美少女戦士セーラームーン 異伝 星たちの輪舞   作:soul

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 冥界へと通ずる黄泉平良坂において、うさぎ達セーラーチームは、黒き鎧『パピヨン』の冥衣(サープリス)を纏った美春と対峙する。対話を求めるセーラームーンに対して、美春は問答無用で攻撃を仕掛けてきて、やむなく応戦するセーラーチーム。

 だが、セーラーチームの攻撃は全て躱されて、美春が反撃の態勢に入ったその時、新たな戦士たちが姿を現す。


「――天空の星 天王星を守護に持つ飛翔の戦士 セーラーウラヌス」

「……深海の星 海王星を守護に持つ抱擁の戦士 セーラーネプチューン」

「時空の星 冥王星を守護に持つ変革の戦士 セーラープルート」

 

 外部太陽系三戦士 新たな危険に誘われて、ここに参上――これ以上、好き勝手にさせない。




第十七話 冥界の闘士

 

 

 新たにセーラーウラヌスとセーラーネプチューンそしてセーラープルートの三戦士が戦いに加わり、美春に対して攻撃を加えるが、彼女は全ての攻撃に余裕をもって対処していた。

 

「――『ヴィーナス・ラブ・ミー・チェーン』!」

 

 光り輝くハート形の鎖が、セーラーヴィーナスの意志によって変測定な軌道を描きながら美春に迫るが、まるでハート形の鎖の軌道が分かっていたかのように最小限の動きで、首を傾げるだけで避ける。

 

「――『ディープ・サブマージ』!」

 

 美春の死角から、セーラーネプチューンが巨大な水球を放つが、彼女に到達する前に巨大な水球はまるで何かに打ち据えられたかのように無散した。

 

 他のセーラー戦士達も美春に向けて技を繰り出すが、彼女はまるで事前に来るのが分かっているかのように、その悉くを最小限の動きで避けるか、彼女を捉える前に何かに阻まれて霧散した。

 

「……これだけの攻撃しているのに、ぜんぜん捉えられないなんて……」

「……たとえ、強大なパワーを持っているにしても、これだけの連続攻撃が当たらないなんて、何かカラクリがあるようね」

 

 ゼイゼイと荒い息をしながら攻撃が一切通じなかった事に歯噛みするセーラーヴィーナス。麗しい瞳を細めたセーラーネプチューンは、何かカラクリがあるのではと観察しているが一向に判明しなかった……だがこれだけの波状攻撃を身体能力だけで躱しているとは考えにくい……それこそ事前に攻撃の来る場所が分かっているなど、反則のような能力でも持っているんだろうか。

 

「……まさか、攻撃が来る所が分かるとでも言うのかしら?」

「……ヘビの人から聞いていないの?」

 

 ネプチューンの問い掛けに、美春は不思議そうに小首を傾げる。

 

「私たち冥闘士(スペクター)。そして聖闘士(セイント)たちも、己の内に秘めた小宇宙(コスモ)を燃やすことにより、常人を遥かに超えた能力と破壊力を生み出している――」

 

 その身に秘めた小宇宙(コスモ)を燃やすことにより、驚異的な身体能力と圧倒的な破壊力を得ている――そして小宇宙(コスモ)の神髄ともいえるのが、セブン・センシズ。

 

「……セブン・センシズ……第七感?」

「――そうよ」

 

 人が持つ感覚――視覚、聴覚などの五感と、霊感や超能力と言われる第六感を超えるモノ……それが小宇宙(コスモ)の神髄……第七感(セブン・センシズ)

 

 たとえ、第七感(セブン・センシズ)に至らなくても、小宇宙(コスモ)に目覚めるだけでも、身体能力は大幅に上がり――視覚や聴覚などの五感が飛躍的に高まる。

 そして美春は、強化された五感によってセーラー戦士達の攻撃を感知して、常人を超える能力を得た身体能力を持って避け続けたのだ。

 

「……それで攻撃がさけられたのね」

「……これくらいの事は、あのヘビの人も出来るでしょうに」

 

 薄く笑う美春……それは己の優位を確信しているからこその余裕の表れであった……思っていた以上の難敵に成長している美春……市によれば、美春はパピヨンの冥衣(サープリス)に魅入られて冥闘士(スペクター)に変貌したと言う……しかも時間が経てば経つほど冥衣(サープリス)は美春の肉体をより冥闘士(スペクター)らしいモノへと作り変えて――精神もまた冥闘士(スペクター)にふさわしいモノへと変えるという。

 

 ――だからこそ、一刻も早く美春をパピヨンの冥衣(サープリス)の呪縛から解き放たなければならないというのに、牽制の攻撃はかすりもせず、切っ掛けさえ掴めない。

 

 己が優位を確信しているからこそ、余裕の笑みを浮かべていた美春が一歩踏み出す。

 

「――力の差を見せてあげる」

 

 美春の周囲から黒い蝶が湧き出し、セーラー戦士達の周りを舞う。

 

「……これは?」

「……黒い蝶……光る蝶ではなく?」

「そう、光る蝶――『フェアリースロンギング』は、相手を光の中に消し去る技。対して、この黒い蝶は直接的に相手を屠る技――黒い蝶の羽ばたきに消え去りなさい――『トータシュメタリング・ファサシャイダ(死蝶の分水嶺)』」

 

 右手を高く掲げた美春の宣言通りに、周囲を埋め尽くす黒い蝶の大群がセーラーチームに向けて殺到し――襲い来る黒い蝶の群れに向けてセーラー戦士はそれぞれが必殺技を使用して迎撃する……だが、黒い蝶の数が尋常ではなく、遂には黒い蝶の群れに覆われてセーラー戦士達の姿が見えなくなる。

 

「これでお終い――ブレイク!」

 

 セーラー戦士達を覆った黒い蝶がその身を炸裂させて爆発力に変える。一匹一匹は小さな爆発だが、周囲を覆いつくす黒い蝶の大群のすべてがその身を炸裂させて爆発すれば、強力な爆弾が爆発した事と等しい。

 

 無数の黒い蝶――死蝶が炸裂して起きた爆発と、その後に立ち込める煙を見ていた美春は視線を左右に向ける……セーラー服という冗談のような恰好をした彼女たちは、それぞれが襲い掛かる死蝶の群れを迎撃していたようだが、大量の死蝶の群れ――物量の前には追い付かず、死蝶の群れの爆発に巻き込まれたと思っていたが、どうやったかは分からないが彼女たちは爆発から逃れたようだ。

 

 


 

 

 黒い蝶の群れに包囲された時、セーラームーンは傍にいるセーラーマーキュリーに声をかけた。

 

「――マーキュリー」

「ええ、分かっているわ、セーラームーン」

 

 セーラーマーキュリーが頷くと、大気中の水分を凝縮して水の流れを生み出す。

 

           《水鏡蜃気楼》

「――『マーキュリー・アクア・プリズム・ミラージュ』」

 

 本来の技は、集めた水流から幾つもの水の流れを生み出して敵へと放ち、相手を水球に閉じ込めて拘束する技『マーキュリー・アクア・ミラージュ』だが――これはその技にアレンジを加えて、自らを水球で覆って周囲の風景に溶け込みながら、水像で作り出した身代わりに敵からの攻撃を逸らせる技。

 死蝶の群れが自爆する事による爆煙と、爆発による高温で水像が蒸発した余波で立ち込める濃霧を目くらましに、セーラー戦士たちは素早く移動して、美春を包囲する形へとシフトする。

 

 もともとこのアレンジ技は、聖闘士の力を操る土浦 市とまかりなりにも協力体制を構築した後、出雲地方で見え隠れする敵勢力の動きを捉えて乗り込む算段を付けている合間に、お互いが出来る事を伝えあって、連携について模索している時に発案されたものであった。

 

『……君たちの技って、攻撃に特化したものばかりなんだな……そこら辺、女の子として どうなんだ?』

 

 セーラー戦士たちの得意技を聞いた市の物言いに、むかついた うさぎたちによって愚か者は制裁されたが、市の指摘には一理あり攻撃一辺倒ではなく防御や支援の技を編み出せないかと思案したセーラーマーキュリーこと水野 亜美は、自身の能力――水を操る能力による攻撃技を組み替えて、幾つかの技を生み出す事にした……その一つが、今回のアレンジ技だった。

 

 黒い蝶の群れが起こした爆煙と水像が高熱に晒されて発生した濃霧により、美春の視界を遮っている間にセーラー戦士たちは、それぞれ事前に決めた場所へ――美春を包囲する位置に着く。

 

「――みんな!」

 

 セーラームーンの呼びかけに応える様に、セーラー戦士たちは次々と技を繰り出した。

 

 

「――『マーキュリー・アクア・ミラージュ』!」

「――『バーニング・マンダラー』!」

「――『ジュピター・ココナッツ・サイクロン』!」

「――『ヴィーナス・ラブ・ミー・チェーン』!」

 

 マーキュリーの水の球が、マーズの炎の塊が、ジュピターの雷の槍が、ヴィーナスの光の鞭が美春に向けて撃ち出され、それに呼応するようにセーラームーンとちびムーンもそれぞれ構えたロットやステックから浄化の光を放出する。

 

「――『ムーン・スパイラル・ハート・アタック』!」

「――『ピンク・シュガー・ハート・アタック』!」

 

 美晴を取り囲むように位置取りをしたセーラー戦士たちは、それぞれが技を同時に繰り出す――出雲地方に向かう道中で、うさぎ達は常人を遥かに超える身体能力と反射神経を持つらしい美春との戦い方を何度も話し合った。

 

 無限学園の跡地で遭遇した あの益荒男――天猛星ワイバーンのラダマンティスの圧倒的な力を見せ付けられ、同じ冥闘士(スペクター)である美春との戦いは一筋縄でいかない可能性があった……うさき達が変貌した美春と出会ったのは、町に出現した巨大ダイモーンとの戦いに美春が介入してきた時だった。

 

 巨大ダイモーンの前に立ち、余裕の姿を見せながら何らかの手段で巨大ダイモーンを拘束していた美春は、胸元から紅く輝く十字架を取り出してパピヨンの冥衣(サープリス)を纏って、光る蝶を大量に呼び出して、巨大ダイモーンを消し去った。

 

 あの巨大ダイモーンを歯牙にもかけない力を見せた美春相手に戦うにはどうしたら良いのか? 無限学園での戦いの後、氷川神社で色々な事を知っていそうな土浦 市を事情聴取(つるし上げ)していた時に、セーラームーン達は冥闘士(スペクター)の脅威に付いて解説を受けた。

 

 

『ねぇ、市さん。冥闘士(スペクター)というか、美春ちゃんとの戦いは、彼女が来ている冥衣(サープリス)を壊すかはぎ取れば良いのよね?』

 

 氷川神社に隣接する母屋にあるレイの自室で、事情聴取(つるし上げ)が終わって、ほっと一息付いていた市に向けて、うさぎが両手をわきわきさせながら美春との戦い方についてアドバイスを求めて来た。

 

『……いや、うさぎちゃん。その手をワキワキさせるのは止めようよ』

 

 いくら10代の少女とはいえ、あまり宜しくない姿を見せるうさぎに突っ込みを入れた市は こほんと咳を一つすると、うさぎを始め周囲に居る あらくれ少女達に冥闘士(スペクター)の能力に付いて解説を始めた。

 

『俺たち聖闘士(セイント)や海皇ポセイドン率いる海闘士(マリーナ)、そしてその他の神々を奉ずる闘士達も、長い修練の末に小宇宙(コスモ)に目覚めて、超常的な能力を振るうことが出来るようになる』

 

 ――その拳は天を裂き、その蹴りは大地を割るほどの力を得る。

 

『けど彼女は、白い蝶々をたくさん呼んで巨大ダイモーンを消し去ったわ』

 

 市の話を聞いた美奈子が疑問の声を上げる。

 

小宇宙(コスモ)を会得する為に修練を積むという事は、持っている五感も研ぎ澄まされるという事でもあり、眠らせていた第六感……俗にいう『超能力』にも目覚める者も居る……パピヨンのアレは、小宇宙(コスモ)を爆発させて生み出した破壊力を、テレキネシスで変形させたモノだろうさ』

『……小宇宙(コスモ)というのを会得できれば、そんな事も出来る様になるのかい?』

 

 市の話を聞いたまことが熱にうなされたかのように問い掛けてくる。そんなまことや他の少女達に向けて、市は小宇宙(コスモ)を会得するのは並大抵の事ではないと諭す。

 

小宇宙(コスモ)を会得するには長い修練が必要なんだが、冥闘士(スペクター)は違う――奴らは冥衣(サープリス)に選ばれて纏った瞬間から、その身体が作り替えられ始める……冥闘士(スペクター)に相応しい肉体と精神へと……あの美春って娘は うさぎちゃん達のクラスメイトだったんだろう? 違和感はなかったかい?』

 

 ……確かに、以前の天川美春はクラスでも目立たない、引っ込み思案と言ってもいい性格をしていたように思える……だが、街中で巨大ダイモーンと相対していた時の彼女からは余裕のようなモノを感じた。

 

『……そして一番厄介なのが、冥闘士(スペクター)になった美春の身体能力は飛躍的に向上している事だな、あの娘と戦うならその対策が必要って事だ。』

 

 市は聖闘士(セイント)を例にとって、小宇宙(コスモ)に目覚めた闘士について説明を始めた――長い修練の果てに小宇宙(コスモ)に目覚めて聖闘士(セイント)となるが、聖闘士(セイント)には階級があり、小宇宙(コスモ)にも段階がある。

 

 まず小宇宙(コスモ)に目覚めた者は青銅聖闘士(ブロンズ・セイント)となり、繰り出す拳の速度はマッハ1――小宇宙(コスモ)に目覚めた後も修練を行って、青銅(ブロンズ)よりも上の階級 白銀聖闘士(シルバー・セイント)となった者の速度はマッハ2~5まで上がる。

 

 ――そして聖闘士(セイント)の最高峰たる黄金聖闘士(ゴールド・セイント)においてはその拳の速度は光速にまで達するのだ。

 

『――こ、光速って……どれだけ早いの?』

 

 うさぎのボケに腰砕けになる一同、なんとか立ち直った市は小宇宙(コスモ)に目覚めた者同士の戦いは、最低でも音速を超えた戦いになると告げる。

 

『音速以上の拳に反応して避ける。あの美春って娘はその域に達している……アイツと戦うつもりなら、そのあたりの事も考えなくては、な』

 

 その答えが、この包囲しての同時攻撃である。

 

 




 どうも、お久しぶりです。しがない小説書きのSOULです。

 相変わらず激務で、SOULのライフは限りなくゼロですが、ぽちぽちと書き上がったので、投稿します。


 では次回 第18話 彼女たちが望むものは 9月3日0時更新予定です。

 ではでは~。
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