SEED:Overcomers トールのトリガー/シンの選択   作:reex

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三連休なのでオマケ。


4-3

大きな岩塊が、地球の影を背負いながらゆっくりと軌道を変えていく。

 

かつてユニウスセブンと呼ばれたもの。

その残骸に取り付けられた大型ブースター群が、青白い光を吐き続けている。

 

周囲には、ユーラシア連邦の艦艇が幾重にも展開していた。

アガメムノン級やネルソン級の宇宙戦艦に、大型MAが何機も。

量産型ハイペリオン*1やダガーの小隊、果てにはミストラル(作業用MA)

そしてそれらを運んできた、コーネリアス級輸送艦。

 

その中に、オルテュギア改、そしてカナードの乗るMSも、ユーラシア連邦軍の一員として紛れ込むように潜んでいた。

 

『A目標、姿勢角修正。第三ブースター群、噴射継続。再突入予測、縮小しています』

メリオル(副官)の報告を聞きながら、カナードは愛機──ハイペリオン・ブレイブ(CAT1-X1000A)のコックピットで鼻を鳴らした。

 

「派手にやるものだな」

なにせこの映像は、機密を隠すための多少の処理を行いながらも、ワザワザ全世界に中継しているというのだから。

例によってジャンク屋組合も手を貸していると、知人のバンダナ男から聞いていた。

 

『政治的には必要なのでしょう。作戦が成功すれば、ユーラシア連邦は名実ともに地球圏防衛の中心。大昔に大西洋連邦の前身が謳われた、世界の警察といったところです』

 

「くだらん」

言い捨てながらも、カナードはモニターから目を離さなかった。

 

先の大戦時、中立国同盟の成立にあたってユーラシアは盟主の座をオーブに明け渡し、ラクス・クラインとハルバートンが主導したCOMPASSの後押しとなった。

それはあまりに混迷する世界にあって、安全策をとったから。

 

しかし今は、絶滅戦争の時代ではない。

であれば、ごくありふれた大国の論理を振りかざすだけだ。

そしてそれを許されるだけの力を示すのが、このユニウスセブン落下阻止作戦。

作戦名、フォローウインド(追い風)

 

残骸を再加速させて、地球との衝突軌道から逸らすという内容から来た作戦名だが、我が世の春が来た、と言わんばかりのユーラシア連邦首脳部の思惑も透けて見える。

 

もっとも、裏で何を考えていようが、ここで失敗すれば地球が傷つく。

だからこそ現場の艦隊は真剣だった。

 

中継に映るための隊列を維持しながらも、作業用MAは一瞬たりとも手を止めない。

管制艦は軌道計算を更新し続け、ブースター群の推力配分を再計算する。

防衛部隊は、周囲の宙域に薄く広く散っていた。

 

 

「……来るなら、そろそろだな」

カナードの呟きに、メリオルが小さく息を呑む。

 

『やはり、妨害があると?』

「ユニウスセブンを動かした連中が、ただ見物していると思うか?」

 

メリオルの沈黙の代わりに、別の通信が割り込んだ。

 

『カナード。外縁の監視はどうなっている?』

ストライクルージュから通信が繋がれる。

もっとも彼ら(キラとアスラン)はユーラシア連邦の指揮下では表立って行動できないから、オルテュギア改の格納庫からだが。

 

「通常通りだろう。哨戒艦が広く張っている」

『なら、なぜ外側の更新が遅れている? 情報密度が下がっている』

カナードの片眉が跳ね上がる。

当然ながら、作戦中はリアルタイムでマップが構築される。

ニュートロンジャマーの影響で遅延が出るのは致し方ないが、目でわかるほどというのは異常だった。

 

「メリオル」

カナードが目配せすると、通信画面越しにメリオルがキーボードを叩く姿が映る。

 

『確認します。……作戦が最終段階に入ったため、管制艦群の優先度が軌道計算とブースター制御に寄っています。外縁情報の再統合に秒単位の遅延が出ている可能性があります』

打てば響くような返答だが、それだけでは理屈が合わない。

 

「問題は?」

 

『哨戒艦の監視網自体に瑕疵はありません。しかし、センサ統合の都合上、微弱反応の重ね合わせによる検出に影響が……いえ! 外縁より直接警告! 未照合大型反応が接近! 主機反応なし、排熱極小。サイレント・ランです!』

 

『そこまでして来たか……!』

アスランの声が鋭くなった。

 

直後、宙域の端から真紅の光芒が奔ってきた。

その数、12。

 

 

光芒が虚空を貫き、ユーラシア艦隊の外縁を焼いた。

哨戒艦が一隻、光に呑まれる。

別の補助艦が、船体を裂かれて火を噴いた。

 

慌てたように強制接続された旗艦からの指示が轟く。

『工兵部隊、手を止めるな! 軌道変更を継続しろ! 大型MA及びシールド搭載機は射線を切れ!!』

 

指示を受けるまでもなく、カナードも機体を動かしていた。

オルテュギア改の横腹に飛び込もうという光芒の射線に割り込み、光波防御帯(アルミューレ・リュミエール)を展開して防ぐ。

 

「……フン、陽電子砲か。だが、そういう火力相手ならユーラシアの得意分野だ」

熱紋こそ登録されていないが、外縁部の光学解析から遥か遠くの発射源がマップに登録される。

 

ヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦、グルヴェイグ。

ファウンデーション王国の接収後、データベースに登録された戦艦。

巨体(全長850m)に、12連装陽電子砲を筆頭とした膨大な火力と生産設備、艦隊レベルの積載量をもちながら、最小限の人員で回せるほど高度に自動化されているという。

 

だが、どれだけの火力があろうが、一方向からであれば問題ない。

ユーラシアとて無策ではない。

 

オルテュギア改が回頭し、艦首の陽電子リフレクターを展開。

それはザムザザーやユークリッドといったMAもそうだし、ハイペリオンたちも光波防御帯を展開する。

 

アルテミスの傘から始まる防御シールドの系譜は、ユーラシアのお家芸だ。

勝てないまでも、負けはしない──防御を固めてユニウスセブンの軌道変更さえ行えば、最低限の目標は達成できる。

その自信があるから、政治パフォーマンスにも走れるのだ。

 

作業ポッドは砲火に怯える様子も見せず、破損したブースターを取り替えていく。

流れ弾が飛んできても、MSが身を挺して防ぐ。

サイドパネルに表示されるユニウスセブンの軌道が、とどまることなく地球から離れていく。

 

だが、状況はなかなかそう単純に進まない。

『艦隊の後背からも緊急通報、MSが宙域に侵入してきました! 識別名、ブラックナイトスコード・カルラ、及びシヴァ!』

 

「チッ、挟撃か。……キラ、アスラン! ついてこい、陣形が荒らされる前に、MSを迎撃する!」

舌打ちすると、カナードは声をかけた。

()()()()()()()()()()()ハイペリオン・ブレイブは、戦場にあって不壊の楔となるが、流石に1機ではブラックナイトスコード2機の相手は億劫だった。

フェムテク装甲といった機体データは、既にファウンデーション王国接収時に掴んでいるのだ。

 

『言われるまでもない! ストライクルージュ、発進するぞ!』

『行こう、アスラン!』

アスランとキラの威勢の良い声にニヤリと口角を歪めると、カナードはスロットルを全開に叩き込んだ。

 

 



 

最大までズームしたグルヴェイグのセンサーが、有効探知距離の端でブラックナイトスコードの機影を捉えた。

流石のクルーゼの空間認識とて、距離という一点では戦艦のセンサーに敵わない。

 

「フ、わざわざ私を釣るために仕掛けた罠だ。獲物()が顔を出せば、すぐに飛び出してくると思っていたよ」

 

薄く笑いをこぼす。

 

まんまとおびき出されたと、喜び勇んでクルーゼの首級を上げようというオルフェたちの顔が目に浮かぶようだった。

 

(位置も悪くない。いや、悪くないように置いたのだがな)

 

実際のところ、クルーゼは別にこの罠に乗らなくてもよかった。

 

パニッシュメントの砲弾となるデブリは、宇宙にはいくらでもある。

この事件の後、ユーラシアがどれだけ防備を敷こうと、それを超えるほどの物量で星を降らせてしまえばいい。

 

質量攻撃で何かを成し遂げようというのであれば、そんな加減の効かないやり方はしないのだろう。

だがクルーゼとしては、条件を変えているだけなのだ。

 

人は、絶望の中でなお立ち上がれるのか。

誰かが作った英雄や、誰かが掲げた秩序に縋らず、自らの足で立てるのか。

人の力は足りず、滅びるという結果が出るならば、それはそれで構わない。

 

それでも戦場へ出てきたのは、ユーラシアが想像以上の演出を行い、勝利を飾り立てようとしたからだ。

 

この作戦の成功によってユーラシアの声望が高まり、人々の指針となってしまえば、また()()()()が元に戻ってしまう可能性があった。

 

「そういう意味では、オルフェたちも想像以上だった。まさかユニウスセブンを使うとはな……」

 

どこまで考えていたかは分からない。

だが、他の小惑星や無名のデブリであれば、ユーラシアもここまでの演出をしようとは思わなかっただろう。

 

前大戦の象徴の一つであるユニウスセブンだからこそ、人々の注目を集められた。

そしてユーラシアは、その注目を自らの権威へ変えようとしている。

 

クルーゼが思いにふける中でも、グルヴェイグは陽電子を吐き出し続ける。

自動制御で暴れているだけだが、狙い通り、オルフェたちが現れたのはグルヴェイグからユーラシア部隊を挟んでほとんど真反対だった。

 

オルフェたちがこの艦を狙って突っ込んでくるだけで、巻き込まれるユーラシアは打撃を受ける。

ユーラシアからしても、元よりファウンデーション王国残党は敵対勢力だ。

迎撃しない理由はない。

 

つまり、どちらが勝っても傷は残る。

 

クルーゼにとっては、ユーラシアの完勝でさえなければ、細かな戦果などどうでもよかった。

オルフェたちも、その程度の暴れ方はするだろう。

 

彼が席を立つと、元より寂しい艦橋の照明が一段落ちた。

以後の戦闘は、艦の自律制御で充分だ。

 

既に目標は半ば達成できている。

いつまでもこの戦場に長居する必要はなかった。

 

 



 

目の前の(アガメムノン級)を斬る。

(ハイペリオン)を斬る。

(ザムザザー )を斬る。

(ユークリッド)を斬る。

(ユークリッド)を斬る。

( ダガー  )を斬る。

(ザムザザー )を斬る。

(ネルソン級 )を斬る。

かつて戦場は、己の能力を解放(主張)する愉しい遊び場だった。

 

誰より速く、誰より強く。

その事実を見せつけるだけで、胸の奥にある退屈は満たされた。

 

今はただ、苛つくだけだ。

目の前の羽虫(ユーラシア)の煩わしさに、思わず手が出てしまう。

 

『"シュラ! 雑魚にかかずらうな!! 我々の目的はクルーゼだ!”』

”……わかっている”

オルフェの叱責に、シュラは幽鬼のように応える。

もっとも、その口元は引き絞られたままだ。

 

そう、わかっている。

クルーゼを殺す。

アウラ()を殺し、弟妹(アコード)を殺し、自分たちの尊厳(運命)を汚した男を殺す。

そして、すべてを殺す。

 

最後に勝ち残ったものが正しい。

だから、自分が正しいことを証明するのだ。

 

ブラックナイトスコード・シヴァが(分身)をバラマキながら、ゆらりと戦場を舞う。

相応の速度でグルヴェイグに向かいながら、道中のユーラシア部隊を轢き殺していく。

 

ユーラシアの部隊が放つビームも実弾も、シヴァの装甲で受け止めることすらしない。

砲火に真正面から飛び込みながら、しかし掠りもせずにすり抜ける。

 

当たるはずもなければ、当てさせる理由もない。

シュラは最強の剣だ。

どれだけ敵が居ようとも、断ち切ることができる。

戦場に居さえすれば。

 

時折ヤケクソのようにサーベルを構えて突っ込んでくるものも居るが、足のビームソードで文字通り蹴散らす。

 

オルフェから「クルーゼの相手に集中しろ!」と罵声が飛んでくる。

 

だがシュラからすれば、離れていた(王国にいた)アウラ達はまだしも、共に行動していたリデラード()を守ることもできなかった()()の言うことだ。

 

その頭脳への信頼は残っているから作戦には従ったし、実際にクルーゼをおびき寄せる事はできたから不満もないが──戦場で指示を聞くほどでもない。

 

それでも、仇であるクルーゼを討つという目的は共通している。

シュラが()()()している分、少し先行しているカルラを、カメラに捉える。

どうやらドラグーン(プリスティス2光波クナイ)を持つ(ハイペリオン・ブレイブ)と接敵したらしい。

慌てて回避に移るのが見える。

 

(ハ、クルーゼの相手でトラウマにでもなったか?)

シュラが瞳を歪めて鼻で笑う。

明らかに、ドラグーンの動きを過剰に警戒していた。

 

仕方がないか、と思ってシュラが援護に回ろうとした瞬間、ビームの雨がばら撒かれる。

「ッ?!」

瞬間的に飛び退くが、あまりの弾幕に避けきれない。

とはいえ、速射性を優先したらしきビームの威力は知れたものであったし、何よりフェムテク装甲には無力。

だが、敵機の反応は、もはや忘れもしないものであった。

 

望遠カメラに捉えた、赤い旧地球連合のGAT-X105(ストライク)系のシルエットはどうでもいい。

問題は、背後に装備された、MA(ファトゥム11)の熱紋。

シュラがファウンデーション王国(アコード)を取り巻いた激動の、蚊帳の外に置かれた理由。

 

「貴様、アスラン・キラ・ヒビキ……!!!!」

思わず繋いだ通信に、夢に見るほど呪った声色が返った。

『シュラ・サーペンタインだな。……いつぞや以来か』

 

ファウンデーション王国の捜査で、とっくに自分の名前と乗機はバレているのだろう。

不用意に交戦して取り逃がし、手配される原因となった男。

スーパーコーディネイター、アスラン・キラ・ヒビキ。

 

あの時、自分が殺していればよかった。

そうすればシュラは独り隠れることもなく、アコードの剣として戦場に居続けることができた。

そうであれば、クルーゼの跳梁を許すこともなかった。

 

「……殺す!!」

 

シヴァには遠距離武装は殆ど付いていない。

だが、シュラの腕からすれば充分だ。

 

ヒートソード(ディス・パテール)を突き出しながら真っ直ぐに突っ込む。

敵も無駄な攻撃をすることもなく、ステップで避けるが、その軌道は見えている。

即座に反転、ビームマントをはためかせてシールド(スヴァローグ)のワイヤークローを打ち出す。

 

敵機はCIWSで迎撃を試みたが、諦めて回避。

実際、シールド本体と同様にフェムテク装甲で構成されるクローは少しも揺らがない。

とはいえ、運動エネルギーを殺された分だけ速度は緩み、その間に沈み込むようにして躱される。

 

そこに脚部のビームソードを展開して飛び蹴り、躱されたところで更にビームサーベルを引き抜いて折り返すように振るうと、敵機がシールドを掲げて防ぐ。

サーベルとシールドを押し合う姿勢だが、互いに片腕を封じられただけ。

 

反対の手で振るうヒートソードが、正確にストライクの肩関節に向かう。

 

その刃をストライクが肘で打ち落とす。

フェイズシフトの装甲部分は、ヒートソードの熱量に耐える。

同時に、ストライクが突き出すような喧嘩(ヤクザ)キック。

 

「くっ」

ダメージは無いが、姿勢を崩される。

更に背から引き抜かれたサーベルがつきだされるが、シュラは大きく飛び退いて回避した。

 

「貴様を逃してから、全ての歯車が狂った! ここでその息の根を止めてやる!!」

 

吠えながらも、僅かな違和感を感じた。

シュラは欠片も手を抜いていない。

グリフィンの様な精神操作こそ得手ではないので行っていないが、読心能力は当然のように使っている。

 

その焦点は、ストライクでは無く、その背に突き刺さるファトゥム11。

あの男の思考を読むなら、機体の中枢ではなく、あのMAの側を読むべきだ。

前回の交戦で、それは身に染みている。

 

だが、今の動きは違った。

先ほど読み取っていた動きは、同じ蹴りでもしなやかな回し蹴り。

肘鉄でぐらついた手から、ヒートソードを蹴落とそうとする、そんな動きだったハズ。

 

(そもそも、(アスラン)はこちらが心を読んでいることは知っているはず。直前で本能に身を任せたのか……?)

以前の戦いで相手が取った対応策は、意識を介さず反射だけで迎撃する戦法。

その延長線上と思えばおかしくもないが。

 

だが、それだけではない。

 

ファトゥムの推力のかかり方が、妙にずれる。

ストライク本体の重心移動と、背部MAの補助が、わずかに噛み合っていない。

噛み合っていないのに破綻していない、そんな異常。

 

『シュラ・サーペンタイン。お前に聞かなければならないことが有る』

通信越しの声は、平坦だった。

聞き流しながら、ビームサーベルを上下連結。

右手にヒートサーベル、左手にツインサーベル(ハルバードモード)を構えた、変則三刀流。

 

スロットルを全開にしたまま、敵機を囲う様に加速を続ける。

レヴィテータ―(ビームマント)が軌跡に映し出す残像が連続し、ついにはストライクの姿を繭のように閉じ込める。

 

『……チィ?!』

このままだと、何もできずに撃墜されることを察したのだろう。

ストライクの頭部が周囲を見回し、意を決したのか繭の一点を目指して突っ込む。

 

「無駄だ、ここで死ね!」

その背後から浮かび上がるように現れたシヴァが、ツインブレードを振りかざして今度こそ敵機を

両断する。

そのハズだったが、突如背部のMA(ファトゥム11)が連結解除する。

 

「──何?!」

そのまま逆噴射。

予測よりも一拍早い干渉。

 

シュラの間合いが崩れ、シヴァの機体とファトゥムがまともに衝突した。

 

その合間にストライクの機影は繭の外へと逃れ、MAも衝突の反動を活かす形で急転回。

仕切り直すように距離を取り、再びMAとMSが連結される。

 

(バカな、こんな動きを思考せずに処理など……?!……いや!!)

状況を処理速度に優れた脳が瞬時に判断し、思考がまとまる。

シュラは怒りの叫びを上げた。

 

「貴様ら、二人組か?! 戦闘中にメインコントロールを切り替えるなど、正気の沙汰ではない……!」

おそらくはコントロールを都度受け渡すのではなく、影に隠れた側が勝手に介入する形。

高速戦闘中に突如コントロールを()()()()られれば、混乱するのが当たり前の反応だ。

アコードの様な意識共有をする訳でもなければ、双子のように息を合わせるわけでもない。

 

それぞれが勝手に動き、勝手に介入している。

それでいて破綻しない。

お互いに絶対の信頼を置いた、常識外れとしか言いようのないコンビネーション。

 

『答えろ。お前たちと我々を罠にはめたのは何者だ? そして、フレイ・アルスターはどこに居る?』

驚嘆するシュラを他所に、敵機が問いかけるのはあまりにも冷静な尋問。

まるでシュラとの戦いなど、何の問題でも無いような態度。

 

ブチ、とシュラの中で何かが切れた。

「死ね」

 

低く漏れた声が、喉の奥で震える。

「死ね、死ね、死ね……死ねぇぇぇえ!!!!!」

 

冷静さをかなぐり捨てた。

ただ血に狂った獣のように、反射神経だけに任せて加速する。

 

ストライクが慌てて回避しようとするが関係ない。

敵のライフルも、投じられたビームブーメランも、(噴射光)を見せて全速で逃げ出そうとも。

何もかもが、遅い。

 

(真っすぐ行って、ブチ殺す!!)

 

何も考えないシュラとシヴァの速度に、追いつけるものは無い。

無心で突き出されたヒートソードが、背中を見せて逃げる敵機(ストライクとファトゥム)のスラスターに向かう。

 

スラスターの熱をものともしない刀身が、装甲のない開口部に差し込まれていく。

やがて機体を貫いた切先が、胸元から飛び出した。

 

即座に距離を取ると、二つが一つとなった機影は悶えるようにあがき、そして爆炎に沈んだ。

機体反応が、白く弾けるノイズの中で消失する。

 

撃墜確認を待つことすらしない。

 

待てば、考えてしまう。

考えれば、迷ってしまう。

 

(そんなものは、剣には不要だ……!)

 

「おおおおおぉぉお!!!」

爆炎を背後に残したまま、興奮に任せて更に加速。

 

ユーラシアの艦も、MAも、状況に気づく前にシュラの手によって両断されていく。

爆炎が遅れて届くさまは、正しく雷光のように。

 

戦場を真っ二つに切り裂いた稲妻がようやく止まったのは、グルヴェイグにたどり着いたときだった。

撒き散らされる陽電子も、ばら撒かれる機銃やミサイルも、もはやシヴァの影にすら届かない。

 

「クルゥゼエ!!!! 貴様も良くも俺を欺いてくれたあぁ!!!」

再び雄叫びを上げてグルヴェイグの巨体に刃を突き立てる。

そのまま艦と並走するように加速。

まるでナイフを滑らしたように、グルヴェイグに赤い線が走る。

 

「早く出てこい、クルーゼ!!! 貴様のその首、母上に捧げてくれる!!!」

最強の剣であり、言い換えれば最強の盾でもある自分が、壁に飾られたまま守るべきものを失った。

自分が役立たずであるはずがない。

アコードの剣である自分が。

運命を切り開くための自分が。

 

それを払拭するには、強さ(正しさ)を証明するほか無い。

なおもグルヴェイグを切り裂くシュラに、ようやく敵を振り切ってきたらしいカルラから声が届く。

 

『"シュラ、突っ込みすぎだ!!! あの男(クルーゼ)の悪辣さを考えろ?!"』

『"シュラ! 冷静になって。抵抗が薄すぎる……!”』

 

「"うるさい!!!!”」

オルフェとイングリッドの言葉を振り払い、さらに深く刃を突き立てる。

 

──切り裂かれた装甲の奥から、眩い光が漏れ出すのが見えた。

 

「……え?」

ゾワリと皮膚が泡立ち、反射的に飛び退く。

 

反応炉区画の内側で、オーバーロードさせられた炉心の光が冷却材を貫いた。

グルヴェイグの巨体が内側から弾け飛び、機体が爆炎に紛れて吹き飛ばされた。

 

 

 

*1
ハイペリオンGは地上用




ご感想・ご評価いただければ幸いです。


オリ機体

CAT1-X1000A:ハイペリオン・ブレイブ
・カナードのハイペリオンに、ドレッドノートから移植された核動力を含む大改造を施した機体。
・核動力化によりアルミューレ・リュミエールの長時間展開のほか、従来は独立電源式だった武装類も、直接ドライブ可能になっている。
また、その後の近代化改修によって、両肩のビームキャノン、近接装備(元はビームナイフ)、射撃装備(元はビームマシンガン)が、セイバーと同じ装備となっている。
つまりはフリーダムDとも同じ。
・当初はドレッドノートに搭載されていたXM1 プリスティスビームリーマーというドラグーンを装備していた。
建国式典テロ以降は、光波防御帯を貫通可能なXM2 プリスティス2光波クナイを装備している。
ナイフ形状の光波防御帯を展開して、自ら突き刺さる00のファング的な運用。


型番の由来は、CAT1-X1:ハイペリオン1号機仕様と、YMF-X000A:ドレッドノートを併せたもの。
NJC搭載核動力機であったドレッドノートは、動作試験後に当時のシーゲル・クラインの手で横流しされたが、戦後になってザラ派残党に狙われた。
ドレッドノートのパイロット、プレア・レヴェリーは自機を守るべく奮闘し、護衛のためCOMPASSから派遣されたカナードと友誼を結んだ。
プレアの死後、譲り受けたドレッドノートのパーツを使って、ハイペリオンを修復したのがこの機体である。
※この話を書く予定はありません。

カナードは空間認識能力がないとされ(これがキラに劣る点ではともいわれた)
DESTINY ASTRAYでは、乗機のドレッドノートからドラグーンをわざわざ外していましたが
FREEDOM ASTRAYでは、やはり使えるという事になっています。
(操作イメージがイマイチ付いてなかったというだけ)
上記エピソードにてプレアからアドバイスを受けたと言う体で、本作では「カナードはドラグーン使える」ものとします。
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