悲劇の主人公に押し上げられて   作:努力が報われると思ったら大間違い侍

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不定期更新鈍足亀更新。何より駄文駄作何番煎じ。

ストックはないので頑張って週1~2投稿出来たらいいな程度。
ホントアルファって可愛いよね……チュキ


プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腐った肉の臭い。おぞましい掠れた鳴き声。目の前の異形の存在は、ただひたすらに唸り、死臭を放ち、ただただその場に存在するだけの肉塊。

 

薄暗い場所故か、はたまた見た目とも相まってか。残酷なまでに、俺の心は()()を知っているが故に、受けた衝撃は言葉にし難い。ぽっかりと心に穴が空いたような、そんな虚しさがあった。悲しみはあれど、涙は流れていない。どんな表情を今俺は浮かべているのだろうか。

 

 

昨日までは。昨日まではこんな姿ではなかった。こんな声ではなかった。

脳裏に浮かぶのは昨日までの()()。美しい出で立ちで、まるで御伽噺に登場するお姫様のような。儚くて愛らしくて。それでいて芯の通った意思を持つ魅力的な()()()だった。彼女の声は、俺にとっての癒し。透き通った声で名前を呼ばれると、俺はいつもウキウキと胸を踊らせたものだ。

 

例え、()()()()だったとしても、俺は彼女の事を()()()()()。今も。どんな姿になろうと、俺は彼女の事を愛しているのだ。

 

だが。しかし、これは。

 

 

「……なんで、っ。なんでこんな……っ!!!!」

 

 

 

彼女の幸せは()()()()()()()。美しかった彼女はもう何処にもいない。美貌は乱れ、魅了される身体は爛れた肉塊に。彼女の原型は最早留めておらず、彼女の美しさはヘドロに様変わりしてしまった。

 

 

意思があるのはすら分からない。そもそも唸るだけで微動だにしていない。動けないのか、動く意思がないのか。前者ならまだいいが、後者ならば。

彼女という存在は、完全に消滅してしまったと同義。それが、その事実が堪らなく怖かった。

 

 

彼女は磨かれた美しさを。幸せを失った。親友の許嫁だった彼女だが、親友が彼女の今の姿を見て関係を絶った。流石に腹が立つが、結局それが現実だ。本人がそう望むのであれば、俺は何も言えない。

 

だがそれでも、将来を誓い()()()親友と、()()()()彼女を想っていた俺とで、どうして彼女への愛が変わってしまえるのだろうか。

どんな彼女でも愛せるのではなかったのか?

お前は美しい彼女しか見ないのか?

俺は彼女をこんなに想っているのに、どうしてお前はそうやって簡単に切り捨てられる!!

 

悔しい。無力な俺が憎たらしい。あの楽しかった日々を、呆気なく終わらせてしまうなんて。あんなに幸せだった時間を、こうも簡単に崩せるなんて。

 

 

彼女は所謂、()()()()と呼ばれる姿に変わったのだ。様々な噂はあれど、こうなってしまったら最後残されるのは死、のみらしい。

 

苦しいのか、何も感じないのか。俺には彼女がどんな事を思っているのか分からない。しかし、せめて彼女の辛い現状を早く終わらせる為に、俺は彼女を()()してあげなければ。

せめてもの救いを込めて。役不足ではあるが、俺が彼女を()()()終わらせてやる。

 

 

愛刀を掲げる。()()を込め。せめて一撃で逝けるよう、己の全てを込める。

集中する為に目を閉じる。呼吸を整え、全身の魔力の動きに注力する。集中、集中。魔力を込め、想いを込め、追悼を込め。彼女の事を愛するこの想いを、剣に込める。

手が震える。緊張か、拒絶か、悲しみか。分からないが、集中すればする程、手の震えは大きくなっていく。刀身を巡る魔力が膨張し、薄暗かった部屋が段々と赤く灯されていく。

 

 

別れの言葉は無い。せめてものを込めて、心の中で懺悔を述べ、思い出を思い出しながら、俺は剣を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

━━━━━ありがとうっ。またねっ!!

 

 

 

 

 

━━━━━っ。

 

 

 

 

 

最後の最後に。彼女の笑顔が脳裏を過ぎった。

何の変哲もない、夕暮れ時の笑顔の君。

 

 

いつの間にか涙を流していた俺は、それでも振り下ろす手は止めず、()()を纏った剣を力いっぱい振り下ろした。

 

 

 

 

後にも先にも、大声で泣き喚いたのは、今日この時だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「━━━━━凄まじい斬撃」

 

 

魔力の跡を追ってみれば、そこは破壊された地下牢の残骸。天井が崩壊し、数メートルまで続く地面を抉ったであろう斬撃の跡がそこされたのみとなっていたが、この場に来た理由はこれを見る為に来たのではない。

 

ここに幽閉されているであろう()()()()の回収。その為にやって来て見れば、ご覧の有様である。

 

 

「誰がやったのか、という疑問より、どうしてこうなったのかという理由の方が重要ね。悪魔付きを殺し回るなんてのはそうそう聞かないけど、()()関係であるなら、見逃す事は出来ない」

 

「しかし、ここまでの規模。流石に()()でも起こさないのでは?」

 

「確かに。目立つ事を嫌う()()なら、ここまで派手な事はしないでしょう。じゃあ別口?()()()()()?」

 

 

可能性はゼロではない。同じ考えを持った組織がある可能性考えられる。他の組織と手と手を取り合えるかは不明だが、これは早急に対応しなければならない。

 

 

「……この、威力。悪魔付きでも、ワンパン」

 

「……威力。他になにか分かるかしら?」

 

「……斬撃、だけじゃない。……溶解?溶けてる?ココ。この地面……。コレ、相当の熱量」

 

 

綺麗な切り口では無く、切断面がドロっと溶けているのが分かる。これが何を意味するのか。彼女達は早々に理解する。

 

 

「……詰まり、魔力を()()出来るほどの魔力操作を持つ存在がいる。と言うことね」

 

「……ん。マスター、よりも……ヤバいかも……」

 

 

自身の主よりも強大な存在。思わず彼女達は戦慄した。慕い崇める主よりも強いとなれば、更に放置など出来るはずもない。最重要事項として扱う必要がある。

 

しかし、1人だけ考えが纏まらないような表情を見せる。その場にいた全員が疑問を浮かべる。

 

 

「……()()()()様?どうか、した?」

 

「……え?あ、いえ。……そうね。少し考えていたのよ」

 

「一体どのような事を?」

 

 

首を傾げる全員に、アルファと呼ばれた少女は、床に屈むと溶解して冷え固まった床を名残惜しそうに撫でる。

 

 

「……ふと考えていたのよ。あくまで、これは私の戯言。でも、この状況を見た時、思ってしまったのよ」

 

「何か思い当たる節があるとか?」

 

「……いいえ。まず、崩壊してるとはいえ、明らかに争った感じは無いことから、この場にいたのは悪魔付きの子とこれをやった張本人のみ。鉄格子が無傷だから見張りのような存在とも交戦する状況ではなかったのでしょう。そして、多分この辺り。悪魔付きの子がいたのはここよね」

 

「恐らく……そう。でも、何故?」

 

()()()。貴方言ったわよね。この魔力残滓は悪魔付きも殺せる程って」

 

「うん。そう」

 

「どうしてそんな威力で魔力を放出したのかしら?悪魔付きを殺しまくるような連中なら、さっき言ったようになるべく隠密行動するでしょう。何があったのか、第三者の目や耳に入れば、後処理は面倒でしょうね。でもこれは、明らかにそれ考えたものではない。少なくとも、悪魔付きを殺し回るような連中が起こしたことでは無い」

 

「ではやはり我々のような組織的行動とは違う、個人での行動だと?」

 

「ええ。正直、幻想が勝って私自身馬鹿みたいに思えてしまうのだけれど」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━きっと、これをやった張本人は悪魔付きを殺して()()()()()()のでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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