異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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※申し訳ありません。投稿が漏れていましたので最新話と併せて投稿致します。ご迷惑をお掛けしました。


第十話 お貴族様が何の用事ですか?

 

 

 

 

 

 

「───ここで合ってるよな?」

「ええ、副支部長が教えてくださった宿屋です。間違いありません」

 

 

 あれから書類の記入も無事・・・・・・クインに代筆してもらい、晴れてカーツ少年も冒険者の一員になった。首からぶら下がる銅色のドッグタグがカチャリと揺れる。それに気を良くしながら、当座の拠点になる予定の宿を訪れていた。

 

 外見こそ質素だが、中身は手入れの行き届いた清潔なものだった。なるほど、ギルドから紹介されるのも納得だ。下手すると現代日本のホテルにも負けてないんじゃないか?

 

 

「───あら、いらっしゃませ!そのお髪に背格好・・・・・【蒼の防人】さまとお付きの方ですね。お話は伺っておりますよ。2階の二部屋をご用意させていただきました。勿論お代は既に頂戴しておりますので」

「・・・・・・門番さん、か?」

「正確には、門番さんから報告を受けた子爵様本人からかと。特に口止めもしていませんでしたし」

 

 

 通されたのは、見るからに金が掛かった豪勢な一室だった。その前に案内された俺の部屋も綺麗だったが流石にランクが違う。恐らく貴族様がお忍びで使う部屋か何かなんだろう。

 

 

「・・・・・・すみません、カーツさん。どうやら誤解を与えてしまったみたいです。もし良ければお部屋を交換しますか?」

「いやいやいやいやっ!?誤解ってか当然の反応だろ。二人で並んだら俺みたいな田舎モン、よくてコマ遣いだって。貧乏性にはさっきの部屋で充分過ぎる。こっちじゃかえって気疲れしそうだ」

 

 

 釣り合わないってのなら、これから評価を付けていくだけだ。カーツ少年なら出来るさ、頑張るのは俺だけど・・・・・・急に不安になってきたな?

 

 荷物を置いて一息つく。日本に居た頃じゃ見たこともないない調度品を見て回っていると、クインがお茶を淹れてくれていた。素人でも分かる香りの良さと味を楽しんでいると、さっき案内してくれた女将さんが再びやってきた。

 

 

「失礼いたします。お食事はお部屋か食堂、どちらでお取りになりますでしょうか?」

「食堂で構いませんか?誰かと一緒に食事をするのに憧れてまして」

「それ聞いて拒否出来るヤツ居る?俺も一人は味気ないからな、喜んで付き合うよ」

 

 

 そう返事すると、何とも言えない表情で了承された。ぼそっと「従者と貴公子の禁断の愛・・・・・・?」とか言ってたけど大変な誤解だ。クインに色んな意味で失礼過ぎるだろ。

 

 

「───あらやだ、肝心なことを忘れておりましたわ。巡回の憲兵さんからお手紙を預かってますの。お返事は私にいただければお送り致しますわ」

「ありがとうございます。すぐに拝見させていただきます。返事はそれからで」

 

 

 おぅふ、そりゃタダで宿止めてくれるだけな筈無いよな。お手紙ってのは十中八九子爵サマからだよな。クインが手早く確認してみると、中身は予想通りの内容だった。

 

 

「───どうやら子爵様からの会食のお誘いみたいですね。明日の午後を希望されてますが、どうされますか」

「どうされますも何も、受ける以外の選択肢なんて無い・・・・・・よな?」

「ああいえ、指名されているのは私だけなので。カーツさんの予定を聞いておこうかと」

「そんな友達甲斐の無いこと言わないでくれよ。迷惑でなければ同席させて欲しいんだが?」

 

 

 テーブルマナーとか分からんし、それこそ従者みたいに後ろに控えてることしか出来ないかもだけどよ。流石に一人でお偉いさんのとこに行かせるのはナシだろ。

 

 

「・・・・・・ますます誤解させてしまいそうですが、分かりました。ありがとうございます」

「そんじゃ明日は一日予定を空けとくか。向こうも用事が挨拶だけか分かんねぇしな」

「───あ、一つ忘れてました!貸衣装を頼んでおかないと。多分あちらが既に手配しているかもしれませんが、万一ということもありますから」

「おお、そういやそうだ!幾ら何でも、旅装で貴族様の前には立ちたくねぇよな」

 

 

 着いて早々バタバタしてるが、こういうのも旅の醍醐味ってヤツだろう。食堂で夕飯を済ませてから、女将さんに返事を事付けてから宿を出た。

 

 目的の服屋へ行く道すがら、せっかくなのであちこち見て回ることにする。日が沈んでも大通りは賑やかで、出店を冷やかしたり買い食いしながら夜の街を存分に満喫することが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───そんなこんなで、あっという間に翌日だ。迎えにやってきた馬車に同行してた使用人さん達の手で着付けされた俺達は、街の中央にあるデカい屋敷へとやって来た。

 

 

「───此処がラリマー子爵のお屋敷か。遠目にも見えたがやっぱ凄いな。語彙力のねぇ感想だけどさ」

「ええ、庭といい装飾といい実に洗練されていますね」

 

 

 ほう、目の肥えてるだろうクインから見てもレベル高いのか。俺だけ場違い感がヤバいが、気後れしてる場合じゃないな。ちゃんとクインをサポートしねぇと・・・・・・全然必要なさそうだけど。

 

 初老の執事さんらしき人に先導され、屋敷の奥へと進んでいく。物凄くフカフカしたカーペットに気後れしていると、屋敷の中でも一際豪華そうな部屋へと辿り着いた。

 

 

「これはこれは、ようこそおいで下さった!ラリマー家17代当主、エイブラハム・ラリマーにございます」

「クイン・セレストゲイルです。本日はお招きいただき感謝します」

「なんのなんの、我が街にお越しいただいたのだから当然のこと。ご挨拶一つせずに放置などしては、日頃貴方達に救われている住民に示しが付きませんからな」

 

 

 通された中に居たのは、見るからに貴族って感じのふくよかな御仁だった。髪はちょっと後退気味だが、太ってるというより貫禄があるって感じだ。

 

 城のように堅固な街を仕切る貴族サマだが、俺の方を見る視線はとても穏やかだ。寧ろ親しみすら感じた。理由が分からず落ち着かないでいると、向こうの方から声を掛けてきた。

 

 

「そして、君のことも聞いておるよカーツくん。実に向上心のある若者だと」

「えぇっ!?ままま、まさか子爵閣下のお耳に入っていたなんて、こ、光栄です!!」

「そう堅くならずとも良い。楽にしてくれたまえ」

 

 

 まさかこっちに話し掛けて来るとは思わなかった。心の準備が出来てない所為でつい変な声が出た。いや本当に、俺のことまで耳にしてたなんて思いもしなかった。

 

 そんな俺に気安く微笑みかけながら、子爵さまは俺達を席に勧めてくれた。クインに着いていきながら着席すると、後ろから使用人っぽい人達が次々入ってきた。

 

 

「では早速、食事と参ろうか。我がラリマー領自慢の卵料理を味わっていただこう」

「御馳走になります。とても楽しみです」

 

 

 机の上に次から次へと料理が運ばれてきた。内容は結構見覚えのある感じだ。卵リゾットに茶碗蒸しみたいなものから、カルボナーラ的な麺類まで。

 

 こういっちゃ何だが、貴族のお食事って感じはしないな。もっとコース料理みたいなのが出てくるイメージだった。量は物凄いことになってるけど。

 

 

「ふふ、私の好物であり自慢の郷土料理を用意させた。お口に合うと良いが。行儀作法はとやかく言うまい、今日は無礼講だよ」

「ご配慮、ありがとうございます!」

「うむ、さあ熱いうちにいただこうじゃないか。話は腹を満たしてからだ」

 

 

 そう言って乾杯し、丁寧な所作なのに凄まじい速さで平らげていく子爵様。ちょっと唖然としてから、俺もフォークで食べ始める。

 

 

「───え、美味っ!?あ、失礼しました・・・・・・」

「はっはっはっ!そうだろうそうだろう!!コレはラリマーチキンの卵でね。私の祖父は食いしん坊の食い道楽でね。いつからか衛生面の管理を徹底し始めたのだが、気付けば鮮度の良い食品が特産になってしまったのだよ」

 

 

 しまった、食事中は無言で食べるのがマナーだって聞いてたのに・・・・・・やっぱり付け焼き刃じゃモノにならねぇよな。寛大な御仁で助かった。

 

 それはそれとして、やっぱり超美味い。味が滅茶苦茶濃厚だし、多分塩も高いヤツ使ってるだろコレ。さっきからフォークとスプーンが止まらん。食が細いクインも結構なペースで食べてるし。

 

 

「───うむ、良い食べっぷりであったな。食事を共にしていて清々しい程だ。やはりこうして複数人で過ごす食事は良いものだ」

「御馳走様でしたラリマー卿。どれも絶品で少し食べ過ぎてしまいました」

 

 

 食事も滞りなく終わり、今度はお茶と会話を楽しむ時間といって応接室へ移動した。まあ俺達は楽しんでる場合じゃないかもだが。此処からが今日の本題だ。

 

 

「───それで防人殿、我がラリマーの地を訪れたのはどういった用向きかな?新しい浄化の任務であれば、此方も支援を惜しみませんぞ」

「ああいえ、今回の来訪は完全に私情によるものなので。ご不安にさせてしまい申し訳ありません」

「なんと、それはつまりバカンスという奴かな?この街を選んでいただけるとは実に光栄だ」

 

 

 ああ、なるほど。考えてみればいきなりセレストゲイルがやってきたら、まずそこを心配するか。まあ相手からすればクインの現状なんて知る訳ないし、当然の反応だよな。

 

 

「そういうことなのでラリマー卿、此方に滞在する間のことは───」

「【蒼の防人】としてではなくただのクイン殿として対応すればよろしいかな?みなまで言わずとも、休暇中の貴人に仕事を横槍する真似はさせぬ。ごゆっくり羽根を伸ばしてくれたまえ」

「感謝しますラリマー卿。ですが有事の際は遠慮なく言い付けてください。せめてご厚意のお返しくらいはさせてください」

「いやはやクイン殿は真面目でいらっしゃる。我が息子達にも見習わせたいものだ」

 

 

 おや、息子が居るのか。だが食事には同席してなかったな。こういうのって、次期当主かその候補者は顔繋ぎに出てくるもんじゃないのか?

 

 俺は何処に出しても恥ずかしい庶民なので、話を振られない限りはお口チャックだ。その分周りを観察する余裕はあるんだが、子爵さまの表情はさっきまでと違って憂鬱そうだ。

 

 

 

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