東方雷狼竜   作:NO!

11 / 20
雷狼竜の孤独

「ジンオウガ」

 

 沈黙に耐えられないのか、或いは重苦しい空気を和ませるつもりなのか、椛は心配そうな表情をしながら、ジンオウガに問う。

 ジンオウガは無言で椛、早苗、神奈子、諏訪子から顔を背ける。後ろめたい気持ちがある訳ではない。ジンオウガの誰も見たくないと言う我が儘であるのと同時に、自分の心にある人間の憎悪の炎を抑えていた。それ故、人里にいる事自体、ジンオウガを追い詰めている事を、椛は知らない。

 

「ジンオウガ?」

 

 椛は再びジンオウガに問う。しかし、ジンオウガは顔を背けたまま何も言わなかった。

 

「……すまない」

 

 ジンオウガは顔を背けたまま微かに呟く。それを聞いた椛は「えっ?」と驚くも、ジンオウガは下唇を噛みながら小刻みに体を震わせていた。

 

「椛?」

 

 すると、そんなジンオウガの様子に気遣い、場を和ませようと神奈子が椛に訪ねる。

 

「何でしょうか?」

「お主は何故人里(ここ)に? それにお主の持ってる袋は何だい?」

 

 神奈子は椛が持っている袋を指差す。椛は袋を見た後、神奈子を見た。

 

「ああこれは、食料が底を尽きそうになってしまって……」

 

 椛は本当の事を言うと、神奈子に対して言葉を続ける。

 

「そ、それよりも神奈子様、諏訪子様、早苗さんは何故人里(ここ)に?」

 

 一方、椛もジンオウガを気遣い、ジンオウガの助け舟を名乗り出るように、神奈子に訪ねる。神奈子は慌てて。

 

「ああ、信仰を集める為だよ」

「信仰?」

 

 椛が訊くと、神奈子は苦笑いしながら頷く。

 

「そうだ。私達は人里(ここ)にいる人達に守矢神社の素晴らしさを広めようと思ってな」

「そうですかーーでも、貴女方は充分信仰を集めているじゃないですか?」

 

 椛は指摘する。そうだろう。守矢は、元々守矢とは別にある、もう一つの神社とは違い、人気がある。大抵の理由は、早苗目当てで訪れる人達が大半。それ故に、信仰は充分と言いたい程ある。

 しかし、神奈子は首を左右に振る。

 

「違うんだよ」

「はい?」

 

 椛は惚ける。それでも神奈子は言葉を続ける。

 

「実は信仰を集めに来たのとは違い、別の理由があるんだ」

「別の理由?」

「そう。私達は久しぶりに人里へ来たかったし、それに何より、三人で出掛けるのも悪くないと思ってな」

 

 神奈子は途中腕を組むも言葉を続けていた。そして、近くにいた諏訪子は。

 

「丁度、私達は人里に来たばかりだし、私達は何をすれば良いかが判らなかったからね?」

 

 諏訪子は両手を頭の後ろに当てながら苦笑いする。

 

 

「なあ、神奈子?」

 

 諏訪子は神奈子に訊く。神奈子は慌てて、諏訪子を見ながら。

 

「そうだ、な?」

 

 神奈子と諏訪子は苦笑いしながら互いを見る。疚しい事がある訳ではない。二人はジンオウガを気遣っている為、どうすれば良いのかが判らないからだった。

 そして、その証拠に、神奈子と諏訪子は視線をジンオウガの方へと移す。

 

「…………」

 

 四人からは見えないが、ジンオウガの顔色は良くなかった。恐らく、早苗の事だろう。

 

「ジンオウガさん、どうしましたか?」

 

 一方、早苗は困惑しながら、ジンオウガを気遣っている。早苗から見れば何故かは判らないが、早苗はジンオウガの肩に手を置く。

「っ!?」

 

 ジンオウガは驚く。

 

「触るな!」

 

 だが、ジンオウガは驚きながら、早苗に怒りを覚え体を動かして、早苗の手を振り払う。

 

「!?」

 

 早苗は驚くも、ジンオウガは不意に顔を四人の方へと向けてしまった。

 

「ジンオウガ!?」

 

 椛はジンオウガを見て驚く。そして、神奈子、諏訪子も驚く。

 

「あっ……」

 

 ジンオウガも眼を見開く。が、ジンオウガは声を上げてしまった事、人間への拒絶を口にしてしまった事に驚きを隠せなかった。

 

「う……あぁっ」

 

 ジンオウガは身体を震わせる。が、ジンオウガは椛、神奈子、諏訪子、早苗の四人に背を向けると、両手に持ってる布袋を地面の上に置くと。

 

 

「犬走、悪いけど、ちょっと一人で人里の中を歩きてぇんだ……」

 

 ジンオウガは歩き始める。

 

「ジンオウガ!?」

 

 椛はジンオウガを呼び止めるも、ジンオウガは立ち止まると、椛を見る。しかし、ジンオウガは冷や汗を流していた。

 

(わり)い……一人にさせてくれ」

 

 ジンオウガは寂しそうに呟くと、椛、神奈子、諏訪子、早苗に背を向けたままゆっくりと走り出す。

 

「ジン!?」

 

 椛はジンオウガを呼び止めようとするが、ジンオウガは聞く耳を持たず、椛の言葉を背中で受け止めながら足を止めなかった。

 そして、ジンオウガは人里の中を走り去っていった。

 

「ここが人里か……」

 

 一方、その頃。人里の入り口。そこは門扉があるが扉がない、おまけに左右には壁がなく何処からでも入れる場所だった。

 人里の入り口前には、人里を見据えながら腕を組んでいる刃と、刃の隣には妖夢がいた。

 

「はぁ~っ。結局来てしまいましたか……」

 

 妖夢は溜め息を吐く。そうだろう。妖夢は人里に来たくはなかった。何故なら、幽々子が妖夢(自分)と刃に御手洗団子を買って欲しいと御使いを頼んだのだ。

 しかし、それは幽々子が御手洗団子を食べたいが為の策略だったが、妖夢は拒んだ。

 だが、妖夢は幽々子の我が儘に困り、刃を案内させる役目もある為、妖夢は仕方なく幽々子の我が儘を聞き入れ、刃を連れて人里へと向かい、人里にたどり着いた。

 因に刃は空を飛べる為、妖夢には負担がなかったが、刃は妖夢が追いつけない程の速さで飛んでいた為、妖夢は困ったのは言う間でもない。

 妖夢は困りながらも、刃を見る。刃は人里を見据え続けている。

 

「ですが、貴方は初めてではないのですか?」

 

 妖夢は刃に訊く。が、確かにそうかもしれない。刃は初めて人里に来た。それは妖夢の仕事である故に。

 

「ああ、確かにそうだが……」

 

 刃は人里の中を歩いている人々を見据えると、刃は表情を険しくしながら唇を噛みながら拳を握り締める。

 そしてそれは、刃がジンオウガ同様、人間に怨みを抱いている者でもあった。刃にとって、人間は弱く邪魔な存在だとも思っていた。

 そして、刃は腰に携えている双剣を使って、人里の中で暴れようとも考えていた。

 

「刃?」

 

 そんな刃に妖夢は疑問を抱く。そうだろう。妖夢は刃の人間の憎む気持ちや目的は解らない。

 そして、刃は何処から来て、どのような経路で幽々子と紫が連れて来たのかも判らない。

 それを知っているのは幽々子と紫だけであり、あの二方が何を考えているのかも判らない。

 妖夢は刃を見据え続ける。しかし、刃は妖夢の視線に気付き、妖夢を見る。

 

「どうした?」

 

 刃は妖夢に問う。妖夢は慌てて視線を逸らす。

 

「な、何でもありません!」

 

 妖夢は人里の方を見るが、言葉を続ける。

 

「それよりも、早く御手洗団子を買いに……」

 

 妖夢は言葉を続けながら、刃を見る。が、刃がいなかった。

 

「あれっ!?」

 

 妖夢は眼を見開きながら辺りを見渡す。

 

「刃!?」

 

 妖夢は辺りを見渡す。が、刃は何処にもいない。

 

「何処へ行ったのかしら?」

 

  妖夢は刃に怒りを覚えながら心配する。無理もない。刃は幻想郷に来たばかりであり、まだ知らない事や知らない場所がある。その為、妖夢は刃が勝手に行動するのを許す筈もない。そして、幻想郷には沢山の危険がある事も教えなければいけない為。

 妖夢は辺りを捜し続けるも。

 

『彼は『敵に自分の動きを悟られない程度』の能力を持つ者』

 

「っ!?」

 

 妖夢は、ある事を思い出す。それは先日、幽々子が刃を紹介した時、幽々子は刃を紹介しただけではなく、刃の『程度の能力』も教えてくれた。

 その能力は刃の特有の能力であり、その能力は刃がいなくなる事を意味していた。それは刃の強さ、そして周りに迷惑をかけている事を意味していた。

 

「刃、刃!?」

 

 妖夢は叫びながら辺りを見渡し、刃の名を呼ぶ。しかし、それは刃の能力であり、周りに迷惑をかける事は、この事だった。

 

「ああ、もう!」

 

 妖夢は微かに怒りながら人里の方へと向かう。早く刃を見つけ、幽々子の為に御手洗団子を買わなければ、と。そして、妖夢は愚かさと油断している自分自身を怨みながら人里の中を走った。

 

 

 

「はっ……はぁっ」

 

 一方、ジンオウガは息切れしながら、とある家と家の間にある路地裏にいた。しかし、何故ジンオウガはそんな場所にいるかと。

 ジンオウガは人里の中を走り続けていたが、人々の視線に怯えていた。その為、ジンオウガは人々の視線から逃げる為、近くに隠れる場所を捜して今に至るのだ。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 ジンオウガは息切れしながら顔を附せながら家の壁の前に凭れ掛かる。。

 

「俺は……くそっ!」

 

 ジンオウガは怒りを覚え、八つ当たりと云う意味で壁を殴ると、静かに顔を上げる。が、ジンオウガは眼に涙を浮かべていた。

 

「俺は……何で人間に、何の為に人間になってしまったんだよ?」

 

 ジンオウガは眼に涙を溜めながら歯軋りする。自分は人間。ジンオウガはそれを聞くだけでも、自分は人間である事にも憎悪を感じていた。

 愚かにも、それはジンオウガを苦しめ、雷狼竜を捨てた事も意味し、雷狼竜の名を汚し捨てた者の刻印(レッテル)を貼ってる事も意味していた。

 

「何で、俺だけが?」

 

 そして、ジンオウガは自分よりも先に殺された仲間を思い出す。自分は憎き人間で生きているのに、仲間は殺されたまま。仲間は生きてるか判らないが生きて欲しいーーいや、絶対に生きてて欲しい。ジンオウガはそう願っていた。

  孤独(一人ぼっち)は嫌だ。それはジンオウガの我が儘であり、仲間のいる大切さを有り難くさせていた。

 

「っ……っぐ!」

 

 ジンオウガは嗚咽を上げながら崩れ落ちるように座る。人間になっている自分への憎悪。自分の心を完全に支配する絶望。一生足掻いても、周りには仲間(同族)がいない中で永遠に消えぬ孤独。

 その三つがジンオウガを精神的に追い詰め、心に大きな傷を作り始めていた。そして、ジンオウガ自身が人間に憎しみを増す切っ掛けにもなっていた。

 

「うぐっ……えぐっ」

 

 ジンオウガは顔を附せながら嗚咽を上げる。人間を憎む気持ちが強過ぎる反面、心の中に何かが居て、それがジンオウガ(自分)に迷いを作っている。それは何かが判らない。が、それはジンオウガにとって、まだ解らない事……。

 

「ふっ……『無双の狩人』とも呼ばれる者が、この様とはな」

「っ!?」

 

 すると、近くから声が聞こえた。それは氷のように冷たく、心臓に棘が突き刺さるようにも感じる。ジンオウガは眼を見開きながら声がした方を見た。

 そして後ろには、腕を組んでいる刃がいた。

 

「てめえは!?」

 

 ジンオウガは眼を見開きながら、刃に問う。

 

「…………」

 

 しかし、刃は眼を細めながら、ジンオウガを見下ろしている。

 そして、ジンオウガは刃がナルガクルガと言う事は知らず。刃はジンオウガがジンオウガと言う事は知りながらも何も言わない。

 そして、二人は互いの相手を警戒していた。

 




 皆さん、こんにちは、NOです。皆さんにお知らせがあります。実は擬人化の件で女性が良いと言う意見もありました。そこで皆さんに自分が決めた三人の他に女性を出す事に決めました。それは,リオレイアに決めました(他の三人とは関係ありませんので)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。