東方雷狼竜   作:NO!

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雷狼竜と迅竜、人里へ

 翌日。朝七時の妖怪の山。山の東側には夜と言う事を忘れてくれるように朝日が昇っていた。

 朝日は妖怪の山の山麓にある村に光を射し込むかのように照らしていた。

 

 そして、椛の家にあるジンオウガの部屋。

 

「う、うーーん?」

 

 ジンオウガは、障子から射し込む光で眼をきつく閉じた後に、眼を覚ます。

 

「……あっ」

 

 ジンオウガは天井を見た後に、布団をはね除けながら起き上がると、周りを見る。周りには何もないが、ジンオウガは溜め息を吐く。

 

「そうか、俺は……」

 

 ジンオウガは昨日の事を思い出す。昨日は大変だった。熱い目に合うわ、痛い目に合うわの散々な一日だった。それに、それが今日もあれば、もはや、散々な毎日を過ごすはめになるだろう。 ジンオウガは自分の頭を自分の手で押さえながら困る。すると、部屋を出入り出来る襖の開く音が聞こえた。

 

「おはよう、ジンオウガ……?」

 

 そこには椛が立っていた。椛は身体に赤いエプロンを付けていた。そして、ジンオウガの様子に疑問を抱いていた。

 

「どうしたんだ?」

 

 椛はジンオウガに訊くと、ジンオウガは頭を押さえていた手を頭から離すと、椛を見る。

 

「ああ、犬走か」

「どうしたんだよ、頭が痛いのか?」

 

 椛は心配しながら、ジンオウガに訊く。ジンオウガは俯くと首を左右に振る。

 

(ちげ)ぇよ、ちょっと昨日の疲れが取れないだけだよ」

「昨日の疲れ?」

 

 ジンオウガは頷く。

 

「ああ。昨日、飯や風呂の事だよ」

「?」

 

 椛は首を傾げる。が、ジンオウガは言葉を続ける。

 

「あれは俺にとっちゃ、地獄その物だよ。それにあれが毎日続けるのは嫌だせ?」

 

 ジンオウガは嫌々ながら、椛に言う。しかし、椛は表情を険しくしていた。

 

「それは違うよジンオウガ、それは私達にとって大切な事だよ」

「大切な事?」

 

 椛は頷く。

 

「そうだよ。それは私達にとって生きる為に必要な事、私達の身体を気遣い育てくれる物だよ」

「それはどういう意味だよ?」

 

 ジンオウガは疑問を抱く。そして、椛はジンオウガの下へと歩き、ジンオウガの前に屈むと、ジンオウガの胸に手を当てた。

 

「お、おい!」

 

 ジンオウガは戸惑うも、椛はジンオウガに微笑む。

 

「私達にとって、大切な事、だよ?」

「う……」

 

 ジンオウガはたじろぐ。椛に震えている訳ではない。椛の微笑む姿に意味も解らず戸惑っている。

 そして、椛はジンオウガを見ながら。

 

「それよりもジンオウガ、朝飯の前に、ちょっと待っててくれませんか?」

 

 椛は何故か喜びながら、通路の方へと戻る。ジンオウガは首を傾げるが。

 

「ジンオウガ」

 

 椛は部屋に戻ってくると、ジンオウガに近づく。両手には服とズボンを持っている。

 

「何、それ」

 

 ジンオウガは疑問を抱く目で、椛が自分(ジンオウガ)に見せるように掲げている服とズボンを指差す。

 長袖の黄色いシャツ、水色の長ズボン。椛は「フフ」と可愛らしい笑みを浮かべている。

 それはまるで、自分が選んだ服を着てもらうかのように。それを見たジンオウガは頬を掻きながら唸る。

 

「うーーん、犬走が服って云う身体に着ける物を選んでくれるのは有り難いけど、俺から見ればなーー」

 

 ジンオウガは椛が選んだ服に躊躇する。だが、椛は頬を膨らませながら。

 

「ヒドいっ! 折角、私が一生懸命考えて選んだ服なのにっ!」

 

 椛は怒りながら尻尾をバタハダと動かす。しかし、椛の怒ってる顔とバタハダと動く尻尾は恐いどころか、逆に可愛いと言える。

 ジンオウガは頭を掻きながら苦笑いすると、ヤレヤレと思いながら。

 

「判ったよ、着るよ」

 

 ジンオウガは諦めながら立ち上がる。それを聞いた椛は笑顔になる。

 

「では、着てみてください!」

 

 椛はジンオウガに服を差し出す。ジンオウガは嫌々ながら、椛の持ってる服を受け取ると、服を見る。

 

「……うん?」

 

 ジンオウガは服の背広を見て、ある事に気付き眼を疑う。それは、背広には、黒い筆で雷と書かれている。

 

「犬走、これは?」

 

 ジンオウガは椛に問う。椛は「エヘヘ」と笑いながら手を後ろに当てる。

 

「はん?」

 

 ジンオウガは首を傾げるも、椛は。

 

「早く着てください!」

 

 椛はジンオウガを促す。だが、ジンオウガは視線を服の方へと向ける。

 

「どうやって、着るんだ?」

 

 ジンオウガは本音を言う。それを聞いた椛は「へっ?」と言いながら驚いた。

 そして、ジンオウガは服を椛に差し出しながら。

 

「どうやって着るのか、教えてくれ」

 

 ジンオウガは服を差し出しながら、椛に言う。それを聞いた椛は頭を抱えながら苦笑いした。

 そして、椛は心の中で「ジンオウガ、今までどうやって育ってきたの?」と呟いた事は、ジンオウガは解らなかった。

 

「そ、それは上から被るように着るんだよ」

「被るように?」

 

 ジンオウガは惚けると、椛は頷く。

 

「そうだよ、それはこうやって」

 

 椛はジンオウガから服を取り上げ、ジンオウガの前に立つ。

 

「ジンオウガ、貴方は両腕を上に伸ばして下さい」

「腕?」

 

 椛は頷く。

 

「はい。私が着方を教えるので」

「あ、でも……」

 

 ジンオウガは何かを言いながら、椛を見る。

 

「良いから良いから」

 

 椛はニッコリ笑いながら、ジンオウガに言う。ジンオウガは首を傾げながら、視線を自身の腕を交互に移す。

 腕には何の以上もないが、ジンオウガは両腕を上に伸ばす。それを見た椛は首を軽く縦に振ると、そのままジンオウガの身体に被せるように着させた。

 

「ふがっ、おまふぇっ!?」

 

 ジンオウガは無理矢理、椛に服を着させられるも、服の中で暴れるも、椛は服の長袖をジンオウガの両腕に通す。

 

「暴れないで!」

 

 椛はジンオウガのに言う。が、ジンオウガは言う事も聞かず服の中でジタバタしていた。

 それでも、椛はジンオウガが着ている服を掴む。

 

「うわっぷ!?」

 

 ジンオウガは服の襟部分から頭を出す。

 

「ふぇーーっ、はぇーーっ」

 

 ジンオウガは息を整えると、椛を見ながら怒る。

 

「きさ……!!」

 

 ジンオウガは怒るも、椛はジンオウガの服を整えていた。

 

「お、おま!」

 

 ジンオウガは椛を見て、怒りが消えていくのを感じた。

 それは、今のジンオウガには解らない事である。

 

「良いよ」

 

 一方、椛はジンオウガの服を整え終えると、両手を叩きながら喜ぶ。一方、ジンオウガは息を整えた後、自分が着ている服をマジマジと見た。

 全身が黄色であるが、雷狼竜である事を思い出させる色であり、違和感さえも感じない。

 ジンオウガは服を見続けるも、椛はズボンをジンオウガに渡す。

 

「ジンオウガ、これも着てくれ」

 

 椛はズボンをジンオウガに差し出しながら言う。ジンオウガはズボンを見た。それは水色であるが、肌触りが良さそうなズボンだ。

 ジンオウガは疑問を抱きながらズボンを受けとる。

 

「これは……同じ穿き方で良いのか?」

 

 ジンオウガは疑問を抱きながら、椛にそう言う。椛は人差し指を立てながらウインクする。

 

「そうだよ。それはジンオウガの穿いているズボンと同じ脱ぎ方と穿き方だよ」

「そっか……」

 

 ジンオウガは視線をズボンの方へと移すと、ズボンを下に置くと、穿いているズボンを脱ぎ始め……。

 

「ストップストップ!?」

 

 椛は両手を前に出しながら慌てる。

 

「あん?」

 

 ジンオウガは椛を見る。椛は頬を紅潮しながら、ジンオウガに背を向ける。

 

「私が背を向けている間に穿き替えて下さい」

「何でだよ?」

 

 椛は口ごもりながら、ジンオウガに言う。ジンオウガは首を傾げながら、椛を問うと、椛は。

 

「私は女性です。それに貴方は男性、女性は男性の着替えている所を見たくないのです」

 

 椛はもじもじしながら、ジンオウガに言う。しかし、それは正論だった。

 

「?」

 

 一方、ジンオウガは何も解らず、ズボンを穿き替える。

 

「それと!!」

 

 ジンオウガがズボンを穿き替える途中、椛は叫ぶ。ジンオウガは椛を見るが、椛はジンオウガに背を向けたまま。

 

「今日は幻想郷を案内したいから、人里へ行きませんか?」

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、白玉楼の居間にある食卓テーブル。テーブルには食べ終えたであろう、中身が空の茶碗や汁椀、円い皿、魚の骨だけが残っている細長い皿が三つずつ置かれていた。

 そして、テーブルの周りには幽々子、妖夢、刃の三人は正座している。そして、テーブルに並べられている器は全部、三人が食事を終えた後に残った物だった。

 

「ごちそうさま」

 

 幽々子は喜びながら言う。それを聞いた妖夢苦笑いし、刃は無表情で幽々子を見据える。

 

「幽々子様、子供みたいに喜んでいますね?」

 

 刃は無表情で妖夢に言う。

 

「そうですね」

 

 妖夢も口を手で押さえながら笑う。そうだろう。二人には微笑ましい光景。

 幽々子(主人)の喜ぶ顔を見るだけでも、何故か元気が出る、と。

 妖夢と刃は心の中で思っていると、幽々子は刃を見る。

 

「それにしても刃、貴方は礼儀正しいのね?」

 

 幽々子は解らない事を刃に訊く。

 

「?」

「幽々子様?」

 

 そうだろう。幽々子と妖夢は刃の行儀の良さに驚いていた。その証拠に、刃の御飯の入っていた茶碗には米粒が一粒もない。それに、刃は箸も上手に使っていて、音も立てずに食べていた。それはまるで、彼が迅竜ではなく、一人の人間としか思えない。幽々子はキョトンとしながら、刃に。

 

「刃、貴方に訊きたい事があるんだけど?」

「何でしょうか?」

 

 刃は初めて口を開く。その言葉には少し苛立ちを感じる。それは刃だけしか知らないが。

 

「貴方って、人間の(その)姿になる前は迅竜ナルガクルガよね?」

「はい」

 

 刃は頷く。それに対し幽々子は言葉を続ける。

 

「その時、箸やコップもないのに、貴方は生き物を捕食していたわよね?」

「そうです。俺は迅竜の頃、ケルビを捕食しながら生き抜いていました」

「そう……」

 

 幽々子は何かを考える。それは刃の事。幽々子は紫と共に刃が迅竜(ナルガクルガ)の頃、ケルビを食べているのを見ていた。しかし、あの時は竜の頃の話で、捕食竜にとっては箸やコップなど遠い存在で永遠に知らない物。

 それを刃は箸やコップを知っているかのように上手く使っていた。幽々子は手を顎に当てながら、刃を見る。刃は腕を組みながら天井を仰いでいる。

 

「幽々子様?」

 

 幽々子の様子に、妖夢は疑問を抱く。幽色子はふと視線を妖夢の方へと移す。

 

「何かしら、何でもないわよ?」

 

 幽々子は知らない素振りをする。

 

「……? そうだわ!」

 

 幽々子はふとある事を思い付き、妖夢と刃を見ながら。

 

「貴方達二人にお願いがあるの」

「はい?」

「…………」

 

 幽々子の言葉に、妖夢と刃は幽々子を見る。幽々子は人差し指を立てながらウィンクする。

 

「これから人里へ行って、凄く美味しい御手洗団子を買って来てほしいのよ」

 

 幽々子は嬉しそうに言葉を述べながら、妖夢と刃に命令する。

 妖夢は苦笑いし、刃は首を傾げる。それでも、幽々子は言葉を続ける。

 

「御手洗団子、人里に美味しい御手洗団子がある和菓子屋が出来たのよ。二人共、買ってくれないかしら?」

「ですが幽々子様」

 

 妖夢が幽々子に反論する。

 

「それは貴女の我が儘では……」

「確かにそれは私の我が儘よ? でも、刃を幻想郷に案内出来るじゃない?」

 

 妖夢が言い終わる前に幽々子が正論に近い反論をする。

 

「む……」

 

 それを聞いた妖夢は表情を強張らせる。だが、確かにそうだ。 刃は、まだ外の世界を知らない。もし知っていたとしても、まだ知らない場所があるのかもしれない。

 そうなれば、自分(妖夢)は刃を幻想郷に案内すると云う仕事がある。

 それに知った方が何かと役に立つだろう。妖夢は唸りながら腕を組む。連れて行こうか、と。

 

「ですが幽々子様、それは貴女が得する事ではないんですか?」

 

 しかし、妖夢は何かに気付き、幽々子に問う。それは、幽々子が妖夢に刃を案内させる目的で御手洗団子を買わせる目的ではないのか、と。

 

「違うわよ?」

 

 幽々子は知らんぷりをするかのように視線を逸らす。何かを隠すかのように。

 が、妖夢は幽々子の目的を知ると、その直後、表情を険しくしながら。

 

「やっぱり!! 私達に御手洗団子を買わせる目的だったんですね!?」

 

 妖夢は気付いた。それは幽々子が御手洗団子を食べたいが為に、刃をダシにしたのだ。そして、それを見破られたのか、幽々子は。

 

「だってぇ、食後のデザートだもん! 食べたいの!」

 

 幽々子は泣きそうで怒りそうな表情で、妖夢に言う。が、幽々子の作戦は失敗してしまった事に変わりはない。

 幽々子は両腕を振りながらただをこねる。妖夢は頭を抱えながら悩む。そして、刃は眼を細めながら頬杖を付いていた。

 

 しかしそれは、ジンオウガと刃ーーナルガクルガが人里で会うと云う運命にある事は、誰も知らない。

 




 皆さん、久しぶり、NOです。これを投稿するのに時間が掛かってしまって申し訳ありません。こちらにも色々と都合がありました。そして、皆さんにお知らせです。ジンオウガ、ナルガクルガに続く、第三のモンスターの擬人化を出す事に決めました。
 何を出すかは未定ですが、自分が考えた有力な候補が↓こちらです。

 リオレウス、ブラキディオス、ティガレックスの三名です。(まだ誰かは未定ですが)
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