異世界憑依生活記〜治癒士と厄ネタを添えて〜   作:章介

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第二十六話 悔しいけどやる気は出た

 

 

 

 

「ぐ、くそ・・・・・・っ!?」

「ああこら、無駄に力むな。変な締まり方したら落ちるだけじゃ済まないからな?」

 

 

 俺の首を掴んでる腕には対して力が入っていない。寧ろ変に締まらない様に気を遣ってすらいるのに、幾ら抵抗してもビクともしない。

 

 恐らく階梯(レベル)が違い過ぎるんだろう、なんてどうでもいいことに飛ぶ思考を無理矢理引っ張り戻す。意識を落とそうと脳に振り掛かる痺れを【持続治癒魔法(リジェネレーション)】で繋ぎ止める。

 

 

「───ん?おいおい、無理すんなって。つーか普通は集中を欠いた状態で魔法なんか使うなよ。怪我じゃすまなくなるから止めとけ」

「ご・・・・・・ここで、無理しなくて・・・何時すん、だよっ!?」

 

 

 自分の手を汚したくないって言ってたが、じゃあアンデットに食わせるのはアリなんて可能性もある。ノした後の俺たちならどうとでもなるだろうし。

 

 そもそも、敵の言うことを間に受けるほど馬鹿じゃない。僅かに圧迫が強くなった気もするが、意地でも意識を手放してやるもんかよ!

 

 

「ど、どうすんのよライル!?このままじゃ───」

「駄目だミナ、それからエリオットも絶対動くな!!俺たちが下手に手を出してもアイツの肉盾を増やすだけだ。どれだけ悔しくても今は機を伺うんだ!」

「へぇ、冷静だな坊や。若輩リーダーにしちゃ上出来だ・・・・・・上出来ついでに、白旗上げてくれると助かるんだが?」

 

 

 蛇男の挑発にも乗らず、血と一緒に葛藤を噛み殺してる。そうだ、アイツらが諦めてないのに俺だけ根を上げられるかよ。

 

 何か、何か手はないか・・・・・・?必死に気道を確保しようと身体を揺らしながら身に付けた装備を確認する。触媒は取り出すのと発動の二工程要るから無理。多分出した時点で取り上げられる。他には───ん?これは・・・・・・。

 

 

"パタパタパタパタッ!"

 

「───あん、ティアの遣い・・・・・・じゃねぇな。そういえばこの街には【細工師】が居るんだったか?」

 

 

 突然視界の外からやって来たのは、鉄で出来た"小鳥"だった。最初は気安そうにしてたが、何を察知したのか突然蹴り砕きやがった。

 

 

「はぁ・・・・・・君達も囮って訳か。こりゃあとっとと終わらせないと───うおっ!?」

 

 

 突然言葉を途切らせたと思ったら、自由落下中の小鳥が突然爆発した。爆竹くらいの小規模だが、至近距離ならそれなりに効果があったらしい。

 

 注意が逸れた・・・・・・なんて欠片も思えないが、やるなら今しかない。懐から取り出したのは、何時かの時に借りたままだった剣杖だ。

 

 コイツにはとある試作の魔法を試し撃ちに付き合ってもらってる。なんか滅茶苦茶頑丈だからな。その時込めた魔力の残滓を使えば、普通に撃つよりずっと早く魔法が撃てる。

 

 

「───なんて考えだろうがお見通しだよ。片手が壊れてるからって油断したか?」

「・・・・・・」

 

 

 何時の間にか右手から剣杖が抜き取られてた。どうやって乗っけたのか、ボロボロの手で器用に挟んでやがる。

 

 けどまあ()()()()。寧ろ取って貰わなきゃ困るくらいだ。何せその魔法は俺以外の魔力に晒されないと発動しないからな!

 

 

「───はっ、今度は何だぁ!?」

「ゲホ、ゴホ・・・・・・やっと一発カマしてやったぞ」

 

 

 発動したのは光属性()()魔法。といっても難易度が高過ぎて名ばかりの魔法だけどな。

 

 相手の魔力と反応して強い光を放つだけの魔法だ。魔技か強化魔法か、どっちか纏ってるって予想は正解だったな。奴が防御反応に回ってくれたお陰でやっと抜け出せた!

 

 

「───今だっ!!」

「治癒士さん、走って!」

 

 

 酸欠で縺れそうになる脚を何とか突き動かす───前に、風が俺を掬い上げる様に運び出してくれる。ついでに放り投げられてた剣杖も回収してくれたので手を伸ばして回収しておく。

 

 さっきの馬鹿威力の反動なのか、クインは攻勢に参加出来てない。だけどライル達が弓やら魔法やらで全力で応戦してくれてる。俺もこうしちゃ居られない、この間に【不全魔法(マルファンクション)】を────。

 

 

───パキンッ───

 

 

「───あっ・・・・・・?」

「ッ!?───カーツさん!!」

「あーあ、言わんこっちゃない。どれだけ使い慣れた魔法でも、相応の集中を欠いちゃ折角の魔力が臓器の外へ漏れ出るんだよ」

 

 

 周りから声が聞こえてくるが、まるで意味が伝わってこない。神経を直接引っ掻かれた様な不快感と痛みでそれどころじゃない。

 

 猛烈な虚脱感と、同時に腹の中を巨大な寄生虫が暴れ回ってる様な感覚。千載一遇のチャンスを逃し、もう一度"蛇"が寄ってくるのに何も出来ない。

 

 

「・・・・・・けどまあ、こっちとしちゃ都合が良い。殺すなとは言われたが、捕まえて調べるのまで無しとは言われてない。お前さんとそっちの防人さんにはちょいと興味がある」

「───ッ!?」

「取って食うつもりは無いから安心しろ。それに大人しく着いてくるってんなら、少年が陥ってる症状だって治してやるさ。こっちにゃ腕利きの技術者が居るからな。寧ろそのまま放っておいたら、最悪の場合そいつ死ぬぞ?」

 

 

 せめてクインだけは逃したいが、華奢な細腕すら跳ね除けられない自分が歯痒くて仕方ない。コアトルが俺たちに手を伸ばし、あと少しで指が届くって瞬間───奴がくの字になって吹っ飛んだ。

 

 

「ぐがっ!?コイツは───!!」

「───この"風"は・・・まさか・・・・・・?」

 

 

 熱に魘されそうな頭が少しだけ冷えた気がした。辛うじて回る様になった頭に飛び込んできたのは、見ただけで不快になってくる暗殺者みたいな格好だ。

 

 

「撒き餌の割にはマシな魚が釣れたものだ。出来損ないも偶には役に立つ」

「・・・・・・アデルさま?」

「マジかよ、とんだ大物がやってきやがったな」

 

 

 来て早々要らんこと言いやがって・・・・・・でも助けられただけに何も言えねぇ、畜生。"蛇"の方はさっきまでのやる気のなさから一転、物凄く怖い顔で殺る気満々になってら。

 

 

「───小僧、今の貴様は風船が割れて中身が漏れ続けているようなものだ。死にたくなければじっとしていろ。だが・・・・・・高みを目指したければ魂の輪郭を知覚し、循環させてみせろ」

「はっ、庶民にご指導ご鞭撻とは【浄血】サマも丸くなったじゃねぇか。何時から宗旨替えしたんだおい?」

「出来損ないやそれ以下のゴミよりは幾分マシのようだからな」

 

 

 それだけ言い残して盛大におっ始めやがった。くそっ、適当言いやがってあの野郎・・・・・・。

 

 上等だ、暗殺者モドキのヒントってのは癪だがやってやるよ。お前にこれ以上借りを作るなんて御免だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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