東方雷狼竜   作:NO!

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外伝 二人目の竜の名を持つ者

 冥界。ここは空の上にあり、魂が行く世界。

 そして、冥界と地上を繋ぐのは、段の多い傾斜面の階段。しかし、それは普通の人間では行けない場所。

 それは空の上にあるからだ。

 階段の先には一本道があり、周りには満開の桜の木々が生えており、道の両端には石の灯籠(とうろう)が縦に並ぶように何基も立っていた。

 そして、その少し遠い先には大きな屋敷があり、屋敷の周りには、茶色い瓦の屋根で造られている白い堀が屋敷を取り囲むように造られて、屋敷の出入口には門扉があり。

 屋敷と一本道以外は沢山の桜の木々で囲まれていて、屋敷から二キロ先には、空にまで届くであろう、葉が一つもない山のように大きい木が生えている場所だった。

 

 そして、外側にはには桜の木々が生えている堀の内側に建っている屋敷の名は白玉楼(はくぎょくろう)

 冥界に唯一、建てられている、和の屋敷だ。

 

 屋敷内。門扉の先には屋敷にまで続く一本道に、周りには地中に沈みかかるように見えている石が何個と、桜や松の木が何本も見受けられる石庭(せきてい)に、少し小さめの澄んだ青色の池がある中庭だった。池には数匹の色んな色の錦鯉が泳いでいる。

 そして、屋敷はコの字を下に向けるように造られている。中は畳が何十畳もズラリと敷かれていて、東西は白い襖に、北側は壁、南側には障子も何十枚とあり、縁側があるのも特徴的な屋敷だ。

 屋敷の南西には小屋、南東には倉庫が建てられている。

 

 そんな屋敷の縁側には、扇子を手にし、扇子を広げている西行寺幽々子と、八雲紫が少し距離を取りながら隣同士に座っている。

 

「ふぅ……」

 

 紫は溜め息を吐く。

 

「どうしたの紫?」

 

 そんな紫に、幽々子は訊く。

 

「いや、いつ見ても白玉楼は広い、と思っているだけよ」

「そう? 私は何にも感じないわよ?」

 

 幽々子は扇子を閉じると、扇子を膝の上に置く。

 

「そうだけど幽々子、貴女は白玉楼(ここ)のお嬢様でしょ?」

 

 紫は呆れながら、幽々子に言う。だが、それは紫の言う通り、幽々子は白玉楼の主。

 主と言っても、一人で住んでいる訳ではない。それは、幽々子の他に……。

 すると、紫と幽々子の下へと歩み寄ろうと縁側を歩く者がいた。

 その者は十代後半の少女であり、銀髪のボブカットに黒いリボンを付けていて、サファイアブルーの瞳。

 服装は長袖の白いシャツに青緑色のベストを着て、青緑色のスカートを穿いている。首元には少し大きめの黒い蝶ネクタイを付けていて、背中には一本は普通の、もう一本は少し長めの黒い鞘に納められている刀を背負うように携えている。

 近くには、人魂のような球体がある。

 そして、手には丸い木の盆に、上には二つの茶の注がれている湯呑みと、一つの急須、

 オレンジ、白、緑色の三色団子が十本も置かれている皿があった。

 そして、その少女は凛とした表情で「幽々子様、紫様、お菓子を持ってきました」と言った。

 

 そして、少女の名は魂魄妖夢(こんぱくようむ)。半人半霊であり、白玉楼の庭師。

「妖夢」

 

 幽々子は微笑みながら言いながら、紫は妖夢を見る。妖夢は二人の後ろに正座すると、両手にある盆を幽々子と紫の間に置く。

 

「お団子♪」

 

 幽々子は子供のように喜びながら、団子を手に取ると、それ(団子)の一つを食べる。

 

「おいし~っ」

 

 幽々子は団子を手に、もう片方の手を頬に当てながら喜ぶ。しかし、それは団子の甘い味が口内に広がっているのと、好物である証拠でもあった。

 そんや幽々子に、妖夢は苦笑いし、紫は呆れながら笑う。

 

「幽々子、貴女って……」

「何っ?」

 

 幽々子は喜びながら、紫を見る。

 

「貴女って、花より団子なのかしら?」

「えっ?」

 

 幽々子は首を傾げるも、紫は石庭を指差しす。その先には満開を迎えた桜の木があり、誰から見ても綺麗な桜だった。

 紫は桜を指差すも、幽々子は「桜が何?」と言った直後、団子を食べる。

 

「はは……」

 

 紫と妖夢は苦笑いするが、紫は微笑みながら桜を見ながら。

 

「それに、白玉楼(ここ)は何時見ても、桜は散らないわね? 宴会にはぴったりな場所ね」

「でしょ?」

 

 幽々子は人差し指を立てながら喜ぶ。

 

「でも、今はまだ十一月、四月は、まだまだ早いのよね」

「そうですよね……」

 

 紫の言葉に、妖夢は納得する。しかし、白玉楼は冥界を管理する屋敷だけではなく、桜を管理する立場にも近く、桜は散らない。

 だが、桜は一年に一度だけ満開を向かえた後に散り、大雨か大嵐でも散る事が多い。

 つまり、死に近い木でもある。しかし、それは仕方ない事。

 紫と妖夢は桜を見つめるも、ある事に気付き、幽々子を見ると。「幽々子、ジンオウガはどう思うかしら?」

 

「えっ?」

 

 幽々子の言葉に、紫は惚けながら、幽々子を見る。幽々子は微笑んでいた。

 

「ジンオウガ、私達が拾って来た奴よ」

「ああ、あれね? でも、幽々子は危なかったわよね?」

 

 紫は幽々子に言うも、幽々子は紫に。

 

「そう、私には、ね? 紫、あの時はありがと」

 

 幽々子は紫に感謝の言葉を言う。

 

「あ、あの? ジンオウガとは誰の事でしょうか?」

 

 幽々子の言葉に、近くで正座している妖夢が問う。紫と幽々子は妖夢を見る。

 

「ジンオウガ、私に二度も追い詰められながら立っていて、最後の最後で私に反撃しょうとした者」

「えっ!?」

 

 妖夢は驚く。そんな妖夢に構いなく、紫は幽々子を見ながら。

 

「それにしても幽々子、あの時は危なかったわね?」

 

 紫は少し心配しながら、幽々子に訊く。

 

「良いのよ別に、ありがとね」

 

 幽々子は団子を食べ終えると、串を皿の隅に置く。

 

「そう? でも、」

 

 紫は不敵に笑いながら。

 

「ジンオウガの力を知る事が出来たから」

「えっ?」

 

 幽々子は疑問を抱きながら、紫に訊き。紫は不敵に笑いながら頷く。

 すると、妖夢が。

 

「しかし、紫様の言葉にあったジンオウガと言う者、幽々子様の二度の攻撃を受けながらも立ち上がる力も、反撃する力も残っていたとは……」

 

 妖夢は驚愕しながら、ジンオウガに興味を示す言葉を発する。

 ジンオウガ。彼は紫と幽々子が、ある世界で拾って来た人物であり、竜の名を持つ者。それは妖夢にとって、あの者は未知の強豪ではないのか、と思っていた。

 我が幽々子(主人)の攻撃に耐えたからだ。そうなれば奴は、この二人と、地上の世界の数少ない実力者達の仲間に入るだろう。

 妖夢は正座しながら、両手の拳に力を入れる。

 

「ところで幽々子様、ジンオウガとはどんな者でしたか?」

 

 妖夢は口震えながら、幽々子と紫に言う。それを聞いた幽々子は惚ける。

 

「い、いえ、私は会った事もない上、幽々子様の攻撃を耐えた上、何処にいるのかも判らないので、特徴も……」

 

 妖夢は恥ずかしそうにもじもじしながら、幽々子に言う。無理もないだろう。会った事がないから。それに、ジンオウガの力も知らず、幽々子とマトモに殺り合える事さえも判らない。

 そんな妖夢に、幽々子は微笑む。

 

「大丈夫よ、その者は妖怪の山の山麓(さんろく)にある村にいるわ」

「えっ?」

 

 妖夢は驚くも、幽々子は言葉を続ける。

 

「彼は今、犬走椛の所にいるわ。でも、今の彼は自分の力をも制御出来ないでいるわ」

「どういう事でしょうか?」

 

 妖夢は訊く。

 

「そうよ、妖夢」

 

 それを聞いた紫は今度は幽々子の代わりに話す。

 

「ジンオウガ、あの者は本来の自分の力を知りながらも、人間である以上、本来の力を出せないで制御出来ないでいるのよ」

 

 紫は言いながら茶の入っている湯呑みを手にするも、言葉を続ける。

 

「でも、本来の力を出せば制御出来れば、あの者は雷狼竜の名に相応しい者となる」

 

「そうね、力を制御出来なくても、私の相手に不足はなかったわ」

 

 そんな紫に、幽々子は感想を述べるように話した後、両手で湯呑みを持ち、湯呑みの中に注がれているお茶を飲み、直ぐに口元から離すように湯呑みを離す。

 

「そうね。でも幽々子、私達が捕まえてきたのは、ジンオウガだけじゃない、でしょ?」

 

 一方、紫は妖しい笑みを浮かべながら団子の刺さっている串を手にしながら、串で幽々子を指す。

 

「えっ、だけじゃない?」

 

 紫の言葉に、妖夢は何かを言いながら驚く。

 

「まぁ、私と紫には、ね?」

 

 幽々子は眼を閉じながら不敵に笑うと、湯呑みを盆の上に置く。

 

「でも、確かに私達が捕まえてきたのは、ジンオウガだけじゃないわ」

 

「幽々子様、どういう事でしょうか?」

 

 妖夢は幽々子に訊く。幽々子は皿の上に置かれている団子の串を手に取りながら。

 

「そうね、強いて言うなら……」

 

 幽々子は何かを言う前に、団子を食べる。

 

 一方、白玉楼へと続く一本道の更にその先の下界へと続く段の多い階段。

 そこには、黒い影が疾風の如く、傾斜面の階段を駆け登り、周りに桜の木々が生い茂っている一本道も素早く駆け抜け、白玉楼の門扉前にまで来た直後に横に移動すると、堀の屋根に跳び移る。

 直後、その人物は屋根の上から、中庭の石庭(せきてい)に飛び降りた直後、紫、幽々子、妖夢の所まで跳躍しながら近づく。

 しかし、妖夢は彼の姿を捉える暇もなく、その人物は三人の近くにまで来ると屈みながら止り、ゆっくりと立ち上がる。

 

「なっ!?」

 

 妖夢は驚くも、その者は三人を見据えながら何も言わず動かない。

 

「な、何者だ!?」

 

 妖夢は今すぐにでも立ち上がると、幽々子と紫を護るかのようにその人物を相手にするかのように、鞘から刀を抜きそうに構えながら、その人物に問い掛けながら、その人物を睨む。

 その人物は十代後半の青年で、顔立ちは悪くなく、フサフサとした黒い髪と澄んだ黒い瞳。中肉中背で身長は五尺六寸。袖がない全身黒い忍び装束を身に纏い、黒い足袋(あしふくろ)、黒い脚絆(きゃはん)を履いている。

 そして腰の後ろには、五本の黒く鋭い刃物が特徴的な手裏剣を模した剣を二つ携えている。

 それはまるで、忍その者だ。剣以外は。

 

「っ!?」

 

 妖夢は刀を構えながら下唇を噛む。しかし、妖夢は「あの者は只者ではない」と身震いしていた。

 妖夢は、あの人物(忍者)は強いのか、弱いのかも判らず、どうすれば良いのかも判断出来なかった。

 だが、そんな妖夢に、団子が刺さっている串を片手で持っている幽々子が。

 

「妖夢、刀を納めなさい」

「えっ!?」

 

 妖夢は驚きながら、幽々子を見る。幽々子は串に刺されている団子を食べていた。

 幽々子は団子を食べながら口元を手で覆い隠すと。

 

「妖夢、その人は私と紫が、ある世界で面白半分で見つけた、二人目の人よ?」

「ある世界、二人目?」

 

 妖夢が問うと、幽々子は笑いながら頷くも、紫は何故か腕を組みながら笑っている。

 

「そうよ」

 

 そして、幽々子は団子を食べ終わると、串を皿の上に置くと、忍を見据える。忍は幽々子を見て頷くと、幽々子を見ながら(ひざまず)いて下を向く。

 

「彼の名は(じん)。私達が見つけた、迅竜ナルガクルガの人間姿、そして……」

 

 幽々子は不敵に笑いながら扇子を手に取り、扇子で忍の者を差す。

 

「彼は『敵に自分の動きを悟られない程度の能力』の持つ者、強いわよ?」

 

 幽々子はほくそ笑む。しかしそれは、刃に多大な期待を寄せる意味にも思えた。

 そして、妖夢は幽々子を見ながら驚き、紫は眼を閉じながら不敵に笑っている。

 

「…………」

 

 そして、刃は顔を上げ、三人を見据えたまま、両目を赤く光らせる。

 

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