IS ~北欧生まれのカレンデュラ~   作:蛙の卵

9 / 50
stage 8 『shall we dansu?』『いっ、イエスウィーキャン!』

セシリアとの試合は俺の勝ちで終わった。

 

あの時点でまだ双方のシールドエネルギーは残っていたのだが、セシリアは白兵戦用の近接レーザーブレードを使ってしまったのでセシリアの負けとなったのだ。

 

と言っても俺のシールドエネルギーは残量は残り一。

もし俺がもう少しダメージを受けていたり、零落白夜を使うタイミングが速かったりしたら俺の負けだった。

 

零落白夜は自身のシールドエネルギーを、攻撃用に転換し、相手のシールドエネルギーを切り裂く諸刃の剣。まるで魔剣だよ、ほんと。

 

 

「なんにしても、勝てて良かったよホンと」

 

 

十五分のインターバルの後、待ちに待った千春戦だ。

千春はセシリアのように慢心しないだろうから最初からキツい戦いになりそうだ。

 

「千春相手に雪片だけで勝てんのかな?」

 

俺は待機状態になった白式を見た。

今俺の右腕に装着されたガントレットがソレだ。

 

「それは一夏、お前の使い方次第だ。しかし白兵戦においてはお前に一日の長があり、なおかつ千春は白兵戦が苦手だ」

 

 

ベンチに腰かけていた俺に箒がぬるめのスポーツドリンクを渡してくれた。

 

ありがたい、冷たいのは気持ちが良いが後々響いてくるからな。

 

 

「…っ、はぁ…そりゃそうだろうけどよ……千春は多分、多方向個別近距離瞬時加速を見切ってるぞ?どうやれば接近戦に持ち込めるんだよ」

 

 

セシリア戦で披露したあの瞬時加速の亜種(千冬姉曰く)だが、本来千春のために使う予定だった虎の子の技だ。

 

セシリアとの差が埋めれず使ってしまったが、千春は必ず見切ってるだろう。

正直勝てる気がしない。

 

 

「それを見付けるのがお前の仕事だ一夏」

 

「だろうね、辛いがやるしかねぇか」

 

 

スポーツドリンクに刺してあったストローでちゅー、と飲む。

 

ああ、身体に染み渡る。

 

 

 

「しかし…なんだ」

 

 

箒がベンチに…つまりは俺の横に座る。

その頬が赤いのを俺は見逃さなかった。

 

「ん?どうした箒?頬赤いぞ?」

 

風邪を引いたんじゃあるまいな?

俺は箒の顔を覗き込んだ。

 

「っ!?あっああ赤くないっ!赤くないぞっ!」

 

「そうか?…風邪とかじゃないなら…別にいいけどさ」

 

 

凄い勢いで顔を横に振る箒、なんかあるな……けど俺はこれ以上突っ込んで話を聞かない。

この数年間で俺も学習したのだ、地雷は踏まねば爆発しない、とね。

 

 

「そ、それでだな…一夏。先程のお前は、その…その……」

 

箒が俯きながら何か言ってる。独り言か?

 

「か、かかっカッコよかっ――」

 

 

 

「織斑ぁッ!!準備が出たなら速くアリーナへ出ろ! ブリュッセルはもういるぞ!」

 

 

「え!?ああ、もう十三分か…じゃあな、箒。行ってくるぜ」

 

 

千冬姉の怒鳴り声を聞き、反射的に立ち上がった俺は箒に軽く手を振りながらカタパルトへ急ぐ。

 

 

「あ、……ああ………ぐすん」

 

 

なんか凄い暗かったが大丈夫か?

 

 

「大丈夫だ、問題ない。全力を尽くせよ一夏?」

 

 

千冬姉が俺の肩を軽く叩く。

その表情はどこか嬉しげだ。

 

 

「ああ、行ってくるぜ千冬姉。……『白式』織斑一夏、出ます!」

 

 

俺は『白式』を纏いカタパルトに乗る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……よく頑張ったな一夏。まさかセシリアを倒すなんて……驚いたよ、ホンと」

 

アリーナには千冬姉の言っていた通り千春がいた。

 

「お陰で虎の子の技を使っちまったがな」

 

俺は雪片を片手に、ISスーツに身を包む千春を注視した。

 

 

 

やべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇっ!!

 

なんだよコレ、エロすぎるっ

 

千春のISスーツは特注品らしく、おへそが見える、上と下が分かれたタイプだ。

その下のISスーツは、一言で言うならば紐ビキニにニーソックスだ。一言じゃないな、すまんかった。

 

上なんて、下乳が見える程度しかなく、正面から見ると………

 

 

「ご馳走様ですっ!」

 

「な、なんの話だ一夏?」

 

 

思わず両手をあわせてしまった。

つかあのビキニ、Tバックじゃないだろうな?流石にそこまで言ったら製造会社を訴えてやる。

 

 

「てか千春、そのISスーツ……」

 

「ん?…ああ、これが私専用のISスーツだよ。相川さんとの時は元々内蔵してた緊急用ISスーツで、一夏達との特訓時は学園支給のやつ使ってたから、…そっか、御披露目は初めてか」

 

「…に、似合ってるぞ、千春」

 

俺は自分自身に表彰したい気分だ。

 

言ったーっ!遂に言ったああぁっ!!

 

まるで逆転ゴールを叩き込んだような気分だ、マジ頑張った俺!

 

「ええ~?そうか?……微妙な水着みたいで私はやだったんだけどなぁ」

 

 

ちくせう!十秒前の俺を殴れたらッ。

 

 

「まあ一夏が言ってくれて嬉しいし……うん、これ正式採用にしよっかな」

 

 

クスリと笑う千春。

 

やべぇ、千春マジ天使。

 

くっそぉっ!!俺やっぱ千春の事大好きだっ!!セシリアに勝てて良かった!

 

 

「じゃあ一夏、行くぜ?」

 

千春が腕を組んでニヤリと笑う。

そう言う小悪魔みたいな顔も可愛いぜこんちくしょうっ!!

 

「色は変えなくていいのかよ、千春」

 

雪片を構える。戦闘開始直後に勝負を仕掛ける。

 

 

「べつに?一夏相手なら『灰色(このまま)』でも勝てるしな」

 

 

それは慢心でもなんでもない。確かにそうなんだろう、……しかし、そのままでいてくれるならそれがいい。本気を出される前に……

 

「………」

 

「………」

 

 

試合の鐘を待つ。

 

 

互いに相手の瞳を見る(少しだけ、少しだけだが俺は千春のISスーツを盗み見た)

 

 

 

「一夏」

 

「な、なんだ!?」

 

 

チラ見してたのがバレたか?!

 

「魅せてくれ」

 

 

一夏、お前の強さを………そう千春の目が語る。

 

 

「……ああ、任せろ」

 

 

「行くぜ一夏ぁっ!!」

 

「うおおおぉぉっっ!!」

 

 

試合の鐘が鳴ると同時に俺は瞬時加速を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「モードセレクト、『深緑の大地(グリーン・ガイア)』!」

 

 

千春のISの装甲色が変わる。

 

「な!?色は変えないんじゃなかったのかよ!?」

 

配色が深い緑へと変わっていく。

 

しかし止まるわけにはいかない。

瞬時加速で千春へ向け突撃を仕掛けた俺は、更に加速して雪片を振り抜く。

 

 

ガキィンッ!!

 

 

「変えないとは一言も言ってませんよ~だ」

 

鋼と鋼の衝突音。それを聞き、見るより感じるより先に攻撃が防がれたと俺は知る。

 

雪片は深い緑に染まった大楯にその刀身を半分くらい埋めていた。

 

「こん…のおっ!」

 

「おおっと。大胆だねぇ~」

 

力を込め、雪片で大楯を切り裂く。

 

千春と言えば、大楯が爆散するより速く手を離し、その手にはアサルト・ライフルを構える。

 

「ちぃっ!?」

 

雪片で実弾を切るなんて事は至難の技だ。

故に身体をひねりながらの回転で放たれた弾丸を避ける。がしかし、避けると言っても放たれた弾丸をすべて回避できたわけでなく、幾らか貰ってしまったが。

 

600あるシールドエネルギーは586まで減っていた。

 

 

「ミサイルの~、弾幕は~、男のロマンだぜぇ!!」

 

回避行動により距離が開いてしまい、千春は距離を埋めさせじと追撃をかける。

両肩に背負うように展開したミサイルポッドから無数のミサイルが放たれる。

 

―――つか多すぎだろ!?

 

 

「こなくそおおぉぉ!!」

 

 

急加速からの横転回避(バレルロール)。これで……まだ追っかけて来やる!?

 

 

「切れるか?……このやろうっ!」

 

 

追いかけて来たミサイル達を雪片で切り裂く。斬、斬斬斬!!

 

 

「ミサイル切りって……まるで白騎士みたいじゃない!一夏やるぅ!」

 

 

ミサイルポッドから二挺のアサルト・ライフルに持ち変えた千春が弾をばら蒔きながら迫る。口笛を吹きそうな勢いだ。

 

「ちぃっ……うおおおぉッ!」

 

弾丸をばら蒔くような射撃だが、その大半が俺に当たる。

このままじゃじり貧、こうなりゃ『零落白夜』で決めてやるっ!

 

 

俺は咆哮と共に単一仕様能力、必殺の『零落白夜』を発動する。

 

 

雪片を解放、溝に沿って二股に分かれた刃から、新たな刃が延びる。

 

シールドエネルギーを切り裂く『雪片・千秋』と対象のエネルギーを零にする文字通りの必殺技、『零落白夜』。

 

これを当てられたら俺の勝ちだ!

 

千春が迫ってくるなら俺はこれで迎え討つ!

 

 

 

 

「モードセレクト、『黄色の閃光(イエロー・ライトニング)』!」

 

 

 

千春の纏う色が黄色へと変わる。

 

しかし間に合わない。何故なら、千春が剣を展開するにも、盾を出すにも、もう遅かった。

 

振り下ろした雪片は千春を―――

 

 

「残念、惜しかったな一夏♪」

 

 

捉えはしなかった。

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

振り抜かれた二つの刃が脇腹に叩き込まれる。

 

なんだ、一体何があった?雪片は何故千春に届かなかった?

 

何故千春は俺の真横から攻撃してきた?

 

 

「答えは簡単だよワトソン君、さっき魅せてくれた一夏の技さ」

 

 

千春が迫る。唇と唇が交わりそうな距離まで近づいて来た千春が、クス、と目の前で笑う。

 

 

まさか、まさかまさか!?

 

 

冗談だろう!?見切るだけならまだわかる。

 

なんで……多方向個別近距離瞬時加速が使えるだよ!!?

 

 

「これには驚かされたよ一夏。いやホンと、あの時思わず立っちゃったし」

 

 

ガガガッ!

 

二つの近接ブレードによる止まらぬ連撃、俺は紙一重で避けながら反撃の一撃をかます。

 

 

「っ、…危ない危ない、一夏の単一仕様能力、多分エネルギーを消滅させる類いでしょ?セシリアのレーザーを掻き消したのも多分それでしょ?」

 

 

軽々と避けられる。くそっ、あと一歩が届かない!。

 

「よくわかるな、流石千春……っ!!」

 

 

雪片を振り上げると同時に瞬時加速で千春に詰め寄る。

 

 

「つっ…うん、まあね!」

 

双剣を交差させるように構え、俺の一撃を防いだ千春は、つばぜり合いを避け距離をとるわ。

 

 

「さて、じゃあセシリアと同じく光学兵器で圧倒して見せよっかな?………モードセレクト、『蒼き水面(ブルー・アース)』!」

 

 

黄色の装甲が色褪せ、蒼に染まる。

 

緑が重火器による砲撃戦を特化させた遠距離モード。

黄色が高機動型の白兵戦特化、『白式』と似た思想のモード。

 

そして青が千春の得手分野、中距離特化の汎用型だろう。

 

 

『ブルー・ティアーズ』を彷彿させる蒼い装甲は、腰回りや足を包むだけで、千春の魅力的かつ健康的な太ももをさらけ出す。

 

エロい。

 

 

「光学兵器?…レーザーとかか?ならこっちの得手分野だぜ!」

 

 

俺は内心を全く出さず好戦的に笑う。

手に持つ雪片が力強く唸る。

 

 

「えっと…こうだったかな?……踊りなさい!この千春・フレイヤ・ブリュセルと『グラデーション』の奏でる円舞曲を!……」

 

 

千春がセシリアの声、所作を真似して、展開したライフルの銃口を向ける。

 

 

「!……よっ、喜んで!!」

 

 

思わず素で答えてしまった。

やべぇ、お嬢様然とした千春も可愛いぜっ!!

 

 

 

そんな事を考えてたからだろうか、千春のIS、『グラデーション』の推進翼から、六基の『羽』が舞ったのを見逃したのは―――――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。