異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第十四話 不穏な情報が入ってきました

 

 

 

 

「挨拶もまだだったな。俺はライル、こんなだけど【一番星】ってパーティのリーダーをやってる」

「カーツだ。多分アンタ達の後輩だがこうして治癒士の端くれをさせてもらってる。それで、いったい何があったんだ?」

 

 

 握手を交わし、椅子を用意してから改めて事情を聞いた。本来なら快活そうな少年は、視線を下げたまま沈痛な面持ちで話し始めた。

 

 

「・・・・・・簡単な依頼の筈だったんだ。中央に続く街道の巡回だ。もちろん、街のすぐ近くに限定された範囲だけど」

「見ての通り、わたし達【一番星】は結成して日の浅いひよっこ集団よ。だからライルは安全には殊更気を遣ってたわ」

 

 

 途中から弓兵らしき女の子も会話に入ってきた。痛々しい有様だが、怪我自体はそこまで酷くなさそうだ。

 

 中央へと続く街道は流通の要所で、ギルドが複数のパーティに依頼を出して異変がないか常に調べてるらしい。もし何か見つけたら、速やかに憲兵へ通報し子爵家と共同で対処するんだとか。

 

 コイツらが受けた依頼は、そんないつもの仕事だったらしい。ゴブリンなんかの対応出来る相手のみ退治して、少しでもきな臭い場合はすぐ撤退するつもりだったそうだ。

 

 

「依頼で指定されてた範囲も見て回って、さあ帰ろうかって時にミナ───俺達の斥候(スカウト)が足音を聞いたんだ」

「ええ・・・・・・気の所為かと思ったんだけど、木材とかをよく調達してる雑木林だったから。念の為調査しようってことになったの」

「足音に斬り傷・・・・・・賊と遭遇でもしたのか?」

 

 

 自分で言っててなんだが、可能性は低そうだ。俺の居た世界と違って、こっちには魔物が棲息してる。武器を錆び付かせるくらい追い詰められた一団じゃ、人間を襲う前に魔物の餌食だろう。

 

 

「───アンデットよ」

「アンデット?死体が起き上がって魔物化したっていう、あのアンデットか。何でそんなところに」

「知らないわよ。けど、アンデットは放っておいたら瘴気を撒き散らす厄介な存在よ。相手も一匹だったし、慌てて追いかけたわ・・・・・・それが致命的な過ちだって気付いた時には手遅れだった」

 

 

 そのアンデットはライル達を見るや一目散に逃走したとか。その事実に多少訝しんだものの、彼らは見失って被害が出ることを恐れて深追いしてしまったらしい。

 

 確かに迂闊な判断だろう。低級のアンデットは知能が獣以下で危険予測も碌に出来ないらしい。それなのに人間を襲いもせず逃げるなんて不自然だ。確かにこの時点ですぐ報告しに戻るのが最善だった。

 

 とはいえ、あくまでそれは結果論だ。そもそも知性を匂わせるアンデットへの対処を、しかも経験の浅い冒険者に初見でやれってのも難しい話だ。それに冒険者パーティが逃げ帰る程の脅威を発見し、その情報を持ち帰れたのは大金星と言って良い筈だ。

 

 

「追いかけた先には、似たようなアンデットが10体以上居たわ。まんまと誘い込まれたわたし達は尻尾を巻いて逃走、散々追撃されてこのザマよ」

「デニスは殿を務めて俺達を守ってくれたんだ。最後の最後、雑木林を抜けて油断した俺を投げ斧から庇って・・・・・・」

「そいつは災難だったな。けど結局犠牲者は出なかったんだ。後悔する気持ちは分かるが、次はどうすればもっと上手くいったか考えた方が良いんじゃないか?当事者でもないのに勝手なこと言って悪いが」

 

 

 なるほど、暗い表情なのは自責の念からか。俺ももしクインが自分を庇って傷ついたとしたら、後悔する気持ちは凄く共感出来る。

 

 とはいえそれで潰れて冒険者を辞めたらされると困る。今この街には冒険者が不足してる。辛いとは思うが、デニスとやらが完治するまでに何とか立ち直ってもらいたい。

 

 

「・・・・・・いや、治癒士さんの言う通りだ。リーダーの俺が、みんなの命を預かってるんだからな。正直まだ気が動転してるけど、何とか早めに気持ちを切り替えてみせるさ」

「是非そうしてくれると助かる。そんじゃこれ、忘れずサインしてってくれ」

「ああ、もちろん・・・・・・う、やっぱり結構な値段がするよな」

 

 

 当たり前だ。技術料を下手に値切ると同業に迷惑が掛かるんだ。唯でさえ良い感情向けられてないんだし、価格競争仕掛けたなんて言われるのは御免だ。

 

 入って来た時よりはマシだが、ライルは青い顔色で名前を記入してた。まあ予算で一喜一憂するのも代表経営者の務めだ。何とか頑張ってくれ。

 

 

「うーん、今月の支払い大丈夫かな・・・・・・?新調したばかりだけど、俺の武具を担保に───」

「ばっかじゃないのッ!?今さっき死に掛けたのよわたし達!なのにより死にやすくなってちゃ世話ないわよ!!」

「そんなこと言ったって、じゃあどうすんだよミナ。幾らタフだって言っても、デニスは暫く療養だ。それまでの生活費だってあるんだし・・・・・・」

 

 

 そういう込み入った話は自分達の拠点でして欲しいんだけど・・・・・・仕方ない。前途ある若者の為に、少しだけ融通利かせてやるか。さっきはつい生意気なこと言っちまったし。

 

 

「しょうがないなぁ、ツケといてやるよ。この兄さんが元気になったら、俺の依頼をタダで受けてくれ。そいつで勘弁しといてやる」

「ほ、本当か!?ああでも、気持ちは嬉しいんだが・・・・・・釣り合わない依頼は勘弁してくれよ?いや、偉そうなこと言える立場じゃないんだけどさ」

「分かってるよ。ちょいと手に入れて欲しいモンがあるだけだ。先に金が出来たらそっちでも構わない」

 

 

 書いてもらった小切手にバッテンと指印を付けて無効にする。この二週間でそれなりに報酬も溜まったし、治療費を勉強する程度の余裕はある。

 

 コイツらがどの程度ラリマーでの生活が長いのか知らんけど、俺よりはツテもあるだろ。期限を区切るつもりはないし、上手くいけば御の字ってところか。

 

 

「ただし、今回は偶々自分でやりたくない用事があったから特別だ。次はしっかり払ってもらうから、甘えるんじゃねぇぞ?」

「もちろんだ!この恩は忘れない。もし困ったことがあったら言ってくれ。可能な限り協力するよ」

「はいはい、その時までについ頼りたくなるくらい強くなっててくれよ」

「言われるまでもないわ。今回の失敗を教訓に、必ずラリマーを代表する冒険者パーティになってやるから!」

 

 

 そういって【一番星】の面子は帰っていった。デニスは絶対安静ってことで預かったが。こりゃ宿に帰るのは明日だな。

 

 取り敢えずギルドに連絡入れるのと、それから空いた時間にまた【触媒】を作り直さないと。【一番星】の連中は本当にツイてたよ。

 

 

「クイン、今日は助かった。すまんが宿から夕飯を包んでもらってきて良いか?今夜は泊まり込みだ」

「分かりました、私の分もお弁当にしてもらってきますね」

「いや、お前は向こうでゆっくり食べて寝てくれよ。人手は別に要らないんだし」

 

 

 当直スペースは2〜3人寝られるくらい広いけど、宿屋のベッドほど寝心地は良くない。俺に付き合ってくれなくても───『コンコン』───はぁ、今度は何だ?

 

 

 

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