SEED:Overcomers トールのトリガー/シンの選択   作:reex

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ザムザザー「CEブースト!」


2-2

凍れる海の艦上に、緑の巨体が現れる。

『オールシステムゴー。試作拠点破砕兵器、Z(ズールー)01ザムザザー、発艦スタンバイ……発艦!!』

 

戦域全域に流されるアナウンスとともに、異形の機体が飛び出していった。

 

ムラサメのコックピットのムウは、思わず呆れ声を漏らしてしまった。

「まったく、あそこまで大仰にせんでもいいだろうに」

 

『そういうなよ隊長? ユーラシアも目立ちたいんだろうさ。カナードの野郎が宇宙に居ることもあって、地上じゃ全然良いとこなしだしな』

ディアッカの軽口を聞いても、ムウはため息をつくばかりだ。

 

『それだけじゃありません。あの機体を開発した会社はロゴス系らしいですから、自分たちはブルーコスモスとは縁を切った、という禊ぎの意味合いもあるんじゃないでしょうか?』

ニコルが冷静な検討を付け加える。

 

「まぁ確かにすごいけどよー」

ザムザザーが陽電子リフレクターを張り、基地からの砲撃を無力化する。

そうかと思えば複列位相エネルギー砲の反撃で、砲台を焼き払った。

 

そこに更に通信が割り込む。

 

『くちゃくちゃ喋っているんじゃない! いいからお前ら(アークエンジェル一番隊)はとっとと行け! 弾避けになってわたしら(アークエンジェル2番隊)の上陸するスペースを稼いでこい!』

厳しい言葉にディアッカが泣き言を漏らす。

『そりゃないだろヒルダ姐さん?!』

 

ムウはウンザリした表情で声を上げた。

「ハイハイ分かりました。……第一小隊、突っ込むぞ! ちゃんとついてこいよ!」

 


 

アイスランド上空、成層圏。

ミラージュコロイドをまとった3機のMSが、最小限のスラスターで高度を維持していた。

『この任務が終われば、恩赦が出るんですよね?! 存分に働きますよ!!』

「いっても、そんなに堅苦しい生活させてないだろ? COMPASSは」

ヴァレのはしゃいだ声にトールは苦笑する。

 

ヴァレンティーナを含めたハーフコーディネイター(片親がコーディネイター)の一派は、前大戦中に当時の地球連合の命令で敵兵偽装を行った部隊の生き残りだ。

敵兵偽装は明確な国際法違反であり、COMPASSに拘束された。

 

とはいえ脅されてジンに無理矢理押し込まれた上、おびき寄せたザフトごと地球連合の砲撃を浴びるという部隊運用からして、実際の所は被害者。

拘束という名目で、自ら保護を求めたという方が正しい。

 

そんな経緯であるから、COMPASSもその扱いは悪くなかったのだが。

『それでも施設からはなかなか出してもらえないじゃ無いですか! 買い物に行くのも一苦労だし』

画面の先で口を尖らせるヴァレに肩をすくめる。

 

「そりゃお前らを保護するためだろ? ま、だからここでブルーコスモスを痛めつければ、って事につながるんだが」

ヴァレ達にとってははなはだ不満なことに、ブルーコスモスにとってはCOMPASSに投降した彼らは裏切り者扱いらしい。

それもこの作戦で一段落がつくはずだった。

 

『……隊長、始まったようです』

ケンの冷静な声が割り込む。

遥か地上では真っ赤な火線が瞬いていた。

 

トールは表情を改めて頷く。

「よし……。それでは本特務小隊は作戦を開始する。各機、狙撃用意!! 猫の子一匹宇宙に逃がすな! 砲台も撃ち落とせ!」

狙撃スコープを引き出し、地上を睨め付けた。

 


 

ザムザザーの影に隠れる形で、キラ達は着実に基地に近づいていく。

ザムザザーとキラ達が敵の戦力を引きつけ、上空をトール率いるエクリプスの特務小隊が封鎖。

その間にアークエンジェル隊が、ムラサメで攪乱しながらドムトルーパーで制圧する。

それが作戦概要だった。

 

『凄いですね、このザムザザー! デカいし強いし、ユーラシア連邦もやるもんだ!」

『それはそうなんだけど、デザインどうにかならなかったのかしら? まるっきり悪役じゃ無い』

『敵に威圧感を与えるためだろう。合理的な判断だ』

部下達(シン、ルナ、レイ)のやり取りを聞き流しながらも、キラはザムザザーの後ろ姿を見つめた。

再びの基地からの砲撃を、ザムザザーが防ぐ。

 

(実際、たいした物だ。大きい分だけバッテリー容量があって、核動力でも無いのに戦闘継続時間が長い。3人のパイロットで分担することでナチュラルでも運用が容易。そしてこの防御力と火力、そして機動性。……相手にしたら大変だろうな)

この数年戦い続けた故に、味方の機体であっても相手にする時のことを考えてしまう。

 

敵機がわらわらと飛び出してくるが、ザムザザーが四肢からビームを放ちながら振り回すと、爆炎とともにどんどん消えていく。

『……これ、ザムザザーだけで終わっちゃうんじゃ?』

 

ルナマリアの呆れ声に、キラは首を振る。

「中々そうはいかないよ……。ほら、来たよ!!」

 

ザムザザーの攻撃を、馬鹿げた速度で振り払いながら突撃してくる機影が三つ。

IFFは、カラミティ、レイダー、フォビドゥンを示すが、シルエットが異なる。

(3機とも速度が違う。カラミティも地力では飛べなかったはず。……ジェットストライカーの技術を転用した?)

 

ロゴスの一派がもたらした資金力こそあれど、もはやブルーコスモスに大手を振って協力しようという企業は無い。

技術力は頭打ちだ。

 

唯一新兵器と言って良いのが、先日ミネルバを包囲した機体。

後に残骸からサルベージしたところによればウィンダムという名の、ストライク系の量産機だけだった。

その機体達が装備していたジェットストライカーという新型パックも性能こそ素晴らしいが、ある意味旧来のMA(戦闘機)の延長線上でしか無い。

 

それでも、元が優秀なGAT-Xシリーズの改修パーツとして使用するのであれば有用、という事だろう。

「相手は速いよ、気をつけて!!」

 

 


 

 

ようやく訪れた実戦に、スティングは唸るような叫びを上げた。

「さァ、行くぜェ! お仕事の時間だ、アウル、ステラ!!」

 

『そんな大声で言わなくても、わかってるっての!』

『せんそう!! せんそう!!』

共に機体を奔らせる仲間たちも、言葉に喜びの色を隠せない。

 

ロドニアのラボを出て3年近く。

時折雑魚の処理に駆り出されることもあったが、そんなものは()()()()()()()()()スティング達にとって訓練以下の作業でしかなかった。

 

緑色のムシ(ザムザザー)から放たれるビームも、こちらの動きに全くついてこれていない。

彼らが跨るのは、先代の生体CPUがいなくなって以降保管されていた機体だった。

先代の生体CPUは、ジェネシスの照射によって必要な薬品の流通が滞り、やむなく冷凍保存されたという。

機体は基礎設計こそ古いが、設計の優秀さは実戦証明(バトルプルーフ)済み。

そこに自軍にとっての最新鋭であるジェットストライカーのエンジンを複数増設し、最大速度を嵩上げしてある。

バッテリーも鹵獲機からフィードバックした新型(パワーエクステンダー付)だ。

 

尤もスティングのフォビドゥン(GAT-X252[Bst])、ステラのレイダー(GAT-X370[Bst])と異なり、アウルの機体は厳密にはカラミティ(GAT-X131)ではなくエールカラミティ(GAT-X130)シュラーク(背部連装ビーム砲)付きで換装したうえでの改修機([Bst])だが。

 

「ステラ、あんまり一人で突っ込むなよ!!」

『わかった!!』

元が高速機だけに、変形したまま一人で突っ走ろうとするステラを押し留め、何重にも放たれるビームの網目をかいくぐる。

上からの命令は、この目障りな大型MAの破壊だった。

 

「へッ、こういうのは後ろから──何だと?!」

基地の砲撃を防ごうとシールド(陽電子リフレクター)を構えた後ろに回り込もうとしたときだった。

MAの背後に隠れていた青い機体(アビス)が、6条のビームを放ってきた。

慌てて特殊装甲(ゲシュマイディッヒ・パンツァー)で防ぐ。

 

「くそッ! 相手も馬鹿じゃねぇな!」

こちらが大型MA(破城槌)を狙うのも、お見通しということだろう。

誘導プラズマ砲(フレスベルグ)を操り反撃しようとしたが、血の気が引く。

 

(いつの間に?!)

青い機体(アビス)のビームの隙間を縫うようにして、翼のある機体(フリーダム)がサーベルを振りかぶっている。

それでもなんとか抗おうと大鎌(ニーズヘグ)を構えようとした、ところでガクンと衝撃が走る。

 

『スティング! 危ないよ!!』

「ステラか! 助かった!!」

MA形態で飛び込んできたレイダーが、クローでフォビドゥンをひっつかんでいた。

急加速でサーベルを逃れ、一旦間合いを取ろうとする。

 

『うわぁ?!』

「何?!」

 

レイダーの加速する先、MSの機影もないそこに現れた兵装ポッドがビームを吐き出す。

とっさにクローを離したレイダーとフォビドゥンの間をビームが通り抜けていく。

 

破壊しようとライフルを放つが、とうに兵装ポッドは移動していた。

「クソッ!!……?!」

 

背後に気配を感じて振り返る。

トリコロールの機体(フォースインパルス)がライフルを乱射しながら飛び込んできた。

特殊装甲(ゲシュマイディッヒ・パンツァー)を構えて弾き飛ばすが、相手は構わず飛び蹴りの姿勢。

 

「ぐわッ?!」

衝撃に思わず苦悶の声が漏れる。

それでも両腕の機関砲(アルムフォイヤー)頭部のCIWS(イーゲルシュテルン)を集中射すると、VPS装甲で防ぎながらも嫌がるように身をそらす。

 

「鬱陶しいんだよ、引っ込め!」

フェイズシフト相手に、決定打にならないことを知りながらも連射し続ける。

最悪バッテリーを削るだけでもいい。

更に誘導プラズマ砲を織り交ぜ、敵機に回避を強制させる。

 

大型MAと撃ち合っているカラミティの姿を視界にいれて──

「今だ!!」

回避が不能なタイミングで2門のレールガン(エクツァーン)を放つ。

直撃しても装甲を貫けないが、衝撃で押しのけて引き剥がす。

 

『ほらよっ!!』

そこに射線を合わせたカラミティの砲撃が奔る。

幼い頃から共に過ごしたが故の、阿吽のコンビネーションだ。

トリコロールの機体(フォースインパルス)はシールドを掲げてなんとか防ぐが、カラミティの主砲(スキュラ)のパワーをそうそう防げるはずもない。

溶け落ちたシールドが脱落する。

 

「これで終わ──」

慎重に狙いをつけて、誘導プラズマ砲のトリガーを引こうとした矢先。

轟くような水の音を響かせながら、下の海面から先程の青い機体(アビス)が姿を現すと、再び一列のビーム。

特殊装甲(ゲシュマイディッヒ・パンツァー)で防ぐが、敵機は海中に頭を向けると、土産代わりとばかりに4門の実体弾を放つ。

 

「馬鹿なッ?!」

実体弾に機体のVPS装甲が耐えるが、衝撃に姿勢が固まる。

そこに再び翼のある機体(フリーダム)が現れると、両手に構えたサーベルが振るわれる。

 

「……そんな」

四肢とスラスターを失い、あえなく海中に落ちるフォビドゥン。

(チィッ、俺が落ちるなんて……! アウル、ステラ、ヘマすんじゃねぇぞ……!)

 


 

「何やってんだよスティング?!」

海中に没した味方の姿に、思わずアウルの声が上がる。

(あーもう、馬鹿! ステラじゃ助けられないだろ、俺がやるしか……!)

宇宙で使われるMSでのコックピットやノーマルスーツは相応の酸素供給機能も持つが、極寒の北極圏の海では凍死のほうが近しい。

そしてぼんやりしたステラの頭では、潜って救助という思考にたどり着くよりもパニックになる方が早いだろう。

 

『アウル、スティングが?!』

案の定パニックになりかけのステラの声が聞こえる。

アウルは額を引きつらせながら怒鳴り上げる。

「静かにしてろ!! ほら、そっちにも行ったぞ?!」

アウルの忠告通り、海面から浮上した青い機体(アビス)がビームを一列に放つ。

足を止めかけていたレイダーが、再び加速して飛び去る。

さらに翼のある機体(フリーダム)がレイダーの行く手を塞ぐ。

「ああッ?! こっちもバカ!!」

カラミティから援護射撃、翼のある機体(フリーダム)が身を翻して避けた隙間を、レイダーが駆け抜けていく。

 

(まったく、頼りにならないんだから!!)

焦るアウルだが、向かってきたビームを慌てて躱す。

 

「クソッ! しつこい!」

先程からカラミティに絡んできているのは、ポッド付きの緑の機体(カオス)だった。

どうやらビーム砲やミサイルを内蔵したポッドを分離させて、砲台として使えるらしい。

これが厄介で、カラミティの火力を活かそうと足を止めれば、それを読んでいたように空中に置かれた兵装ポッドが絶妙に邪魔をするのだ。

 

(兵装ポッドを飛ばしている時は、足が止まる。それが分かっているってのに!!)

歯噛みしながら睨めつける。

敵機は空中を浮遊しているが、それはポッドを連結して推力を補っているからこそらしい。

ポッドを単独で飛ばしている時は、機体の側は重力に抗えないようなのだが。

 

ポッドの攻撃を推力に物を言わせて避け、奥の機体を狙い撃とうとする。

両肩の4連装ミサイルポッド、シュラーク、スキュラをまとめて放つ。

カラミティの砲撃は空間を支配するように広がり、どう見ても避けられるものではない。

 

「なんでなんだよ?! もう!!」

ヒステリックに喚き立てる。

空の僅かな隙間を、その隅々まで知り尽くしたように敵機は砲撃の網目をくぐる。

自由落下と空気抵抗を組み合わせた滑らかな動きは、まるで泳ぐようだった。

 

怒りのままに、ビームで薙ぎ払う。

『落ちろォ!!』

同時にレイダーが上空から急降下しながらライフルを連射。

十字砲火にたまらず緑の機体(カオス)は変形し、増速して飛び去る。

その軌道をなぞるようにビームで追いかける。

 

「ッ!!」

足元に気配を感じ、そのまま下を向く。

垂れ流したままのビームが海面を沸騰させ、海中から姿を現そうとした青い機体(アビス)が慌てたように再潜水する。

 

「へッ、そんなもの──っ?!!」

頭上から降ってきた2条のライフルが、スラスターを同時に2つ爆散させる。

 

見上げれば、トリコロールの機体(フォースインパルス)翼のある機体(フリーダム)が、速度を揃えながらライフルを連射して突進してきている。

「ハアァァ?!」

両肩のシュラークと4連装ミサイル、さらに両翼につけられたガトリングまで使用して、左右に分けた弾幕を張りながら全速後退。

 

翼のある機体(フリーダム)は、翼を広げると慣性を歪めたように急停止。

そのままくるりと側転しながら、2条のプラズマ砲を放ってきた。

一方トリコロールの機体(フォースインパルス)の機体は機体を()()()()()()()()砲撃を躱す。

思わずアウルも目を見開いた。

プラズマが片翼を吹き飛ばす。

 

更に衝撃。

「うそだろッ?!」

 

背後から現れた青い機体(アビス)が、両肩のシールドに身を隠したまま(変形状態)体当りしてきた。

そこからの零距離射撃で、増設された背中のスラスターが残らず誘爆する。

 

トドメとばかりにとびこんできたトリコロールの機体(フォースインパルス)の機体がサーベルを振るい、とっさに突き出した右腕を刈り取る。

 

だが、アウルは諦めない。

残るシュラークとスキュラを次々と放ち、トリコロールの機体(フォースインパルス)の右脚を奪う。

「ざまぁみろッ!! ……え?」

歓喜に染まりかけた声がアラート(バッテリー低下)に遮られ、間抜けに漏れる。

新型バッテリーといえど、元よりカラミティはバッテリーの消耗が激しい。

ここまで派手に戦えば、尽きるのは当然だった。

 

機体の姿が灰色に変わる。

残されたスラスターが弱々しく光を吐くが、もはや重力に抗うことができない。

 

「こんなところで、終わりなのかよ……?! スティング、ステラ……!!」

海面に叩きつけられた巨体に、大きな水音が響いた。

 


 

「よし! これで後はレイダーだけだ!」

シンが快哉の声を上げる。

 

現れた3機の敵に、こちらの4機という数的優位を活かしながら撹乱する。

ザムザザーに寄ってくる他のMSを打ち払いながらも、充分なコンビネーションを行うことが出来た。

フォビドゥンとカラミティを無力化し、残るレイダーを見やる。

 

レイダーは有り余るスピードで襲いかかってくるが、強力なのは真正面のツォーン(100mmエネルギー砲)程度。

包囲されている状況では、足を止めての格闘も自滅行為だ。

 

戦闘の合間にも前線は進み、既に基地に届いている。

隠匿されていた基地のハッチは残らず開かれており、ザムザザーの砲火がそれを焼く。

 

山程居た敵MSの影も既にまばらで、残りは地上に展開しているが、アークエンジェル隊のドムトルーパー(ZGMF-XX09T)ビームフィールド(スクリーミングニンバス)を展開しながら、消しゴムで消すように押しつぶしていく。

 

戦いの趨勢は既に決していた。

シンはいささか緊張しながらも、レイダーにオープンチャンネルで呼びかける。

「レイダーのパイロット、投降しろ。もう抵抗は無意味だ」

甘いと言われるかも知れないが、レイダー1機でできること等大したことない。

さらに、高速で飛翔する機体とやり合うのも手間がかかる。

理論武装は完璧だった。

 

『……いやだ!! まだ戦いは終わっていない!!』

予想以上に幼い少女の声で、反論が返ってくる。

飛び回りながらライフルを放つレイダーに、戸惑いながらも毅然と告げる。

「諦めろ!! このままだと無駄死にだぞ?!」

 

レイダーの動きがビクリと震えたように緩まる。

か細い声が帰ってきた。

 

『無駄死に……? 死んじゃう……?』

シンは手応えを感じて、落ち着かせるように語りかける。

機体をゆっくりと近づけていく。

「そうだ。死ぬのは嫌だろう? 投降して──」

 

『死ぬ……死ぬ……死ぬのはイヤぁああ?!」

レイダーは人型を変形すると、癇癪を起こしたように鉄球(ミョルニル)を振り回す。

 

「ッ?! クソッ」

グルグルと振り回される鉄球を、インパルスをロールさせてかいくぐる。

(……仕方ないか?!)

抵抗されては押さえつけるしか無い。

覚悟を決めたシンだったが、「え……?」と困惑の声を上げる。

 

『スティング?! アウル?! どこ?! どこなの?!』

泣き叫ぶような声を上げながら、鉄球を振り回す。

レイダーがしていたのは、それだけだった。

 

シンが間合いを離しても、それに気づいた様子もない。

自分を守る鳥籠であるかのように、足を止めたまま鉄球を振り回している。

 

(カメラ)や身体をそこら中に向けながらも、縫い留められたかのように動かない。

それはまるで、家族を見失って立ち尽くす幼子のようだった。

 

『シン、何やってるの?! まだ戦闘は終わっていないのよ?!』

声を荒げながらアビスが機体を寄せてくる。

 

シンはバツが悪そうに口を開いた。

「あ……その、投降を呼びかけたら錯乱しちゃったみたいで。……でも、子供みたいなんだ! 無理はしたくない!!」

 

シンの懇願するような声に、ルナマリアは息をつまらせる。

そして深々とため息をついた。

『……ハァァアア。アンタってヤツは本当に……。もういいわ!!』

「ルナ?!」

 

機体を変形させてレイダーに突っ込んでいくルナマリアに、シンが声を上げる。

引き止めるように、インパルスの右腕が伸ばされた。

 

『私がハンマーを受け止めるから、アンタが責任持って拘束しなさい!! 分かったわね?!』

ルナマリアの答えにシンは一瞬目を見開き、大きく頷いた。

 

「うん! 任せろ!!」

声を張り上げるともに、シンの意識がクリアになっていく。

──何かが、弾けた気がした。

 

『こんのぉぉお!!』

ルナマリアの叫び声とともに、アビスが振り回されるハンマーをシールドで弾く。

そしてすぐさま人型に戻ると、巨大な鉄球を無理やり抱え込む。

 

『シン!!』

呼びかけに応えるまでもない。

困惑したようにハンマーにつながった鎖を引っ張るレイダーに、一直線に突っ込んでいく。

 

『いやぁああ?!! 死にたくない、コワイ!!』

足を止めたまま拒絶を示すよう放たれるビームを、歩むようにゆったりと躱していく。

緩やかにしか見えないその動きが、盾から放たれるビームも、口から放たれるツォーンもスルスルと躱していく。

腕が届くまでの距離まで近づく。

最後の抵抗とばかりに、ハンマーを手放して振るわれた拳を、手のひらで受け止める。

 

その腕をそのまま引き、反対の腕をレイダーの腰に回す。

 

「大丈夫、大丈夫だから。……君はもう、怖がらなくて、いいんだ」

接触回線で温もりまで伝われば、彼女も落ち着くだろうか。

 

ダンスするように抱き寄せたレイダーの四肢から、だらりと力が抜けた。

 

 

作品タイトルを変えたほうがいいかな?

  • 現状のまま
  • ガンダムSEED:Overcomers
  • 1部と2部で別作品にして完全に分ける
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