東方雷狼竜   作:NO!

13 / 20
雷狼竜の決意、白狼天狗の心配

 霊夢が少女を介抱している間。人里の路地裏にいるジンオウガと刃の二人。その二人の間には重苦しい空気が流れていた。

 

「ジンオウガ」

 

 そんな中、刃はジンオウガに問う。ジンオウガは刃を見る。

 

「何だ?」

 

 ジンオウガは悲しい表情をしながら、刃に言い返す。しかし、ジンオウガの言葉には元気がない。恐らく、今にジンオウガの心の弱さを表しているのだろう。そんなジンオウガに、刃は両手を腰に当てながら。

 

「俺はこれから用事がある」

「えっ?」

 

 ジンオウガは驚くも、刃はジンオウガに背を向けると顔を横に向けながら、ジンオウガを見た。

 

「今はお前と話をしている場合ではない。俺は幽々子様の命で御手洗団子を買わなきゃいけないからな」

 

 刃はジンオウガにそう述べると、身体をジンオウガの方へと向けながら表情を険しくする。

 

「話はゆっくり聞いてやるからなーー無論」

 

 刃はジンオウガを指差す。

 

「俺とお前はお互い竜の名を持つ者同士、そして、人間に殺され、人間を憎む者同士である事も忘れるな」

 

 刃はそう言い残すと、風の様に消えた。

 

「あっ!?」

 

 ジンオウガは刃がいた場所へと走るが、刃は居なかった。

 

「……っ」

 

 ジンオウガは唇を噛みながら顔を臥せる。

 

「俺は……」

 

 ジンオウガは、まだ悩んでいた。しかし、ジンオウガにとって、刃が唯一の仲間でもある。が、(かれ)もまた、自分(ジンオウガ)と同じ人間を憎む者である事にも変わりない。

 

「俺は……」

 

 ジンオウガは寂しそうに路地裏を出ると、人里(めのまえ)を見た。そこには人間達がいる。そして、彼等は平気で人里の中を歩いていた。それはジンオウガにとって、自分は人里の中にいる事を教えていた。

 

「っ!」

 

 ジンオウガは自分自身に怒りを覚えながら、人里の中を歩き始める。早くこんな場所を去りたい、と。

 

(俺は……人間が嫌いだ!)

 

 そして、ジンオウガの人間を憎む心は強くなっていた。刃の言葉か、或いはジンオウガ自身が決めているかは判らない。だが、後者が正しいのかも知れない。ジンオウガは唇を噛みながら、人里の中を歩き続けた。そして、ジンオウガが通り過ぎるのを見ている人間達もいるが、その半分は不思議そうにジンオウガを見ている事を、ジンオウガは知らない。いや、知らなかったと言い換えれば良いだろう。

 

 

 

 

 

「刃、刃!」

 

 一方その頃、妖夢は人里の中で、勝手にいなくなった刃を捜していた。

 

「刃、何処に行ったの!?」

 

 妖夢は心配と怒りが混ざった表情で刃を呼ぶ。それは仕方ない事。刃は自分から勝手にいなくなったのだ。

 それに刃は『自分の動きを敵に悟られない程度の能力』を持つ者。その為、刃は自ら、或いは『程度の能力』を使ったのかも判らない。そして、その能力は、忍の姿をした刃にはうってつけの能力だろう。妖夢は刃に怒りと心配を覚えながら人里の中を歩く。走って捜す、と云う方法もあったが、人とぶつかる危険がある為、妖夢は歩いて捜す事しか出来なかった。

 

「ジンオウガ! ジンオウガ!」

 

 すると、遠方からジンオウガの名を呼びながら人里の中を歩いている者がいた。その人物は椛だった。椛は一人勝手に離れたジンオウガを心配し、人里の中を歩いていた。因みに荷物は諏訪子に預け、早苗と神奈子はジンオウガを捜す為に協力してくれた。

 

「?」

 

 一方、妖夢は自分と同じように人を捜す者に気付く。しかし、その人物は椛である事にも気付いた。

 

「ジン……?」

 

 椛も妖夢に気付く。

 

「妖夢さん!」

「椛さん!」

 

 二人は互いの相手に気付き、相手の下へと駆け寄り、相手の目の前に立ち止まる。

 

「こんにちは、妖夢さ……あっ!?」

「はい、椛さんも……あっ!?」

 

 椛と妖夢は途中、ある事に気付き眼を見開くと、互いの相手に。

 

「ジンオウガを見ませんでしたか!? ……えっ!?」

「刃を見ませんでしたか!? ……!?」

 

 二人は捜している者の名を言うと、直ぐに驚く。だが、椛と妖夢の二人にとって心配している相手でもたった。

 二人は驚くも、妖夢は椛に。

 

「じ、ジンオウガって……!」

「じ、刃とは!?」

 

 妖夢は震えながら、椛にジンオウガの事を訪ねる。が、椛も震えながら、妖夢に刃の事を問う。しかし、二人は互いの質問を相手よりも訊こうとしていた。

 

「「あっ!?」」

 

 二人は再び驚く。が、互いの相手の捜している相手を気にするが故に。

 

「妖夢さん、じ、刃って……」

「俺の事か?」

 

 椛は妖夢に刃の事を訊こうとした直後、椛と妖夢の近くから声がして、椛と妖夢は声がした方を見た。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

 

 直後、椛と妖夢は声を上げて驚く。声がした方には、腕を組みながら、椛と妖夢を疑問そうに見据えている刃がいた。

 

「じ、刃!?」

 

 妖夢は自分達の直ぐ近くにいた刃に驚くも、直ぐに表情を険しくしながら、刃に。

 

「刃、今まで何処に行ってたんですか!? 心配したんですよ!?」

 

 妖夢は怒りながら、刃に説教する。無理もない。人里は広いだけではなく迷子になる事も多い。その上、初めて来る者にとって、解らない事だらけ。

 その為、何度も人里に来た事がある者が案内しなければならない。無論、それは初めて来る者が決める事、或いは案内をしてくれる者がいればの話だが。

 妖夢は刃に説教を続ける。しかし、刃は両手を腰に当てながら知らんぷりする。自分は関係ありません、と言う意味で。

 

「刃、聞いてますか!?」

 

 妖夢は、何の反応もない刃に怒りを覚える。

 

「…………」

 

 が、刃は視線を周りの人達へと移す。人、人間達は(自分)と妖夢のやりとりに好奇と期待の眼で見ていた。ああ、一悶着(ひともんちゃく)か修羅場が起きるのではないのか、と。

 

(あの人が、刃?)

 

 一方、椛は刃を疑問視する。刃。それは椛にとって、怪しい人物として見ていた。容貌、容姿、服装、腰に携えている武器。そして、ただらならぬ気配。どれも幻想郷では見たこともない。

 もし、見たとしても実力者かまでは、闘わなければ判らない。それに、(かれ)からは実力者としての(オーラ)を感じる。白狼天狗であるか、或いは警戒すべき相手として見ているのかは椛だけしか判らない。椛は生唾を呑む。

 

「刃、さっきから聞いていますか!?」

 

 一方、妖夢は刃を問い詰める。が、刃は椛を顎で指す。

 

「あいつは?」

「えっ?」

 

 刃の言葉に、妖夢は椛の方を見た。椛は刃を警戒していたが、妖夢が自分を見ている事に気付き驚く。

 

「あっ!?」

 

 妖夢は椛に気付くと慌てながら、椛を手で指しながら。

 

「此方は犬走椛さん、白狼天狗で妖怪の山で哨戒天狗をなさっています」

 

 妖夢は刃に椛を紹介すると、椛は刃に対して、ブカブカと頭を下げる。

 

「こんにちは、私は犬走椛です。宜しく」

 

 椛は顔を上げると、刃は頭を下げる。

 

「俺は刃……それよりも」

 

 刃は顔を上げる。が、刃は表情を険しくしていた。それは何かを語ろうとする表情だった。

 

「な、何ですか?」

 

 椛は刃を見て生唾を呑む。そして、妖夢は刃を見て何かを気にする。

 

「刃?」

 

 妖夢は刃に問い掛けながら、刃の肩に手を置く。だが、刃は椛を見ながら口を開く。

 

「お前が言っていた、ジンオウガって誰だ?」

 

 刃は椛にジンオウガの事を訪ねる。

 

「えっ!?」

 

 椛は刃にジンオウガの事を訪ねられると少し驚く。

 

「えっ!?」

 

 妖夢も驚くが、椛は驚きながら、刃に。

 

「ジ、ジンオウガの事を知っているのですか!?」

 

 椛は刃に詰め寄る。しかし、それはジンオウガを見つける手掛かりでもあった。

 

「チッ……」

 

 だが、刃は眉間に皺を寄せながら舌打ちすると。

 

「ジンオウガ……さっき、そういう名前の青年(やつ)と遭ったぞ?」

「えっ!?」

 

 刃の言葉に椛は驚きを隠せない。が、刃は眉間に皺を寄せながら。

 

「だが、そいつは酷く人間を憎んでいる……」

「ジンオウガが!?」

 

 椛は驚愕する。だが、それは驚愕すべき事実であり、驚かない訳にもいかなかった。そして、刃は両眼を鋭くしなが、ある方角を指指す。ここは人里の中である為、人里である以外、何もない。それでも、刃は言葉を続ける。

 

「早く見つけなければ、奴は人間共に危害を加えかねない……」

 

(ジンオウガ……)

 

 刃は、そう椛に言う。だが、椛は眼を見開きながら開いた口が塞がらないでいた。恐らく、椛はジンオウガの事を思い出していた。

 

 そして、ジンオウガが何かで悩んでいるのは、人間を憎んでいる事だと云う事にも気付いた。しかし、一番に気になったのが、ジンオウガが人間を憎む理由だが、そこまでは解らなかった。椛は震えながら、刃に。

 

「ど、どういう事ですか?」

 

 椛は刃に問い掛けると、刃はチッと舌打ちする。

 

「まだ解らねぇのか、ジンオウガ、奴は人里で暴れるかも知れねぇんだぜ?」

 

 刃は再び答える。すると椛は。

 

(ジンオウガ……!)

 

 椛はジンオウガを思い、突然、走り出す。ジンオウガを捜し見つけなければ、と。本当なら、刃にジンオウガの事を話したかった。だが、今の椛は冷静さを失っており、ジンオウガを見つけなければいけない、と云う強い気持ちがあった。その為、椛はジンオウガを心配しつつ、人里の中を走る。

 

「椛さん!?」

 

 妖夢は椛を呼び止めるも、椛は妖夢の声に耳も傾けず、そのまま刃が指差した方角へと走り去って行った。

 

「じ!?」

 

 妖夢は刃の方を見る。が、刃は何時の間にか、妖夢とは離れた場所にいた。

 

「じ、刃!?」

 

 妖夢は刃の下へと駆け寄ると、刃の近くに立ち止まる。

 

「じ、刃!? 貴方は椛さんに何を!?」

 

 妖夢は刃に問い掛ける。だが、刃は妖夢から顔を背けながら。

 

「知らん。それにお前が知る必要などない」

「でも!」

 

 妖夢は何かを言うが、刃は顔を妖夢の方へと向けながら、妖夢を睨む。

 

「これは俺達の問題ではないーーこれは奴等の問題だ……部外者である俺達が首を突っ込むべきではないーーそれに」

 

 刃は妖夢に背を向ける。が、刃は言葉を続ける。

 

「俺達は幽々子様の為に御手洗団子を買わなければならないからな」

 

 刃は歩き始める。

 

「あっ……」

 

 しかし、妖夢は困惑していた。確かに刃の言い分は正しい。確かにジンオウガの問題はジンオウガ自身が解決するべき問題であり、椛はジンオウガを助けるべき者に過ぎない。

 それに、自分達は幽々子の為に買い物を済まさなければならない。

 

「ま、待って下さい、刃!」

 

 妖夢は刃を追い掛けるように、刃の下へと駆け寄ると、刃の隣に立ち止まり、刃の隣で歩く。

 

「刃……」

 

 妖夢は刃の顔を伺う。しかし、刃は眉間に皺を寄せていた。まるで、何かを考えているかのように。

 

(ジンオウガ……)

 

 そして、案の定、刃は心の中でジンオウガの名を呟く。それはジンオウガを心配、或いは敵として認識しているのかは、刃だけが解る事。

 

(お前は何れ、敵か味方になるのは俺には解らない)

 

 刃はジンオウガを心配している反面、敵としても認識していた。

 

(だが、お前もまた、竜と云う事も覚えとけ)

 

 刃は眼を閉じると、直ぐに眼を開ける。だが、刃は眼を紅く光らせていた。

 

「刃!?」

 

 妖夢は刃を見て驚き立ち止まるも、刃は妖夢を無視して歩き続ける。そして、妖夢は刃の背中を見据えながら、その場を動かなかった。

 そして、人里は人里にいる者達で賑わっていた。

 




 この小説を閲覧している皆さん、こんばんは、NO!です。さて、ここで皆さんにお知らせします。実はリオレウス、ブラキディオス、ティガレックスの三人の擬人化の件ですが、悩んだ末に決めました。この三匹の中から……ティガレックスを出す事に決めました、後の二体は別の話で出す形にします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。