異世界に転生して35年。追放令嬢を支えた伝説の鍛冶師~寂れた街を再生するスローライフ~   作:わんた

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(クラリッサ視点)寂れた街から成り上がる唯一の方法

 幼い頃にクローヴェン第一王子との婚約が決まってから、王妃になるための教育が始まった。

 

 勉強、マナー、武道の他にも美しさを保つために努力は惜しまない。苦手な化粧だって頑張ってきた。

 

 そんな姿を見ていた両親やアルフォンス国王陛下とマティルダ王妃はわたくしのことを認め、婚約は確たるものになっていたはずだった……あの日まで。

 

「俺は真実の愛に目覚めた! クラリッサとの婚約を破棄する!」

 

 学園の卒業式に言われた言葉だったわね。

 

 卒業生代表だった第一王子クローヴェン殿下の第一声だったと思う。

 

 わたくしが何度もあの女だけは止めなさいと言ったのに、結局は平民出身のメリッサを選んだみたい。薄いピンク色の綺麗な髪をしていて顔も整っているけど、性格は最悪よ。他の男とも寝ているし事実無根の嘘をつくから、国母である王妃になったら大きなトラブルが予想できる。

 

 貴方の目覚めた真実の愛なんて、どこにもないの。

 

 最後の義理立て思って卒業式後にメリッサの悪事をバラして忠告したんだけど、それを悪いように取られてしまって、男を奪われて嫉妬に狂った女という噂を流されてしまったわ。

 

 最悪なのはアルフォンス陛下まで信じてしまったこと。

 

 正式に婚約破棄となってしまい、わたくしの実家であるローゼンベルク公爵家に通達が行き、両親は激怒。家を追い出されてしまった。

 

 唯一の救いは、現王妃であるマティルダ様がわたくしの味方であったこと。

 

 地方領主の嫁にされるところを救っていただき、いくつかある王家直轄領の一つを代官として任せてくれたわ。

 

 ただ王家の人間が無償で、わたくしを助けるわけがない。ちゃんと裏の思惑はあるの。

 

「ずっとわたくしの手駒として働きなさい」

 

 マティルダ王妃と別れる直前に、耳元で囁かれた言葉だった。

 

 どうして自由に動かせる駒が必要なのは、ある程度想像はできている。

 

 第二王子のライネル殿下を王位へ就かせるために動いているみたい。

 

 アルフォンス陛下は第一王子を跡継ぎとして考えているため、マティルダ王妃と意見があっていないみたい。夫婦の仲は冷え切っていると聞いている。

 

 最悪は国が割れてしまう関係の修復に動かなければならないのだけど、家を追い出されたわたくしは抗うことなんてできず、マティルダ王妃の操り人形になるしかなかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 わたくしが代官として就任するヴァルモントは、十年ぐらい前は宿場として賑わっていたけど、新しい街道ができたので廃れてしまった街だ。

 

 多くの住民が別の街に行ってしまい、窓から見える建物は空き家が目立つわね。

 

 落ちぶれてしまったわたくしに相応しい場所だった。

 

 共に、もう一度花を咲かせましょう。

 

「気合いが入っている顔をされておりますね」

 

 馬車に同乗しているメイド――アリシアが言った。

 

 彼女は小さい頃から仕えてくれていて、姉のように慕っている存在。わたくしがローゼンベルク家を追い出されても、なぜかついてきてくれた大切な人ね。

 

「マティルダ王妃様から直々に発展せよと命令されたのよ? 気合いが入らないわけないでしょ」

「気持ちはわかりますが、ほどほどにしてください。クラリッサお嬢様は気合いが入ると失敗するポンコツなんですから」

「ポンコツ!? わたくしが?」

「ええ、そうです。テストでは回答欄が一つズレて0点を取ってしまうし、婚約者との初デートだからとメイクをしたら外出の時間を大幅に遅れてしまい、さらには――」

「ストップ! わかったわ! わたくしが悪かったわ!」

「ご理解いただけたのであれば幸いです」

 

 すました顔で言われてしまい、わたくしは話題を終わらせることにした。

 

 何でも知っているから、口論じゃ勝てないのよね。

 

「それで勝算はおありなんですか?」

「これから調べてから考えるわ」

「あら、随分と余裕があるのですね。てっきり事前調査しているかと思いましたが」

「しているわよ。ただ最後は現地で調べないとわからないの」

 

 わたくしの予想では、彼はヴァルモントに住んでいる可能性が高い。

 

 隅々まで探して見つけたら、協力するように説得をする。そうすれば資金を稼ぐ目途は付くし、切り札として他貴族との交渉も可能になるわ。本当にこの街に住んでいるなら、どんな手段を使っても手に入れたい男ね。

 

「では、その調査が上手くいくことを祈っております」

 

 アリシアとの会話が終わったので窓を見る。

 

 過去に一度だけ、公爵家で見かけた彼――ガルドが龍人族の娘と手を握って歩いている姿が目に入った。

 

 なんて幸運なの!

 

 探し人がすぐに見つかるなんて!!

 

 彼は伝説の鍛冶師と呼ばれていて、古代文明で作られたアーティファクトを現代で作れる唯一の人よ。貴族が無理難題をふっかけてくるので、死亡したと聞いている。

 

 ただ、わたくしは友人の娘を引き取っていることを知っていたので、生き残っている方に賭けていた。

 

 思ったとおりの展開に、思わず顔がにやけてしまう。

 

「ものすごく悪い顔をしていますよ。具体的には嫁をいびる姑みたいな感じです」

「何それ、最悪じゃない」

 

 アリシアに突っ込まれて、わたくしは両方の頬をグリグリと動かして顔をほぐした。

 

「これで大丈夫かしら?」

「はい。それで、何かあったのですか」

「ヴァルモントに来た早々、黄金を生み出す鶏が見つかったの」

「それは僥倖ですね」

 

 婚約破棄されてローゼンベルク家を追い出され、さらにはマティルダ王妃の駒として働かなければいけなくなったわたくしだけど、ガルドの力を借りれば逆転は可能よ。

 

 貴重なアーティファクトを売っている街として再興することもできるし、高性能のマジックアイテムをお父様に贈呈すれば、実家に戻れる可能性もあるの。

 

 絶対に逃がさないんだから。

 

 代官の屋敷に着くまで、わたくしはどうやってガルドを手に入れるかずっと考えていた。

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