異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第二十三話 道中と振り返り

 

 

 

 

 

「───へぇ、そりゃまたえらく大掛かりな話に巻き込まれたっすね。まあ俺もなんだけど」

「いや本当に・・・・・・まあ急に攫われて言質を取られるよりずっとマシだけどな。それにウォルフやクインと熟した依頼のお陰で多少自信も付いたしな」

 

 

 翌日、予定より早めに来てもらったウォルフには再び応接室へ来てもらった。もちろん理由はトマスさまとの会合での情報共有だ。

 

 どうやら彼も追加人員として見込まれてるらしい。昨日のうちにある程度副支部長から連絡は行ったみたいだ。お陰で話が早くて助かる。

 

 

「まさかラリマーに来て、1ヶ月と経たず移動するなんて思いもしませんでした。その上更に【献言する毒蛇(サマエル)】が暗躍する迷宮とは・・・・・・」

「嫌な因縁が出来ちまったな。しかも今日の相手も下手したらソイツ等が絡んでるかもなんだろ?ウォルフも悪いな、こんな案件に付き合わせて」

「別に構わないっすよ。ラングレーの爺さんには割増で貰ってるんで・・・・・・相手に取って不足はねぇ」

 

 

 静かに闘志を燃やしてるウォルフが頼もしい。それにアンデット相手なら俺も戦力になれるんだ。楽観は禁物だが過剰に緊張するもんでもないな。

 

 

「えーっと、取り敢えずアンデットの群れを見つけたら範囲型の光属性魔法ぶっ放せば良いんだろ?」

「ええ、それが一番効率が良いかと。撃ち漏らしは私とウォルフさんで仕留めます」

「連中は光属性魔法が覿面に効くが、核になる骨を砕けば物理でも殺せる。俺はそれなりに経験してるし、防人さんは言うまでもないでしょ」

 

 

 【一番星】の面々が酷い目に遭ったのも、能力不足というより数で負けてた上に不意打ちっていう不幸の重ねがけが原因だ。最初からそうと知ってたなら、あんなに手酷くやられはしなかっただろう。

 

 今回はしっかり準備もしてきたし、俺は兎も角二人は対多数の実践経験も豊富だろう。本当に頼もしい限りだよ。

 

 

「ああそれと、カーツは張り切り過ぎて攻撃に魔法を使い過ぎないでくれよ?肝心な時に回復出来ません、は洒落になんねぇっす」

「そうですね。カーツさんは魔力の持久力は低くありませんが、光属性魔法を攻撃に用いるのは初めてです。配分には気をつけてください」

「あ、はい。全力で気を付けます」

 

 

 そうだな、俺の本業はあくまで治癒士だ。本末転倒になる真似は慎まないと。それで不幸になるのは俺だけじゃないんだし。

 

 打ち合わせと身支度を整えた後はギルドを出て街の出口へと向かう。顔馴染みとなった門兵さんと挨拶を交わしていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

 

 

「治癒士さん、今日はよろしくお願いします!」

「ん?ああ、ライルか。アンタが居るってことは・・・・・・」

「うん、道中の露払いは任せてくれ。それにミナの魔法があれば時間の短縮にもなるからな。足手纏いにはならないさ」

 

 

 やってきたのは【一番星】の面々だった。ライルの後ろにはあの時重傷だったデニスも居た。良かった、指名依頼の所為で経過観察出来なかったから気になってたんだ。

 

 こっちの視線に気付いたのか、会釈で返事してくれた。どうやら寡黙な性格らしい。

 

 

「あの時は随分世話になった。だから是非力になりたくてね。副支部長が掲示した依頼に飛び付かせてもらったんだ」

「いやいや、こっちこそ最後まで面倒見てやれなくてすまんな。元気そうで何よりだ」

「ははっ、口下手なのは治ってないけどね。貴族さまからの指名依頼じゃ仕方ないよ。気にしないでくれ」

 

 

 そう言ってもらえると助かる。メンバーはライルにミナって斥候の女の子、それからデニスと魔法使いっぽい見た目の青年が一人。

 

 既に準備万端らしく、早速ミナが俺達全員に魔法を掛けた。足回りが薄く光り、かなり軽くなった気がしてくるな。

 

 

「はい、これでバッチリよ。走る速度を向上しつつ負荷も少し軽減してくれる魔法なの」

「へえ、こりゃ確かに便利っすね。アンデット共から逃げ切れたのもコイツのお陰もある訳か」

「あ、ウォルフさんだ!へー、本当にパーティ組んでたんだ!!」

 

 

 ライルが意外そうに言うと、ウォルフが気にするなと言わんばかりに手をヒラヒラさせる。性格的に相性は悪くなさそうだが、パーティを組んだことは無いんだろうか?そう聞いてみると・・・・・・。

 

 

「えっと、ウォルフさん自身はとても好ましい人だと思うんだ。だけどほら、僕達ってまだ弱小のパーティだろう?」

「そっすね。だから個人的な付き合いなら兎も角、パーティとしちゃ関わる訳にゃいかねえんだろ。身内の後先を預かる纏め役として当然の判断だな」

「あーはいはい、世間話も良いけどあんまり時間無いんでしょ?親交深めるにしてもまず仕事を片付けてからにしましょ」

 

 

 ミナから真っ当な仲裁が入ったので話を切り上げる。そうだな、まずは依頼を片付けてからにしよう。それからでも遅くはない。

 

 魔法で速度を上げ、更に俺の【快復魔法(ヒール)】で体力も随時回復させる。道中無視出来る相手はサクッとすっ飛ばし、避けられない分は【一番星】が請け負って進む。

 

 人数は多いのに3人の時より進むペースは相当早い。補助魔法でこんなにも違うのかと改めて実感した。とはいえ無理は禁物だ。当初の予定通りの場所で一時休憩を取る。

 

 

「うーん、やっぱり治癒士の存在って大きいよな。今度スカウトしてみようか?」

「そんな予算と信頼がアタシ達の何処にあるっていうのよ?ま、後々って話なら賛成だけど。怪我した端から治してもらえるんだもの、安心感が段違いだわ」

「・・・・・・(コクコク)」

 

 

 途中で使用した武器の手入れをしながら、【一番星】の面々がそんな話をしている。ふむ、治癒士のプロモーションが出来たようで何より。やっぱり安全に勝る買い物は無いからな。

 

 とはいえ、ミナの言う通りギルドに紹介でもしてもらわないと中々難しいだろうな。偶々フリーになった治癒士をスカウト、なんて滅多にないと思うし。

 

 

「あ、そうだ!カーツさん、治癒士を雇う相場って幾らなんですか?」

「おっと、そういえば言ってなかったけど俺は教会に所属してないんだ。だから申し訳ないがそういった話はさっぱり分からん」

「ええっ、それってつまり我流で治癒士やってるってこと!?へー、初めて見たわ。冒険慣れしてるみたいだし冒険者歴も結構長いの?」

「経験自体はそれなりなんだが、冒険者歴は短いんだ」

 

 

 面白い話でもないし、掻い摘んで事情を説明する。別に後ろめたいこともないしな。

 

 

「───うへぇ、冒険者登録もせずに働かせるってアリかよ・・・・・・」

「ナシに決まってんでしょ!もしアンタがそんな馬鹿な真似したらぶっ飛ばしてるわよ。自分で田舎から出てきたんなら自己責任だけど、地元の権力笠に来てやることがそれってみみっち過ぎるわ」

「あ、やっぱり俺の居た環境ってこの辺の人でも眉を顰める内容なんだな」

 

 

 しかし本当にまあ、よくカーツ少年は何年も耐えたモンだ。物心付いた時からの刷り込みってのは本当に性質が悪い。

 

 

「・・・・・・とはいえ、多分今頃相当追い込まれてそうっすけどね」

「え、そうなの?」

「十中八九な。回復役が居れば、多少能力のない馬鹿の指揮でも生き残れる。だが自分が下駄履かせて貰ってる自覚のない奴が、切り札も居ないまま同じ指揮やって何とかなると思うか?」

 

 

 ウォルフの指摘は盲点だった。というより、今が楽し過ぎてすっかり忘れてたわアイツらのことなんか。

 

 ハンスの馬鹿タレの指揮・・・・・・うん、ライルの方が万倍マシだな。無駄に長く戦ってるから単体での戦力はアイツの方が上だろうが、組織の調整役とか出来る性格してないからな。

 

 上から偉そうに、しかも誰でも考え付く様な指示しか聞いたことないな。

 

 

「あー・・・・・・今までどんなに過酷な依頼でも傷一つなく戻ってきたパーティが、突然怪我が多くなればギルドも訝しみますよね」

「後はタダで治療が受けれるって理由で傘下に加わってた奴は抜けるだろうな。聞いてる限りだと、誰かを引き留められる何かを持ってる感じじゃねぇよな」

 

 

 ボロクソ言われてるが残当だな。まあ俺に関わってこなけりゃ何処でどう過ごしててもどつでも良いな。

 

 

 

 

 

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