あの世とこの世の境界にある坂 黄泉比良坂において、月野うさぎ達セーラー戦士達は一年前から行方不明になっていた かつてのクラスメイト天川美春と激しい戦いを繰り広げていた――地妖星『パピヨン』の
対するうさぎ達は、冥界との道を開こうとする
セーラームーンとちびムーンによる想定外の威力を持った攻撃に、それまで余裕を持った表情をしていた美春の表情が変わり、視線を鋭くした美春は これまで呼び出していた白い蝶ではなく、黒い蝶呼び出して――黒い蝶『死蝶』の群れはセーラー戦士達に向けて殺到し――その身を炸裂させてセーラー戦士達もろとも爆炎の中に消えた。
『死蝶』に群がられて諸共爆炎に巻き込まれた
……どうやら戦いはまだまだ続くようだ。
美春から放たれた黒い蝶の群れを見たセーラームーンは、ゲームセンターの地下にある指令室のディスプレイで見た巨大ダイモーンとの戦闘の中で美春が使用した白い蝶ではないことに小さく驚いたが、相手はあの
「――マーキュリー!」
「ええ、分かっているわ、セーラームーン」
迫り来る黒い蝶も群れに対し。セーラーマーキュリーは己が得意とする水の技を使う――しかもただの技ではない。天才と呼ばれるほどの卓越した知性を持ってアレンジを加えたのだ。
《水鏡蜃気楼》
「――『|マーキュリー・アクア・プリズム・ミラージュ』
集めた水流から幾つもの水の流れを生み出して敵へと放ち、相手を水球に閉じ込めて拘束する技『マーキュリー・アクア・ミラージュ』――その技にアレンジを加えて、自らを水球で覆って周囲の風景に溶け込みながら、水像で作り出した身代わりに敵からの攻撃を逸らせる技。
黒い蝶の群れが自爆する事による爆炎と、爆発による高温で水像が蒸発した余波で立ち込める濃霧を目くらましに、セーラー戦士たちは素早く移動して、美春を包囲する形へとシフトする――協力関係を築いた市からのアドバイスを元に、人知を超えた速度で動く美春を捉える為に美春を中心として円陣を組む
「――みんな!」
セーラームーンの呼びかけに応える様に、セーラー戦士たちは次々と技を繰り出した。
「――『マーキュリー・アクア・ミラージュ』!」
「――『バーニング・マンダラー』!」
「――『ジュピター・ココナッツ・サイクロン』!」
「――『ヴィーナス・ラブ・ミー・チェーン』!」
マーキュリーの水の球が、マーズの炎の塊が、ジュピターの雷の槍が、ヴィーナスの光の鞭が美春に向けて撃ち出され、それに呼応するようにセーラームーンとちびムーンもそれぞれ構えたロットやステックから浄化の光を放出する。
「――『ムーン・スパイラル・ハート・アタック』!」
「――『ピンク・シュガー・ハート・アタック』!」
6人のセーラー戦士達の攻撃がほぼ同時期に美春に殺到する。
「……考えたわね――けど甘いわ」
同時に繰り出したとはいえ、所詮付け焼刃の連携ゆえに攻撃が美春に命中するには若干のラグがある
炎や水そして雷などそれぞれが強力な力を秘めて美春に襲い掛かる――が、轟音を立てながら迫り来る攻撃をつまらなそうに見ていた美春一歩を踏み出し――まるでリズムでも刻むかのように軽やかステップで必殺の威力を持った技を踊るようにすり抜けていく。
「……同時攻撃と言っても、実際には攻撃のタイミングにズレがある。私に対する檻にしては、隙間が大きかったわね」
美春の口角が吊り上がる――だが、勝利を確信している彼女の耳に不敵な声が届いた。
「――なら、こういうのはどうかしら?」
いつの間にか囲んでいるセーラー戦士達の背後にウェーブのかかった髪を持つセーラー戦士――セーラーネプチューンが立っていた。それだけではなく、セーラーウラヌスとセーラープルートもまた三方から美春を包囲していたのだ。
「――くらえ、『
「――うけなさい、『
「――『
彼女達が放った攻撃は轟音を立てながら美春に迫り、美春の表情から余裕が消える。それほどまでに、新たなセーラー戦士達が放った攻撃は鋭く速かった――美春の眼に力が入る――それと同時に美春の気配が爆発的に高まり、物理的な力――暴風となって周囲に吹き荒れた。
「――はぁああ!」
美春の周囲に吹き荒れる暴風……爆発的に高まった美春の
「――なっ!?」
「……このタイミングでも防がれるなんて」
「……けれど、避けるではなく防いだという事は、一歩前進という事ね」
セーラームーン達の攻撃に対処している美春に向けて二段構えの包囲攻撃を行い、結局防がれてしまったが――裏を返せば避けるではなく防ぐしかなかったという事になる。
厳しい表情を浮かべたウラヌスとプルートにそう告げたネプチューンは、いまだ闘志を失っていないセーラームーン達にも檄を飛ばした。
「――彼女の能力にも限界があるわ! このまま畳み掛けるわよ!」
ネプチューンの言葉にさらに闘志を燃やすセーラームーン達……
そこでセーラームーン達は考えた……美春が突然行方不明になったのは、『パピヨン』の
市や衛の話では、彼らの高校には美春の姉である天川 深夏が通っており、休日には両親と共に尋ね人のチラシ配りをしていたと言う話だった……その話を聞いたムーン達は思った。“力”に目覚めたからと言って家族と離れる必要な無い筈であり、きっと美春も家族と離れたくはなかった筈だ。
ならば何故 美春は家族の元から離れたのか? それは『パピヨン』の
再び相手の動きを拘束する為に水球が飛び、大気を震わせながらエネルギー球が襲い掛かり、それを避けると いやらしい角度から無数の火球が降り注いで、美春は手刀で切り払う。
「――くっ!」
降り注ぐ火球を切り払った所で、轟音を立てて雷が迫り、それを避けると変幻自在な軌道を取りながら光のエネルギーが物理的な力を伴って美春を捉えようとし、それを避けた所に今度は大海の荒波を思わせる轟音を響かせながら巨大な水球が迫る。
「――このっ!」
美春は拳を揮って巨大な水球を迎撃する――未だ到達点である光速の域には達していないが、常人には感知出来ない域にある彼女の拳は荒波の如き水の塊を撃ち砕く――そこへ、
「――『ムーン・スパイラル・ハート・アタック』!」
「――『ピンク・シュガー・ハート・アタック』!」
うさぎと ちびうさ――二人のムーンによる同時攻撃が美春を襲う――これはマズイ、神聖な輝きを持つこの攻撃は、触れただけで
――そこに、ようやく戦場へと到達した二人が参戦する。
「――悪しき鎧を撃ち砕け――『タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー』!」
「これは好機だな――くらえ、『
黄泉平良坂にたどり着いた時にはぐれた土浦 市と天川 深夏を探しに行っていた間に、うさぎ達が居る方角から起こった爆発を見て慌てて駆け付けたタキシード仮面と、この世に生を受けてから何者かによって
思わぬ伏兵に登場に驚いて動きを止めてしまった美春は、タキシード仮面の浄化の光を受けて完全に動きが止まった所に、
『パピヨン』の
……美春は歯を食いしばり、力を籠めるあまり唇の端から一筋の赤い血が滴る……『パピヨン』の
……なのに、今は無様にもダメージを受けて片膝を付いてしまった……それが、幼い彼女のプライドを傷つけ、美春は怒りに打ち震える……またか、またなのか――また自分から奪うのか!?
拳で、唇の端に付いた赤い線を拭った美春は、立ち上がるとタキシードを着た仮面の男と言葉を交わしている『ヒドラ』の
『――しょせん、東洋の小娘か。無様なものだな』
声のした方向に視線を向けると、いつの間にか少し離れた所に全身が黒い男が――否、攻撃的な黒い鎧――
特徴的な二対の大きな羽を折りたたみ、胸に付いた大きな牙のような装飾だけでなく、全身が刺々しい鎧……そして五つの牙を思わせる装飾を持つフェイスガードから見える顔を見た時、セーラームーン――月野うさぎの身体に震えが走り、口の中が乾いて震えがどんどん強くなっていく。
「……どうしたの、セーラームーン?」
傍にいたセーラーちびムーンがセーラームーンの変化に気付いて問いかけるが、セーラームーンはセーラーちびムーンの問い掛けに答えることなく、彼女の視線は突然現れた
『……貴様は、あの時の死にぞこないか……もう一人の死にぞこないはどうした?』
そんな中、視線を鋭くしたまま美春は、新たに現れた
「……何しに来たんです、天哭星『ハーピー』のバレンタインさん?」
どうも、しがない小説書きのSOULです。
戦場に乱入してきたのは、前章でセーラームーンに致命傷を負わせた長身の男。
彼こそ――天哭星『ハーピー』の
……これから風呂敷を畳んでいきます。
では次回 第十九話 継承 9月4日0時投稿予定です。
ではでは~。