女主人公のアーバンファンタジー   作:祐。

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女探偵ユノ

 紅い薔薇の刺繍が入った黒色レースのランジェリー。ユニットバスの洗面所でブラジャーを外し、ショーツを脱いで(かご)に入れていく。彼女は浴槽に移ってカーテンを閉めると、正面からシャワーの湯を浴びながら束の間のひと時に浸るよう佇んだ。

 

 179cmの長身を誇り、膝辺りまで伸ばした乳白色の長髪が麗しい。絶世の美貌を持つ彼女はイケメン骨格の顔立ちとキメ細かな色白の肌、生まれ持った長いまつ毛と落ち着き払った黒色の瞳が特徴的であり、左目にある泣きぼくろがセクシーな印象を与えてくる。また、黄金比のプロポーションは人類の理想形と呼ぶに相応しく、その立ち姿は云わば『神話に登場する女神』が如き神々しい美しさを感じさせた。

 

 目を瞑り、湯浴(ゆあ)みを堪能する彼女。身体から流れ落ちる水滴すらも神聖に思わせる一幕は、満足感と共にカーテンを開ける音が聞こえるまで続いた。

 

 バスタオルで全身を拭い、鏡に映る自身と見つめ合う。その裸体に一種の見惚れるような眼差しを向けながら身体を拭き終えると、彼女は身に着けていたランジェリーをそのまま籠に置き去り、ユニットバスルームの扉を開けてリビングに移った。

 

 そこは消灯されたホテルの一室だった。単身で宿泊する彼女は全裸でひたひたと床を歩き、夜間であるにも関わらず開かれたままのカーテンを気に留めることなく手前のソファまで移動する。大都市の夜景を一望できる景色を目前に、生まれ出でた姿でソファに腰を掛ける彼女。そして肘掛けを枕にして寝転がると、窓から降り注ぐ月光を浴びるように暫く(くつろ)ぎ始めた。

 

 彼女は仕事で大役をこなした時、自分へのご褒美として贅沢をすると決めている。今回のホテル宿泊もその一環だった。夜空を仰ぐ裸体の彼女は、(さなが)ら天への供物と言わんばかりにそれを月夜に曝け出す。しかしその眼は天の遥か先、言うなれば未来に向けられていた。

 

 これは、後に最強の超人“JUNO(ジュノー)”として讃えられる女の物語。孤高を背負い、理想のために戦う“破壊の化身”の冒険譚である――――

 

 

 

 

 

 正午 大都市『龍明(りゅうめい)

 

 現代文明が発達した空間。大きなスクランブル交差点には有象無象の人々や獣人が入り混じり、雑多な空気感を醸し出す。街頭ビジョンには色鮮やかな広告が流れており、カジュアルなファッションやコスメを映し出していた。

 

 街の一角には、『総合探偵社ワールズアパート』という吊り看板を下げた建物が存在している。内部は事務机やノートパソコンといった一般的なオフィスの光景が展開されており、私服で働く人々が電話対応や事務作業に取り組んでいる。今日(こんにち)も悩ましい表情と共に訪れた1人の若い女性が席に案内され、そこに座らされるとソワソワした様子で担当者を待ち続けた。

 

 間もなくして、“彼女”が現れる。乳白色の長髪を分厚く束ねたポニーテールにし、黒色のライダースジャケットと、ボタンを2つ外してタックインした赤色のシャツ、黒色のバイクパンツに、膝丈まである機動性に優れた黒色のブーツという格好で若い女性の前に姿を見せる。その長身からなる絶世のクールビューティーは同性すらも魅了する中で、“彼女”はテーブルを挟んだ向かい側の席に座りながら凛々しい声音で喋り出した。

 

「待たせてしまってごめんなさい。貴女の依頼を担当する“ユノ”という者よ。よろしく」

 

「は、初めまして……! カノンと申します……」

 

「カノンさん、ね。なんて可愛らしいお方」

 

「え!? か、可愛らしいなんて、そんなことはないですよ……!」

 

「お世辞なんかじゃないわ。清楚で麗しい淑女として、さぞ数多の殿方を虜にしたことでしょう。だからこそ、貴女の美しさが今回の依頼に直結したと言っても過言ではない」

 

 ユノと名乗る美女は独特の喋りを展開しながらも、凛とした雰囲気を醸し出しつつ神妙な様相で言葉を続けていく。

 

「『ストーキングされているかもしれない』との旨を聞き及んでいるわ。電話口でお話しされたように、常に見張られている気配がすると判断した自身の直感を、どうか疑わないでちょうだい」

 

「でも、これでもし本当にただの思い込みだったら、それこそこちらの皆さまにご迷惑をお掛けするかもしれないと思って……」

 

「その真偽を確かめるための調査ですもの。警察が対応できない民間の問題を解決する。それが、我々ワールズアパートが掲げる理念でもあるのだから」

 

「うぅ、ありがとうございます……」

 

「さぁ、では早速と調査に取り掛かりましょうか。ついてきてもらえるかしら」

 

「え? わたしもですか?」

 

 立ち上がったユノを目で追う若い女性。そのユノが堂々たる足取りで歩き進めるサマを唖然としながら眺めていると、ユノは女性の隣まで来るなり肩に左手を乗せ、(いざな)うかのように右手を差し出しながら凛々しい調子でそのセリフを口にした。

 

「問題解決は迅速であるべきよ。そのためにも、貴女の協力が要るわ」

 

「わ、わたしに何か手伝えるのでしょうか……?」

 

「えぇ、まずは手始めに私との“デート”に付き合ってもらえるかしら」

 

 

 

 

 To be continued......

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