Fate/You Died.   作:助兵衛

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第47話 ルビコプター

 窓の向こうで、鈍い音がした。

 

 土と砂利が叩きつけられる、生々しい衝突音。

 植え込みが押し潰され、庭の一角が歪む。

 

 理央は、割れなかった窓ガラス越しに、その地点を見下ろした。

 

 夕方の光が、庭を平たく照らしている。

 陰影は浅く、隠れる場所はない。

 

 そこに──アサシンは、倒れていた。

 

 伏せたまま。

 肘もつかず、膝も立てず。

 受け身を取った形跡が、どこにもない。

 

 理央の視線が、わずかに細くなる。

 

 おかしい。

 

 防衛第二層の圧は、外へ“弾き出す”だけではない。

 空気の流れと衝撃を読める者であれば、必ず着地動作に移る。

 最低でも、転がる。

 あるいは、衝撃を逃がすために体勢を変える。

 

 だが。

 

 庭のアサシンは、倒れたままだった。

 

 ピクリとも動かない。

 呼吸の上下すら、はっきりとは見えない。

 

 理央は、応接室の淵に静かに立った。

 

 踏み出す足音すら抑え、体重を均等に預ける。

 姿勢は無防備に見えて、いつでも追撃に移れる位置だった。

 

 視線は、ただ一つ。

 

 庭に倒れる、影。

 

 距離。

 角度。

 地面に沈んだ肩のライン。

 風に揺れる装束の端。

 

 理央は、情報を拾うように、細部を追った。

 

 血は見えない。

 土の跳ね方も、衝突の勢いに比して浅い。

 骨が砕けた形跡も、地面に伝わる衝撃の割れ方もない。

 

 ──やはり、致命ではない。

 

 だが、それ以上に。

 

 “抵抗しなかった”痕跡が、あまりに明確だった。

 

 受け身を取らない。

 衝撃を逃がさない。

 起き上がらない。

 

 理央は、ほんのわずかに顎を引く。

 

 侵入しておきながら、名乗りを上げた。

 殺意を隠さず、しかし即座に動かない。

 そして今──倒れたまま、沈黙を選んでいる。

 

 矛盾している。

 

 暗殺者は、見られることを嫌う。

 名を出すのは、勝利が確定した後か、あるいは相手を完全に掌中に収めた時だけだ。

 

 にもかかわらず、あのアサシンは最初から姿を晒し、礼を尽くし、宣言した。

 

 ──“お命を頂戴いたす”。

 

 理央の脳裏に、その声がもう一度よぎる。

 丁寧すぎる発音。

 間を置いた呼吸。

 儀式のような言い回し。

 

 それは、殺しの宣告というより。

 

 まるで何かの合図のようだった。

 

 理央は、背後を振り返らずに言う。

 

「……灰原君、紫村君」

 

 声は低く、抑えられている。

 しかし、曖昧さはなかった。

 

「警戒を。なにかおかしいわ」

 

 誠と秀則の緊張気味な声が返ってくる。

 ──はずだった。

 

 

 だが。

 

「おっと、思ったより早く気付かれてしまったな」

 

 その声は──違った。

 

 低く、太く、よく響く声。

 日本語ではあるが、母音の伸ばし方も、子音の切れ方も、決定的に異質。

 

 理央の思考が、一瞬、白く弾けた。

 

 背後。

 

 “二人がいるはずの位置”から聞こえた声。

 

 理央は反射的に振り返った。

 

 ──そこに、誠はいなかった。

 

 代わりに立っていたのは、見上げるほどの大柄な男だった。

 

 広い肩幅。

 厚い胸板。

 鍛えられた四肢が、服の上からでもはっきり分かる。

 西洋人特有の骨格に、艶やかな金髪。

 

 爽やかな笑みを浮かべ、視線だけが、こちらを正確に捉えていた。

 

「……っ!」

 

 理央の喉が、短く鳴る。

 

 距離は、近すぎた。

 

 結界の内側。

 応接室の中央。

 誠が立っていた“その場所”に、いつの間にか、別人がいる。

 

 秀則が、事態を理解するより先に身体を動かした。

 

「な、──!」

 

 叫びになりきらない声と同時に、横へ跳ぶ。

 ソファの背を蹴り、距離を取る。

 一瞬遅れて、理央の視界の端で、彼が呼吸を荒く整えるのが見えた。

 

 男は、その動きにも反応しない。

 

 ただ、理央を見る。

 

 興味深そうに。

 値踏みするように。

 

「良い反応だ。撫子ガール……ミス黒野」

 

 男は両手を軽く上げた。

 敵意を示す動きではない。

 むしろ、場を和ませるような仕草。

 

 それが、なおさら不気味だった。

 

 男は肩をすくめ、あくまで穏やかな調子で続けた。

 

「名乗ろう。私はサーヴァント、アーチャー。第47代大統──」

 

 その言葉が終わる前だった。

 

「……そんなもの、興味ない!」

 

 理央の声が、鋭く室内を裂いた。

 

 感情が露わになるのは、彼女には珍しい。

 それだけ、この瞬間が許容を超えていた。

 

 背後を取られた事実。

 名乗りという“余裕”。

 そして、何処かへと消えた誠。

 

 理央の指が、袖口の内側へ滑る。

 

 防衛装置。

 第三層の起動符。

 この距離なら、室内ごと制圧できる。

 

「舐めないで……!」

 

 魔力が、立ち上がる。

 空気が張り詰め、床下の術式が応えようとした──

 

 だが。

 

 次の瞬間、理央の視界が揺れた。

 

 距離が、消えた。

 

 アーチャーの姿が、視界の端から中心へ“跳んだ”のではない。

 気付いた時には、すでにそこにいた。

 

「フリーズ、やめたまえ」

 

 軽い声。

 

 理央の手首が掴まれる。

 指先が、鍵に触れる寸前で止められた。

 

 もう一方の腕が背中に回され、体勢を崩される。

 関節の角度を、正確に殺す拘束。

 

 痛みはない。

 だが、逃げ場もない。

 

「この……黒野女史!」

 

 秀則が叫ぶが、踏み出せない。

 距離と角度が悪すぎる。

 一歩動けば、理央に被害が出る。

 

 アーチャーは、理央を盾にするでもなく、

 しかし完全に制圧したまま、静かに息を吐いた。

 

「この街はお転婆ガールが多いようだね」

 

 理央の耳元で、低い声が続く。

 

 理央は、歯を食いしばったまま身を捩った。

 

 肩を落とし、肘を引き、拘束された関節の“遊び”を探る。

 だが、アーチャーの腕は微塵も緩まない。

 力ではない。位置と角度だけで、完全に封じられている。

 

「……ふざけないで」

 

 低く、噛み殺した声。

 

 理央は振り返ろうともしない。

 それでも、視線だけで背後の男を睨みつける。

 

「灰原君を、どこへやった」

 

 一語一語を、刃のように叩きつける。

 

「答えなさい。今すぐ」

 

 空気が、張り詰める。

 秀則は息を呑み、距離を保ったまま身構えた。

 

 アーチャーは、わずかに目を細めた。

 

 叱責された子供のように肩をすくめ、

 だがその表情には、焦りも緊張もない。

 

「おお、怖い怖い」

 

 冗談めかした調子で言い、軽く笑う。

 

「安心したまえ。殺してはいないよ」

 

 その一言で、理央の心臓が強く脈打った。

 

「……なら、どこにいる」

 

「今頃?」

 

 アーチャーは、天井を見上げるように視線を泳がせる。

 

「ニンジャガイ……アサシンが、レディのお待ちするパーティー会場へご案内しているところだ」

 

 まるで、舞踏会のエスコートを語るような口調。

 

「夜会用の招待状は無かったがね。少々強引な送迎になったのは、謝っておこう」

 

 庭に視線を送ると、倒れていたアサシンが跡形もなく消えている。

 入れ替わったのか、最初から夢幻のように存在すらしていなかったのか、考えても答えは出ない。

 

「ミガワリ・ジツだ」

 

 理央の喉が、短く鳴った。

 

「……パーティー、ですって?」

 

「そうとも」

 

 アーチャーは楽しげに続ける。

 

「主催者は君もよく知っている人物だ。気位の高いレディでね。どうしても“彼”に直接会いたかったらしい」

 

 理央の脳裏に、ひとつの顔が浮かぶ。

 そして同時に、背筋を冷たいものが走った。

 

「……藍沢、紗月」

 

「ビンゴ」

 

 アーチャーは、軽快に指を鳴らす。

 

「察しが良くて助かる。話が早い」

 

「……藍沢先輩も節操がないわね。私達と決別したと思ったら、すぐに新しい同盟を組んでたなんて」

 

 理央の拘束を解く気配はない。

 むしろ、わずかに力を加え、逃走の可能性を完全に潰す。

 

「私の役目はね」

 

 耳元で、囁くように告げる。

 

「時間稼ぎさ。ミス藍沢が本懐を遂げる為の」

 

 アーチャーは、拘束したまま肩をすくめた。

 

「しかし──」

 

 どこか感心したように、軽い調子で続ける。

 

「この短時間でここまで状況を把握するとはね。大した胆力だ、ミス黒野」

 

 理央の反応を楽しむように、言葉を重ねる。

 

「工房の防衛構造、起動の判断、そして今の観察眼。正直に言おう。君は優秀な人材だ。専門外だが、魔術師としての地力も申し分ない」

 

 冗談めかした笑み。

 

「もう少し穏やかな出会い方なら、紅茶でも飲みながらスカウトしたいところだった」

 

 秀則が歯噛みする。

 

「……ふざけるな」

 

「いやいや、本心さ。私は優秀な人材には敬意を払う主義でね」

 

 アーチャーは、なおも喋り続けようとした。

 

「それに、君のサーヴァントも──」

 

 その瞬間だった。

 

 理央の身体が、拘束されたまま、ほんの僅かに沈んだ。

 

 膝を緩め、重心を落とす。

 逃れようとする動きではない。

 防衛装置を起動する素振りでもない。

 

 ──祈る姿勢。

 

 アーチャーの眉が、わずかに動いた。

 

「……?」

 

 違和感。

 今の動きは、戦術的合理性がない。

 

 次の瞬間。

 

 空気が、裂けた。

 

 霊子の圧が一点に収束し、応接室の床に“影”が落ちる。

 

 火の気配。

 

 霊体化が解除される音もなく、

 完全武装のセイバーが、そこに“立っていた”。

 

 銀の全身鎧。

 夕光を弾く刃文。

 握られた剣は、すでに振り下ろしの軌道にある。

 

「我が主に、軽々しく触れないでもらおう」

 

 低く、冷たい声。

 

 次の瞬間、剣閃が走った。

 

 音が遅れるほどの速さ。

 空気が悲鳴を上げ、床が割れる。

 

「Oops!」

 

 アーチャーは咄嗟に理央を離し、後方へ跳ねた。

 拘束が解ける。

 

 剣は、アーチャーのいた“その位置”を正確に断ち裂き、

 床に深々と亀裂を刻んだ。

 

 理央は、その場に片膝をつきながら顔を上げる。

 

「ごめんなさい、セイバー。もう少し引き付けるべきだったわね、反応が予想より早い」

 

「問題ありません。戦力評価を修正します」

 

 セイバーは一歩前へ。

 剣先を下げず、アーチャーを真っ直ぐに見据える。

 

 アーチャーは、数歩離れた位置で立ち直り、肩を回しながら苦笑した。

 

「なるほど……」

 

 愉快そうに、しかし今度は油断なく。

 

「それが“合図”か。いやはや──」

 

 視線を、セイバーへ向ける。

 

「セイバー、最優の名に偽りなしのようだ」

 

 セイバーは理央の前へ半歩出た。

 

 鎧が軋む音すら抑え、剣先だけを僅かに落とす。

 攻めないのではない。

 いつでも踏み込める、最短の姿勢を取っている。

 

 理央は片膝をついたまま息を整え、視線を上げた。

 自分の背に、剣と鎧の“壁”があることを確認する。

 

 アーチャーは、数歩離れた位置で立ち止まった。

 

 両手は空。

 だが、空手のままでも脅威だと分かる距離感。

 彼は軽く笑ってみせるが、瞳だけは笑っていない。

 

「君は幾つもの剣を操り、使い分けると書いている。その直剣にはどのような特殊な力があるのかな?」

 

 セイバーが答えない。

 代わりに、剣先が微かに鳴る。

 

 室内に、張り詰めた沈黙が落ちた。

 

 停電した屋敷の中。

 西日の薄い光が、床の亀裂と舞った埃を白く浮かび上がらせる。

 

 理央は立ち上がりながら、低く言う。

 

「灰原君が攫われた。背後から追わせるには危険な相手よ、殺しなさい」

 

「了解」

 

 アーチャーは、肩を回しながら距離を測る。

 

 セイバーの足運び。

 剣筋。

 そして理央の位置。

 

 ──間合い。

 

 踏み込めば斬られる。

 下がれば追われる。

 その均衡の中で、彼は敢えて一歩も詰めない。

 

「時間稼ぎの役は、思ったより面倒だな」

 

 冗談めかした口調。

 

 しかし、次の瞬間。

 

 アーチャーの表情が、ほんの僅かに変わった。

 

 耳が、風に混じる微細な振動を拾ったのだ。

 

 ──ゥゥゥゥ……。

 

 遠い。

 だが、確実に近づいてくる低周波。

 

 建物の外側。

 庭木の上。

 屋敷を囲う森の向こう。

 

 ローターの回転音。

 

 アーチャーは視線を上げず、しかし確信を持って小さく息を吐く。

 

「……ヘリか」

 

 ——ゥゥゥゥゥ……。

 

 低周波が、屋敷の空気そのものを震わせ始めた。

 

 最初は、遠雷に似た響きだった。

 風に紛れ、建物の軋みと区別がつかない程度の振動。

 

 アーチャーは、軽く首を傾げる。

 

「ふむ……」

 

 視線を外に向けぬまま、音だけを測る。

 回転数。周期。接近速度。

 

「移動用か、それとも迎撃用か……」

 

 彼の口調は、まだ余裕を保っていた。

 

 ——問題は、音が止まらないことだった。

 

 近づいてくる。

 明確に、こちらへ。

 

 ——ゥゥゥゥゥゥゥゥ……! 

 

 音圧が増す。

 窓ガラスが、割れずに微細な共鳴音を立て始めた。

 カーテンが、風もないのに揺れる。

 

 アーチャーの眉が、初めて大きく動いた。

 

「……いや、待て」

 

 重すぎる。

 

 回転翼の数が、音から合わない。

 一枚や二枚ではない。

 重なり合い、干渉し、位相がずれている。

 

 ——二軸。

 

 交差反転。

 

「は……?」

 

 アーチャーは、反射的に窓へ視線を走らせた。

 

 次の瞬間。

 

 夕暮れの空が、影に覆われた。

 

 ——巨大。

 

 それは“飛来”というより、“出現”だった。

 

 窓の外、庭の上空に滞空するそれは、常識的なヘリコプターのスケールを遥かに逸脱していた。

 

 胴体上部には、交差反転式の二基の巨大ローター。

 互いに逆回転しながら、膨大な揚力を生み出している。

 

 さらに。

 

 胴体下部。

 機首下。

 腹部全体に渡って配置された、異様なまでの火器群。

 

 ——“搭載できる限り、全部載せた”と言わんばかりの武装量。

 

 屋敷の庭が、真昼のように照らされる。

 機体下面のセンサーと照準灯が、赤と白の光で地上を舐める。

 

 ローターの風圧が、庭木を押し伏せ、砂利を舞い上げる。

 

 アーチャーは、完全に言葉を失った。

 

 ——カチリ。

 

 機体下面のセンサーが、応接室を正確に捉えた。

 

 アーチャーの視線が、ゆっくりと上へ向く。

 

 装甲ガラス越し。

 コックピット。

 

 そこに──少女がいた。

 

 ヘルメットのバイザーを上げ、前傾姿勢で操縦桿を握っている。

 小柄な体躯、白髪、真紅の瞳。

 だが、背筋は伸び、視線は一点に固定されている。

 

 迷いのない目。

 

 その瞳が、アーチャーを捉えた。

 

 ほんの一瞬。

 距離も、言語も、立場も越えて。

 

 視線が、噛み合った。

 

 アーチャーの口元が、わずかに歪む。

 

「……これは聞いていないな」

 

 呟きは、感心に近かった。

 

 秀則のサーヴァント。

 ライダー。

 

 この無茶な兵装。

 この即断即決の戦場展開。

 そして、躊躇なく照準を合わせる胆力。

 

 その瞬間。

 

「掴まれ」

 

 セイバーの声が、鋼のように短く落ちた。

 

 理央が反応するより早く、

 秀則が何かを言うより早く。

 

 セイバーの腕が、二人を同時に抱え上げる。

 

 鎧越しでも分かる、圧倒的な筋力。

 理央の体が、宙に浮いた。

 

「——っ!?」

 

 次の瞬間。

 

 ——轟音。

 

 セイバーは、壁へ踏み込んだ。

 

 剣ではない。

 肩でもない。

 

 全身で叩き割る。

 

 石と木と補強材が、内側から弾け飛ぶ。

 応接室の隣室へと続く壁が、爆ぜるように崩壊した。

 

 粉塵。

 破片。

 視界が白くなる。

 

 秀則が、運ばれながら声を張り上げた。

 

「ライダーちゃん! ファイアー!」

 

 その“瞬間”を、待っていたかのように。

 

「了解、ハンドラー」

 

 ——ギュィィィィィィィィン!! 

 

 空が、唸った。

 

 回転音とは別の、甲高い金属音。

 加速する回転体の咆哮。

 

 ガトリングガン。

 

 発射。

 

 ——ドドドドドドドドドドッ!! 

 

 応接室の外壁が、消し飛んだ。

 

 木材が、石材が、装飾が、同時に砕け散る。

 銃弾が、雨ではなく“壁”のように叩きつけられる。

 

 床が抉れ、

 天井が裂け、

 家具が粉砕される。

 

 応接室という空間そのものが、

 数秒で“存在を否定”されていく。

 

 アーチャーのいた位置。

 その周囲一帯が、完全に制圧火力に飲み込まれた。

 

 ——逃げ場は、ない。

 

 隣室に転がり込んだ理央は、耳鳴りの中で耳を抑えて歯を噛みしめた。

 

「耳が、馬鹿になりそう……!」

 

 セイバーは即座に理央と秀則を下ろし、前に立つ。

 崩れた壁の向こう。

 銃弾が貫通してくる角度を、身体で塞ぐ位置取り。

 

 秀則は、呆然としながらも、自らのサーヴァントの破壊力に戦慄する。

 ガリガリと削れていく魔力に気を配りつつ、秀則も耳を抑えた。

 

 応接室の向こうでは、なおも銃撃が続いている。

 破壊音が、断続的に響く。

 

 だが。

 

 理央は、息を詰めた。

 

「……まだ、終わってない」

 

 あの男が。

 あのアーチャーが。

 

 ——これで、終わるはずがない。

 

 

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