IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

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stage 7 『撃鉄と剣撃』

「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化してくれる」

 

千冬姉の言葉通り、装甲を開いている白式に身を任せる。

 

抱き止められる感覚がしてから、すぐに俺の身体に合わせて装甲が閉じる。

 

カシュッ、カシュッ、という空気を抜く音が響く。

 

 

感覚が鮮明になる。各種センサーが告げてくる値は、どれも全て普段から見ているかのように理解出来た。

 

 

「…これは…セシリアか?」

 

――戦闘待機状態のISを感知。操縦者セシリア・オルコット。『ブルー・ティアーズ』確認。――

 

「ISのハイパーセンサーは問題なく稼働しているな。一夏、気分は悪くないか?」

 

 

いつもと同じような態度に見える千冬姉の、その微妙な声の震えまで感知出来る。

 

心配してくれているのだ。

 

「ああ、大丈夫だよ千冬姉。心配してくれてありがと」

 

「そ、そうか」

 

ほっとしたような声。

ハイパーセンサーがなければ恐らく気付かなかったであろう声のブレだった。

 

 

「すぅ……はぁ…」

 

息を大きく吸い込み、勢いよく吐き出した。

 

 

ゲートが開く。

 

俺はカタパルトの上に立ち、出撃に備える。

 

足をカタパルトがロックする。

 

 

 

「っ………」

 

ふと、箒を見た。360゜全周囲を見渡す事が可能なハイパーセンサーを使ってるために、何か言いたげな箒が見えたのだ。

 

「なぁ箒」

 

「なっ、なんだ?」

 

 

 

 

「行ってくる」

 

 

 

ただ一言、箒を一回も見ずに言う。

 

「あっ…ああっ必ず勝って来い!」

 

俺はその言葉に首肯(しゅこう)で答えた。

 

「織斑くんっ、発進、どうぞ!」

 

 

アリーナへの道が完全に開き、山田先生の声がピットに響く。

 

 

 

 

 

 

「織斑一夏。『白式』、行きますっ!」

 

 

 

前傾姿勢を取り、俺は出撃する。

 

カタパルトが稼働し俺をアリーナへと引きづり込む。

 

 

 

 

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

アリーナの上空、見下ろすようにセシリアはいた。

 

いつものように腰に手を当てたポーズが様になっている。

 

しかし俺の関心はそんなところにはない。

鮮やかな青の機体。

『ブルー・ティアーズ』。その外見は、特徴的なフィン・アーマーを四枚背に従え、どこか王国騎士のような気高さを感じさせる。

そして同時に、千春の蒼い『グラデーション』と似通った外見だ。

いや、『グラデーション』が『ブルー・ティアーズ』に似ているのか?

前に、イギリスの技術だとかなんとかセシリアが言ってたし。

 

その『ブルー・ティアーズ』を駆るセシリアの手には2mを超す長大な銃器。

 

――検索、六十七口径特殊レーザーライフル『スターライトmkⅢ』と一致――

 

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

腰に当てた手を俺に向け指差す。

 

自信の現れか余裕なのか、砲口を下げたままだ。

 

「チャンス?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、……許してあげないこともなくってよ?」

 

 

そう言って目を笑みに細める。

 

――警告、敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行。

セーフティのロック解除を確認――

 

んな事言われなくてもわかってる。あれは狙撃手、それも狩りをするような目だ。

 

俺は『白式』から送られてくる情報を一度頭の中で整理する。

そうでもしなけりゃセシリアにも、『白式』にも飲まれてしまいそうだからだ。

 

 

「そっか、じゃあごめん!」

 

「えっ?」

 

俺は頭を下げた。おいおいセシリア、自分から薦めといて唖然となるなよ。

 

 

「俺、お前と試合する事が決まった時も、どうにかなるだろ、とか思ってた。けど違かった……」

 

頭を下げながらも、俺は続ける。

 

「千春と特訓してわかったんだ。ISの操縦者として、『国家代表選手候補生』がどれだけすごいのか。そりゃそうだよ、国の中から選りすぐりの選手集めてんだもん。……」

 

顔を上げ、ため息まじりに頭を掻く。

 

 

「千春は言ってた。「セシリアは私より強い。当然だ、彼女は努力を怠らなかった。彼女はIS操者として天性の才を持つ。だがそれだけじゃ代表候補生にはなれない。……そう、努力し続けたからだ」……てな。セシリアは俺なんかより数段強いんだって事がこの一週間でわかった。だから謝る。頑張れば勝てるとか、大丈夫だろう、なんて感じでお前を見てたことを」

 

 

セシリアと目が合う。

 

セシリアの瞳は大きく見開かれ、俺を見ていた。

 

 

「だけど!……俺は負けるつもりはない。ボロボロになってでも……セシリア、お前に食らいついて見せる!!」

 

 

「……ふふ…わかりましたわ。食らいついてみなさい。このわたくし、セシリア・オルコットに食らいつけるものなら!」

 

 

『スターライトmkⅢ』を構える。

 

砲口が俺を捕まえる。

 

 

「胸を借りるつもりで行くぜっ、セシリア!」

 

「来なさいっ!抱き留めてあげますわ!」

 

セシリアがトリガーに手をかける。

 

「ああっ!そのまま押し倒させて貰うぜ!」

 

 

足に力を入れる。すぐに動けるように―――

 

【初弾は必ず回避しろ】

 

千春の教えを思い出す。

 

 

 

ここだっ!

 

 

俺は、右に向けて全力で飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと?あの馬鹿者、いったいどこで……」

 

 

アリーナの管制室で織斑千冬は眉をひそめた。

 

「一夏はあれを、千春との特訓で身に付けました。千春としてはあまり乗り気ではなかったみたいですが……」

 

篠ノ之箒は一夏と千春とともに特訓していた。故に知っている。

 

「だろうな。あれは速度こそ弾丸並に速いが、あんなものはただの突撃と変わらん。オルコット相手に、それでは勝てん。何を考えている……一夏」

 

千冬と箒は写し出された映像を見ながら思案する。

 

 

(一夏……)

 

しかし、箒はただ祈るだけだ。

 

彼は勝つ。勝って来いと言った言葉に一夏は頷いたのだ。

 

故に祈るだけ。せめて彼が、怪我せず帰ってくるのを……

 

 

 

 

 

「舐められたものですわね?武装を展開せず逃げ回るだけとわ……」

 

セシリアは上機嫌で俺を見下してた。

 

そりゃそうだろ。

初弾こそ瞬時加速(イグニッション・ブースト)で無理矢理避けたが、その後はセシリアの放ったレーザーが何度も真横を掠め、600くらいあったシールドエネルギーが400くらいまで減っていた。

 

 

 

おおざっぱに説明すると、ISバトルは相手のシールドエネルギーを0にすれば勝ちだ。

ただし、バリアーされたりすると実体がダメージを受ける。

そっちは数値化されてるシールドエネルギーなんかと違って、大なり小なり戦闘行為に影響を与える。

例えばスラスターを破壊されたら加速出来なくなるだろ?

 

ちなみに、操縦者が死なないように、ISには『絶対防御』という能力が必ず備わっているらしい。

あらゆる攻撃を受けとめるが、ただし、これはシールドエネルギーを極端に消耗させる。

つまり、絶対防御を発動させれば相手のシールドエネルギーを大幅に削減させる事が出来るのだ。

 

いたぶるのが趣味じゃなくても、自分が優位なら機嫌も良くなる。

 

しかし、このエネルギーの減りよう……たぶんセシリアの攻撃だけじゃない。瞬時加速(イグニッション・ブースト)を多用し過ぎたか……。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)、

ISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込み、《圧縮して放出》し。その際に得られる慣性エネルギーをして爆発的に加速するという、加速機動。所謂デコピンだ(親指で力を溜めて弾く感じ)

 

使用中は加速に伴う空気抵抗や、圧力の関係で軌道を変えることができず、直線的な動きになってしまう……らしい。しかしこの機動、突撃に感じてはピカイチなわけだが……いかんせん燃費が悪い。毎回エネルギーを一定以上消費するわけで、このざまだ。

 

 

「先ずは見極めるのが大事なんでね!」

 

 

いいながらも右腕を狙って放たれたレーザーを避ける。

武装を展開しないのはまだ俺の距離じゃないから。

 

千春曰く、「剣を握るのは必殺を誓った時のみ」、だ。

 

 

それにこのISの武装は雪片のみ、ますます見せ所は決め所になる。

 

 

「ふふ、では見せぬまま、そのまま落ちなさい……行きなさい、『ブルー・ティアーズ』!」

 

セシリアは『スターライトmkⅢ』の砲身を下げ、まるで指示を跳ばすように手を掲げた。

 

ガチャッ、ヒュンヒュンッ

 

『ブルー・ティアーズ』のフィン・アーマーから四つ、なにかが放たれた。

それは真っ直ぐと俺を狙い……

 

 

《BT兵装だっ!避けて一夏っ!》

 

 

散開すると同時にビームを放って来た。

 

「う、うおおおおっ!!」

 

咆哮、上空へ向け全力で瞬時加速をぶちかます。

 

つい先ほどまでいた場所には四方から放たれたビームが埋め尽くす。

 

千春の声が聴こえなければ避けなかった。

 

ん?千春?

 

 

「なんで…千春の声が?」

 

 

《ご、ごめんっ け、けど今は集中して、一夏》

 

「わっ、わかった!」

 

どこか切羽詰まった声だ。

 

会場のどこかで見ているであろう千春、たぶん俺の戦いが稚拙(ちせつ)なもんだから心配かけさせちゃったんだろう。

 

 

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

四機のBT兵装の『蒼き雫(ブルー・ティアーズ)』から放たれるビーム、ビームビームビーム。

 

まさに弾幕だ。ビームの雨とも言える。

それら全てが正確にこちらを狙ってくるため、凌ぐのですら難しい。

 

ガンガンと身体が揺れるのと同時にガリガリとシールドエネルギーが削られた行く。

ちくしょう、『白式』のアラートがうるせぇっ。

 

 

「こちとりゃ盆踊りが関の山だっ。円舞曲(ワルツ)なんか性質に合わんっ!」

 

「安心なさってよろしくてよ?リードはわたくしがしてあげますから」

 

「なめんなこんちくしょうっ!てめぇこそ、絶対に…ちぃっ!?…盆踊りを、踊らせてやらぁっ!」

 

 

立ち尽くしたまま、余裕の表情のセシリアを前に、俺の勝ちを信じてくれてる箒の前で、千春が舞ってる場所(ステージ)を目の前にッッ、

 

 

「俺はっ!無様に、踊ってるわけにはいかねぇんだよおぉッッ!!!」

 

 

これ以上はじり貧だ、多少強引でも血路を作るしかなぇようだ。

 

なら見せてやる。俺が編み出した、瞬時加速(イグニッション・ブースト)の一つの完成形をっ!

 

背後のスラスターが、放出したエネルギーを取り込み、圧縮し放出。

 

弾かれるように翔んだ。

 

 

俺は右手に『雪片(けん)』を握る。

 

 

 

 

 

加速する。瞬時加速(イグニッション・ブースト)による加速で、俺は弾幕の中を飛ぶ。

 

そう、今この時のタイミングで飛び込まねばならなかった。

 

BT兵装『ブルー・ティアーズ』が俺の周囲に展開している今この時に。

 

 

「その鬼札には少々驚かされましたわ」

 

 

嘘つけ、平然と狙撃し続けられて何言ってやがる。

けど、おかげで知ったぜ?

 

その銃が、次弾を発射するのにかかる時間を、……

 

 

「けれど、その機動は見切りました。それに、いくら速くとも、真正面から来る相手を落とせぬセシリア・オルコットではなくてよ?」

 

ガチャッ、セシリアが『スターライトmkⅢ』を構える。

 

そして、俺は今確信した。

セシリアが周囲に展開している『ブルー・ティアーズ』からの弾幕が……止んだ。

 

「落ちなさい」

 

勝利を確信した声。僅かに上ずっている。

 

放たれるレーザー。

 

そして――――

 

 

 

瞬時加速中に、俺はソレを真横に避けた。

 

 

「「「「「!!??」」」」」

 

 

 

今ごろ皆驚いた顔をしてるだろう。

少なくとも、目の前にいるセシリアは驚いている。

 

千春も、千冬姉も、箒も、管制室で見てるであろう山田先生も、こんな顔をしてるんだろうか。

 

 

これが俺の編み出した『多方向個別近距離瞬時加速《マルチトリガー・ショートイグニッション・ブースト》』だ。

 

推進翼が二つ以上あるのが最低条件だが、

まあ簡単に言ってしまえばこれは二つ以上ある多方向推進翼による、片翼だけで行う瞬時加速だ。

ただ普通の瞬時加速と違う所は、加速する距離を剣道で踏み込む程度の距離に抑える点である。

故の近距離瞬時加速(ショート・イグニッション・ブースト)

 

方向転換などが出来ない瞬時加速の弱点を二つ以上の推進翼と力業で弱点を覆い隠した機動。

この機動の短所は、二つの推進翼で、多方向個別近距離瞬時加速を行った場合、もう片翼で瞬時加速を支えるためバランスが極端に悪い所だ。

推進翼があと二つは欲しい所だが……

 

今のところ、これだけで十分だ。

 

「うおおおおおぉぉッッ!!!」

 

またしても咆哮、いや、雄叫びのほうがしっくりくるだろう。

 

距離はもう近距離一歩踏みだしゃ白兵戦(インファイト)。

今度は俺が確信した。勝った、と。

 

だってそうだろ?相手の今使える武装は取り回しの難しい《スターライトmkⅢ》、しかも、白兵戦の武装を禁止されてるんだ。

ハンデがこんな所で生かされるなんてな、千春にホントに感謝だ。

 

 

俺は勝利を確信した。

 

相手もまた、切り札を持ってる事を、ただの一瞬たりとも考えず。

 

 

「―――かかり…ましたわね!」

 

にやり、と。セシリアが笑うのが見えた。―――まずいっ、本能的に危機を感じて距離を取ろうとすふが、それこそ間に合うはずもない。

 

 

ヴンッ―――

 

 

セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマー。

その突起が外れて、動いた。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは…六機あってよ?」

 

回避が間に合わない。しかも、先程までのビーム射撃を行うビットではない。

『弾道型(ミサイル)』だ。

 

 

赤を越えて白い、その爆発と光に、俺は包まれた。

 

 

 

「一夏っ………っ!」

 

モニターを見ていた箒は、思わず声をあげた。

 

爆発に巻き込まれた一夏はそのままアリーナの地面に叩き落とされたのだ。

 

千冬も真耶も、地に伏せている織斑一夏が写る画面を、真剣な面持ちで注視する。

 

 

「一夏―――」

 

 

だが千冬は、一夏ではなく、一夏の持つソレを見た。

 

 

「お前ならば…使えるはずだ」

 

不思議と手に力が入る。

 

「見せて見ろ……お前の雪片を…」

 

 

千冬は小さく笑った。

 

自分の声に呼応するように、一夏が立ち上がったのだから。

 

 

 

「っ、……はぁっ、…はぁ…」

 

 

何秒、気絶していた?

 

それが最初に浮かんだ疑問。

 

爆発による衝撃で俺は気絶した。

 

次いで勝敗は?シールドエネルギーの残留は?など世話しなく疑問が浮かぶ。

 

 

 

そして俺は、まだ負けていない事に気がついたのだ。

 

 

(シールドエネルギーっ……108!…まだ俺は負けてねぇ!)

 

 

雪片を杖代わりに立ち上がる。

 

 

ちくしょう、雪片てめぇっ、なに杖代わりにしか役に立ってねぇんだよ!!

 

お前は千冬姉を『最強(ブリュンヒルデ)』に仕立てあげた立役者なんだろうが!

名前負けのただの近接ブレードとか言ったら叩きおるぞ!?

 

力を貸せ、最悪今だけで良いっ…たからっ

 

 

 

 

《呼んで。わたしを、わたしの名を》

 

 

 

突然、頭に声が響いた。

 

どこか千冬姉に似た声、頭に直接聞こえるような……

 

 

 

《わたしを、あなたの、雪片(わたし)の名を》

 

 

 

俺は雪片を見た。

 

日本刀から生まれたようなその刀身は、刀より太刀に近い。

鎬には僅かに溝があり、そこから呼応するように光りが漏れ出している。

妙に機械的なそれは間違いなくISの装備として作られたものでもあることを示していた。

 

 

 

「雪片の?…」

 

よく見れば、この雪片の名は雪片でありながら名称未設定だと武器選択欄が答えたいた。

 

つかホントに雪片一振りだけなのかよ武装。

 

 

「そっか…雪片だけど、お前の名前はまだないのか」

 

それは人間でありながら名前がないのと同じ。

 

 

「決めた。今決めたぜ?」

 

俺は雪片を掲げ、名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

「千秋(ちあき)、勝とうぜ」

 

名を呼ぶ。雪片、いや千秋はそれに答えた。

 

 

―――|単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)

『零落白夜(れいらくびゃくや)』発動―――

 

 

 

『雪片・千秋』が、溝に沿って二股に分かれ、そこから蒼いエネルギーの刀身が延びる。

 

俺は今、更に理解した。これがなんなのかを、

 

 

「悪いがセシリア、今回は俺が勝たせて貰う!」

 

 

言うが速いか、俺は瞬時加速でセシリアに向け加速する。

 

「ふふん、わたくしの勝利をは揺るぎませんわ!」

 

 

セシリアは『スターライトmkⅢ』を構え、レーザーを放つ。

 

 

迫る。レーザーが迫る。こっちも加速しているせいでそのスピードは常人では捉えられない。

 

 

そのレーザーを、『雪片・千秋』を構えたまま突撃した俺は切り裂いた。

 

 

「な!?」

 

 

セシリアに衝撃が走る。レーザーを切り裂いた相手は、更に加速して自身に迫るのだ。

 

「いっ、インターセプトっ!」

 

その声は悲痛で、悲鳴のようだった。

 

もはや『弾道型(ミサイル)』のブルー・ティアーズを撃ったら自身にも被害が来る。

故に展開した近接レーザーブレード。

 

 

しかし、『雪片・千秋』の、白式の『零落白夜』はエネルギー兵装を無力化することが可能だ。

 

 

新たな刀身を展開した雪片が、セシリアの近接レーザーブレードを引き裂いた。

 

 

「今回は…俺の勝ちだな、セシリア・オルコット」

 

 

「………」

 

 

喉元に突き付けられた雪片。

セシリアは言葉を失った。

 

出会ってしまったのだ。

 

自分が求む理想の相手。

 

強く気高く、その志しを貫く者。

 

その瞳に炎をたぎらせ、自分を下してくれる男性(おとこ)

 

 

 

 

「………はい」

 

 

セシリアは運命を予感させた。

 

 

強く気高く、情熱に燃え、セシリア・オルコット……自分を跪かせてくれる……理想の男性との恋の運命を。

 

 

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