───ひとまず俺の仕事は療養することに決まった。医療スペシャリストなお坊さん達に代わる代わる光属性魔法を受け続ける、それを朝昼晩に1回ずつ行う。
思えばプロの施術を見学するのはトゥエルブさん以来だな・・・・・・そういえば【明星】の人達はどうしてるんだろうか?あの親玉野郎の話から察するに、今頃トゥエルブさんが居なくなって大騒ぎだろうけど。
まあそのことは後で考えるとして、今まで腰を据えて光属性魔法を学ぶ経験はなかった。せっかくの機会だからしっかり勉強させてもらおう。
「───魔法を行使する上で重要な要素は三つ。"知識"、"知覚"、そして"想像力"です。魔法で起こしたい結果の過程を知っていれば、無意識の情報を使って勝手にある程度実現してくれます」
「・・・・・・確かに、魔力がどう作用するかまでは一々考えませんね」
「えぇ、ただしそれ故に完成図を描く能力が低ければ、魔法の齎らす成果も著しく低減します。また自身の魔力操作で出来ることを弁えてなければ・・・・・・酷い言い方になりますが、身の丈に合わない魔法を使えば結果は悲惨なことになるでしょう」
なるほどなぁ、俺はノア少年の魔法があったお陰でそういう試行錯誤はあんまり経験がない。既に覚えてた魔法からそれほど逸脱させてないからな。
あんまり自覚してなかったけど、魔力の使い方を変えただけで燃費や難易度は上げてない。分かりやすい失敗をしてこなかったのは、ノア少年が積み上げてきた経験があったからこそだろう。
「───しかし、貴方は魔法に名前を付けて行使するそうですね?更には多種多様な形で運用されるとは、我流ならではの斬新な方法と言えるでしょう」
「そうなんですか?そもそも魔法使いをあんまり見たことがないんで・・・・・・そんなに変わってます??」
「はい、魔法使いは自分にあった魔力運用を無意識で感じ取るものです。光属性であれば治療、解毒、解呪のどれかといったように。一つを極めようとするのが主流であり、新しい魔法を考えるという発想自体が特殊なのです」
うーん・・・・・・その辺のところは"故郷"での先入観が悪さした形になるか。だってRPGとかなら魔法使いって色んな魔法を覚えるし。それに前世やってた仕事も浅く広くって感じだったから尚更だな。
「貴方のその発想はどちらかと言えば【魔技】に近い発想でしょう。アレは身体に魔力を流して強化するだけでなく、用途に応じた様々な動きを設定し再現する技法なので」
「そう言われてみれば、確かに・・・・・・しかし今の物言い的に、魔法を研究したり研鑽するのはあまり推奨されてないんですね」
「やはり対魔物や軍事といった血生臭さが拭えませんからね。下手なことをしていると貴族や王族、それから【浄血】等に眼を付けられますよ」
あぁ、そういうこと。既存の技術で不足がないんだから、創意工夫をしてること自体が謀り事の疑義になってしまうのか。オニキスフレアが暴走してた頃なら尚更だ。
・・・・・・だからこそ、【
───まあそんなことは置いておいて、受けてみるとやっぱりプロは違うなって実感するよ。単に傷を塞ぐ速度とかなら、長杖込みの俺もそう負けちゃいない。だけど身体への負担の少なさや復元度とかの"質"は段違いだ。
「・・・・・・勉強になる」
「はははっ、そういった修行で訪れる方も少なくありませんよ。まあ一番多いのは体力強化と護身術の習得の為ですが」
そりゃそうだよな。以前にも触れた気がするけど、ゲームとかなら兎も角、現実世界で戦闘能力皆無な回復役とかあり得ない。
ノア少年がその典型だったけど、実力主義で粗暴な集団に放り込めば搾取の対象でしかない。教会の威光があってもやる奴はやるだろうし、施療院とか教会勤務とかじゃない限り自衛手段は必須だ。
「───さて、朝の施術は以上になります。お疲れ様でした」
「ありがとうございました。お昼もよろしくお願いしますね」
脱いでいた上着を着直し施術室を出る。寺院で借りた作務衣っぽい衣装は片腕でも脱ぎ着が楽で助かるよ。
治療が終わった後は図書室に通うのが最近の習慣だ。どうやら色んなお坊さんが思考整理や修行の一環で書いてるらしく、正直光属性に限れば王立学校より充実してる。
しかも難解な専門書と違って、後輩やお弟子さんにも分かるように書いてあるからとても読みやすい。さて、今日はどんな本にしようかな・・・・・・うん?
「───」
「───」
「・・・・・・珍しいな、図書室で騒ぐ奴が居るなんて。新入りのお坊さんとかかな?」
入り口に居る管理者の方を見るが、苦笑して肩を竦めるだけだ。どうやらこの程度なら摘み出す程じゃないらしい。懐が深い。
俺も大して気にするつもりはないんだけど、ちょうど見たい内容があの辺にあるんだよなぁ。仕方なく近寄ってみれば、見知った顔達が喧々諤々の論戦を交わしていた。
「だぁからぁ、何で吹っ飛ばしたり伸ばしたりしようとすんだよ!?掴んで握ってが第一義だろうが」
「いやいやいや、だってあのカーツさんだよ?腕を弓矢みたいに飛ばしたり、火炎放射機能くらいは付けた方が良いでしょ?」
「・・・・・・・・・」
其処に居たのはトマス殿とフォウ・セレンディバイトだった。もう出歩いて大丈夫なのかとか、どうやら俺に関する話らしいとか、聞きたいことはあったんだけど全部頭からすっぽ抜けた。
「───おや、これはちょうど良いところに。使用者の要望も聞きたいところだったんだ」
「おいユークレス卿、こんなイカれた変人今まで何処に隠してやがったんだぁ?」
「・・・・・・・・・帰って良い?」
見なかったことにして踵を返したが遅かった。スカスカの袖を握られて逃げるに逃げられない。
「いつも一緒に居る防人はどうしたんだ?喧嘩でもしたかぁ?」
「クインは体力付けたいからって僧兵さんに混じって鍛錬してるよ。流石に此処なら襲撃もないだろうしな」
「それは尚のこと都合が良い。今をときめくユークレス卿の装備について話してたんだ。過保護な護衛が居ないうちに、危ない道具について相談させてよ?」
獲物を狙う目でトマス殿が見上げてくる。やべぇ、引き剥がしてとんずらしたいけど借りが多過ぎて無碍に出来ねぇ・・・・・・!?
取り敢えず、危機察知能力と直感に従うこと。この二つの習得が目下の課題だなちくしょう・・・・・・。