Fate/You Died.   作:助兵衛

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第29話 起死回生

 狂い火の壁の、ぎりぎり外側。

 

 炎が吹き荒れる熱の帳の向こうで、何か巨大な影が閃いた。

 誠は理央に腕を引かれながら、瓦礫の陰に身を伏せる。

 

「うわ……今の、今の!」

 

「分かったから、隠れて!」

 

 興奮と困惑と、恐怖が混ざった声だった。

 彼の視界の先──揺らぐ炎の狭間から、鋼の巨人が跳躍するのが見えた。

 

 灰を巻き上げて踏み込む一歩。

 そこから生じる衝撃だけでも、誠たちを覆う壁が震える。

 

 赤い単眼が、灼熱の中で明滅していた。

 

「……なんだよ、アレ……ロボ……人型兵器……?」

 

 誠は思わず言葉を失い、次の瞬間には息を飲み直していた。

 炎の巨人──キャスターの振り下ろす腕を、灰色の兵器がスラスターの噴射で滑るように回避する。

 

 遠く離れているはずなのに、振動が皮膚を叩く。

 

「すげえ……こんなの……映画みたいだ」

 

 興奮した声が続く。

 だが理央は誠とは対照的に、静かだった。

 揺らぐ火の帳を凝視したまま、息すら細く絞るよう。

 

「……あれは宝具ね」

 

「宝具……あれも?」

 

「間違いないわ。サーヴァントが持つ“切り札”。あの規模、あの質量──通常の兵器じゃない」

 

 

 炎の向こうで、灰色の兵器が跳躍した。

 着地と同時に、地面が大きく抉れる。

 その一瞬だけ、狂い火の光が兵器の背部を照らす。

 

 そこに誰かが“乗っている”気配が、誠にも分かった。

 

「じゃあ……アレって……誰の?」

 

「……紫村君のサーヴァント。ライダーの宝具よ。可能性としては、ほぼそれしかない」

 

 理央の声は低く、確信めいていた。

 

 誠は目を見開いた。

 

「紫村の……!? え、だって……ライダーって、もっと……」

 

「大人しそうな見た目でも、英霊は英霊よ。本人の肉体ではなく、搭乗する兵器により打ち立てた武勇や功績により英霊の座へと引き立てられたのでしょうね」

 

 理央のまなざしは、炎の奥に釘付けだった。

 その目の奥には、言いようのない感情が揺らいでいる。

 

 狂い火が爆ぜ、夜空に届く熱風が押し寄せる。

 そのたびに炎の裂け目から、戦場の断片が覗く。

 

 炎の巨人。

 対峙する灰色の鋼。

 その中心で衝突する光と音。

 

 まるで世界の理が剥がれ落ち、自分たちだけが取り残されているようだった。

 

 激震が走った。

 灰色の巨体──人型兵器が、肩越しに長い実体弾ライフルを構え、キャスターへ向けて連射を開始したのだ。

 

 轟音が、熱に歪む空気ごと震わせる。

 誠は思わず耳を塞ぎながら、その光景に目を奪われた。

 

「うるさ……! あんなの、戦車かミサイルだぞ!」

 

 だが──

 弾丸は、炎に触れた瞬間、まるで紙のように溶けて消えた。

 

 ひとつ残らず。

 

 キャスターは愉悦を含んだ笑みを炎の奥で浮かべ、肩を震わせる。

 

「……効いてないわね。あの炎を纏っているだけで、防御は万全のようね」

 

 理央は低声で呟き、唇を噛む。

 

 その瞬間、空が裂けた。

 

 誠が驚愕に目を向ける。

 上空を横切った閃光が、衛星軌道から地表へ、雷のような速度で降下してきた。

 

「今度は……なんだ!?」

 

 落下してきたのは、小型のコンテナ。

 大気を裂き、LOADER4の頭上で瞬時に展開・解体される。

 

 内部から放出されたのは──

 脈動する光の塊。

 

 灰色の兵器に、空中で降り注ぐようにパーツが接続されていく。

 

 前腕部が変形し、パルス発振器が展開。

 刃が空気を震わせるほどの輝きを帯びて伸び切った。

 

 実体を持たない、純エネルギーの刃。

 

「ビームだ! ビームサーベルだ!」

 

「なにそれ……? 原理は全く分からないけれど、アレなら……」

 

 誠が息を呑む間もなく、灰色の兵器は地面を蹴った。

 

 爆発的な加速。

 視界から消える速度で、キャスターへ突っ込む。

 

 衝突──いや、斬撃。

 

 パルスブレードが、狂い火の装甲を“割った”。

 炎が裂け、キャスターの巨体がわずかに後ずさりする。

 

 誠は歓声を上げた。

 

「入った! いける、いけるぞ!」

 

 だが、理央の表情は変わらない。

 彼女は炎の裂け目が瞬時に閉じ、焼けた火の肉が再構築される様を見ていた。

 

「……ダメージは通ってる。でも、決定打になってない」

 

 灰色の兵器は、執拗に斬撃を重ねていた。

 スラスターを吹かし、巨体の周囲を縦横無尽に飛び回る。

 

 切るたびに火が飛び散り、焦げた熱風が周囲を薙ぐ。

 確かに有効打は入っている。

 だが、どれだけ斬っても──再生が追いつく。

 

 炎の巨人は、まるで痛みにも快楽にも似た振動で笑う。

 

 そして、その“再生の速度”こそが、決着の兆しだった。

 

 パルスの刃が火を裂くたび、キャスターは後退こそすれ、倒れない。

 巨体がわずかに揺さぶられ、狂い火の表面を火花が走る。

 

 その度に、誠は拳を握りしめた。

 

「いけ……いける……! あと一撃、いや、二撃……!」

 

 だが理央は違うものを見ていた。

 

 狂い火の反応。

 斬撃の軌道。

 火の奥、巨大な影の“体勢”。

 

「……不味いわ。キャスターが──」

 

 言いかけた瞬間、炎の巨人が沈み込んだ。

 

 次の瞬間には、LOADER4の左側へ“移動していた”。

 

「速っ……!?」

 

 誠が叫ぶ。

 だが巨体の接近は、その叫びより早い。

 

 キャスターは、今しがた斬撃を受けた左腕──

 パルスブレードを展開している腕へ、灼熱の手を伸ばした。

 

 LOADER4がスラスターを噴かす。

 だが遅い。

 炎の巨腕は、まるで熱そのものが意思を持ったかのように、腕ごと捕らえた。

 

 ギュウウウッ……! 

 溶けるような、金属が悲鳴を上げる音。

 

 理央が息を呑んだ。

 

「掴まれた……!」

 

「やめろ、離せよ!!」

 

 誠の叫びは届かない。

 

 炎が収束し、キャスターの掌に絡みつくように巻きつく。

 次の瞬間──

 

 パルスブレードが発振音を濁らせ、揺らぎ、

 そして光を失った。

 

 左腕部ユニットが、焼け落ちる。

 

 灰色の装甲が、炎の中に溶けていく。

 

 焼け落ちる左腕ユニットが、炎の中で赤く溶けて崩れた。

 まるで機体が痛みに叫んでいるような金属音が、遠く離れた誠と理央の位置にも伝わってくる。

 

 誠は息を呑み、膝をついたまま動けない。

 

「うそ……だろ……こんな……!」

 

 炎の中、片腕を焼き落とされたLOADER4は、それでも機体全体を震わせてキャスターの拘束から逃れようと足掻いている。

 だが左腕を失ったことで重心は崩れ、スラスターの噴射も不安定だ。

 

 キャスターの狂い火が、楽しむように揺れた。

 

 灼熱が収束し、再びLOADER4へと迫る。

 

 誠は叫んだ。

 

「まずいっ……このままじゃ、紫村が……」

 

 誠は息を詰め、ただ祈るように両手を握りしめるしかなかった。

 

「……頼む……頼むよ……!」

 

 その時だった。

 

 背後で、何かが瓦礫を踏みしめる乾いた音がした。

 

 誠は振り返る。

 

 熱で歪む景色の中から、ふらりと歩み出る影があった。

 

「……っ……はぁ……はぁ……」

 

 それは──バーサーカーだった。

 

 煤けた狩人服は裂け、袖や裾は焼け焦げ、布地の下に見える白い肌はところどころ赤黒く腫れ、火傷が斑のように広がっている。

 銀髪はところどころ焼け落ち、赤い目は焦点を失いながらも、確かに理性を保って揺れていた。

 

 誠は言葉を失った。

 

「バーサーカー! 良かった、生きてたんだな!」

 

 彼女は答えない。

 ただ、息を吸うたび、喉から苦しげな熱気が漏れた。

 

 一歩、また一歩。

 

 炎の海を進んできたその足取りは、もはや“歩いている”と言えるものではない。

 全身の神経を焼き切られ、それでも意志だけで引きずって来たような。

 

 誠は慌てて立ち上がり、支えようと手を伸ばした。

 

「あ、危ない! 無理するな、傷が……!」

 

 だがバーサーカーは首を横に振り、誠の手には触れなかった。

 その視線は──ただ一つ、炎の奥の戦場だけに向けられていた。

 

 狂い火の中、片腕を失ったLOADER4がまだ立ち続けている。

 彼女の赤い瞳は、その姿を見てかすかに揺れた。

 

 誠が思わず息を止めるほどの傷だらけの姿で──

 それでもバーサーカーは、かすかに目を細めた。

 

 そして、焦げた喉を震わせながら言葉を紡いだ。

 

「……マスター」

 

 声は掠れ、聞き取れないほど弱々しい。

 それでも、その眼差しはまっすぐだった。

 

「……黒野、理央と合流できて……何よりです……」

 

 その瞬間、誠の胸に何かが突き刺さった。

 

「バーサーカー……!」

 

 彼は反射的に駆け寄った。

 ほとんど倒れかけているバーサーカーの肩を慌てて支え込む。

 

 理央も駆け寄り、バーサーカーの反対側から支えた。

 

「……ここまで来てくれたのね……ありがとう。でも……もう戦えないでしょう……?」

 

 バーサーカーは答えない。

 ただ炎の奥、LOADER4とキャスターがぶつかり合う戦場へ、焦点が定まらない目を向けるだけだった。

 

 そして、焼けただれた喉から、かすれた声が落ちる。

 

「……マスター……」

 

「な、なんだよ……?」

 

 誠は必死に彼女の身体を支えながら、前の戦場と彼女の顔を見比べる。

 

 バーサーカーは、ひとつ咳をして、唇をかすかに濡らし──

 その表情に、痛みと同じくらい強い“決意”の色を宿した。

 

「……貴方の……消耗は……軽微ですね?」

 

「え?」

 

 誠は思わず聞き返す。

 だがバーサーカーの瞳は、それ以上に真剣だった。

 

「貴方にはまだ余力がある……そう……見受けられます」

 

 誠は困惑しながらも、正直に答える。

 

「な、ないとは言えないけど……俺なんか、どうしたって……」

 

 その瞬間。

 

 バーサーカーの火傷だらけの身体が──

 誠の腕の中でわずかに震えた。

 

「……マスター。宝具使用の……許可を……」

 

 誠は息を呑む。

 

「ば、馬鹿言え! 今のお前の状態じゃ──」

 

 だがバーサーカーは誠の言葉を遮った。

 その声は弱く、それでも明確だった。

 

「……先程とは……状況が……違います」

 

 誠が言葉を失う中、バーサーカーはかろうじて顔を上げ、炎の奥を見つめる。

 

 ──灰色の巨体 LOADER4。

 ──その上空、何処からか射抜くような視線のアサシン。

 

「……ライダーが前線を支え、アサシンも……健在」

 

 バーサーカーはひどく弱った声のまま、誠へと言葉を刺し込む。

 

「我が宝具……単独では……勝ち切れません……しかし……」

 

 赤い瞳が、誠だけを見つめて揺れた。

 

「今は……決め手が……十分に……揃っております」

 

 誠は息を呑む。

 バーサーカーが言っていることは理解できる。

 

 今、キャスターはライダーの宝具と直接ぶつかっている。

 アサシンも機を伺っている。

 もしバーサーカーの宝具がそこに重なれば──

 

 決定的な隙を生むかもしれない。

 

 だが。

 

「……でもお前……そんな身体で……」

 

 誠の声は震えていた。

 バーサーカーは静かに首を横に振った。

 

「……問題ありません」

 

 バーサーカーは、焦げ付く息を吐きながら──しかし、その声音だけは奇妙なほど冷たく澄んでいた。

 

「……それとも」

 

 誠の腕の中で、わずかに顎を上げる。

 焼け焦げた銀髪がぱらりと落ち、赤い瞳が誠を真っ直ぐに射抜いた。

 

「恐ろしいのですか?」

 

「……っ!」

 

 誠の喉が詰まる。

 だがバーサーカーは容赦しなかった。

 瀕死の身体で、なお獣のような気迫だけを宿して。

 

「学友が……死を覚悟して……戦っておられるのに」

 

 LOADER4の赤い単眼が炎に呑まれながら、それでもなおキャスターへ食らいつく姿。

 それを見て、バーサーカーの唇はわずかに歪んだ。

 

「ご自身は……我が身可愛さに……宝具を出し惜しみを……?」

 

「ち、違う! そんなつもりじゃ──!」

 

 誠が必死に否定したその瞬間だった。

 

 バーサーカーの赤い瞳が──

 ぞっとするほど深く、濁った光を宿した。

 

 理性の薄皮が焼け落ち、内側から“別の何か”がこちらを睨み返してくるような、危険な輝き。

 

 狩人の目だ。

 血と殺しの高揚に酔った、“バーサーカー”としての本性。

 

 そして──彼女は口元だけで、ゆっくり笑った。

 

「……ごちゃごちゃ……言わずに……」

 

 焼けただれた声でありながら、ひどく楽しげだった。

 

「さっさと……宝具を……使わせてくださいまし」

 

 誠は息を呑んだ。

 

 今のバーサーカーは、瀕死でありながら、獲物の血の匂いに酔った猛獣そのものだった。

 宝具を使うためではない。

 “殺し”に戻るために、許可を欲している。

 

 否──許可など、もはや建前にすぎない。

 

「ま、待てバーサーカー……落ち着けって……!」

 

 誠が慌てて言いかけた瞬間。

 

 バーサーカーの焦げた指が、誠の胸倉をさらに強く掴んだ。

 皮膚が裂けるほどの力で。

 焼けた爪が布越しに喉元へ滑る。

 

「……早く……しませんと……」

 

 赤い瞳が、狂気と焦燥でせり上がる。

 

「“好き勝手に”……暴れますよ?」

 

「……ッ!」

 

 それは脅しではなく、本能の告白だった。

 

 マスターの命令も、仲間の状況も、

 “狩りに戻りたい”衝動の前では、もはや鎖の役を成していない。

 

 理央が息を飲む。

 

「バーサーカー! 口を慎みなさい! サーヴァントがマスターを脅迫するつもり!?」

 

 だがバーサーカーは聞いていない。

 焼けた喉を震わせて言い放つ。

 

「許可を……出しなさい……マスター。クソガキめ」

 

 赤い瞳が爛々と輝く。

 

 理央が思わず誠を庇うように一歩踏み出した。

 その表情には怒りと焦り──そして誠が“屈した”と誤解した歯痒さが滲んでいた。

 

「……聞いちゃダメ! そんな言葉に押されて──」

 

「いや」

 

 誠は遮った。

 驚くほど静かで、ぶれない声だった。

 

 ゆっくりと、バーサーカーの赤い瞳を正面から見据える。

 

「違う、黒野」

 

 炎の反射が、誠の瞳に揺れる。

 しかし、その声は揺れていなかった。

 

「俺は……脅されたからじゃない。怖いからでもない」

 

 バーサーカーの赤い瞳が、ほんの一瞬だけ瞬いた。

 狂気の奥に、獣が“何か”を理解しようとするような揺らぎが走る。

 

 誠は言葉を続けた。

 

「勝ちたいんだよ」

 

 その言葉は、焼ける空気の中でひどく純粋に響いた。

 

「紫村を……助けたい。あいつを……死なせたくない。それだけだ」

 

「……灰原君……」

 

 理央の声が、震える。

 

 誠はバーサーカーの胸倉を掴む手を、逆にそっと押し返した。

 その指は震えていたが──逃げようとはしていない。

 

「バーサーカー。宝具を使え」

 

 赤い瞳が、獣のように細められた。

 

「……許可、ですか?」

 

「ああ。マスターとして命じる」

 

 誠の声は揺れていなかった。

 恐怖も、脅迫に屈する弱さもない。

 

「暴れたいんだろ? だったら──暴れさせてやる。勝つために。仲間を助けるために。今その力が必要なんだ」

 

 バーサーカーの指が誠の喉から離れた。

 

 その瞬間、彼女の赤い瞳の狂気が、歓喜の色にきらめいた。

 

「……っく……ふ、ふふ……ッ」

 

 焼けただれた喉で笑う。

 血の味を噛みしめるような、ひどく獰猛な笑みだった。

 

「──仰せのままに」

 

 バーサーカーは、支えもなく立っているのが不思議なほど崩れた身体を震わせ──しかし、その姿勢には“誇り”と“歓喜”が宿っていた。

 

 誠が命じた瞬間から、彼女の中で何かが変わっている。

 

 赤い瞳が爛々と輝き、獣の牙のような笑みが浮かぶ。

 

 そして──

 

 焼けただれた喉が静かに震えた。

 

 詠唱が始まった。

 

「【我が身は血に穢れ】」

 

 空気が一瞬、凍りつく。

 

 いや──沈む。

 

 周囲の熱気すら押し潰されるような圧が、バーサーカーの周囲へと収縮した。

 

 キャスターの狂い火すら、その圧にわずかに揺らぎ、 LOADER4の単眼が一瞬バーサーカーの方向へ向く。

 

「【幾千幾万の獣を狩り】」

 

 瓦礫の影が伸びる。

 

 燃え盛る炎の色が褪せ、赤黒い“夜”の色が滲み始める。

 

 理央が息を呑む。

 

 誠ですら、背筋に氷を押し当てられたような錯覚を覚えた。

 

 バーサーカーの詠唱は淡々と、しかし儀式の中心に立つ巫女のように強靭だった。

 

「【終わらぬ夜を彷徨い歩く】」

 

 耳鳴りが起きた。

 

 遠くのどこかで、何か巨大な獣が咆哮しているような、底の深い唸りが響く。

 

 LOADER4の単眼が赤く揺れ、キャスターの狂い火が“本能的な警戒”を宿す。

 

 詠唱は加速した。

 

「【──獣、狩るべし。我が祈りは狩りの継続】」

 

 空が裂けた。

 

 赤黒い世界が完全に染まりきる。

 

 炎の色は血の気配に侵食され、風がざわつくたび、どこかで金属と肉が断たれる幻聴が響いた。

 

 バーサーカーの身体がゆっくりと浮遊するように持ち上がり、影が長く、長く伸びていく。

 

 バーサーカーは最終節を告げた。

 

【獣狩りの夜】(ナイト・オブ・ビーストハント)

 

 瞬間──世界が反転した。

 

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