギーを失ったのだ。

 

その福音へ、千春が駆ける。

 

その両腕をめいいっぱいに広げ、福音を抱き止めるために―――。

 

「……っ、お願い……心を、開いて!」

 

抵抗する福音を、子供をあやすようにずっと優しく抱き止めながら言葉をかける。

 

敵でなない、と。

 

そして、その言葉は福音へ届いた。

 

 

『――――――』

 

力なく、ダランと下げられた腕。

抵抗を止めた福音は光に包まれ、そしてその光の中から操縦者らしき女性が現れた。

 

「ヤベェ――」

 

「っと。……」

 

落下しそうになった女性を箒が受け止めた。息はしてるようだが、どうやら気絶しているらしい。女性を抱き止めた箒が千春を見ると、千春はその手に、鈍く光るヒシガタの何かを持っていた。

 

「……ありがとう。私の言葉を、聞いてくれて」

 

慈愛に満ちた笑みを向けられたヒシガタのそれは千春の言葉に答えるように、少しだけ光った。

 

 

 

朝霧を越え、俺たちは戦った。

 

 

 

そして、朝日が空へ登り始める様子をながめながら誰かが、呟いた。

 

 

「終わったな…」

 

 

 

空は昨日の荒れようからは見違えるような晴天になっていた。

 

 

 

 

 

 

「作戦完了―――と言ってやりたい所だが、貴様たちは独自行動による重大な違反を犯した。それは、理解しているな?」

 

「……はい」

 

戦場を戦いぬけた戦士たちが帰還した後は、それはそれは酷いものだった。

 

 

主に足が。もうね、約三時間も正座させられたせいで足が痺れて、段々と痛みが感じられなくなったきた。

 

腕組みで待っていた千冬姉に一言、「そこに直れ」と言われた瞬間、鈴を含め全員が正座した。

 

それから三時間。いや、もっとだろうか。とりあえず、長い時間の間正座され続け、ようやく千冬姉が口を開いたのだった。

 

 

「特にブリュッセル。貴様には特に強く言っていたはずだが?」

 

「っ、ひぐっ…ふぇっ………」

 

「泣くな」

 

「ひっ、ひんっ」

 

正座させられてる中でも千春が一番ダメージを受けていた。

 

どうやら全身筋肉痛を患い、更に三時間の正座耐久コースに千春の精神はボロボロになっていた。

二時間を越えた辺りから泣き出してたし。

 

「あ、あの、織斑先生。そろそろその辺で……け、けが、怪我人もいますし、ね?」

 

各所に包帯を巻きながらも普段通りに動けるまで回復した山田先生がわたわたと慌てながら救急箱や水分補給パックやらを千冬姉にチラチラと見せる。

 

「……ふん。山田先生に免じて今回は今日一日の謹慎と夏休み中の懲罰用トレーニングで免じてやるが……次はないぞ?」

 

「「「「「「 は、はいっ! 」」」」」」

 

「ひゃいっ」

 

俺たちが返事をしたのを見ると、千冬姉は小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

ざあ………ざぁん…――――。

 

謹慎処分を受けてから少し経ち、空は今、夜の闇が広がっていた。

 

いや、闇と言うのは語弊があるな。

月や星々が淡く煌めき、満天の星空が、空を見上げた一夏の前に広がっていた。

 

波の音を近くに空を見上げていた一夏は考えに耽っていた。

 

千冬はああ言っていたが…部屋で静かにしてるには、今の一夏の心はざわめき過ぎていたのだ。

 

何者かに暴走させられていた福音の事、気絶していた時に見た夢の中の男。……そして、千春の事。

 

考え事が多すぎて頭が痛いくらいだ。千春なら、並列思考…ってので、多分大丈夫なのだろうが。

 

すぐ千春の事を考え出す自分の頭に一夏は苦笑した。

 

―――ダメだ。やっぱり千春が大好きだ。…………そろそろ、覚悟を決めるぞ、俺。

 

胸を軽くノックするように叩く。男なら、ちゃんと心を伝えないとな。

 

―――次、千春と顔を合わせたら…告白しよう。

 

一夏が決意した時、背後から石を踏みしめる音がして、一夏は振り返った。

 

 

「ぁ……やっほ、一夏」

 

 

ちっ、千春ぅぅぅぅっっ!!?

 

そこに居たのは、制服姿の千春だった。

 

「一夏が出ていくのを見かけたから……ごめん、着けちゃった」

 

「い、いいいいや、いやいやいやっ、きにすんなって、おれとちはるのなかだしな!!」

 

キョドリながら答えると千春ははにかみ、一夏の隣に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

え、なにこれ、最高の告白ムードじゃね?

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