異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第十八話 次から次へと・・・・・・

 

 

 

 

 

「───何やっとるんだこの馬鹿者共がぁッ!!!」

 

 

 

 はい、まだ3回目なのにすっかり通い慣れた気がする応接室で、開口一番副支部長に怒鳴り散らされました。ご心配をおかけし本当に申し訳ない。

 

 

「お前さん達が依頼を真剣にこなしてくれとるのは分かる!受付は討伐証明の仕分けで大賑わいだからな。だが1週間も行方を晦ます奴が居るかぁッ!!」

「はい、ごもっともです」

「特にウォルフッ、護衛で先輩冒険者のお前が新人を諌める立場だろうが!狼煙一つ上げれば済む話を、何考えとる!!」

 

 

 クインと一緒にソファで縮こまってひたすら謝罪に徹する。こういう時変に口答えするもんじゃない。嫌味や悪意が混ざってるなら聞き流したり反論もするけど、この人は本気で俺達を心配してくれてたのは語気で分かるし。

 

 ちらっと横目でみると、ウォルフの方は無表情で何考えてるか分からん。頭にデカいタンコブは出来てるけど。

 

 

「あの、私達全員の責任なのでウォルフさんには穏便に───」

「そういう話じゃないわい。此奴が三等級で満足しとるなら拳骨一つで済む話だ。だが仮にも二等級の看板狙っとるなら、後ろにおるモンの安全に気を配れんと話にならんわ」

「あー、その通りっすね。面目ない」

「そう思うならもうちっと神妙な顔せんか!まったく、次同じことしたら四等級に降格させるからな」

 

 

 そう釘を刺し、これでこ説教は終わりだと副支部長がため息を吐いた。水の入ったグラスを一気に呷ると、さっきまでの怒りを鎮め冷静な声音で話を再開させる。

 

 

「お前さん達のお陰で多くの手配魔物を討伐出来た。依頼達成もそうだが、何よりこれで街の脅威が取り除かれつつある。ギルドを代表して礼を言うぞ。よくやってくれた」

「ありがとうございます、ラングレー副支部長」

「これで()()()()()()()()()()()も達成間近だわい。浮き足立つかもしれんが、仕舞いこそ寛容だ。気を引き締めてかかれ」

 

 

 副支部長の言葉を聞いて、工作が上手くいっているんだと胸を撫で下ろした。いまや指名手配魔物の討伐依頼は、子爵令息からの依頼ではなく子爵閣下本人の依頼になった訳だ。

 

 幾ら断りようが無い依頼だったとはいえ、このまま進めたらトマス派に利することになるし下手すりゃ長男派閥と因縁が出来てしまう。その対応策として副支部長がやってくれたのが、より上位者の依頼だったことにするって荒技だ。

 

 

「しかし、副支部長の用意が上手くいって何よりだ。よく子爵閣下本人を動かせましたね?」

「そこはお前さんが持ってた免状のお陰だな。アレで面倒な手続きが全部すっ飛ばせたわ。閣下も息子がコソコソ動いてるのは察してくださってたお陰で話が早かった。面倒も多かったが、領主さまに貸しを作れたってモンだ」

 

 

 ケラケラ笑いながら報告する副支部長を見て、数えるのも億劫になった安堵のため息が漏れる。トマス派の顔を潰さずに依頼を遂行するとなると、より上位の人間による介入は不可欠だった。

 

 子爵閣下が快諾してくれたお陰で、"元々受けていた子爵閣下の依頼に集合させてもらった"という体裁が整えられた。とはいえ、手放しで喜んでもいられない。

 

 念の為にと渡した免状が早速使われる事態は、子爵にとっても愉快な話ではないだろう。それに手柄を横取りする様な真似をした以上、何かしらで埋め合わせする必要もあるからな。

 

 トマス派のやったことそのものは、表向きは来たばかりの新人冒険者にも仕事を与え街の安全に貢献させただけだ。そして実際に成果を上げた以上、結果論だとしても無茶振りで詰めるのも無理筋だ。独断専行は褒められずとも、結果そのものは評価せざるを得ないだろう。これで長男派閥が余計なこと考えなきゃ良いけど。

 

 

「そういう訳でだ、今んところ次男坊は大人しくしとるだろ。だからしっかり準備を整え、依頼にだけ集中してくれ。おっと、集中し過ぎて定期連絡サボるのは無しだからな!」

「はいはい、しっかり反省しましたっての。それじゃカーツにクイン、俺はこの辺でお暇するわ。そんじゃあまた今度」

「ああ、お疲れさまウォルフ」

「ゆっくりお休みになってください」

 

 

 ヒラヒラと手を振って部屋を出ていくウォルフ。そんな彼の背中を、ラングレー副支部長は感慨深そうに眺めてた。

 

 

「───どうやらお前さん達とは上手くやれているようだな。アイツが同僚の名を呼ぶのは何時振りかね」

「そうなんですか?とても優秀で気配りも出来る方でしたが」

「そうそう、【魔技】についても色々アドバイスくれたし」

 

 

 本人は謙遜してたが、下手に分かり辛い説明より実際にやってみせてくれる方がずっと勉強になった。しかも頼んだら何回でも実践してくれたしな。

 

 俺がゴブリン一匹とはいえ自分の力だけで倒せたのは間違いなくウォルフのお陰だ。もちろんクインの優しい言葉も励みになったけど。

 

 

「ほほう、随分気に入られたじゃねぇか。アイツが他人を手ずから指導するなんてな。あの通りデキる男なんだが、家名やら何やらの所為で中々上手くいかなくてな。どいつもこいつもウォルフと仲良くなる前に詮索し始めたり、あるかどうかも分からんコネを頼ろうとしたりで散々だったそうだ」

「それは・・・・・・ウォルフじゃなくてもブチ切れるだろ?会ったばかりの人間に聞く話じゃねえよ」

「その辺の機微が分かる奴が少なくてなぁ。見ての通り腕っ節だけを頼りに寄せ集まった組織だからな。他人とは力の有る無し、つまりは上下関係でしか接することが出来ねぇバカは少なくねぇのよ」

 

 

 あー・・・・・・喧嘩上等の暴走族を何チームも集めて集団行動させる様なモンか。いやでもそこまで民度悪くない、よな?

 

 どうやら【明星】の人達は色んな意味で上澄みだったらしい。中には厄介そうな人も居たけど、基本エッジ団長には忠実で統制も取れてたしな。

 

 

「まあ俺も気になるかって聞かれたら普通に気になるけどさ。相手から話してくれるのを待つのが筋じゃないか?迷惑被ったとかならともかくとして」

「お前さんがそういう気遣い出来る奴で良かったぜ、ホント。まあそういう訳だからよ、良ければこれからもアイツと仲良くしてやってくれや!」

「それはこっちとしても是非・・・・・・ところで、話は変わるんだけど支部長ってラリマーに居ないのか?そういえばまだ一回も会ったことないなって」

「あー、言ってなかったかそういえば。ボスは今、例の北の迷宮で精を出してんだわ。ギルドの責任者がお家騒動に関わっちゃ不味いってのが一つと、支部長クラスが出向かねぇとウチの冒険者が使い潰されかねなくてな」

 

 

 うわぁ、そういえばそんな話題もあったな。子爵閣下との会食が済んだ後にクインから聞いた話を思い出した。

 

 一般人には迷宮って呼ばれちゃいるが、専門家による正式名称は【迷宮型具現化現象】っていうらしい。その呼び名が示す通り自然が掘り進めた洞窟とかじゃなく、過去に存在した建物や神殿を模したモノが【マナ】によって具現化することで発生するんだとか。

 

 以前にも話題に上がった【マナ】だが、魔物を倒した際に吸収し切れなかった分はそのまま大地に還るらしい。また人間が死んだ際も、埋葬の仕方によって形は変わるが同じく土に還るとのこと。

 

 そうして地中に大量の【マナ】が貯まり、何かのきっかけで生じる"災害"こそが迷宮だ。今でこそ冒険者による発掘場所か修練場みたいな扱いだけど。

 

 

「使い潰されるとは穏やかじゃないな。王都のお触れで集まった人員だろ?下手な扱いしたらラリマー子爵はもちろん、やんごとない人間の顔にまで泥を塗ることになる」

「普通ならそこんとこのブレーキはちゃんと効くんだが・・・・・・"アガットランド"が出張ってるみてぇできな臭いんだわ」

「───アガットランド。セレストゲイルと同じ【浄血】の一門ですね。確かに彼らは迷宮の()()()()()を担う一族ですが、何故この話に出てくるのでしょうか?」

 

 

 クインによると、セレストゲイルが風災や雷災への対応を管轄する様に、アガットランドも地震および迷宮に関する防災を担ってる。いつ、どこで、どの規模で発生させるかを"歪める"ことで、迷宮という災害を逆に利益へと変えてるそうだ。

 

 災害へと分類されてきた歴史が示す通り、迷宮が齎す被害は甚大だ。何せ【浄血】が居なければ何処に生えてくるか分からないし、その土地の戦力じゃ歯が立たない強さの迷宮が生まれるかもしれない。

 

 間引きされずに放置された迷宮では魔物の氾濫が起きる。交通の要衝で発生したら目も当てられない。そうした事態をこれまで未然に防いできたのがアガットランドという訳だ。

 

 とはいえ連中も迷宮を生やすまでが仕事であり、生えてきた迷宮の管理はその土地の領主が務める筈だ。クインの言う通り、すでに発生してる迷宮に関わってくる理由なんてないと思うんだが?

 

 

「あくまでそういう噂だ。情報統制が敷かれてんのかボスの手紙にも詳しいことが何も書かれてねぇ。だがカーツの言う通り貴族サマにはしがらみってのが嫌になるほど付き纏う筈だ。南部の食糧事情を担う子爵閣下の扱いは決して軽いモンじゃねぇ」

「他の領地ならともかく、ラリマー子爵は人財を大切にしており冒険者ギルドとの仲も良好です。下手に人が減れば食糧供給にも影響が出かねない。そんな子爵閣下を相手に傍若無人を通せる存在と言えば───」

「天下御免の大貴族、【浄血】が疑わしいって訳か」

 

 『貴族の模範として生きる』って指標は何だったんだろうな?俺からすりゃセレストゲイルも大概だが、アガットランドは更にヤバいのかもな。

 

 

「ああそうだ、ボスの件で思い出した!近々迷宮攻略から脱落した冒険者を戻すって手紙にあってな。恐らく負傷者多数だろう。その時は治療院に缶詰になってもらうが頼めるか?」

「もちろん、任せてくれ。カーツの名前を広めるチャンスだ」

「カッカッカッ!頼もしいヤツだぜまったく───『コンコン』───あん?誰も居れるなって言っといたんだがな。ウォルフの野郎が忘れモンでも・・・・・・」

 

 

 眉を顰めて立ち上がるラングレー副支部長。ボスが不在なら忙しいだろうと、俺達もソファから立ち上がる。もう話すことは大体済んだし、一週間ぶりにゆっくりもしたいとこだし。

 

 しかしどうやらその願いは叶いそうもないらしい。副支部長が扉を開ける前に、俺より小柄で瀟洒な格好をした少年が入ってきた。

 

 どう見ても良いトコの坊々で、最近会ったお貴族様とよく似た顔立ちだ。どうか俺の気のせいであってほしいが、今の時点で凄く嫌な予感がする。

 

 

「事前のお約束もせずに来訪して申し訳ない。おや、見知らぬ顔も居るようなのでまずはご挨拶を───エイブラハム・ラリマーが第二子、トマス・ラリマーと申します。以後お見知りおきを」

 

 

 ・・・・・・すみません、聞かなかったことにして今すぐ帰って良いですか??

 

 

 

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