SEED:Overcomers トールのトリガー/シンの選択   作:reex

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話数管理を見直しています。第4話(中)→2-4


2-4

戦闘は終結した。

 

ローラシア級が轟沈した後もザフトは攻撃を続けてきたが、キラに引き寄せられていたデュエルとブリッツがまず後退。

恐らくはバッテリー切れだ。

 

キラはその隙にアークエンジェルへ帰還し、ランチャーストライクへと換装した。

そして、先遣隊・アークエンジェル・バスターとランチャーストライクの砲火が一斉に火を吹く。

 

交錯するビームと実体弾の雨に抗しきれず、残存機体を回収したナスカ級は反転し、火線の向こう側へと姿を消していった。

 

最終的にバーナードは退艦・自沈処理を余儀なくされたものの、モンゴメリとローは健在。

アークエンジェルと共にデブリベルトへと身を潜めていた。

 

 

着艦こそしたものの、キラはストライクのコックピットに座り込んだままだった。

先遣隊との連絡や負傷者搬送で整備班も手が回らず、誰もこの機体には近寄ってこない。

 

(アスラン……。また戦場で会うことになるなんて)

 

あの赤い機体を見た瞬間、時間が止まったように感じた。

増援として現れたナスカ級から、姿を現したイージス。

 

驚きに体が動かず、隙を突かれてブリッツにライフルを破壊された。

だが結果的には、それが功を奏したのかもしれない。

回避に専念せざるを得なかったことでバッテリーを温存でき、敵の退却を誘う余力を保てたのだから。

 

戦場で二人だけになった時、アスランは叫んだ。

 

『お前がなぜ地球軍にいる?! なぜお前がナチュラルの味方をする必要がある?!』

戦場にいることに最も違和感を覚えているのは、キラ自身だ。

それでもザフトが撃ってくるから、撃ち返すしかない。

脱いだヘルメットを投げ捨てる。

 

思い悩むキラの耳に、プシュ、という音が響き、コクピットハッチが開く。

外から操作されたのだ。

 

「よ、キラ。お疲れ様。どうしたんだ? 全然出てこないで」

逆光に照らされたトールの表情は、黒く陰って見えた。

 

「……トールも、お疲れ様。無事で良かった」

「お互いにな」

トールは軽く笑ってみせたが、声は乾いていた。

 

「……やっぱ、戦場ってのは空気が違うな。覚悟はしていたけど、撃たれる、撃つって思うと、体の芯が冷える。ミリィと会う前に、ちょっと整理したくて」

バツが悪そうに己の腰を叩く。

 

「……トールはさ、なんのために戦うの?」

呟くようにキラは問いかけた。

 

「前にも言ったろ。みんなを守りたいってのが一番だ。……でも、それだけじゃない」

トールは少しだけ考えるように息を吐き、ゆっくりと目を伏せる。

 

「結局……じっとしてるのが怖いんだと思う。何かできるのに何もしないで、うまくいかないのが怖い。だから、できることは全部やる、それが俺の生き方なんだよ」

そう言って、コクピットハッチに腰を下ろした。

 

「俺の能力なんて、たかが知れてるけどさ。それでも、動いてるうちは後悔せずに済む」

 

その声を聞きながら、キラは膝の上で手を握りしめた。

「……僕も、ストライクで友達を守ることが自分にできることだと思ってた。けど……イージスのパイロットも、友達なんだ」

 

堰を切ったように言葉があふれ出した。

ヘリオポリスでの再会、アスランが敵として現れたこと、銃口を向け合った瞬間の恐怖。

 

2人しかいない狭いコクピットに、嗚咽混じりの独白が響いた。

 

すべてを聞き終えたトールは、しばらく黙っていた。

やがて、少し掠れた声で言う。

「キラ……俺はお前を巻き込んだ立場だ。つらい思いをさせてゴメン。でもさ、前自分で言ってただろ、力は手段だって」

 

キラが顔を上げると、トールはニッと笑った。

「だったら、どう使うかはお前次第だ。殺したくないなら殺さなきゃいい。ボコボコにして止めりゃいいし、気が済まなきゃ引きずってでも連れ帰りゃいい」

 

「……何だよそれ。滅茶苦茶だよ」

泣き笑いのような声がこぼれた。

なんと傲慢な考えだろう。

でも胸の奥に張りついていた重しが、少しだけ軽くなった気がした。

 

 

 

キラとトールの語らいは、トールを待ちわびて格納庫に突撃してきたミリアリアによって中断させられた。

「心配させて!」と背後でボコスカ叩かれるトールを見ながら通路を進むと、通路の影からフレイが飛び込んできた。

格納庫付近は無重力なのだ。

 

「キラッ!! パパを助けてくれてありがとう!!」

「うわっ?! 危ないよ?!」

 

童女のような笑みを浮かべて、漂うフレイを抱きとめる。

華やいだ、とてもいい匂いに気を取られそうになったが、続いて現れたサイがすごい表情をしているのに気づいて自重する。

 

それでも柔らかな感触がキラに触れていることは、意識せざるを得なかった。

 

「……キラ、トール、おつかれ。フレイの親父さんを助けてくれて、ありがとな。俺にとっても親になる人、だからさ」

 

「ああ、うん。本当に良かったよ、助けられて」

若干声を鋭くして語りかけるサイに、ドギマギして答える。

フレイはまだ離れそうにない。

 

「オホン。……いやぁ、大変だったよ。サイはどうしたんだ? 荷物抱えて」

こわばった空気に、トールの咳払いが響いた。

ちなみにミリアリアは面白そうな表情でこちらを見ている。完全に他人事だ。

 

たしかにサイはバッグと紙袋を抱えていた。

偶然乗り合わせた艦内には彼らの私物は乏しいが、どう見ても女性向けのデザインだ。

 

「親父さんが、フレイはモンゴメリに移るようにって。俺等は空いてるアークエンジェルのままだけど、あっちにねじ込んだらしい」

バーナードが自沈した分、部屋数は減っているが、元々アークエンジェルはスカスカだ。

クルーの補充を受け入れてもなお十分な余裕があり、仮にフレイの近くにいたくても自分が来ればいいようなものだが、わざわざ部屋を空けさせてフレイを呼び寄せる形にしたらしい。

なかなかの我が儘だ。

 

話を聞いたキラやトール、ミリアリアは困惑の表情を浮かべたが、サイは苦笑いだ。

どうやらいつもこんな感じらしい。

 

話をしていると、ようやくフレイが離れた。

「でも、コーディネイターってすごいのね! 直接見たわけじゃないけど、ビュンビュン飛んでザフトを引き付けてたってパパが言ってたわ!」

その言葉に、キラの心に苦いものが混じる。

やはりフレイは、コーディネイターとナチュラルを分けて考える人間なのだ。

 

しかしそこにトールの声が割り込む。

「いやいや、違うぜ。すごいのはコーディネイターじゃなくてキラだ。そのキラが頑張ったから、ってのは忘れないでくれよ」

 

「……たしかにそうね。ザフトだって皆コーディネイターなのに、キラが追い払ったんだもの。本当にありがとうね、キラ」

軽やかに笑うフレイを見て、キラは頑張ってよかったと思った。

 

 

 

 

移動挺に向かうというフレイたちを見送り、再び艦内に歩みを進める。

ミリアリアの「良かったじゃない、色男~!」「でもサイもいるからなぁ~」「そういえばラクスはどうするの?」と次々放たれる言葉をやり過ごし、一つ考えるのはそのラクスのことだ。

 

一度昼食を共にしてからというものの、キラ、トール、ミリアリアの3人はラクスの居室に遊びに行っていた、というより世話係をしていた。

面倒見の良いミリアリアなどは完全に妹扱いしており、度々世話を焼くようになっている。

その代わりとばかりに、たった3人の観客に向けてリサイタルも行われ、その歌声はあの時の両手のように、心を優しく包んでくれた。

だが先遣艦隊と合流し、一種の無法地帯ではなくなったアークエンジェルでは、これまでと同じ様には出来ないだろう。

 

通りがけにラクスの部屋の前を通れば、銃を持った兵士が立っている。

何故かピンクのペットロボット(ハロ)を抱えて。

 

思わずキラが「あの……」と問いかけると、存外気さくな態度で言葉が帰ってきた。

 

「ん? なんだ、お前ら。……って、パイロットスーツってことは、さっきのMSのパイロットか?! 現地任官の少尉相当官って聞いてるが、いやー助かったよ。またなんかあったら頼むぜ」

 

勢いよく話される言葉にキラが話についていけずにいると、トールが代りに問いかけた。

「いやー、皆さんの力になれてよかったですよ。ところでそのペットロボットは?」

 

兵士は頬をかいてバツが悪そうに答えた。

「……偉い人には言うなよ? あのラクス・クラインがいるって言うんで監視にここに来たら、部屋を出てくるところに出くわしちまったんだ。聞いたらこのロボに電磁ロック解除機能が入ってるんだと。流石に没収はしたが、あんまり事を荒立てるつもりもなくてな……」

ファンなんだよ、と照れながら笑う兵士の襟章を見れば、なんと少尉だ。

本来このような任務をする立場ではないので、おそらく割り込んだのだろう。

 

まさかあのハロにそんな機能があるとは思わず、キラたちは唖然とした。

なんのための機能なのか、検討もつかない。

 

「えっと、それじゃ一旦僕が預かっておきます。部屋においても、周りは黙っていてくれると思うので」

「ほんとか?! 良かった、俺も今は相部屋なんだよ……。なにせ部屋が少なくてな」

キラがひょいと手を上げると、少尉は笑ってハロを渡してきた。

 

跳ねようとするのを力ずくで抱きとめて、兵士に手を振って別れを告げる。

マリューにラクスの今後を聞いてみるというトールと別れ、自室へと戻った。

 

ベッドにハロを置き、パイロットスーツを脱いで着替えようとすると、なぜだかハロがゴロゴロゴロと転がり続ける。

 

「ちょっ……こいつ、大人しくしろよ!」

思わず下着姿のままハロを抱え、手探りでスイッチを探してなんとか停止させた。

ふと、気付く。

(ハロの電源系のレイアウト……。トリィと一緒だ)

 

 

 

キラが着替えを終えたころ、トールが戻ってきた。

マリューに聞き取りをしたところ、まだラクスの扱いは定かでは無いようだ。

「先遣隊のコープマン艦長は、トップのハルバートン提督の指示によるって。副長(ナタル)はフレイの父親の大西洋連邦事務次官にも聞いたらしいけど……あくまで官僚だから、報告は上げるけど軍に任せるってことらしい。結局はハルバートン提督って人次第だな。……艦長(マリュー)は、ハルバートン提督ならそんなひどい扱いはしないだろうって言ってたけど」

 

 

「そっか……。僕が拾ったせいだから、なんとかお願いしないと」

キラは目を伏せる。

人命救助として助けたが、それがラクスを追い詰めることになってしまってはいけない。

 

(最悪、僕が軍に残ることを交換条件にしてでも……)

所詮パイロットと敵国の要人の娘では価値が違うが、キラのここまでの戦いをアピールすれば、なんとか認めてもらえるかもしれない。

ストライク(連邦初のMS)とそれを操れるパイロットの価値は高いはずだ。

 

「……ちなみに、今からでもラクスを連れ去ってザフトに返すとかは?」

探るような言葉で問いかけるトールに、首を傾げる。

 

「これだけ周りに連合がいたんじゃ、ムリでしょ?」

 

 




トールはスーパーコーディの話を知らないので、普通にヨイショします。

ピンクハロは語呂合わせでピッキングらしいけど、ピーピングの可能性も0じゃない筈・・・。
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