異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第二十四話 邂逅

 

 

 

 

 

「・・・・・・見てるだけでやる気湧いてくるっすね」

「ウォルフさんよ、この光景にその冗談はちょっと笑えない」

「うわぁ・・・・・・もしかして南部にも新しい迷宮が生えたかな?」

「やめてよ、本気で洒落になってないわソレ」

 

 

 四人揃って眼下に収めているのは、骨の群勢による『狩り』の光景だった。数えるのも馬鹿らしくなる量のスケルトンが、ヒュージボアの群れを襲っていた。

 

 本来知能とは無縁な筈のアンデットが、獲物を誘導し連携し作為的に襲撃する。怪物をよく知る人間からすれば恐怖を感じる景色だった。

 

 

「・・・・・・アンデットの癖に気味が悪い。あの動き、まるで新米を指導してるみたいね」

「そうなのですか?」

「アタシとライルは元々猟師の子なの。だから動きで分かるのよ。ねぇライル?」

「うん・・・・・・特に弓を使ってる奴は分かりやすい。引き方を実践してみせる姿がまるで父さんみたいだった」

 

 

 クインの問いかけに、不快感を隠しもしない顰めっ面で応じるライルとミナ。死人から発生する怪物が家族を思い出させる行動をしたんだ、気持ちは分かる。

 

 俺が以前【一番星】から聞いた話じゃ、アンデットは精々10体から多くとも20はいかない筈だった。ギルドへ報告する際に改めて思い返しても間違いないとのこと。

 

 だが今目の前には軽く50体は居やがる。しかもこれが全部とは限らない。

 

 

「作戦変更だ。群れの中枢を叩くのは、此処で数を減らしてからだ。【一番星】は逃げた個体を追跡してくれ。そいつを追いかけた先に連中の拠点がある筈だ」

「任せてくれ、普通なら探さなくても勝手に増援を呼んできそうだけどね。でもコイツらは普通じゃない。用心は重ねた方が良い」

「・・・・・・言っとくっすけど、無茶はすんなよ。深追いは無しだ」

「もちろんだ。この前の二の舞なんてさせやしない」

 

 

 ライルの宣言に、【一番星】全員が表情を引き締める。この様子なら、因縁のある相手でも逸ることはないだろう。

 

 その代わりこっちに回す戦力が減る訳だが、俺もウォルフも不安なんて微塵もない。頼りになる仲間が居るからな。

 

 

「行けるかクイン?」

「いつでもどうぞ、魔法の準備は既に終えています」

「よし、じゃあ数えるから合わせてくれ・・・・・・5、4、3、2、1───撃てっ!」

 

 

 ミナ達が気配を消したのを見届けてから、クインに合図を出す。あの村で見た時より更に磨きの掛かった『風の暴力』が牙を剥いた。

 

 骨の群勢を包囲するかの様に、遥か頭上で風が集束していく。まるで鉄槌の様に質量を持った暴風の塊が化け物を地面に縫い付ける。

 

 

「・・・・・・あ、そういえばコイツらもあの『泥』を仕込まれてるんじゃないか!?魔法で触れたら───」

「ご心配なく、私も同じ轍は踏む気はありませんので。彼らに直接触れてるのは魔法で作った風ではなく、風で巻き込んだ『大気』のみです。あとそれから、間違っても押し潰さない様に力加減もバッチリですよ」

 

 

 おお、流石歴戦の魔法使い。素人が口を出すまでもなかったな。自信満々な様子から察するに、他の対策もしっかり取ってあるんだろう。

 

 

「あの時の私は、防人である自分が何とかしないととばかり考えていました。ですが此処に居るのは私だけじゃない、そうでしょう?」

「───そんな風に言われちゃ燃えない訳にはいかないよな!・・・・・・ってことで、はいよろしく」

「いや、そこは最後まで格好付けようぜ?まあ良いっすけど」

 

 

 ウォルフに手渡した【触媒】が彼の強化された腕力で飛んでいく。石や木片で逸れそうになったが、まるで手繰り寄せる様に風が目的の場所へと誘導してくれる。

 

 目論見通り、群勢の中心に落下した。俺の実力だとあんまり広範囲には展開出来ないからな。ナイスアシストだ。

 

 

「それじゃご期待に応えて───【範囲治癒魔法(ワイドキュア)】!」

「・・・・・・効いていますね。風属性は兎も角、やはり天敵の光属性まで手が回っていないようです」

「そんじゃあ、アレが壊れたら次は俺の番っすかね」

 

 

 よし、【触媒】を利用した遠隔魔法は効果的だな。崖から下までの高低差があんまりないから使えた手だけど。流石に距離が空くと起動出来ないから運が良かったよ。

 

 しかし・・・・・・これが【マナ】を沢山取り込む感覚か。激辛料理を食ったみたいに身体が熱くなってきた。口は痛くないんだけども。

 

 

「着地についてはお手伝いします。思いっきりやっちゃってください」

「お、これはご丁寧にどうも。ミナのお嬢が掛けといた魔法が切れる前に行きますよっと」

 

 

 クラウチングスタートみたいな低姿勢から、弾丸みたいにすっ飛んでいった。予告通り上昇気流が着地の衝撃を殺したと同時に突貫していった。

 

 事前に『泥』の情報共有もしておいたものの、ウォルフは愛用の槍で接近戦を興じている。纏めて薙ぎ払ったり、核になってるらしい骨を的確に砕いていく。

 

 最初は泥を警戒して止めようと思ったんだが、どうやらウォルフは『呪詛』に対して滅法強いらしい。詳しくは語らなかったけど、それならいつも通りやってくれという流れになった。

 

 

「初撃で粗方倒せてたし、見た感じ呪詛が籠ってる奴は居なさそうだな。出来れば本人が言う対策とやらを見ておきたかったけど」

「まあ杞憂で済んだことを喜びましょう。それにウォルフさんもああ見えて踏み込み過ぎないよう立ち回ってくれてますし。あ、見てください。取り零しが森へ逃げていきます!」

 

 

 予定通りだな。わざと討ち漏らした残党が逃げ出していく。そして連中から身を隠しながら【一番星】が追跡していく。

 

 

「それじゃあ下に降りたウォルフと合流して追いかけるか。えーっとあっち側へ降りるには───」

「はい、しっかり捕まっててくださいね」

「え、ちょ待っ・・・・・・!?」

 

 

 いきなり腰を引き寄せられたかと思えば、突風に攫われて崖から放り出される。思わずしがみ付いたけど近い、美形が近いっ!!

 

 パラシュートも無いのにフワフワとゆっくり降下していく。ウォルフが『何やってんだコイツら?』みたいな目で見てくるけどそれどころじゃねぇんだよ!

 

 クインにジト目を向けるも、悪戯が成功して喜ぶ子供みたいな無邪気な笑顔で返り討ちに遭った。うっかり俺に存在しない筈の乙女心が爆発しそうになったわ。

 

 

「いや、真面目にやってくれないっすか?」

「やめてくれ、こちとら一から十まで真面目にやってんだよ」

「すみません、つい揶揄い過ぎちゃいました」

 

 

 そうして合流した俺たちも骨の残党を追跡する。とっくに連中の姿は見えないが、【一番星】が残してくれた目印があったので難なく追い付けた。

 

 

「待たせたなライル」

「ああ、待ちかねたよカーツさん。敵の残りが少なかったなら僕達で片付けたけど、アレはちょっと荷が重いよ」

 

 

 指差した先にあったのは、紫色に濁り切った"沼"だった。そこから這い出てくる様に追加のアンデットが発生していた。

 

 

「クイン、一応聞くけどアレに心当たりは?」

「・・・・・・全くありません。もし今まで出現した全てのアンデットを使役出来るのなら大変な脅威です。もし情報を掴んでいれば、間違いなく末端まで伝達されているかと」

「ねえ見て、沼の端っこ。格好からして、多分盗賊か逃亡奴隷じゃないかしら?」

 

 

 ミナが見つけたのは、半分骨になってる人間の死体だった。アンデットに襲われたって感じじゃないな。腐敗してるけど外傷は殆どない。

 

 どういう絡繰かは知らないが、人間の死体を媒介にアンデットを量産していたらしい。もしこれが帰還する冒険者と鉢合わせしてたらと思うとゾッとするな。

 

 

「生産する速度は大したことないな。残党含めて10体も居ない。此処さえ潰せば終いだ。出し惜しみなし、速攻で終わらせよう」

 

 

 モタモタしてると折角減らしたのが無駄になる。それに防御用に別の細工がされてないとも限らない。力尽くで済むならそれが一番だ。

 

 懐から【触媒】を詰め込んだ袋を取り出す。やることはさっきと変わらない。一度に起動出来る【触媒】は一つだが、リレー形式で連続起動するのはそう難しくない。仮にスケルトンが向かってきたとしても、今度はこっちに数の利がある。

 

 

「今回は投げ込む訳にはいかないよな。あの沼にドボンしたら発動する前に壊れそうだし。クイン、『風』でこっそり運べるか?」

「もちろん、音一つなく飛ばしてみせますよ」

 

 

 クインにパスすると、まるで念動力みたいに一人でに袋が浮かぶ。そのまま宣言通り慎重に沼へと近付けていく。

 

 充分に接近出来たし、いざ発動───と思った矢先に袋が()()()()()。一瞬見失ったかと焦るも、俺たちが動くより先に"声"が聞こえた。

 

 

「───駄目だぞこんな物騒なモン持ち込んじゃ」

「「「!!?」」」

「此処には落としても拾って返してくれる妖精なんて居ないぜ?悪いこと言わねえから早く帰んな」

 

 

 音もなく忍び寄ってきたのは中肉中背の男だった。俺が反応するより早く槍が横を通り抜けるも、男は目に映るより早く掻き消えた。そして次の瞬間には、まるで何事もなかった様に同じ場所へ再び姿を見せる。

 

 フード被ってる所為で顔付きは分からない。だがその"眼"は、まるで爬虫類みたいに縦に割れていた。

 

 

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