ZZZで夢見るエージェント 作:対ホロウ特別行動部怪事課
「え、エーテリアスだ!?逃げろぉッ!!」
ラマニアンホロウ。かつては観光地でもあったラマニアン島が、不可思議なドーム状の空間『ホロウ』となって形成された異空間。
未知のエネルギー『エーテル』で満ちた不可思議な場所では非現実な事象が起こる。その一つとしてエーテルによる生物や自立機械の浸食があり、最悪の場合は今正に人を襲わんとしている怪物『エーテリアス』へと変貌してしまう。
このラマニアンホロウでは、『輝磁』と呼ばれるエーテル浸食耐性を持つ希少素材の採掘が行われており、襲われている人々はラマニアンホロウからそう遠くない衛非地区の出身が多い。こうしてエーテリアスに襲われる危険性は彼らも承知の上、それでも貧困な者にとっては仕事を選ぶ余地などなかった。
自身の生活、家族の養いなどで常にリスクと隣り合わせ、それが今回ののうな不運な事故でその命すら奪われようとしている。
まさに、悪夢のような顛末だ。
「ハァッ!!」
突如として砂煙が立ち昇る。その近くには足をもつれさせ、地べたに這いつくばってしまった作業員が一人。眼前に迫り来るエーテリアスによって走馬灯が駆け巡っていた最中の出来事だった。
上空から何かが降ってきたのだ。エーテリアスの真上から、目に見えぬ程の勢いをつけて。
煙の先に
「あ、アンタ、一体……ホロウレイダーか!?」
人型のシルエット、しかして肌のような部分は見受けられない。全身が黒いタイツのようなもので覆われ、全身に赤いラインが走っていた。
なにより特徴的に見えたのは、大きな赤い複眼と胸にかけられたベルトであった。
「……違うな。俺は無敵のエージェント、アンタらを助けにきた」
エージェントを自称する仮面の男は、倒れた作業員を助け起こしながら迫り来るエーテリアスの群れに向かって歩き出した。
「Rescue of miners……ミッションを遂行する!」
一番に飛びかかってきたのはディルヴィング。エーテリアスの中でも一番個体数が多く、犠牲者も一番だという。だが、狩られた数も一番多い。
片腕のみの剣捌きをいなし、即座にコア目掛けてパンチ。コアは文字通りエーテリアスの核であり、砕けば存在ごと崩れ去る。もちろんただのパンチでは砕けるはずもないが、それを超人的なパワーで解決し、一撃で粉砕することに成功。
第二、第三と続くディルヴィングの群体も同じようにコアを砕いていき、残るはより巨大でより強靭な躯体を持つファールバウティのみ。
「来いよ、力自慢」
指をクイと立て挑発すると、それに応えるようにファールバウティが飛びかかる。その豪快な一撃を自称エージェントは両腕で受け止めてみせる。あまりの衝撃に少し後退りもするが……。
「……パワー比べは、オレの勝ちだ!」
赤いラインが発光すると同時に、両手両足に力が漲る。筋肉量も目に見えて増大し、受け止めていたファールバウティの腕を掴み、そのまま押し返して背後のコンテナに叩きつけた。
大きな隙が生まれたが、すぐに追撃することはなく、ベルトのトリガー部分『トリガム』に手を伸ばした。1・2・3回と押したあと、ベルトに嵌め込まれたカプセル『カプセム』をなぞるように回転させる。
『Impact』
走り出した勢いのまま真正面に蹴りを放つ。それを受けたファールバウティはコンテナにさらに身を沈ませる。
『Vanish!』
続く二撃目。その場から飛び上がって、胸部に当たる位置に飛び蹴りをお見舞いする。コンテナはさらに凹み、火花を散らしながらファールバウティごと後退した。
「……消えろ!!」
空いた距離を詰めて、先ほどより高く飛び上がる。その位置はちょうど、ファールバウティのコアと重なっていた。
『Ze-Ze-Zeztz!!』
飛び蹴りがコアを破り、さらにコンテナまで突き抜けてそのまま地面に着地する。自称エージェントの背面でエーテリアスの残骸が塵のように舞いながら、ホロウに霧散していった。
「あ、あそこだ!おーい!」
声がした方を振り向くと、先ほど助けた作業員たちと、大剣を担いだ筋骨隆々な犬の獣人『シリオン』の青年が駆け寄ってきていた。どうやら、無事に脱出したあと助けを呼んで戻ってきたらしい。
「あー……アンタがコイツらを助けてくれたんだってな。まずは礼を言わせてくれ」
「気にするな。オレはミッションを遂行したまでだ」
頭を下げるシリオンの青年を尻目に、オレはこの場から去ろうとする。その前に、先ほど助けた坑夫に呼び止められる。
「ま、待ってくれ!せめて名前だけでも!」
足を止め、半身を振り向かせる。そして、最後に名乗りを挙げた。
「オレは無敵のエージェント、コードナンバー……セブn」
「バクヤ!いつまで寝とう!ええ加減目ぇ覚まし!!」
「うぅ、いい夢見てたのに……!」
枕元で大声を出され、眠りから目覚める。ここで二度寝しようものなら先程の比じゃない雷が落ちかねないため、眠い目を擦りながらベッドから出る。
「今日もバイトいうてたろ!はよ準備せんと、遅れても知らんよ!」
「わかった、わかったから。着替えますって」
妹を部屋から閉め出し、クローゼットを開ける。そして早着替え。映画のワンシーンに憧れ、密かに鍛えてきたスキルだ。……流石に本場には敵わないが。
「よし、じゃあ行ってくる」
「気ぃつけや。あ、今日もうち」
「バンド、だろ?夕飯買ってくるから心配ご無用」
家を出て、バイト先まで直行する。その道中でスマホを弄って『インターノット』を閲覧していると、ある投稿を見つけた。
『またまた出没!ラマニアンホロウのベルト男』
それは怪談話としても密かに話題になっているもの、その最新情報が書かれていた。添付されている映像には、肩からベルトを下げた謎のエージェントの姿がうっすらと写されていた。
「やっぱり、
言葉に興奮が滲み出る。今回の最新情報、その内容は今日見た夢と同じ、自分がエージェントとなって人助けをする内容だったのだから。
これは、エージェントに憧れる一人の男・バクヤが描く夢物語だ。
というわけで、エージェント繋がりでゼッツをゼンゼロ世界にぶち込んでみました。構想練ったら割と書けそうだったのでこのまま続けていこうと思います。
ちなみに主人公が関西弁じゃないのは、憧れのスパイ映画の吹き替えが標準語だったのでセリフを合わせるために矯正したという設定があります。最後に出てきたキャラは夏イベで出てきたあのキャラです。この作品フラゲの塊すぎる。