IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 5 『どうしてこうなった』

「さあやって参りました!一年一組クラス代表決定戦!司会は私、二年の黛薫子(まゆずみかおるこ)。よろしくね!」

 

 

わああぁぁ!!とアリーナが湧く。

 

座席完売満員御礼、どうしてこうなった。

どうしてこうなった!

 

本来一組内のみで行われるこの試合に、何故か、全校生徒が集っていたのだ。

 

千冬姉いわく、カレンデュラにイギリス代表候補生、そして男にして唯一ISを動かせる俺。

ネームバリューがやたら高いらしい。

 

生徒会長が是非イベントにするべきだと教師陣を説得し回った結果、こうして立ち見席まで満員な状態になったらしい。

 

さてさて、今俺は観客席にいる。

千春対相川さんの試合を見るために来たんだ。

 

「相川さんには悪いが、この試合は千春の勝ちだ。一夏、千春の機動を盗み見ておけよ?」

 

「ああ、訓練の時も『千春自身の機動』は見せて貰えなかったからな」

 

隣の席に座る箒の言葉に頷き返す。

 

あれから一週間、千春と箒と訓練を続けて来たが、千春はある人物の機動を真似して俺と戦っていた。

 

そしてこの一週間で、箒と千春の仲は良くなり、今では千春の方もねこ被りせずに接するようになった。

 

「お、箒はなんか飲むか?」

 

観客席で、千春と相川さんの二人が登場するのを今か今かと待ちながら辺りを見回すと、観客席を歩く所謂売り渡しの人達がいた。

メジャーリーグの観客席でよくみるようなあれだ。箒の肩を軽く叩き、売り子の人を指差して聞く。

 

ちなみに売り子さんも勿論女の子。

 

「む?私はなんでも」

 

「わたくしは紅茶でお願いしますわ」

 

「私はビールを、山田先生は?」

 

「び、ビールはダメですよ織斑先生!え、えと、オレンジジュースで…」

 

「融通の効かん……では私は炭酸物を」

 

「オッケー、すみませーん!」

 

売り子さんを手を振りながら呼ぶ。

 

ウーロン茶に紅茶、え、あっ、ない。

ミルクティーなら?じゃあそれで。あとオレンジジュースとコーラ二つでお願いします。

 

ホットドック? あ、いいですねそれ。

じゃあそれ五つで。

 

あ?手ではしたない??うるせぇばか淑女(やろう)、こう言う場所ではこういう食べ物を食うのが作法なんだよ。ほら、郷に入っては郷に従えって言うだろ?

 

それにさ、みんなでわいわい楽しく騒ぐのも、乙なもんだぜ?

 

よしよし偉い偉い。そんなセシリアにはプレゼントだ。

ひとつマスタード多めでお願いします。

 

「行き渡った?」

 

売り子さんから買った物を各自に配り終え、確認。

 

どうやら行き渡ったみたいだな。

 

ではいただきま―――

 

 

 

 

「って!なんでここにいるんだよセシリア!?」

 

 

 

いつの間にか俺のもう片方の隣の席にセシリアが座っていた。

 

そして箒を間に千冬姉、山田先生と並んで座っている。

 

 

「随分と今さらですわね。別にわたくしが何処に座ろうと自由ではなくて?」

 

セシリアは口元を手で少し隠しながらホットドックを口に運ぶ。

 

俺や千冬姉はそれに習いホットドックを一口、箒や山田先生も続く。

 

パリッ!

 

うおお、すげぇ。ソーセージがパリッって鳴って肉汁が溢れ出す。

パンもまた香ばしく焼けていて、ケチャップとマスタードがいい味わいをもたらす。

うめぇ、何がなんでもうめぇ。

 

海水浴場の海の家で食う焼きそばとかカレーとかと違い、こっちのは明らかにレベルが高いのがわかる。お祭り騒ぎで美味しさが増すのは同じだが。

 

 

「~~~~っ!?!?」

 

「にしてもなんでこんな騒ぎになったんだろ」

 

美味しさに悶えるセシリアを見て優しい笑みを浮かべた俺はふと空に疑問を投げ掛ける。

 

 

「生徒会長が今回の一件を嗅ぎ付け、学校公認のイベントとして全校生徒を参加させたんだ。クラス対抗戦前のデモンストレーションとでも言えば聞こえはいいか」

 

 

空に投げ掛けた言葉を千冬姉が拾い上げ、俺に投げ返す。

 

「~~~っ!!(怒)」

 

バシバシと俺の背中を叩くセシリアを無視し、俺は二つ持っている紙コップのうち、コーラが入っている方を口に運ぶ。

 

うん、やっぱファーストフードにはコーラだよ。

 

 

「お、織斑君…そろそろオルコットさんに飲み物をあげたほうが……」

 

山田先生は俺とセシリアに視線をチラチラと向けながら困ったように言う。

 

確かに、セシリアの顔は赤を通りすぎてなんか黄色い。

 

「ほらよ」

 

 

セシリアの前にミルクティーの入ったカップを差し出せば、勢いよくセシリアに強奪された。

 

全く、ミルクティーが欲しいならちゃんと言えよな?

 

「あっ、あああっ貴方は鬼ですの!?」

 

「残念、鬼の弟だよ」

 

 

スッパーンっ!

 

 

ざわめく観客席に一発、いい音が響く。

 

 

そうだった、千冬姉がいたんだった。

 

つか箒が間にいるのに、全く動かず出席簿アタックかますこの人はなんだ?

 

もはや達人とかそう言うもんを超越してるね。

 

パリッ

 

んん~~、やっぱホットドックうめ――――

 

 

「~~~~っ!?!?」

 

俺は思わず手で塞いだ。

 

一体なんだ!?このマスタードを馬鹿みたいに入れられたような辛さは!

 

鼻が染みるぜこんちくしょう!

 

 

「これはお返しですわよっ!」

 

涙目になりがらも、大きく口を開いた俺にマスタードたっぷりなホットドックを詰め込みやがったセシリアはドヤ顔でキメる。

 

何言ってるのかよくわからんがしてやったり、な顔のセシリアを見たらカチンと来た。

 

その前にコーラで……あれ?ない。手に持ってたはずのコーラがない。

 

「ふふん」

 

!!!!????

 

成る程、してやったり顔になるわけだ。

 

セシリアの太ももの間に、俺のコーラがッ

 

「泣いて謝るなら……返してあげてもよろしくてよ?」

 

いまさらだがセシリアのスカートは他の生徒より長めだ。

 

膝下くらいまであるスカートはセシリアの持つ所謂、気品とかそこらへんのせいでドレスに見えるくらいだ。しかも似合ってる。

 

そう、セシリア・オルコットのスカートは長めなのである。

 

そのセシリアが太ももでコーラを挟んでいるわけで……つまりはスカートをたくしあげてるわけで……ストッキングとスカートの境界線、この絶対領域が少しでもずれてしまえばストッキングの上から見たパンティが見えてしまいそうなわけで…………

 

長ったらしい前口上を付けたが、つまりは無理矢理とろうとしたら変態に見えてしまうというわけだ。

 

しかしそこは空気が読めると定評のあるこの俺織斑一夏、泣いて謝ったりなんてするもんか。

躊躇わずセシリアの口に俺のホットドックを突っ込み、空いた両手でコーラを奪いにかかる。

 

 

そして俺は両手でセシリアの股をこじ開け、コーラを奪い取る。

 

ふっ!……完全勝利だばか野郎。

貴様の敗因はたったひとつ、たった一つのシンプルな答えなんだよワトソン君。

 

テメェは俺をおこらせ――――

 

 

 

スッパーンっ!!

 

「何、教師の前で淫行をしてるか馬鹿者がっ」

 

勝利の美酒に預かろうとした俺に降り下ろされた正義の一撃。

 

それを受け俺は勢いよくセシリアの太ももにダイブ。

 

顔を太ももで挟まれ危うく窒息しかけましたとさ。

 

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