東方雷狼竜 作:NO!
ティガレックスが妖怪の山に向かい、リオレウスが永遠亭で治療を受けている間、博霊神社では。
博霊神社には神主であり、博霊の巫女でもある博霊霊夢、スキマ妖怪の八雲紫、人間となったリオレイアの少女の三人がいた。
しかし、霊夢と少女は紫の話を聞いていた。霊夢は真剣な表情で少女の身に起こった事、少女は自分自身の身に起こった事に驚愕と困惑していた。
仕方ない。少女は自分の生前の出来事を良く知っているだけでなく、少女自身の身に起こった事だからだ。一緒、霊夢は戦慄を感じ、微かに身を震わす。
竜達が人間達に
霊夢から見れば、何時かは、一生ないとは限らないが龍とは刺し違えてでも闘う覚悟を決めなければならないし、良くば闘いたくはない相手でもある。
その為、龍ではなく竜である生き物達が、いとも簡単に人間達の『地位』や『欲望』や『名声』の為に利用されている形で狩り殺されている。
まあ、人間達も自分達の身を護る事や誰かを護る為に闘っている事もある為、同情をも感じる。
竜達も人間達も同じ生き物である為、狩るか狩られるかの問題でもある。
霊夢は両手を拳に変えると、軽く握り締める。そして、そんな霊夢を横目で見る者がいた。紫だ。
「まあ、貴女から見れば
霊夢を察し、後ろ楯であり保護者でもある紫が少女に言う。だが、少女は哀しそうに俯く。
「ええーーでも、私は人間を憎いし、レウスを殺したティガレックスも憎いわ」
「そうよね、でもね、霊夢は違うわよ?」
少女の言葉に、紫は表情を険しくしながら静かに反論する。少女は「えっ?」と眼を見開きながら顔を上げ、霊夢は紫を見る。
「さっきも言ったけど、貴女を殺したのはティガレックスーーでも、貴女は転生し、そんな貴女を助けのは博麗霊夢よ? でしょ?」
紫は微笑みながら、霊夢を見ると、霊夢は少し頬を紅潮しながら眼を逸らす。紫は「フフッ」と笑みを浮かべると、再び少女と向き合う。
「人間を怨む事は悪い事ではないわ、だけど此処は幻想郷、全てを受け入れる場所」
「幻想郷?」
紫は頷く。
「ええーーそれに此処には貴女を殺そうとする
「で、でも、そこに居るのは」
「彼女が人間だから?」
少女は反論するも、紫はニコッと笑みを浮かべながら遮る。
「そうよ」
少女は困惑しながら、紫に言う。
「確かに人間だけど、彼女は
「違うの?」
紫は再び頷く。
「ええ、でも、妖怪退治を生業としているから、別の意味で妖怪ハンターかしら?」
「酷いわね?」
紫の言葉に、霊夢は
「冗談よ冗談、
「それとこれとは違うわよ? 私は悪さをする妖怪を懲らしめる為に闘ってるのよ?」
「そうね? まあ、そう義務付けられているからね」
「何気に酷いわね」
霊夢と紫は他愛もない会話をする。だが、その光景は親子そのもの。故に少女から見れば羨ましいとも感じた。
「あ、あの……」
少女は戸惑いつつ紫に訊く。
「何かしら?」
紫はニッコリと少女に言い返す。
「私は、これからどうすれば良いの?」
少女はその事を紫に訊いた。そうだろう。少女は転生した者とは云え、居場所も無いし帰る場所もない。その為、野宿を強いられるのかもしれないからだ。
そんな少女に、紫は微笑む。
「大丈夫よ、暫くは
「ちょっ!?」
紫は少女に優しく答えるも、霊夢は紫の言葉に驚きを隠せず声を上げる。が、紫は霊夢を見る。
「何かしら? 貴女は、こんな可愛い女の子に野宿をさせようとするのかしら?」
紫はジト眼で霊夢を見つめる。
「そんな事は言ってないわよ!? それに何で私の家に住まわせるのよ!?」
「別に良いじゃない?」
「良くな、じゃなくて、理由を言いなさいよ!?」
霊夢は怒りながら、紫に反論する。紫は溜め息を吐くと、笑みを浮かべる。
「理由は簡単、此処なら悪い妖怪は近付く事は出来ないし、人間も余り来ないし、来たとしても霊夢が信頼している魔理沙か咲夜か萃香ぐらいの良い人ばかりだらかよ?」
「そんなのは理由にはならないわよ!? 普通なら他の場所にしなさいよ!?」
「まあまあ、それに人間の里だと彼女には辛いだろうし、
「…………」
紫の言い分に、霊夢は何かを考える。しかし、紫の言い分は間違っていなかった。人間の里には沢山の人間と、守矢神社だと人間の参拝客が沢山来る。紅魔館だとカリスマ(?)のお嬢様とその妹が何かをやらかすかもしれない。
「だったら地霊殿や永遠亭はどうなのよ?」
「地霊殿だと人間が居るか悟り妖怪に心を読まれるか、永遠亭だとあの医者が実験体として利用するかもしれないじゃない?」
「確かに……」
「それに、
「うっ……」
霊夢は何かを感じた。それは参拝客や良く遊びに来る友達よりも、一瞬だけ寝食を共にする者が欲しいと思ってしまった。
買い物を頼めるし、用事の為に留守番を頼める者や家事の分担も出来る。だが、食費が掛かるが、まあ、自分がサボりたいが為の口実に過ぎないが。
「駄目かしら?」
紫は両手を合わせながら、霊夢に頼む。本来なら紫が面倒を見るべきだが、霊夢は幻想郷の実力者に入るし、少女を護る事も出来るだろうと。
「…………」
一方、霊夢はまだ考えていた。少女の為に少女を置いとくべきか、だが少しでも負担を減らしたいし、少女を見捨てる事も出来ない。そして、霊夢は何かを感じ頷くと。
「解ったわ、それで良いかしら?」
霊夢は少女を見る。少女はビクッと震える。
「有難う~~」
紫は両手を叩きながら喜びの声を上げる。
「それで一緒に住むのは良いけど、貴女、リオレイアと云う名前じゃ言い辛いわ」
「えっ?」
少女は一瞬驚くも、霊夢は腕を組む。
「今の貴女はリオレイアと云う名前がある、でもそれは転生前の名前、今の貴女は転生した後の一人の……何かしら?」
霊夢は少女の事で困惑する。少女は人間か、それとも妖怪なのか、と。
「大丈夫よ、彼女は見た目は人間だけど、竜人と人間のハーフみたいな種族よ?」
紫は指をパチンと鳴らしながらウインクする。
「そうなの?」
霊夢の質問に近い言葉に、紫は軽く頷く。
「そう……」
霊夢は表情を険しくしながら、再び少女を見る。少女は軽く震える。
「貴女は人間に近い部族だから、名前も人間らしい名前にするわね……えっと」
霊夢は軽く悩む。少女の名前は何が良いか、と。少女が本来の姿だった竜であり、竜の名を忘れず、竜の名に近い名前にすれば良いのではないか、と。
「リオレイア……レイア……レイ……!?」
霊夢は眼を見開く。そして、霊夢は少女を見ながら微笑む。
「麗……麗で良いかしら?」
「麗?」
「麗……?」
霊夢の決めた名前に、紫と少女は疑問を浮かべる。
「ええ。麗、麗しいって意味だけど、貴女を意味する名前でもあるのよ?」
「私の?」
「ええ。麗は形が整って美しいって意味もあるけど、貴女は顔立ちが良いし、男性が見惚れるくらい美しいからよ」
「私が……美しい?」
少女は自分を指差す。
「良いじゃない~~っ! 霊夢、貴女、彼女に良い名前を付けて上げてるじゃない!」
紫は無邪気な笑みを浮かべながら、霊夢に訊くと、霊夢はそっぽを向く。
「別に、片仮名でも良かったけど、漢字の方がもっと良いと思っただけよ」
「それも良いじゃない~~っ? でも、変な名前だったらどうしょうかと思ったわ?」
「例えば?」
霊夢は横目で紫を見る。
「そうねぇーーっ……霊夢の霊から取って、霊にしょうと思ったわ」
「何で私の名前なのよ!?」
霊夢は紫に怒る。紫は笑いながら両手を、霊夢の前に出す。
「冗談よ冗談。私だったら玲か澪でも良いかと思ったわよ?」
「ふ~~ん?」
霊夢は軽蔑の眼差しで紫をじっと見据える。
「そんな怒らなくても良いじゃない!」
紫は怒るも、霊夢は麗を見据えると麗に微笑む。
「取り敢えず、これからは麗として、私の同居人として、宜しく頼むわね?」
霊夢は呆れつつも、麗に訊ねる。
「…………」
麗は何故か酷く落ち込みながら俯く。
「どうしたの?」
霊夢は麗に問い掛け、紫は首を傾げる。
「……何で?」
「「えっ?」」
麗は重い口を開くと霊夢と紫は驚くも、麗は顔を上げる、が、麗は目尻に涙を浮かべていた。
「何で人間が、私から見れば、とても憎い人間が私に手を差し伸べるのよ……?」
麗は涙を浮かべながら問い掛けるも、涙は少女の頬を伝う。それでも、麗は。
「私は人間が憎い……人間は私やレウスの仲間達を殺し続けていた……それなのに……私は人間の姿になった上に、人間に御世話にならなきゃならないのよ……!」
麗は嗚咽を上げる。自分は憎き人間の姿になったにも拘わらず、人間である霊夢の御世話になってしまった。
しかし、麗からみれば苦痛その物。竜の誇りを捨て、人間に屈する意味にも感じてしまった。
仲間が見れば、どう思うのだろう。竜の面汚し、竜の名を汚した恥晒し、と思うだろうか。
麗は
「私は何の為に……うぐっ、えぐっ」
麗は嗚咽を上げ続ける。紫は哀しい眼をしながら、麗を見つめていた。
「…………」
そんな麗に、霊夢は表情を険しくしながら立ち上がり、麗の元へと歩くと、静かに腰を下ろし、麗を抱き包む。
「っ!?」
麗は眼を見開きながら驚くも、霊夢は左手を麗の後頭部に、右手は麗の背中に回しながら抱き締めていた。
「そんな事は言っちゃ駄目よ?」
「えっ?」
麗は霊夢を見ようとするも、霊夢は麗の顔を胸に埋めていた。
「貴女はリオレウスだけど、今は人間に近い種族でもあるわ」
「それと何が……」
「違うわ、今の貴女は一人じゃない、それに貴女が竜だった頃の仲間の竜達も、貴女を責めようと詰ろうともしないわ」
霊夢は麗の頭を撫で始める。
「でも、私は……」
「自分を悲観しちゃ駄目――貴女は麗、リオレイアを忘れず、第二の人生を歩みなさい」
「…………」
「無論、私も手伝うわ、貴女が自分から進めるように、ね?」
霊夢は軽い笑みを浮かべる。それを聞いた麗は。
「何でなのよ、何で私の為なんかに?」
麗は顔を上げると霊夢を見る。霊夢は微笑んでいた。
「そうね――幻想郷を共に歩む者だから、かしらね」
霊夢は再び麗を抱き包む。それを聞いた麗は泣きそうになるも、顔を霊夢の胸に埋めながら嗚咽を上げた。
それは、霊夢の優しさ、或いは人間の優しさや温もりに触れたかのようなものだった。人間を憎む筈が、中には良い人間もいる事に感動を覚え、悪い人間ばかりではない事も教えるようなものだった。麗にとって自分を助けてくれた上、住む所まで作ってくれた霊夢の有り難みと優しさに、思わず甘えたくなってしまった。
そして、それを意味するように霊夢は微笑みながら、麗の後頭部や背中を擦り続ける。そして、紫は両の眼を閉じながら笑っていた。
博麗神社の中に微かに響き渡る麗の泣き声。それは、麗に希望を与え、第二の人生を歩めとも言える警告にも思えた。それとも、霊夢の優しさなのかも知れない。
皆さん、こんにちはNO!です。今回でリオレイア外伝の話は終わり、次回からはジンオウガを主役とした本編に戻りますが、後少ししたら、コラボ回に入ります。(コラボ回は戦闘描写を多めに入れる予定です)
さて、この前行われた東方人気投票ですが……霊夢が二位とは。因みに自分は幽々子、ウドンゲ、咲夜に入れました。
そして、再び余談ですが、ジンオウガ達の住み家を教えます。
ジンオウガ→妖怪の山の椛の家
刃→白玉楼
麗→博麗神社
リオレウス→永遠亭
ティガレックス→不明