SEED:Overcomers トールのトリガー/シンの選択   作:reex

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話数管理を見直しています。第6話(中)→3-4

ヒゲのおっさんが少女に講義part2
オーブはどう考えても莫大な軍事費をかけてる割に市民生活に影響はなさそうなので、相当ボロい商売していると考えます。



3-4

CE71/4/11

 

オーブ連合首長国。

首都オロファトがあるヤラファス島、モルゲンレーテの企業城下町であるオノゴロ島、マスドライバーが設置されたカグヤ島を筆頭に、赤道直下に大小20ほどの島々を抱える。

 

元々はポリネシア系の人々が細々と住むだけであったが、わずかながら石油が産出されたことから各国からの移住・開発が進み、それなりの工業力を持っていた。

 

契機となったのは、再構築戦争による、旧中国を主体とする東アジア共和国の成立。

難を逃れた大量の日系移民が訪れ、急速にハイテク化が進んだ。

 

移民が多かったことや技術を重んじる姿勢から、地球上では例外的にコーディネイターの受け入れを公式に発表している稀有な国家である。

 

コーディネイター差別が激しい地球において、その技術力は群を抜いており、当初はプラントから直接技術を得られない非理事国へ、プラント独立が叫ばれるようになってからはプラント理事国に対しても、膨大な貿易黒字を積み重ねている。

 

「そして特筆すべきは、他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しないという中立を理念に掲げているところです。……お父様は、少々裏切られているようにも感じますが」

 

カガリはジト目でウズミを見つめる。

自宅で捕まえたウズミになにかできることはないかと問いかけたところ、「オーブとはどういう国か、まず説明してみるといい」と言われた末の答えだ。

 

ソファの向かいで、ウズミは鷹揚と頷いた。

「うむ。……その通りだ。そして、今の言葉から見えてくるものがある」

 

カガリが不思議そうにしていると、ウズミはバツが悪そうにコホンと咳払いした。

ハルマ殿(父親仲間)から、まず言葉を尽くせと諭されてしまったからな。……順を追って説明しよう」

 

ウズミは指を上げながら説明を始めた。

「一つ。オーブは国体に見合わないほどの高い技術力を持ち、高い需要に応えられる」

「二つ。オーブは非理事国、現状における親プラント国との歴史的結び付きが強い」

「三つ。今となってはプラント理事国、現在の地球連合は最大の貿易相手だ」

 

そして、言い難さをこらえるように続けた。

 

「オーブの中立という理念は、こと貿易に絞って言うなら、誰にでも良い顔をすることで販路を広げ、甘い汁をすするということに他ならない。どちらかに寄ればどちらかとは手が切れ、肥大化した経済はすぐ混乱し、国民の生活は保てなくなる」

 

ウズミがカガリの目を覗き込んできた。

「カガリ、お前に世界をみてこいと言ったのは、世界からみたオーブを見てこいという意味でもあったのだ。……ザフトが支配したバナディーアであってさえ、モルゲンレーテ製を筆頭に地球連合仕様の装備が手に入る。地球上の物資という水脈は、オーブとジャンク屋組合を介して、プラントと地球連合さえ結んでいるのだ」

 

「そんな……!」

カガリの声が震えた。

「それでは、オーブの理念はただの方便だとおっしゃるのですか?!」

 

ウズミは静かに目を閉じた。

 

「理念があるから状況が作られるのか、状況が理念を縛るのか。どちらにせよ、理念と実利は表裏一体。それが組織というものだ」

 

 

窓から遠くを見るようにして、ウズミは顔を背けた。

「いまや軍事的にもオーブは、カーペンタリアとパナマ、アラスカの中間にある要石となってしまった。オーブがここにあって中立だからこそ、後背を気にせず戦線はアフリカや大西洋、そしてアジアに引かれている。それが変われば、太平洋は血に染まり、島々は千々に裂かれて各勢力のものとなるだろう」

 

オロファトから飛び立ったMSが、オノゴロを焼く。

想像もしたくない光景が、カガリの脳裏に浮かんだ。

 

沈黙が漂う。

カガリにとって、父の言葉は、あまりに現実的すぎた。

信じてきた“理想のオーブ”が、音を立てて崩れていくように感じた。

 

「……国内でも、違う視点を持つ者はいる。一つには、プラントと非理事国が結んだことで、そちらとの関係は痩せ細ると見切りをつけ、地球連合に接近しようという者。あるいは、中立を保つにしても、相応の防衛力が必要と考えるもの」

カガリははっとした。アークエンジェルとG兵器のことだ。

 

ウズミは、そこでため息を吐いた。

 

「誰からも敵と見られぬ兎を騙るには、オーブは力を持ちすぎた。頭を垂れて番犬となるか、孤高の獅子としてうなり声を上げるか。……少なくとも手のかかる敵と思えば、漁夫の利を恐れて大きくは手を振り上げないだろう」

 

オーブの力であるモルゲンレーテとカグヤは、地球連合が欲する力そのものであり、プラントはそれを受け入れるわけにはいかない。

そしてそれらを守るためには、また力が必要なのだ。

 

「力を持てば、それを保つためにさらに力が必要となる。まるで血を吐きながら続けるマラソンだが……。調停者も居ないこの時代では、力を示すことも必要かもしれぬ」

 

ウズミは立ち上げると、カガリについてくるように言った。

「お前にできることがあるとすれば、アスハの名を背負い、お前自身が旗印となることだ。……お前が信じる、理想のために」

 


 

CE71/4/13

 

ザフトの挑発行為はエスカレートを続け、EEZを超えて領海間際までその足を向けることが増えていた。

いよいよ間近に迫った戦乱の足音に、それでもオーブの世論は掣肘と静観で割れていた。

 

 

そんな中、オノゴロ内の秘密ドックには空母が入港し、MSを搭載するための準備が整えられていった。

 

トールはあくびを噛み殺しながら、ぼんやりとその様子をモニタで眺めていた。

4月17日(あの日)が近づくにつれて、トールの眠りは浅くなっており、傍らに眠るミリアリアの熱だけがトールを落ち着かせてくれた。

 

(今朝も変な夢だったな……。なんでバスターとバスターで撃ち合ってるんだか)

夢の中では弾雨が飛び合うなか、微かな隙間に回避し、僅かな弾道を探して砲撃を返した。

なんだかシミュレーターに座っていたようで、全く休まった気がしない。

 

コト、という音を立ててトールの前に紙コップが置かれた。

香ばしい香りがいくらか目を覚まさせる。

 

「眠そうだね、トール」

「おお、サンキュー。キラ」

コーヒーを差し出したキラが、同じく紙コップを持って力なく微笑んでいた。

 

二人一緒に熱いコーヒーをすする。

普段よりも、苦みが強いように感じる。まるで空気まで焦げているようだった。

 

やがてゆっくりとキラは口を開いた。

「覚悟はしていたし、色々準備はしていたけど……やっぱり戦争になっちゃうんだね」

「……そうだな」

 

諦めの口調で話すキラに、トールは同意を返すことしか出来ない。

悪夢の中でさえ、この時期ではアークエンジェルはともかくオーブは平和だったのだ。

自分があがいてきたことが、よりひどい未来を呼び寄せたのではないか、という気持ちも否定できるものではなかった。

 

「戦争にならないためにカガリを助けに行って……そこでアスランと仲直りして。そして結局ザフトと戦うことになるんだから、何だかな、って思うよ」

呟くようなキラの言葉が響いた。

コーヒーが緩やかに冷めていく。

 

しかしキラは、目をギュッと絞ったかと思えば大きく見開いた。

そしてコーヒーを一気に飲み干すと、火傷した舌を冷ますようにはにかみ、口を開いた。

 

「でもさ、トール。僕もトールを見習おうと思うんだ。”できることは何でもやる”って。……結果的には、あんまり変わらないかもしれない。でも動いたから、いい事だってあったんだ。だったら、できることをやらなきゃ、って思うんだ」

自分を励ますように語るキラ(親友)が誇らしく、しかし少しだけ胸が痛んだ。

 


 

CE71/4/15

 

マーシャル諸島の簡易拠点より、オーブ領海へ向かうザフトの部隊があった。

ボズゴロフ級潜水艦のネームシップ、ボズゴロフを筆頭に、3隻の艦艇。

空中ではディンが偵察を行い、艦艇の中にも強力なMSが格納されていた。

 

ボズゴロフの艦橋では、緑服のクルーにまぎれて、白服の隊長1人に赤服が3人。

真剣な面持ちをしているのは赤服1人だけで、残りの赤服はニヤニヤといたぶるような表情で掛け合い、白服は酷薄な表情を浮かべていた。

 

このままの進路では、そろそろオーブ領海に侵入してしまう。

流石に進路を変えようと、白服が手を振ろうとしたときだった。

 

何かに気づき、ニヤリとしようとしたCICは、驚きの声を上げた。

「高速で接近する物体が5つ、データ照合、通りません! ……モニターを共有します!」

ディンのカメラが艦橋に共有され、メインモニターに大映しになる。

 

最初は、白とブルーに塗装された全翼機に見えた。

並んでディンを上回る高速で飛来したそれは、領海の縁をなぞるように減速する。

そしてそこから立ち上がる機影が見えた。

 

どよめきが艦橋に響く。

白と赤に染められた人型のシルエット……MSだ。

 

やがてMSの後方から付いてきた艦艇が通信を開き、少女の声がスピーカーから響いた。

 

『接近中のザフトに通告する。貴官等はオーブ連合首長国の領域に接近中である。速やかに進路を変更されたい。我が国は武装した船舶、及び、航空機、モビルスーツ等の、事前協議なき領域への侵入を一切認めない。速やかに転進せよ』

 

MSの1機が、片手に持ったライフルを海中に向けると、放たれた熱線が穏やかな海面を蒸発させた。

 

『……この通告が無視された場合、オーブ国防軍は自衛権を行使し、実力を持って排除する!』

 

 

赤服の一人が声を上げる。

「クルーゼ隊長……! あれはまさか」

 

彼らにとってはとうに見慣れたデザインではある。

地球軍ではあのストライクは地球上で転戦しており、いくらか量産機の姿も確認されている。

 

だが地球連合のそれに対し、オーブのMSは明らかにストライクに似通った形をしていた。

白服の男、ラウ・ル・クルーゼは仮面越しに笑みを浮かべて応えた。

「オーブも流石にしたたかだな。……だが、張り子の虎でないとも限らんさ。実際に一当てして、確認してみないことにはな」

 

はっと気づき、即座に分析に移ろうかという艦橋。

 

クルーゼは独りごちた。

「さて、虎の皮か、獅子の牙か」

 

 

この日、オーブ連合首長国は、MSの量産・実戦配備に成功したと各国に対し発表した。

そしてオーブの主権、領土・領海、国民の生命に危険が及ぶと判断した場合は、自衛権を行使し、確実に対応するとも。

 

その発表に対し、あるものは気にせず、あるものは脅威を感じ、あるものは憤り、あるものは呆れ、あるものは興味を抱いた。

 

 

 

 

そして、その日がやってきた。

 

 

 

CE71/4/17

 

オーブでは明け方、グリニッジ標準時では16時。

 

事前の通告なく降下してきた突入カプセルが、オーブ領海に沈没。

ザフトはこれが自軍のものであると主張し、オーブ領海への進入許可を求めた。

 

オーブ政府は首長会議を緊急招集して検討するも、領海侵犯を正当化するための作為であるとして、これを拒否。

 

ザフトは自軍の機密を守るためとして、強行突入することを宣言した。

 

嵐の前のように、夜明けの海は静まり返っていた。

 




せっかくハーメルンなので、アンケートを設置します。
そのとおりにするかはまた別ですが。

生き残るのは・・・

  • ディアッカ
  • ニコル
  • 両方生存
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