東方雷狼竜   作:NO!

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 皆さん、お久しぶりです。そして、六ヶ月の長い間、次の話を待っていた皆さん、どうも申し訳ございませんでした。


雷狼竜、黄泉の国で古龍と出逢う

 リオレイアが紫の説得により博麗神社で居候の身となる事になった丁度その頃、ここは慧音が経営している寺子屋。

 そこは人間の里にいる子供達が勉学し、知識を身に付ける為に来る場所でもある。

 

 そんな寺子屋の経営者である慧音の自室。その部屋は和室であるものの、室内は重苦しい雰囲気に包まれている。

 部屋には椛、妖夢、早苗、諏訪子、神奈子の五人と、部屋の中央には敷き布団が敷かれ、その上には死んでいるように眠っている青年・ジンオウガがいた。

 ジンオウガは兎も角、五人は表情を曇らせながら、ジンオウガを見ていた。五人は会話どころかその場を動ことはしない。まるでお通夜そのものである。無理もない、五人は亡骸となっているジンオウガを見ていたのだ。

 

「ジンオウガ……」

 

 刹那、椛がジンオウガの名を呟く。ジンオウガからは何の反応もないーー動く気配どころか、目覚める気配さえもない。

 そうだろう。ジンオウガは死んだ、からだ。その証拠に心臓の鼓動もなく、ジンオウガの表情は両眼を閉じていながらも無表情に近かった。

 

「ジンオウガ……ジンオウガ」

 

 椛はジンオウガの名を呼び続けながら目尻に涙を浮かべる。死なないでくれ、眼を開けてくれ、と。が、それは無駄な事に等しい近い。それでも、椛は言葉を止めない。

 

「椛さん……」

「あの……」

 

 そんな中、近くにいた早苗と妖夢は椛に同情を感じ気遣うように声を掛ける。一方、椛は下唇を噛みながら瞑目するも、溢れ出る涙は止まる事はない。

 

「椛さん、大丈夫ですか?」

 

 早苗は椛の肩に手を置くと、気まずそうに訊ねるも、椛は首を左右に振る。

 

「大丈夫じゃありません……私は、私はジンオウガの近くにいながらも、何も出来なかったんです……うぐっ、えぐっ」

 

 椛は声を出しながら泣く。

 

「あ……っ」

 

 それを見た早苗は言葉を掛けた事が逆に椛を哀しませてしまったと思い、不意に眼を逸らし、瞑目する。早苗だって辛いのだった。早苗だけじゃないーー妖夢、諏訪子、神奈子も辛いのだ。刹那、襖が開く。

 椛以外の早苗達四人が開いた襖の方を見やると、そこには襖を開けた直後なのか、襖に左手を付けている刃がいたーー右手には、何か入ってる小さな四角い箱を包んだ紫の風呂敷を大事そうに持って。

 

「刃!?」

 

 妖夢は刃の名を呼ぶ。刹那、椛は瞠目し、直ぐに刃を睨む。勿論、ジンオウガを殺したのは彼であり、憎むのも無理はない。

 

「刃、今まで何処行ってたんですか!?」

 

 妖夢は刃の元へと駆け寄り問い詰める。そんな妖夢に刃はそっぽを向く。

 

「ふん……俺は幽々子様の命令に従って、御手洗団子を買いに行っただけだ」

 

 刃は理由を述べる。

 

「こんな時に御手洗団子を買いに行ってたのですか!? 何を考えてるのですか!?」

 

 妖夢は刃に怒る。が、刃は命令に従っただけであり、何も悪い事をしてる訳でもなかった。

 

「そんなのは俺の自由だ、それに俺は幽々子様に命令された以外、何も興味はない」

「だからと言って、今そんな事を言える立場ですか!?」

「んな事、俺に言っても無駄だ、第一、あの時、誰かソイツを止める事が出来た?」

 

 刃は襖に当てていた手をジンオウガの方へと向け指差した。

 

「ソイツは暴れていた。それは紛れもない事実だ、俺はソイツを止めただけだ」

 

 刃はジンオウガを指差しながら言う。確かに刃の言い分も正しい。何故なら、ジンオウガは自分自身の『程度の力』を上手く制御出来ず、我を忘れて暴れたのだ。

 勿論、あのまま暴れていたら負傷者がでるところか、最悪、犠牲者が出ていたのかもしれない。

 それに、暴れていたジンオウガを止めようとした妹紅はジンオウガとの闘いに敗れ、致命傷を負わなかったものの大怪我している。

 つまりそれは、ジンオウガが暴れた為に起きた悲劇に近く、揺るぎない事実でもある。

 

「ソイツは何の理由で暴れたかは解らねぇが、ソイツが暴れたお陰で街はどんな被害を受けた? どのくらいの人間達が逃げ惑った?」

「っ……」

 

 椛はそんなジンオウガを見て、目尻に涙を浮かべ、身体を震わせる。

 

「ジンオウガ……」

 

 椛はジンオウガの元へと歩み寄り、ジンオウガの横で屈むと、ジンオウガの右手を手に取り、両手で包むように握りしめる。しかし、それは無駄に近かった。そんな事をしてもジンオウガは目覚める事は無い。

 

「椛さん……」

 

 早苗は椛を見ながら呟き、妖夢、諏訪子、神奈子の三人は悲しそうに見つめていた。

 

「……フン」

 

 刃は椛を見て呆れると、ジンオウガを指差していた手を懐に入れ、直ぐにある物を取り出し、それを見た。そのある物は何かの生き物の延髄の欠片であった。

 

「……」

 

 刃は延髄の欠片を見て悔しそうに眼を伏せた。勿論、五人はジンオウガを見ていた為、悔しそうな顔をしている刃に気付かなかった……。 

 

 

 

 

 

 

 ここは、とある国。そこには一人の仰向けになって目を閉じている青年がいた。その青年はジンオウガである。刹那、ジンオウガの瞼が動き、ジンオウガは気が付く。

 

「ここは……」

 

 ジンオウガは上半身を起こし、立ち上がると、周りを見渡す。空は夕日を意味するかのように赤く、地面はデコボコであり、草もなく、辺りには何かの生き物の骨が無数に転がっており、人の気配さえない。まるで、地獄その物だった。

 

「ここは……? 何故、俺は此処にいるんだ?」

 

 ジンオウガは自分が此処にいる事に不信感を抱き、戸惑う。刹那、とある骨に気付く。

 

「あれは……!」

 

 ジンオウガは骨が転がっている所へと駆け寄り、骨の近くで立ち止まり、その場で屈む。

 

「これは……」

 

 ジンオウガは骨を触る。その骨はとても大きく、何かの生き物の顔の骨でもあった。眼の部分であろう二つの穴は小さいものの、歯の部分は少し大きく、鋭い牙が何本もあるのと大きいものもあれば小さいものもあるのが特徴的な牙であった。

 

「何なんだ、この骨は?」

 

 ジンオウガは表情を曇らせながら骨を撫でる。そうだろう、ジンオウガは解らない筈だ。その骨は火竜・リオレウスの骨である。そして何故、リオレウスの顔の骨が此処にあるのかは、そのリオレウスが狩人(ハンター)に狩猟され死んだからであり、骨は使えないと言う事で捨てられたものであった。

 リオレウスだけではない、ここにはラギアクルス、ナルガクルガ、ティガレックス等と言った、竜の名を持つに相応しい生き物の骨も辺りに散らばっている。その他にも、何か鈍器な物で殴られ砕かれている物や、長い事放置されたのか粉になりつつある骨も見受けられる。

 しかし、全てが狩人(ハンター)に狩猟されたわけではない、病気や何かの事故で死んだ竜もいるのだ。その事をジンオウガは知らない。

 

「これはいった」

「その骨は火竜・リオレウスの骨だ」

「っ!?」

 

 何かを言おうとした時、後ろから声が聞こえ、振り向くと、全身を黒いマントで覆われ、頭にはフードを被っていながらも俯いている人物が一人いた。

 

「誰だお前は!?」

 

 ジンオウガはその人物を警戒し身構えると、フードの人物はジンオウガに対し、腕を突き出し、手の平を見せた。フードの人物の腕部分には裾は無く、肌が露になっているも肌は女性のように白かった。それでも、ジンオウガは身構えるのを止めない。

 

「落ち着け、私はあなたを傷つけるつもりは無い」

「何だと?」

 

 ジンオウガは眉間に皺を寄せる。

 

「ああ、もしそうしてるのならあなたは今頃、私に負けている」

「なっ!?」

 

 フードの人物の言葉にジンオウガは驚きを隠せない。何故なら、フードの人物はジンオウガを倒せる自信がある為に。それでも、フードの人物は言葉を続ける。

 

「図星ですね?」

「っ……ふざけんな!」

 

 ジンオウガは憤怒し、フードの人物に襲い掛かる。刹那、フードの人物は風のように消えた。

 

「なっ!?」

 

 ジンオウガは驚くも、フードの人物はジンオウガの後ろに現れ、ジンオウガの背中を殴り、ジンオウガは後ろへと吹っ飛ばされる。

 

「うわっ!」

 

 吹っ飛ばされたジンオウガは地面と激突し転がる。

 

「うぐぁ……」

 

 ジンオウガは背中や身体中に走る激痛に耐えきれず、歯を食い縛りながら悶える。

 

「全く、人の話を聞かないから、こうなるのですよ?」

 

 フードの人物はジンオウガに呆れながら両手を腰に当てる。すると、ジンオウガはよろけながらも立ち上がり、フードの人物を睨む。

 

一方、フードの人物は俯いたまま、ジンオウガに対し、呆れを隠せない。それどころか、ジンオウガに怒りと言うよりも無謀な事をしているようにも感じていた。

 

「ふう……それよりもあなたは、雷狼竜ジンオウガですね?」

「なっ!?」

 

 フードの人物の言葉にジンオウガは声を上げ、驚きを隠せない。

 

「な、何故、俺の名を!?」

 

 ジンオウガはフードの人物に訊くと、フードの人物は顔を上げ、ジンオウガを見据える。フードの中は暗いものの、二つの眼は、眼差しはジンオウガに向いたままである。

 そして、フードの人物の眼はとても白く、清んだ色であった。それでも、フードの人物はジンオウガを見ながら、右腕を横へと伸ばす。

 

「当たりですか……それよりも此処は何処か、ご存じですか?」

 

 フードの人物の問いに、ジンオウガは警戒しながらも首を左右に振った。

 

「いや、知らない」

「そうですか……ならば教えましょう、此処は黄泉の国です」

「黄泉の国?」

 

 ジンオウガは眉間に皺を寄せる。

 

「ええ、此処は黄泉の国ですが、此処は私達、竜の来る場所です」

「竜の、来る、場所?」

「はい、此処は皆、狩人(ハンター)達の名誉や誰かを護る為と言う理由により殺された竜達が来る場所です」

「殺された……まさか!?」

 

 ジンオウガが驚くと、フードの人物は何かを悟ったかのように頷く。

 

「はい、此処には貴方の仲間(同族)の骨もあります」

「っ!?」

 

 ジンオウガは戦慄した。聞きたくもなく知りたくもない真実を知ってしまった為に。此処は黄泉の国、それも狩人(ハンター)達の手によって殺された竜達が来る場所でもあり、殺された同族が此処にいる事も知ってしまった。

 ジンオウガは身体を振るわせ膝を突くと、辺りを見渡す。骨、骨、何処を見ても骨ばかりである。同族は愚か、他族の骨も無惨にも転がっている。ジンオウガはそう思うと、震えている身体を抑えようと自分を抱き締める。

 

「震えているのですかーーですが、貴方は何故此処にいるのかは知らないのですか?」

 

 そんなジンオウガに、フードの人物は同情を感じながらもあえて、ジンオウガに訊ねる。

 

「し、知らねぇよ……っ」

 

 ジンオウガは答える。すると、フードの人物は腕を組み、身体を翻す。

 

「そうですか……ならば教えましょう、貴方は刃と言う者ーーすなわち、迅竜・ナルガクルガに倒されたのです」

「倒され、た?」

 

 ジンオウガは瞠目し、フードの人物はジンオウガと向き合い頷いた。

 

「ええ、貴方は自身の『程度の能力』を上手く制御出来ず、尚且つ沢山の人を哀しませた」

「程度の能力? 何だよ、それは?」

 

 フードの人物は首を左右に振る。

 

「それは私にも解りません。ですがこれだけは言えます、私達は、竜の名を持つ者達は、とある人物達の気紛れにより、人として転生させられてしまった、と」

 

 フードの人物は言葉を述べる。一方、ジンオウガは何も解らず戸惑っていた。そうだろう、フードの人物からそんな事を言われても、何も解らない筈だ。

 それにジンオウガは何かに気付いていた。それは、フードの人物が自分と同じ匂いがする、と。しかし、自分とは何処かで逢った事もない。なのに、フードの人物からは自分や同族、他族とは何かが違う、と。

 

「それよりも、お前は、誰、だ?」

 

 ジンオウガはフードの人物に訊ねる。すると、フードの人物はジンオウガの言葉に少し笑う。

 

「フフッ、確かにそうですね、いきなり現れて何も名乗らないのは失礼かもしれませんね? では、私の名を教えましょう」

 

 フードの人物は顔を覆い隠しているフードを両手で退かすように捲る。刹那、フードの人物の顔が露になる。キラキラと輝くように美しく白く短い髪、美を保つかのように白い肌が特徴かつ整った美しい顔立ち。そして、フードの人物は二十代前半の美青年だった。

 青年はジンオウガを見ると、ジンオウガは表情を険しくしていた。それでも、青年はジンオウガに対し微笑み、右手を自分の胸に当てながら、こう言った。

 

「私はキリンーー幻獣・キリンと申します」

 

 青年はーーキリンは自分の名をジンオウガに教えると、ジンオウガは眉間に皺を寄せる。

 

「キリ、ン?」

 

 ジンオウガはキリンに対し不信感を抱く。何故なら、キリンと言う幻獣をジンオウガは知らないだけだった。一方、キリンはジンオウガに対し笑みを浮かべたまま何も言わない。

 そして、ジンオウガの周りには重苦しい雰囲気が流れ、キリンの周りには穏やかな雰囲気がが流れている。しかし、それは水と油のような関係であり、黄泉の国では関係ない事だった。

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